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芥川龍之介

著者情報
著者名:芥川龍之介
あくたがわりゅうのすけ
アクタガワリュウノスケ
生年~没年:1892~1927

この著者の本を読んでいる会員ランキング

このランキングは1日1回更新されます。
      羅生門・鼻
      カテゴリー:小説、物語
      4.1
      いいね! sayaka chiaki emi mariak1994
      • 50頁近くある注釈により一見難しそうに見えますが、8編のほとんどが読みやすく感じました。

        *羅生門
        8編中、一番心に残った作品。
        不気味で恐ろしいと感じる情景描写ですが、何度も読み返していました。
        この情景と、下人の心の変化がとても合っています。
        ラスト一文がまた秀逸。
        注釈を読んで、初出稿と第一短編集稿は結びが全く違っていて驚きました。

        *鼻
        禅智内供の鼻は上唇の上から顎の下まで下がっている。
        こちらも有名な話ですね。
        「羅生門」同様、内供や周りの人たちの心の動きを客観的に追うのはおもしろくもあるけれど、自分を振り返るとドキっとさせられます。
        そんな身近な感情がたくさん詰め込まれています。

        *芋粥
        風采の甚だ揚がらない、多くの侍たちに愚弄されている男は、「芋粥に飽きたい」という欲望のみを大切に持ち続けてきました。
        そんな彼が、遠路はるばる命の危険に怯えながら辿り着いた先で、たっぷりと芋粥が振舞われ・・・
        「達せられないからこそ価値がある」人間の心理なんてそんなものですよね。
        その繰り返しで、人は豊かな生活を求め続けているのではないでしょうか。

        *運
        「物質的な幸福と精神的な幸福とは、どちらが真の幸福であるか」
        精神的な幸せ!ときれいごとは言いません(^^ゞ物質的な豊かさもないと心は満たされませんよね。
        少しゆとりのある生活ができる程の財力がベストだと思っています。
        どちらがなくても不平不満ばかりとなりそうです。

        *袈裟と盛遠
        盛遠の独白、袈裟の独白の二部構成。
        盛遠は袈裟を凌辱し、夫を殺そうではないかと囁く。
        愛憎、情欲、贖罪、蔑み、浅ましさ・・・・人間の醜い感情が嫌というほど溢れてきます。
        独白前の冒頭の文章がそれぞれを表しているようで、とても好み。

        *邪宗門(未完)
        若殿vs摩利信乃法師。
        ここからが読みたいのに・・・というところで終わってとても残念。

        *好色
        平貞文(平中)がいくら文を送っても、侍従は相手にしない。
        思いつめた平中が取った行動は・・・

        芥川さん、こんな話も書かれているのですね。
        邪宗門の風呂敷を広げすぎた未完の作といい、なんだか笑えます。
        侍従の容姿が序盤と変化しているのがおもしろい。
        恋は盲目、少々のことは美化してしまうものなのですね。

        *俊寛
        平安末期の僧。鬼界ヶ島に配流。
        倉田百三、菊池寛ver.と比較してみたい。
        >> 続きを読む

        2017/05/15 by あすか

    • 他17人がレビュー登録、 38人が本棚登録しています
      蜘蛛の糸
      カテゴリー:小説、物語
      3.9
      いいね!
      •  現在、芥川龍之介などの文豪が登場するアニメが放送されているので、これを期にまだ読んだことのない作品をちょこちょこ読んでみようと思い読み始めました。
         この本には数ページから十数ページの短編が10本収録されています。短いのでどれも読みやすいです、しかし内容は心の底に隠れている本心に語りかけくるような内容だと思います。
         最も印象に残ったお話は「蜘蛛の糸」です。私は蜘蛛の糸をNHKの人形劇で初めて知りました。幼かった私には血の池地獄で罪人たちがもがいている場面にはおどろおどろしく、恐怖を感じたことを覚えています。現在ではそのような恐怖を感じることなく、別の箇所に集中することができました。
         このお話で特に考えさせられる場面はカンダタが他の罪人が登ってきた際に彼らを振り落とそうとしていた場面です。もしも、私がカンダタの立場だったらどのように対応しているのでしょうか。余裕のある今ならば「全員が助かるように協力して登るよ」と言うことができます。しかし、切羽詰まって、いち早くこの場から逃げたいと思っているときに他人の事を考える余裕が私にはあるのでしょうか?飛行機事故などでも我先にと逃げようとするあまりかえって混雑を招き自分の脱出が遅れてしまうという話を聞いたことがあります。この話では利己的な行動を取ると最終的には自分の首を絞めることになるということを伝えたかったのではないかと思います。
        >> 続きを読む

        2016/11/02 by taka0316

    • 他3人がレビュー登録、 23人が本棚登録しています
      羅生門
      カテゴリー:小説、物語
      4.3
      いいね!
      • 主人から暇を出されて行きどころがなくなった一人の下人が、思い屈して羅生門の楼上に登ります。そこで彼が見たものは、火をともして死人の髪の毛を抜いている老婆でした。彼は正義感にかられ、老婆を組み伏せます----。

        芥川龍之介の「羅生門」を読み終えて、様々な事が頭の中へ去来し、多くの事を考えさせられました。そして、言うまでもなく、芥川独自の見事な文体にも魅了されました。

        小説とは何かと聞かれたら、私は"文体"だと答えるようにしています。そして、小説の魅力とは、言うまでもなく、その作家の"文体"を味わう事だと思っています。(もちろん小説の内容も含めての話ですが)

        そのような観点から私が魅了される作家は、純文学では、芥川龍之介、谷崎潤一郎、三島由紀夫、大岡昇平、吉行淳之介であり、大衆文学では、五木寛之、司馬遼太郎、三好徹、連城三紀彦、宮城谷昌光なのかも知れません。

        「羅生門」は、この小説に登場してくる老婆の論理、そしてそれを聞いた下人の心の動きを通して、"善悪の観念やエゴイズムの問題"が私の胸を衝き動かし、激しく波立たせ、一心不乱に惹かれて読み進めていきました。

        死人が生前、生きるためにやむをえず悪事を働いていたように、生きるためにするなら何事も許されるはずだという老婆の主張を聞いた下人は、「では、おれが引剥をしようと恨むまいな。おれもそうしなければ、飢え死にをする体なのだ」と、盗人になる決意を固め、老婆の衣服を剝ぎとって去ります。

        そして、下人が去った後にはただ、真っ黒な夜があるばかりで、下人の行方は誰も知らない----。

        ここで、老婆が主張していた事を考えてみると、老婆は「なるほどな、死人の髪の毛を抜くということは、なんぼう悪いことかもしれぬ」と、自分のしていることが、人間として許されぬ"悪"であると、いったんは認めますが、すぐ「じゃが」と否定していくのです。

        つまり、老婆の主張は、①死人たちは、髪の毛を抜かれても文句を言えぬぐらい、生前悪事を働いていた。②しかし、彼らはそうしなければ飢え死にをしたのだから、しかたのない行為で、悪いことではない。③同じように、自分も生きるためにしかたなくしていることだから、悪いことではない。④だから、そのしかたなさをよく知っていた死人は、自分のすることを許してくれるはずである。

        要するに、生きるためにすることであるならば、何をしても許されるはずだという、非常に自己本位で、手前勝手な"エゴイスティックな論理"なのです。

        そして、この老婆の話を聞いた下人の心の中では、ある変化が起こってくるのです。それは、この老婆を"正義の立場"から懲らしめてやろうという事からなのかというと、そうではなく、そのような正義感とは全く逆の、自分も生きるために盗人になってやろうという決心なのだと思います。

        もともと下人は、死人の髪の毛を抜いている老婆を見つけ、捉えようとした時、その髪の毛が、一本ずつ抜けるのに従って、下人の心からは、恐怖というものが少しずつ消えていったのです。そうして、それと同時に、この老婆に対する激しい憎悪が、少しずつ動いてきて----というより、むしろ、"あらゆる悪に対する反感"が、一分ごとに強さを増してきたのではないかと思うのです。

        この時の下人の心理を私なりに分析してみると(もう芥川の影響をもろに受けていますが)、"老婆に対する激しい憎悪"から始まって、"あらゆる悪に対する反感"にまで気持ちをエスカレートさせていて、いわば一応、"正義感"に燃えていたと思います。

        しかし、老婆が語る、"生きるためには何をしてもやむをえない"という論理に出会うと、くるりと"悪の肯定"に翻ってしまう----。

        つまり、このように人間が生きるために持っているところの、あるいは持たざるをえないところの"エゴイズム"によって、"善や悪"が簡単に逆転させられてしまうのです。

        生きるために何をしてもかまわない、という下人の心は、恐らく私を含む多くの現代人がひとりひとり心の中に根源的に持っている本質なのかも知れません。

        そういう"エゴイズム"を、我々はどのように扱い、克服していったらよいのか? 作者の芥川龍之介は、この人間性に対して、彼一流の「枯野抄」でも描いていたように、顕微鏡で人間の心の中を"シニカルで怜悧な眼"で見つめ、分析しながらも、"最終的な救いや解決"は示していないのです----。

        ことに、「----外には、ただ、黒洞々たる夜があるばかりである。下人の行方は、だれも知らない」という箇所によくそれが表現されていると思います。

        この「黒洞々たる」真っ暗な夜の闇の広がりを見たのは、下人によって衣服を奪われた老婆であり、彼女の眼に映ったのは、大変暗い闇の世界ですが、それは同時に作者の芥川の眼に映る、"現実の世の中の暗さ"をも暗示しているのだと思います。

        更に、「下人の行方は、だれも知らない」というところは、人間性に対する芥川の"暗い絶望感"も感じられるのです。

        もともと、この箇所は、「下人は、既に、雨を冒して、京都の町へ強盗を働きに急ぎつつあった」となっていたそうで、しかし、この表現では、"悪の実行"に踏み出した下人のことを述べたにすぎないことになってしまうということで、それを、「下人の行方は、だれも知らない」というように変更したそうです。

        これも私なりに解釈すると、多分、このようにつき離してしまうことによって、下人、ひいては人間全体に対する作者芥川の"絶望感の深さ"を、より一層鮮やかに、そして余韻を持たせるために変更したのではないかと思います。
        >> 続きを読む

        2016/10/31 by dreamer

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      羅生門
      カテゴリー:小説、物語
      4.5
      いいね!
      • 【読了日不明】

        どの話も鉄板の面白さです。
        なんどでも読みたい。

        自分は 「鼻」 が好きです。

        坊主に板を持たせて鼻を上げさせてるのを想像するだけで
        吹き出しそうです。

        神様みたいな作者の本を評価するのも気が引けるなぁ
        >> 続きを読む

        2013/12/14 by ころさん

      • コメント 2件
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      河童 他二篇
      カテゴリー:小説、物語
      5.0
      いいね!
      • "機知と風刺と諧謔と冷笑を華麗に駆使する芥川龍之介の晩年の問題作、河童"

        芥川龍之介の小説は、意識的に計算された緻密な構成と、効果的に選択された独自の文体を持つ作家で、どの作品を読んでも、すみずみまでその効果を計算され尽くした、知的な操作による創作の方法は、初期であろうと晩年であろうと、終始一貫していたと思います。

        舞台と人物との選択は、時間的空間的に奔放自在を極めています。古今を問わず、東西に渡っており、王朝期あり、江戸期あり、開化期あり、大石内蔵之助あり、滝沢馬琴あり、松尾芭蕉あり、鼠小僧次郎吉あり、スサノオノミコトあり、ツルゲーネフあり、トルストイあり、盗人あり、殺人者あり、姫君あり、----と多種多様です。

        文体もまた、客観描写体、独白体、書簡体、談話体、問答体など、ありとあらゆる種類を駆使し、あるいは、欧文調、漢文調、南蛮語調、翻訳調、談話調など、時により、場合に応じて、正に変幻自在の妙を尽くしながら、しかも、歴然とした芥川独自の文体を創り出しています。しかも、これらの諸作品で、機知と風刺と諧謔と冷笑の効果を自在に駆使しているのです。

        文壇的な処女作と言われている「鼻」を同人雑誌に発表した、芥川龍之介は、夏目漱石から次のような手紙をもらいました。

        「落着きがあって、ふざけていなくて、自然そのままの可笑味がおっとり出ている所に上品な趣きがあります。それから材料が非常に新しいのが目につきます。文章が要領を得てよく整っています。敬服しました。ああいうものを是から二三十並べてごらんなさい。文壇で類のない作家になれます」と激賞されている有名なエピソードです。

        この「鼻」という短編小説の材料は、宇治拾遺物語から採ったもので、芥川はこのように昔の物語の中から、忘れ去られた笑いを見つけ出して、そこに近代的解釈を施して、シニカルでアイロニーに満ちた短編に仕立て上げるという手法を得意とした作家だと思います。

        そして、この「鼻」の作者が、晩年に「河童」を書いたのは偶然ではないと思います。芥川はこの「河童」を完成した5カ月後に自殺しています。

        「河童」という小説は、精神病院の若い患者の「僕」が語るという形になっています。上高地の梓川の谷で、僕は偶然一匹の河童に出会います。それを追いかけているうちに、熊笹の根元の穴から、河童の国へ落ち込んでしまいます。僕は特別な保護のもとに、住宅を与えられ、呑気に遊んで暮らします。友達も出来ました。だが、河童には河童特有の色々な事があり、お産をする時、父親は母親の生殖器に口をつけて、「お前はこの世に生れてくるかどうか、よく考えて返事をしろ」と大声で聞きます。お腹の中の子供はこう答えます。「僕は生れたくありません。第一僕には悪い遺伝があるし、それに河童的存在を肯定しませんから」と。

        すると、お産婆さんが何かの液体を注射します。途端に、母親のお腹はへたへたと凹んでしまいます。また、河童の恋愛は、雌が雄を追いかけて抱き着くといったふうのものです。本を作るには、機械の漏斗形の口へ、紙とインクと驢馬の脳髄の粉末を入れるだけでいいようになっています。会社で首切りがあると、政府はその職工を殺して食肉にすることになっています。餓死したり、自殺したりする手間を省いてやるためです。そうこうしているうちに、僕は河童の国に厭きて、人間界に戻りますが、事業に失敗して、河童の国へ帰りたくなり、中央線の汽車に乗ろうとするところを巡査に捕まって、この精神病院へ入れられてしまった----というような内容の物語になっています。

        この「河童」という芥川の晩年の作品は、河童の国に仮託して、芥川の人間観、人生観を赤裸々に、全面的に繰り広げて見せたものです。人生、社会、宗教、芸術、思想、文化一般を批判したばかりでなく、自分の死後の、諸々の関心事----死後の名声の事、全集の事、女性の友人の事、遺児たちの事まで、機知と諧謔まじりにシニカルに語っています。

        この執筆時に、すでに自殺を決意していたであろう自分の"風刺的な戯画"なのだろうと推察出来ます。

        この「河童」という作品には、自殺を決意している芥川の痛ましいまでの"自己分析と自己冷笑"が込められているように思います。

        芥川のこの晩年の状況は、ジョナサン・スイフトの「ガリバー旅行記」という作品が、最終的には、自分をも含めた人間全体に対する嘲笑弾劾にまで突き進んだのに共通するものを強く感じました。
        >> 続きを読む

        2016/03/30 by dreamer

    • 1人が本棚登録しています
      或日の大石内蔵之助・枯野抄 他十二篇
      カテゴリー:小説、物語
      5.0
      いいね!
      • "人間の内面に潜んだエゴイズムやごまかしなどを繊細かつシニカルに描いた芥川龍之介の歴史小説・枯野抄"

        この今回読了した「枯野抄」は、芥川龍之介の歴史小説の中の"江戸物"の一作ですが、芥川との私の出会いは、自意識に目覚め、自分もその一存在である"人間"というものに追求の目を向け始める青春時代に遡りますが、その時代はまた、文学というものへの"開眼"にも繋がる時期だったと思います。

        私を含め芥川の文学から文学の世界に入っていく人が多いのは、芥川の文学というものが、自意識に目覚め、人間の本性に追求の目を向け始める青春期の人々に十分に応え得る内容を含む文学だからだと思います。その意味からも芥川の小説は、青春の文学だと言えると思います。

        芥川の自分の歴史小説における人間の描き方について、自著の「澄江堂雑記」の中で、「今、僕があるテーマをとらえてそれを小説に書くとする。そうしてそのテーマを芸術的に最も力強く表現するためには、ある異常な事件が必要になるとする。その場合、その異常な事件なるものは、異常なだけそれだけ、今日この日本に起こったこととしては書きこなしにくい。----ところで、この困難をのぞく手段には、----昔か、日本以外の土地、あるいは、昔・日本以外の土地から起こったこととするよりほかはない。僕の昔から材料をとった小説はたいていこの必要に迫られて、不自然の障害を避けるために舞台を昔に求めたのである」と書いています。

        こうしてみると、芥川にあっては、歴史小説に描き出される人間像というものは、彼自身の見た現代人の姿そのものに他ならないと思います。

        つまり、芥川は現代人の複雑な心の動きとその姿を、歴史上の"昔"に舞台を借りて鋭く、シニカルに描き、人間の内面に潜んだエゴイズムやごまかしなどを容赦なく取り上げて、それに冷笑を浴びせるように読者の前に提示してみせる----というやり方が、芥川の最も得意とする"歴史小説の手法"であると言えます。

        そこで、今回読了した「枯野抄」は、松尾芭蕉の臨終の床を取り巻く門人たちの複雑な心理を、いかにも芥川らしい鋭く、シニカルな感覚で抉り出した短編小説で、この蕉門の弟子たちの師の死を見送る態度は、そのまま芥川が自らも含む夏目漱石門下生たちの師の死を見送る姿を投影させて描いているのは明らかです。

        そして、芥川の歴史に題材を選び、背景を借りてくるとしても、芥川の筆から生まれてきた主人公たちは、その舞台となった歴史的な過去の時間には住んでおらず、その時代から飛翔し、現代人と変わらない心で自分の心の内面を見つめていて、芥川はその心の内面をまるで顕微鏡でのぞく外科医のような鋭い視線で精細に描いてみせるのです。

        この小説の主人公である芭蕉の弟子の其角は、師の芭蕉に今生の別れを告げようとしますが、師の醜い死相に烈しい嫌悪感を覚えます。現実の醜い全ての事に対してかねてより持っていた反感を、この偶然の契機により師の病躯の上に洩らしたのか? "生"の享受者たる其角が、生を脅威する"死"を自然の威嚇と感じたのか? 師との今生の別れに際して何の哀しみも覚えなかった其角は、これではいけないと自責の念を感じながらも、その強烈な嫌悪感は否定しがたかった----と芥川は容赦のない筆致で描きます。

        師の末期の水をとるという場面を通して、人間の内側に姿を隠した、社会通念の枠に収まりきらない、自己中心的なエゴイズムの微妙な心の動きを芥川は、繊細でシニカルに描きつくします。

        この「枯野抄」で描かれた芭蕉の弟子の其角を初め、小説に登場する芭蕉の弟子たちの師の臨終を見送る姿勢----それは、"予測された限りない悲しみ"とは全く別個の、"様々な思惑に基づいた自己中心の現実的感覚"に彩られたものでしたが、そこには、歴史的な一事件の再現というよりは、現代に生きる現代人というものの内面世界に、明晰な理性をもって、様々な角度から光を照射しようとする情熱と誇りに満ちた、若々しい芥川という作家の姿が生々しく投影されているように感じます。

        それはつまり、我々人間の常識的な精神の内側に姿を隠した、自己中心的に偏した異常なエゴイズムの微妙な在り様----芥川は、それを人間の本質的な真実の姿として描ききろうとしたのだと思います。
        >> 続きを読む

        2016/03/17 by dreamer

    • 1人が本棚登録しています
      BUNGO 文豪短篇傑作選
      カテゴリー:小説、物語
      4.0
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      •  いわゆる文豪たちの作品に一気に触れられるので、教科書以外で真面目に読んだことがないという人でも、初めに手に取るのにいいと思う。だいたい、短篇でも1つ読めば、自分が合う作家、もっと読みたいと思う作家はなんとなくピンとくるものなので、文豪のどこから手を付ければいいかわからない、という時は、ひとまず、騙されたと思って本書を開いてみては。


         個人的にはやはり、谷崎さん好きなので、短篇ながら濃い印象を受けました。フェチですね。そして本当、谷崎さんの描く女性の魅力と言ったら。彼は本当女性好きだったんだろうな。いつも谷崎作品を読むと、女で良かった、もっと女を磨こうって思います。
         坂口安吾さんも前から合うと思っていて、やっぱり好きでした。あとは太宰さん。
         梶井基次郎さんは読んだはずだけど改めて読むとこの人の感性もすっごくよくわかるな、と思いました。存じ上げなかったけれど好きだったのが、岡本かの子さん。他の著作も読んでみようと思います。
        >> 続きを読む

        2017/05/25 by 理子*

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      羅生門・鼻・芋粥 改編
      カテゴリー:小説、物語
      4.0
      いいね!
      • 「手巾」
        悲しみをこんな風に表現出来るものなのかと、痛烈な印象を受けた。
        寂しいとか悲しいとか少しも言ってないのに伝わる。
        そういうのが文学だなと個人的には思います。
        >> 続きを読む

        2016/06/28 by one

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      藪の中
      カテゴリー:小説、物語
      4.5
      いいね!
      • 芥川龍之介の傑作の一つです。
        真相は「藪の中」の語源にもなった作品ですね。
        短編で読みやすいので、ぜひ読んでみてほしいです。

        ある事件に関して、検非違使が関係者から証言を聞きます。
        しかし、人によって証言が異なり、真実が分からなくなっています。

        認識の違いや見栄から、人によって事実は様々な姿となる、
        ということを巧みに表現した作品だと思います。

        誰の証言が一番信用できるのか、
        真相は何なのかを考えながら読み進めると面白いでしょう。
        >> 続きを読む

        2015/05/20 by honey_cake

      • コメント 3件
    • 3人が本棚登録しています
      河童
      カテゴリー:小説、物語
      4.0
      いいね!
      • 「河童」「桃太郎」「雛」「点鬼簿」「蜃気楼」「歯車」「或阿呆の一生」「或旧友へ送る書記」の8編収録。

        芥川の晩年の作品を集めた作品集。ご存じのとおりこれらの作品を書いた後、芥川は35歳で自殺をする。

        実は、私は芥川が大好きなのです(笑)そして、もちろん初期の「蜘蛛の糸」や代表作「羅生門」などもよいですが、ファンとしては、悪趣味だと言われようと(笑)たとえ不出来であったとしても、これらのような晩年の作品の圧倒的な存在感にノックアウトされるのです(笑)

        以前、「河童」が学校の読書感想文の課題図書になっていてビックリしたことを覚えている。「河童」をはじめこれらの作品は芥川が精神的にかなり追い詰められている状態で書かれているし、「点鬼簿」は彼の実母、および複雑な家庭事情を知っているととても考え深く、いたたまれない気持ちになる。「歯車」は、研ぎ澄まされた神経が痛々しいほどだし、「或阿呆の一生」に関しては、死を前にした最後の一閃という気がして、まさに雷のよう(笑)

        決して一般向けではないですが(笑)ファンとしては涙なしでは読めない一冊
        >> 続きを読む

        2015/07/07 by ao-ao

      • コメント 4件
    • 2人が本棚登録しています
      河童
      カテゴリー:小説、物語
      4.0
      いいね!
      • ディレッタント作家の悪意のかたまり(「河童」は著者と交流のあった作家たちをモデルにしている)と、ディレッタント作家が阿呆に気づき、「現実」の地肌に触れるその質感を描き出している。 >> 続きを読む

        2015/10/14 by aaa

    • 5人が本棚登録しています
      芥川竜之介全集
      カテゴリー:作品集
      4.0
      いいね!
      • 『芥川龍之介全集1』<ちくま文庫> 読了です。

        明記されていませんが、発表順に収録されているようです。

        この時期の作品は、ちょっと書き過ぎかな、と思われるものが多く見受けられました。
        もう少し判断や解釈を読者に委ねてもいいのかな、と。

        とはいえ、すでに「羅生門」「鼻」「芋粥」「手巾」「偸盗」といった傑作がこの時期に発表されています。
        芥川龍之介の早熟さが伺えます。
        >> 続きを読む

        2015/12/22 by IKUNO

    • 2人が本棚登録しています
      芥川竜之介全集
      カテゴリー:作品集
      5.0
      いいね!
      • 『芥川龍之介全集 2』<ちくま文庫> 読了です。

        第一巻ではやや「書き過ぎ」のきらいがありましたが、第二巻では明示するのではなく、文脈の中で読者が自身の考えを持てるようにうまく書かれてあるように思われました。

        「或日の大石内蔵助」や「戯作三昧」のように、人の心の機微を描き出している秀作が沢山収録されています。
        そういう作品と比べると、有名ながら「蜘蛛の糸」はやや劣るように思われました。

        有名どころ以外でも、「毛利先生」「あの頃の自分の事」「開化の良人」などのように、「ああ、ここまで書ける力がついてきたんだな」と思わせる作品もありました。

        しかし、何といっても圧巻は「地獄変」ですね!

        これからの芥川龍之介の展開が楽しみです。
        >> 続きを読む

        2016/04/02 by IKUNO

      • コメント 4件
    • 1人が本棚登録しています
      芥川竜之介全集
      カテゴリー:作品集
      5.0
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      • 『芥川龍之介全集3』<ちくま文庫> 読了です。

        「蜜柑」を除いてはあまり有名ではない作品ばかりですが(私が無知なだけかもしれませんが)、「沼地」「疑惑「路上」(完成しなかったのが惜しい)等々、傑作も数多く収録されています。

        いろんなタイプの作品を描き分ける芥川龍之介の天才ぶりを存分に堪能できます。
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        2016/04/17 by IKUNO

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      芥川竜之介全集
      カテゴリー:作品集
      5.0
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      • 『芥川龍之介全集4』(芥川龍之介) <ちくま文庫> 読了です。

        流石にこの時期になるとかなり熟している作品が多く、味わい深く読むことができます。
        「杜子春」や「往生絵巻」、「藪の中」といったよく知られた作品も多いですが、あまり聞かない作品の中にも、「捨児」「お律と子等と」「秋山図」等々、傑作が多いです。

        また、饗庭孝男の解説が素晴らしいです。
        なぜ我々が芥川龍之介の作品に惹きつけられるのか、よく理解することができました。
        「芸術は正に表現である」、正にその通り!
        そして、芥川龍之介が憧れていて、ついにその境地に達することのできなかったという、志賀直哉の作品を読むこともますます楽しみになってきました。
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        2016/05/10 by IKUNO

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      芥川竜之介全集
      カテゴリー:作品集
      5.0
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      • 『芥川龍之介全集6』(芥川龍之介) <ちくま文庫> 読了です。

        「ぼんやりした不安」を感じて自殺したのは有名な話ですが、「歯車」などを読むと、結構はっきりした不安のようにも思われます。

        全集6の前半では、どこか「死」を幻想的でメルヘンチックなとらえ方をしているように読めますが、「幻鶴山房」ではがらっと様相を変え、「たね子の憂鬱」からは不気味に描かれ出し、「歯車」からは死を前にただただ憂鬱ばかりが漂ってきます。

        しかし、それでも「歯車」は傑作です。
        おそらく、芥川龍之介の中で好きな作品は、と問われれば、「地獄変」派と「歯車」派に大別されるのではないでしょうか。

        「或シナリオ」と副題された「誘惑」「浅草公園」はシュルレアリスティックで一風変わった作品です。
        シュルレアリスムの好きな方はぜひ。

        これで私の「芥川龍之介全集」は終わりです。
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        2016/06/14 by IKUNO

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      芥川竜之介 1892-1927
      カテゴリー:小説、物語
      5.0
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      • 芥川龍之介の小説は何度も読んでしまう。これを選んだのは、いろいろな作品があるのと、鞄に入れても邪魔にならないから。その中の「蜜柑」情景が浮かび、もの寂しさを感じます。「魔術」これは何度読んでも引き込まれます。最後わかっているのに、毎回、あっ、なるほど、と思ってしまう。気に入ってます。 >> 続きを読む

        2015/12/10 by hana

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      蜘蛛の糸
      カテゴリー:小説、物語
      3.0
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      • 今更ですが、これまであまり近代文学に触れてこなかったことに後悔しつつ、これから少しずつでも読んでいこうと考えまして。。比較的軽く読めるものから。内容は誰もが知ってる話なので、改めて語ることもないですが、御釈迦様、意外とドライな感じだった。 >> 続きを読む

        2015/11/26 by iBiz

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      蜘蛛の糸
      カテゴリー:小説、物語
      4.0
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      • こんなショートムービーを作ってみたいな、と、刺激を受け、憧れてきたマイフェバレット小説『蜜柑』を収録している芥川の短編集を再読。

        お釈迦様の眼こそカメラだと思った。

        芥川の眼が捉えるシャープな映像美に感服!

        『蜜柑』と『トロッコ』『杜子春』は、ほんとうに映画を観ているような動きと場面展開を感じるお気に入り作品。

        清志郎の『エリーゼのために』にの角田光代さんのあとがきに通じる、三浦しおんさんのあとがきにも感銘した。
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        2015/07/30 by まきたろう

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      地獄変
      カテゴリー:小説、物語
      5.0
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      • 北村さんの《私》シリーズの流れで読んでみました。4編収められている中、「六の宮の姫君」が目当てだったのですが、「舞踏会」は初めてだったものの、他の「地獄変」「藪の中」は何度か読んでいた作品でした。
        特に「藪の中」はIpadで無料でDLして読めると言うので喜んで読んでいたら、途中で終わっていました。
        もう、消化不良になってしまったようで、探し回って最近読んだばかりでした。

        こういう風に、一冊の本から広がり始めると読書熱に歯止めが利かなくなります。
        でも、こういうことでもないと、過去の名作に触れる機会が無いと思います。いいチャンスでした。



        「地獄変」
        高名な絵師良秀が地獄絵の屏風を描くのだが、思う限りの地獄の有様を書き込んでも得心が行かなかった。眼で見たものしかかけない、牛車を燃やして見せて欲しいと言上する、聞き入れた殿様が目の前で火をつけると中にもだえ苦しむ娘が乗せられていた。呆然としたのもつかの間、良秀は筆を出して筆写し下命の「地獄変」の屏風を完成させた。
        下女の視野からの話が生々しい。

        「藪の中」
        死んでいた男を発見した木こりと、通りかかった旅法師、検非違使、殺された男に同行していた娘の母、の話。
        娘はその場から姿を消していた、母は捜して欲しいと哀願する。
        捕まった犯人と、それぞれの証言が違っている。それぞれの思惑が交差して面白い。

        「六の宮の姫君」
        父母が相次いで亡くなり、暮らしに困ってきた。売るものもなくなったころ、乳母が男を見つけてきた。姫はその男に馴染んでいたが男は父親について遠い国に行ってしまった。待っても帰らない、また窮乏の生活に戻ってしまった。羅生門の下で姿かたちも衰えているところに、9年経って男が探しに来た。男は妻も娶っていた。姫は死にぎわに念仏を唱えなさいと言う法師の声も聞こえずうわごとを言いながら死んだ。男がまた訪ねると空に細く嘆きの声がして消えていった。

        「舞踏会」
        明子は舞踏会でフランス人の海軍将校と踊った。ベランダで花火を見たとき
        ―― 明子にはなぜかその花火が、ほとんど悲しい気を起こさせるほどそれほど美しく思われた。
        「私は花火のことを考えていたのです。我々の生(ヴィ)のような花火のことを」
        しばらくして仏蘭西の海軍将校は、優しく明子の顔を見下ろしながら、教えるような口調でこういった。――

        老齢になった明子は鹿鳴館の舞踏会の話をした、一緒に踊った将校の名前はジュリアン・ヴィオだといった。それを聞いた青年は「ロティだったのですね、「お菊夫人」をかいたピエール・ロティだったのですね」
        「いえあの方の名は、ジュリアン・ヴィオとおっしゃる方です」

        これがなぜ他の3編と一緒に編集されていたのかと思ったが、あとがきで老齢になった夫人の突き放し方が、時間の経過を一足飛びに書いたことによって知れるそうだ、ちょっと解らないところがあった。高名な作家になった将校を知らなかったと言うだけだと読めたのだが、ロティとの花火の会話が芥川の人生観の一端だとしたら、少し理解できるように思う。





        しかし芥川龍之介という、まだそう遠くない過去に、生きることに様々に迷いながら書いた名作を、肉声のように読むことが出来るのは、恐ろしい気もしました。こうして過去の名作の余韻を感じると、もっとそういう中に引き込まれて迷い込みそうで、周りに積んでいる、様々のエンタメに戻らなくては、と何か夢から醒める思いでした。
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        2015/06/23 by 空耳よ

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【芥川龍之介】(アクタガワリュウノスケ) | 読書ログ - 読書ファンが集まる読書レビューサイト(著者,作家,作者)

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