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安部公房

著者情報
著者名:安部公房
あべこうぼう
アベコウボウ
生年~没年:1924~1993

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このランキングは1日1回更新されます。
      砂の女
      カテゴリー:小説、物語
      4.0
      いいね! taiji Rtha
      • 7月の課題図書。
        砂地にすむ昆虫採集のため砂丘に来た男が、砂の集落に監禁され、そこでの生活を余儀なくさせられます。
        同居の女の煮え切らなき態度。
        部落の人たちは男の逃亡を妨害。
        理不尽な監禁生活に、終始恐ろしさといらつきを感じていました。


        砂の描写が豊富で、細かくて。あまりにも詳細に書かれているので、全身どころか口の中まで砂という気分でした。
        砂と共存、砂掻きをしなければ埋もれてしまう場所での生活なんてありえないのに、最初から最後まで説得力を感じる物語でした。

        そこから逃げ出したくても、死の絶望よりは敵に懇願しても生にしがみつくのもわかるし、生活のなかに生き甲斐を見出だすと留まりたくなる気持ちも、わかります。
        たとえ元の生活に戻れたとしても、男の回想から見えてくる不満、そして自由に選択できるようで不自由な現代社会。
        砂の中の女のように、そこでの生活を受け入れた男にとっては、理不尽さを感じながらもそれなりに楽園なのかもしれません。
        人間の本質を突き付けられた気分でした。

        しかしこの村の制度、長く続くのかな。
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        2018/07/25 by あすか

      • コメント 10件
    • 他13人がレビュー登録、 59人が本棚登録しています
      箱男
      カテゴリー:小説、物語
      4.2
      いいね! Shizu
      • 大まかに言うと腰ぐらいまでのダンボール箱をかぶり、覗き穴を開ければ、箱男の完成である。

        箱男と浮浪者は似ているが、浮浪者は箱男と違い市民に属している。箱男はその存在すら市民から忘れられる。
        だから箱男は人を覗くことはあっても、覗かれることはない。
        だって箱男は皆の意識には存在しないものだから。

        そして箱男になれば、自分が何者かさえ分からなくなる。ただの箱男になる。
        箱男を空気銃で打った人は、その後箱男になった。箱男という存在を意識したらすでに、その人は箱男に捉えられているのである。

        普段の何気ない日常に、箱男という異物を投入してみるといくつかの疑問が沸き上がってくる。
        「覗く」とはどういうことだろう。「覗かれる」こととどう違うんだろう。同じことではないのか?
        「存在する」とはどういうことだろう。人は箱をかぶることで他人の認識外のものとなる。
        箱をかぶれば自分でなくなり、人でなくなりただの箱(箱男)となる。じゃあ存在って何?

        考えれば考えるほど、分からなくなっていくから、もう箱をかぶって箱男になるしかないか・・・。
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        2017/09/29 by Reo-1971

    • 他2人がレビュー登録、 15人が本棚登録しています
      燃えつきた地図
      カテゴリー:小説、物語
      4.5
      いいね!

      • 安部公房の「燃えつきた地図」を再読しました。

        この作品は、現代人の心の"飢餓感"を、失踪というテーマに託して描いたものだと思う。

        どこにでもいそうなサラリーマンが、ある日、ふっと失踪し、調査を依頼された興信所員が手順通りに探っていくという展開で始まる。

        ところが、失踪した男の妻は、どこか投げやりな調子で、夫のことを心配しているのかどうかさえ定かではないのだ。

        それでも興信所員は、生真面目に調査を続けていくが、次第に----その間、怪しげな依頼主の弟が登場してきたり、殺人事件も起こっていくが、次々と手掛かりを失い、ついには自分自身を見失っていくのだ。

        一人の人間の行方を追うということは、言葉を換えて言えば、その人物のかなりの部分まで知ることにも繋がる。
        普段の生活から、性格、嗜好、行動、そして過去----と、彼はいったいどんな人間だったのかを探っていかざるを得なくなるのだ。

        同時にまた、他人の過去を探っていくということは、自分の過去と接する危険性も常に孕んでいるのだ。
        ふと目にした何気ない風景が、あたりさわりのない普通の会話が、何かの拍子にいきなり自分の過去と直結することが、往々にして存在する。

        その時、追う者としての興信所員は、すでに"心の飢餓"に囚われていると言っていいのかもしれない。
        失踪した男がどんな人物だったのかを追跡するうちに、いつの間にか自分は何者なのかという命題にすり変わっていくのだ。

        この優れて暗示的で自己洞察的な小説「燃えつきた地図」は、追う者が追われる者となり、誰を追っているのか、そもそも自分は誰なのかすらも判然としなくなる、"現代人の恐怖"を描いた傑作だと思う。
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        2018/06/06 by dreamer

    • 他1人がレビュー登録、 5人が本棚登録しています
      カンガル-・ノ-ト
      カテゴリー:小説、物語
      4.7
      いいね!
      • 目を覚ましたら、脛にかいわれ大根が自生していた。突拍子もない内容の出だしだが、いきなり引き込まれた。普通は笑いとばすことなど到底出来ない、不治の病に侵される瞬間を安部公房という人は、どうしてこうもユーモラスに書けてしまうのだろう。

        奇病に見舞われる前の主人公は文房具メーカーに勤める会社員だった。表題の『カンガルー・ノート』は主人公が提案した新商品の名前に由来する。なぜカンガルーに着目したのかというと、カンガルーに代表される有袋類の「みじめさ」に共感したからだという。真獣類(有胎盤類)に比べると生物として弱く、固体の特徴もはっきりしない。どうやら弱き者に親近感と愛着をもっていたようである。

        『カンガルー・ノート』は著者の遺作として位置づけられており、おそらく病床で書かれたものだろう。通常は、夢はすぐに忘れてしまって現実をよく覚えているものだが、本作の場合は反転している。まるで夢こそが生活の本質であるかのように、不治の病に対する無力感を吹き飛ばすかのように、次から次に夢が語られる。

        夢の中の旅はとりとめがないけれど、おもしろい。そもそもアトラス社製のベッドが自走する時点で、ベッドの域を超えている。百歩ゆずって空の点滴袋が雄の烏賊になったとしても、呼応した雌の烏賊に追いかけられる場面はシュールすぎた(ちなみにこの一対の烏賊は、百メートル十五秒以内の速度で接触すると爆発する!)。
        他には三途の川で母と再会する場面も印象的だった。トンボ眼鏡の看護婦の立ち回りが良い。ベッドを占領した主人公の母と対峙して「着古した盲縞と、糊のきいた白のショートスカート、勝負はとうについている」。トンボ眼鏡の魅力が伝わってくる、お気に入りの一文だ。

        壁一枚くらいの隔たりは感じるにせよ極めてリアルな夢の終着点は、分かってはいたけどぞっとした。すべての音が無くなって、ぽつんと取り残されたような気がした。
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        2018/02/12 by カレル橋

    • 他1人がレビュー登録、 8人が本棚登録しています
      第四間氷期
      カテゴリー:小説、物語
      3.3
      いいね!
      • 科学の進歩は人間の営みを変えてしまうのか?!というSF。
        水棲人とか出て、挿絵がシュール。
        物語が収集つかずじまいで、万人ウケは100%ないけど、
        機械の明確さへの恐怖とか、
        機会に人間が使われる構図への批判性にはハッとさせられる。
        >> 続きを読む

        2016/07/17 by botan

    • 6人が本棚登録しています
      方舟さくら丸
      カテゴリー:小説、物語
      5.0
      いいね!
      • 安部公房の最高傑作であると同時に、現代文学の金字塔。こういう文章を書けるようになりたいです。 >> 続きを読む

        2016/05/12 by とーます

      • コメント 4件
    • 4人が本棚登録しています
      〈霊媒の話より〉題未定 安部公房初期短編集
      カテゴリー:小説、物語
      3.0
      いいね!
      • 安部公房の初期短篇集。「題未定」は著者自身がそう記していた物語で「霊媒の話より」と副題がある。
        満州引き揚げ者だっか彼が、戦中の若い頃から書き始め、ずっと温め続け、所持し続けて未発表に終わった作品か。

        前衛作家と呼ぶ時代は過ぎて、今や古典として読むべし、そんな評が聞こえてくる。
        >> 続きを読む

        2014/12/21 by junyo

      • コメント 2件
    • 1人が本棚登録しています
      榎本武揚
      カテゴリー:小説、物語
      4.5
      いいね!

      • 幕末ものの歴史小説を貪り読んでいますが、今回読了したのは、安部公房の「榎本武揚」

        「壁」でこんなにも凄い小説があったのかと衝撃を受けて以来、「砂の女」「他人の顔」「燃えつきた地図」「箱男」などの安部作品を次々と遍歴した私としては、この本のページを開く前から、一癖も二癖もある作家・安部公房が、歴史上、忠義の臣、共和主義を志した軍人という賛美もあれば、幕府、明治政府の双方に仕えた転向者という烙印も押された、毀誉褒貶の激しく、奇っ怪で捉えどころのない榎本武揚を、どう料理するのかと心躍ったものです。

        しかも、安部公房の歴史小説ときている。安部公房と歴史小説という組み合わせは、ミスマッチの妙という感じがして、実に興味深いと思いましたね。

        「五年ほどまえ、ある放送局の依頼で北海道旅行をしたさいのことである。釧路から汽車で二時間ばかりの厚岸という町で、面白い話を聞きこんだ」という書き出しから、いつもの安部公房の作品とは手触りが違うのだ。どことなく、ルポルタージュという趣なのだ。

        文中で彼は、旅館の主人に案内されて、榎本兵の残党が生き延びていたという証拠を確認に出掛けているほどだ。そうか、安部さんも、榎本武揚と真正面から向かい合おうという魂胆なのだ。少々意外なプロローグではあったが、同時に今回は毎度お馴染みの、救いようのない安部ワールドとは縁が切れるとホッとしたりもしたものだ。

        ところが、旅館の主人の福地伸六と、私=安部との関係が次第に怪しくなってくるのだ。東京に帰った私の元に、突然、届けられた福地からの小包。中身は数百ページもありそうな「五人組結成の顛末」という原稿用紙の束。これはどうやら、榎本軍兵の書き記したものらしい。さらに、小包に添えられた手紙で明かされる、福地が元憲兵だったという陰々たる半生と苦悩。

        これはどうも怪しい。ノンフィクションなんかではなく、あのいつもの安部公房の沼地ではないのか。一度はまり込んだら、どうあがいても抜け出せない"不条理の湿地帯"ではないのか。それでいて、安部公房ファンの身としては、たまらなく胸苦しい甘美な薫りが漂ってくるんですね。

        しかし、第二章から、また様子が異なってくる。劇中劇のような形で「五人組結成の顛末」が進行し、やがて、これの主人公・浅井十三郎が大きくフューチャーされるのだ。往時の新聞や書物の引用をしばしば文中に配して、時代の目や耳の捉えた世相を伝えている点も見逃せない。そして、全篇を通して流れる、安部公房独特のユーモア感覚も読書のスピードを加速させてくれる。

        この浅井は、元新選組隊士で、土方歳三に師事していたという設定になっている。「五人組結成の顛末」は、五稜郭に到る幕府の残軍の忠実な敗走記であり、榎本武揚を変節漢と決めつけ、獄中の榎本を誅殺しようとする浅井の行動録でもあるのだ。また、福地の変節を正当化する道具としての意味づけもあるのだと思う。

        もっとも、文中で浅井が罵倒する榎本は、後に明治政府の高官として活躍する榎本だけではない。幕府軍の総領でありながら、新政府側の勝利を呼び込もうとしているとしか思えない行動をとる榎本だ。

        安部公房は「五人組結成の顛末」を通じて、つまり浅井の口を借りて、榎本を相当、胡散臭い人物として描き切っていると思う。ついでに大鳥圭介も、プチ榎本として切り捨てられている。

        それは、どうやら転向者と呼ばれる裏切り者に対する憤りではなく、ヨウとして得体の知れない榎本武揚に対する安部公房なりのアプローチなのかも知れません。

        しかし、読み終えて、よく考えてみると、この作品で描かれる口八丁手八丁のご都合主義者の榎本だけではない。幕府政治の限界を予見していた先取りの人であり、オランダ留学で身につけた博識を、新しい日本で活用しようとする篤志家であり、土方歳三らの硬直した考えを揶揄する、新時代の思想家の顔なのだ。

        どうやら、安部公房の描きたかった榎本武揚像の真意は、ここにあったのではないかと思いますね。


        >> 続きを読む

        2018/03/25 by dreamer

      • コメント 3件
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【安部公房】(アベコウボウ) | 読書ログ - 読書ファンが集まる読書レビューサイト(著者,作家,作者)

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