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安部公房

著者情報
著者名:安部公房
あべこうぼう
アベコウボウ
生年~没年:1924~1993

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このランキングは1日1回更新されます。
      砂の女
      カテゴリー:小説、物語
      4.1
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      • "砂の中に閉じ込められたまま生きていく。"

        主人公が砂丘へ昆虫採集に出掛け、思いもよらず深さ何メートルにも及ぶ砂の穴に建つ家に閉じ込められた。そこから逃れられないと分かった時から、"そこで生きていかなけばならない"という恐怖と絶望で心が一杯になったことであろう。
        主人公にシンクロし、作品を読む自分にも同じ感情が沸き起こっていた。

        そしてその砂の家に男を閉じ込めようとする村の住民たちや、逃げ出したい主人公にもう諦めてここで暮らすのよ、と無言の進言をする砂の家の女に、理不尽さを感じずにはいられない。自分の生きる場所はこんなところではない、早く元の生活の場に戻してくれと、そう思うのは当然の事だ。
        家の中に砂が降り積もるから、その砂を掻き出すのが日課、なんてどう考えても非合理的な暮らしだ。そうまでして維持すべき村であるのか?そんな生活を強いてまで村を存続させようという村の人間達はもう狂気の沙汰である。

        当然主人公は逃げ出したい。
        そしてある着想から逃げたす手段を思い付き、万全の準備と共にそれを実行に移す。うまく穴から這い上がり、村から脱出を試みるが、その目前でヘドロのような砂地に嵌まり、死にそうになる。が、間一髪村人に助けられる。助けられたは良いが結局またあの砂の家に連れ戻されるのだが・・・。

        どの辺りからだろう、主人公の砂の家の生活に対する抵抗・反発が少しずつ薄らいできたのは。
        連れ戻された後、主人公は暇潰しに砂の中に桶を埋めて作ったカラス捕獲の罠、名付けて〈希望〉を作った。この時点での"希望"の意味する所とは、砂の家から出て元の生活に戻ることなのか?それともこの砂の家に"希望"を見いだしつつあるのか、どちらだったのだろうか・・・。

        そしてある日〈希望〉の桶の中に水が溜まっているのを発見する。水とは縁もないと思われていた砂地に水が湧いた、その予想外の発見に主人公は興奮した。
        その後、どうすればうまく水を貯められるかという研究に没頭することになる。

        この発見と同様に、無意味と思えていた砂の家の生活にも何かを見いだし、自分はここで生きていくのだと思ったのであろう。
        女との間に子供を得た、砂の家での生活にささやかな希望がちらりと垣間見えた。

        それにしてもいつも思うのだが、安部公房の比喩は難しいのが多いなぁ・・・。
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        2017/11/03 by Reo-1971

      • コメント 2件
    • 他8人がレビュー登録、 46人が本棚登録しています
      箱男
      カテゴリー:小説、物語
      4.2
      いいね! Shizu
      • 大まかに言うと腰ぐらいまでのダンボール箱をかぶり、覗き穴を開ければ、箱男の完成である。

        箱男と浮浪者は似ているが、浮浪者は箱男と違い市民に属している。箱男はその存在すら市民から忘れられる。
        だから箱男は人を覗くことはあっても、覗かれることはない。
        だって箱男は皆の意識には存在しないものだから。

        そして箱男になれば、自分が何者かさえ分からなくなる。ただの箱男になる。
        箱男を空気銃で打った人は、その後箱男になった。箱男という存在を意識したらすでに、その人は箱男に捉えられているのである。

        普段の何気ない日常に、箱男という異物を投入してみるといくつかの疑問が沸き上がってくる。
        「覗く」とはどういうことだろう。「覗かれる」こととどう違うんだろう。同じことではないのか?
        「存在する」とはどういうことだろう。人は箱をかぶることで他人の認識外のものとなる。
        箱をかぶれば自分でなくなり、人でなくなりただの箱(箱男)となる。じゃあ存在って何?

        考えれば考えるほど、分からなくなっていくから、もう箱をかぶって箱男になるしかないか・・・。
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        2017/09/29 by Reo-1971

    • 他2人がレビュー登録、 14人が本棚登録しています
      カンガル-・ノ-ト
      カテゴリー:小説、物語
      4.7
      いいね!
      • 目を覚ましたら、脛にかいわれ大根が自生していた。突拍子もない内容の出だしだが、いきなり引き込まれた。普通は笑いとばすことなど到底出来ない、不治の病に侵される瞬間を安部公房という人は、どうしてこうもユーモラスに書けてしまうのだろう。

        奇病に見舞われる前の主人公は文房具メーカーに勤める会社員だった。表題の『カンガルー・ノート』は主人公が提案した新商品の名前に由来する。なぜカンガルーに着目したのかというと、カンガルーに代表される有袋類の「みじめさ」に共感したからだという。真獣類(有胎盤類)に比べると生物として弱く、固体の特徴もはっきりしない。どうやら弱き者に親近感と愛着をもっていたようである。

        『カンガルー・ノート』は著者の遺作として位置づけられており、おそらく病床で書かれたものだろう。通常は、夢はすぐに忘れてしまって現実をよく覚えているものだが、本作の場合は反転している。まるで夢こそが生活の本質であるかのように、不治の病に対する無力感を吹き飛ばすかのように、次から次に夢が語られる。

        夢の中の旅はとりとめがないけれど、おもしろい。そもそもアトラス社製のベッドが自走する時点で、ベッドの域を超えている。百歩ゆずって空の点滴袋が雄の烏賊になったとしても、呼応した雌の烏賊に追いかけられる場面はシュールすぎた(ちなみにこの一対の烏賊は、百メートル十五秒以内の速度で接触すると爆発する!)。
        他には三途の川で母と再会する場面も印象的だった。トンボ眼鏡の看護婦の立ち回りが良い。ベッドを占領した主人公の母と対峙して「着古した盲縞と、糊のきいた白のショートスカート、勝負はとうについている」。トンボ眼鏡の魅力が伝わってくる、お気に入りの一文だ。

        壁一枚くらいの隔たりは感じるにせよ極めてリアルな夢の終着点は、分かってはいたけどぞっとした。すべての音が無くなって、ぽつんと取り残されたような気がした。
        >> 続きを読む

        2018/02/12 by カレル橋

    • 他1人がレビュー登録、 8人が本棚登録しています
      第四間氷期
      カテゴリー:小説、物語
      3.3
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      • 科学の進歩は人間の営みを変えてしまうのか?!というSF。
        水棲人とか出て、挿絵がシュール。
        物語が収集つかずじまいで、万人ウケは100%ないけど、
        機械の明確さへの恐怖とか、
        機会に人間が使われる構図への批判性にはハッとさせられる。
        >> 続きを読む

        2016/07/17 by botan

    • 6人が本棚登録しています
      燃えつきた地図
      カテゴリー:小説、物語
      4.3
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      • 『砂の女』の主人公は失踪する男だったが、本作の主人公は失踪者の行方を追う探偵だ。追われる側と、追う側。しかし両者はいつ立場が変わるとも分からない、メビウスの輪でつながっているような、境界線のはっきりしない関係である。
        本作において失踪とは、都市からの逃亡を意味する。それ自体は法律に違反しているわけではないから、失踪したからといって犯罪にはならない。しかし大抵の場合は誰かによって探されて、もし見つかれば問答無用で連れ戻されることになるだろう。

        探偵は、あとから軸の足された形跡があるマッチ箱くらいしか手がかりがないところから、根室氏の人物像や周囲との関係などについて調査をすすめていく。
        しかし調査のなかで明らかになってくるのは根室氏の居所というよりはむしろ、登場人物だれもが抱えている、都市に閉じ込められたことによる孤独と失われたアイデンティティである。たとえばタクシー運転手の富山氏の語りの部分はそれが分かりやすく、そして面白い。
        「(タクシー運転手について)どんな混雑の中にいても、いつも自分一人、そういうのが性に合っている者には、いい職業です。しかし、先の見込みがあるわけじゃなし、年中他人の目的のためにだけ走りつづけていて、自分は一体どこに行きつくのか、ふっと心細くなることがありますね。(中略)毎日、何千、何万という人間をかきわけて走っていながら、まるで人っ子ひとりいない砂漠を走りつづけて来たみたいに、えらく人恋しくなることがあるほどですよ」

        都市は共同体と異なり、周りは他人だらけだ。しかも仕事仲間や趣味仲間など、利害関係に応じてお互い異なる顔を使い分けていることが多いから、自分は誰のことも知らないし、誰も自分のことを知らないという感覚になる。毎日何万人もの人とすれ違っていながら、自分が何者なのかは誰も教えてくれないのだ。
        都市が誕生し、住宅が増えるうちは繁盛するが、やがて都市ガスにとって代わられて姿を消すプロパン屋のように、都市生活者もまた、都市によって生まれ、やがて姿を消す存在なのかもしれない。
        >> 続きを読む

        2017/04/22 by カレル橋

    • 4人が本棚登録しています
      方舟さくら丸
      カテゴリー:小説、物語
      5.0
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      • 安部公房の最高傑作であると同時に、現代文学の金字塔。こういう文章を書けるようになりたいです。 >> 続きを読む

        2016/05/12 by とーます

      • コメント 4件
    • 4人が本棚登録しています
      〈霊媒の話より〉題未定 安部公房初期短編集
      カテゴリー:小説、物語
      3.0
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      • 安部公房の初期短篇集。「題未定」は著者自身がそう記していた物語で「霊媒の話より」と副題がある。
        満州引き揚げ者だっか彼が、戦中の若い頃から書き始め、ずっと温め続け、所持し続けて未発表に終わった作品か。

        前衛作家と呼ぶ時代は過ぎて、今や古典として読むべし、そんな評が聞こえてくる。
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        2014/12/21 by junyo

      • コメント 2件
    • 1人が本棚登録しています
      榎本武揚
      カテゴリー:小説、物語
      4.5
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      • 幕末ものの歴史小説を貪り読んでいますが、今回読了したのは、安部公房の「榎本武揚」

        「壁」でこんなにも凄い小説があったのかと衝撃を受けて以来、「砂の女」「他人の顔」「燃えつきた地図」「箱男」などの安部作品を次々と遍歴した私としては、この本のページを開く前から、一癖も二癖もある作家・安部公房が、歴史上、忠義の臣、共和主義を志した軍人という賛美もあれば、幕府、明治政府の双方に仕えた転向者という烙印も押された、毀誉褒貶の激しく、奇っ怪で捉えどころのない榎本武揚を、どう料理するのかと心躍ったものです。

        しかも、安部公房の歴史小説ときている。安部公房と歴史小説という組み合わせは、ミスマッチの妙という感じがして、実に興味深いと思いましたね。

        「五年ほどまえ、ある放送局の依頼で北海道旅行をしたさいのことである。釧路から汽車で二時間ばかりの厚岸という町で、面白い話を聞きこんだ」という書き出しから、いつもの安部公房の作品とは手触りが違うのだ。どことなく、ルポルタージュという趣なのだ。

        文中で彼は、旅館の主人に案内されて、榎本兵の残党が生き延びていたという証拠を確認に出掛けているほどだ。そうか、安部さんも、榎本武揚と真正面から向かい合おうという魂胆なのだ。少々意外なプロローグではあったが、同時に今回は毎度お馴染みの、救いようのない安部ワールドとは縁が切れるとホッとしたりもしたものだ。

        ところが、旅館の主人の福地伸六と、私=安部との関係が次第に怪しくなってくるのだ。東京に帰った私の元に、突然、届けられた福地からの小包。中身は数百ページもありそうな「五人組結成の顛末」という原稿用紙の束。これはどうやら、榎本軍兵の書き記したものらしい。さらに、小包に添えられた手紙で明かされる、福地が元憲兵だったという陰々たる半生と苦悩。

        これはどうも怪しい。ノンフィクションなんかではなく、あのいつもの安部公房の沼地ではないのか。一度はまり込んだら、どうあがいても抜け出せない"不条理の湿地帯"ではないのか。それでいて、安部公房ファンの身としては、たまらなく胸苦しい甘美な薫りが漂ってくるんですね。

        しかし、第二章から、また様子が異なってくる。劇中劇のような形で「五人組結成の顛末」が進行し、やがて、これの主人公・浅井十三郎が大きくフューチャーされるのだ。往時の新聞や書物の引用をしばしば文中に配して、時代の目や耳の捉えた世相を伝えている点も見逃せない。そして、全篇を通して流れる、安部公房独特のユーモア感覚も読書のスピードを加速させてくれる。

        この浅井は、元新選組隊士で、土方歳三に師事していたという設定になっている。「五人組結成の顛末」は、五稜郭に到る幕府の残軍の忠実な敗走記であり、榎本武揚を変節漢と決めつけ、獄中の榎本を誅殺しようとする浅井の行動録でもあるのだ。また、福地の変節を正当化する道具としての意味づけもあるのだと思う。

        もっとも、文中で浅井が罵倒する榎本は、後に明治政府の高官として活躍する榎本だけではない。幕府軍の総領でありながら、新政府側の勝利を呼び込もうとしているとしか思えない行動をとる榎本だ。

        安部公房は「五人組結成の顛末」を通じて、つまり浅井の口を借りて、榎本を相当、胡散臭い人物として描き切っていると思う。ついでに大鳥圭介も、プチ榎本として切り捨てられている。

        それは、どうやら転向者と呼ばれる裏切り者に対する憤りではなく、ヨウとして得体の知れない榎本武揚に対する安部公房なりのアプローチなのかも知れません。

        しかし、読み終えて、よく考えてみると、この作品で描かれる口八丁手八丁のご都合主義者の榎本だけではない。幕府政治の限界を予見していた先取りの人であり、オランダ留学で身につけた博識を、新しい日本で活用しようとする篤志家であり、土方歳三らの硬直した考えを揶揄する、新時代の思想家の顔なのだ。

        どうやら、安部公房の描きたかった榎本武揚像の真意は、ここにあったのではないかと思いますね。


        >> 続きを読む

        2018/03/25 by dreamer

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【安部公房】(アベコウボウ) | 読書ログ - 読書ファンが集まる読書レビューサイト(著者,作家,作者)

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