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堀辰雄

著者情報
著者名:堀辰雄
ほりたつお
ホリタツオ
生年~没年:1904~1953

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このランキングは1日1回更新されます。
      風立ちぬ
      カテゴリー:小説、物語
      3.0
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      • ジブリで同じタイトルがあったっけなという程度の知識で読み始めたが、くどすぎない情景描写や人物の描写、それでいて細やかな文体で最後までするすると読むことが出来た。
        将来の夢や、小説を書いている間幸せでいてくれ、死に別れて一人になってからも節子節子と忘れるどころか思い出浸りの未練たらたらで隠居生活。節子が浮かばれない。
        忘れないということ自体は好きだけど腑抜けっぷりが気持ち悪いと感じてしまった。人それぞれ思うところはあるだろうけど私はこの主人公は嫌い。躍起になって仕事人間になるくらいだったらなあと思うけど、要するにそこまで思う程に面白い本ではあった。
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        2015/07/01 by きなこ

      • コメント 1件
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      風立ちぬ・美しい村
      カテゴリー:小説、物語
      4.0
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      • 堀辰雄の小説「風立ちぬ」を、久し振りに本棚の奥から取り出して再読しました。

        なんなんでしょう、この美しさというのは-----。
        流麗な文章といい、描かれている愛情の細やかさといい、観念の麗しさといい、何度読んでも溺れそうになります。

        アイドル映画なんかでお手軽に使われがちな軽井沢とサナトリウムという道具立てが、決して俗悪ではなく優美なんですね。

        著者の堀辰雄が生きていた時代というのは、時代の大きな転換期で、出版界の活況、ラジオ放送の開始など、文化の大衆化現象に呼応してジャズが流行ったり、モボ・モガと呼ばれる若者たちが現われたんですね。

        新しさを意味する"尖端"という言葉が流行し、モダニズム文学が興ったという時代で、こうした若者の風俗を"小説の風景"として取り入れた堀辰雄の小説は、当時としては画期的で斬新なものだったんだろうと思いますね。

        婚約した矢野綾子が結核にかかり、その時の軽井沢での闘病生活をもとに描いた小説---そう聞くと、難病ものの浅はかな悲恋小説だと思われるかもしれませんが、全然そうではないんですね。

        代名詞を多用したセンテンスの長い文章が、静かさと穏やかさと儚さを漂わせていて、もうまさに陶酔してしまいます。

        長く付き合っている恋人同士なのに、作品にセックスの匂いがしないのも、実にいいと思うんですね。
        いわば、究極の添い寝文学なのだと思います。

        この生々しくない兄妹みたいな恋、その清潔感とロマンチシズムは、比類がありません。
        そして、セックスの匂いがない代わりに、甘美な"死の匂い"が漂っているんですね。

        「私達のいくぶん死の味のする生の幸福」という言葉が、作中にあるくらいですから、死への欲望じみたエロスが静けさの源になっているのだと思います。

        そして、特にこの作品で心魅かれたのは、遠景を使った自然描写が実にうまいところなんですね。
        恋人が亡くなった後の「死のかげの谷」というラストの章で、たったひとりで雪の山小屋で暮らしている主人公が、夜、木立ちを通して自分の部屋のチラチラする明かりを、麓から見る場面があるんですね。

        「九時頃、私はその村から雪明りのした谷陰をひとりで帰って来た。そうして最後の枯木林に差しかかりながら、私はふとその道傍に雪をかぶって一塊りになっている枯藪の上に、何処からともなく、小さな光が幽かにぽつんと落ちているのに気がついた。こんなところにこんな光が、どうして射しているのだろうと訝りながら、そのどっか別荘の散らばった狭い谷じゅうを見まわして見ると、明りのついているのは、たった一軒、確かに私の小屋らしいのが、ずっとその谷の上方に認められるきりだった」-------。

        もう、鳥肌が立つほど綺麗で淋しく哀しいシーンなんですね。

        この描写の部分は多分、死で仮想した安らぎに生きた自分の、その命の形を、構造化した場面なのだと思います。
        「今あそこに俺がいる」というふうに、幻の自分自身を遠くの部屋に見ている情景だと思うんですね。

        恋人を失った後、山小屋での主人公の生活の、あからさまな悲嘆にくれるでもない、どこか淡々と過ごしている姿に、逆にグッとくるんですね。

        決して口にされることのない大切な想いが、行間から立ち上がってくるようで、これこそが小説の文章なのだと思いますね。

        >> 続きを読む

        2018/08/31 by dreamer

    • 他1人がレビュー登録、 10人が本棚登録しています
      ちくま日本文学全集
      カテゴリー:作品集
      4.0
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      • ちくま日本文学全集028。

        読み終わりました。
        この人の才能はまぎれもないです。
        「麦藁帽子」とか「燃ゆる頬」とかのひとつ間違えれば鼻持ちならないナルシスティックなテーマを、ある種の感慨をもって読ませることできるのは、この人の厳しく怜悧な創作姿勢によるものだと思われます。作品のテーマからすると不思議ですが、読んでいるうちに自然と居住まいを正させられる、そういう力がこれら作品にはあります。

        そして実体験に近いところで書かれたと思われる「風立ちぬ」の冒頭部分。
        ここではひとつの情感の典型を描ききって、さらには作品全体の象徴ともなっていて、もうこんなふうには誰も書けないだろうなと思わせるぐらい見事です。


        序曲

         それらの夏の日々、一面に薄の生い茂った草原の中で、お前が立ったまま熱心に絵を描いていると、私はいつもその傍らの一本の白樺の木陰に身を横たえていたものだった。そうして夕方になって、お前が仕事をすませて私のそばに来ると、それからしばらく私達は肩に手をかけ合ったまま、遙か彼方の、縁だけ茜色を帯びた入道雲のむくむくした塊りに覆われている地平線の方を眺めやっていたものだった。ようやく暮れようとしかけているその地平線から、反対に何物かが生まれて来つつあるかのように……

         そんな日のある午後、(それはもう秋近い日だった)私達はお前の描きかけの絵を画架に立てかけたまま、その白樺の木陰に寝そべって果物を囓じっていた。砂のような雲が空をさらさら流れていた。そのとき不意に、どこからともなく風が立った。私達の頭の上では、木の葉の間からちらっと覗いている藍色が伸びたり縮んだりした。それとほとんど同時に、草むらの中に何かがばったりと倒れる物音を私達は耳にした。それは私達がそこに置きっぱなしにしてあって絵が、画架と共に、倒れた音らしかった。すぐ立ち上がっていこうとするお前を、私は、いまの一瞬の何物をも失うまいとするかのように無理に引き留めて、私のそばから離さないでいた。お前は私のするがままにさせていた。

          風立ちぬ、いざ生きめやも。

         ふと口を衝いて出て来たそんな詩句を、私は私に靠れているお前の肩に手をかけながら、口の裡で繰り返していた。それからやっとお前は私を振りほどいて立ち上がって行った。まだよく乾いてはいなかったカンヴァスは、その間に、一めんに草の葉をこびつかせてしまっていた。それを再び画架に立て直し、パレット・ナイフでそんな草の葉を除りにくそうにしながら、
        「まあ! こんなところを、もしお父様にでも見つかったら……」
         お前は私の方をふり向いて、なんだか曖昧な微笑をした。(p150-152)

             
        この部分はさらに、作品の主題の提示であり、また重要な伏線ともなっています。
        ただやはり私は、「姥捨」や「曠野」のような物語性の強い作品を好みます。そしてこれらの作品もまた見事。「幼年時代」や「花を持てる女」などのように自己の来歴をウダウダ書くより、こんなのを書けばいいのにもったいないなあと考える私は、どうもこの作者とは縁遠いようです。
        >> 続きを読む

        2017/10/29 by Raven

    • 1人が本棚登録しています

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