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深町真理子

著者情報
著者名:深町真理子
ふかまちまりこ
フカマチマリコ
生年~没年:1931~

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このランキングは1日1回更新されます。
      アンネの日記
      4.7
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      • 「アンネの日記」はこれまでに様々な形で出版されていますが、今回はじめて「増補新訂版」を読みました。戦後にアンネの父オットーが編集した版ではカットされていた、性の話題や母親など周囲の人々への辛らつな批判などが盛り込まれています。ちなみに編集を加えていない生の日記と、将来公開することを見越してアンネ自身が日記を清書したものは「研究版」として日本でも出版されているようです。
        「増補新訂版」の登場によって、日記はナチス占領下でのユダヤ人の生活に関する貴重な資料というだけでなく、生き生きとしたひとりの少女の姿をとらえた書物としての魅力をより多く備えるようになったのではないでしょうか。

        ものを書くのには少なからず内向的なエネルギーが必要になるので、アンネは優等生で大人しめの女の子なのかなと想像していたら、常に物事の中心にいるような活発なタイプだったのが意外でした。一切の外出が許されない潜伏生活をしていたからこそ、思いがけず自分自身と向き合うことになったのかもしれません。日記は13歳の誕生日から15歳にかけて書かれています。多感な年頃なので大人に反発したり、異性を好きになったりとどんどん強い感情が押し寄せてきます。潜伏生活自体は単調で退屈なはずなのに、アンネの目を通して見ると葛藤しながら成長する様子や観察の鋭さなどに、共感したりはっとさせられたり、とにかく心が動かされました。

        生活は食べるものも寝るところもあったとはいえ、人の気配を感じさせてはならないので風邪を引いても医者を呼べず、おちおち咳やくしゃみすらできない状況でした。しかもフランク家と父の同僚ファン・ダーン家の二家族に歯科医師のデュッセルさんが加わってからは、アンネはこのお堅い性格のおじさんと同部屋で、仲間といえども色々と愚痴も言いたくなるだろうなと思いました。それでも密告されて強制収容所へ移送されてからの生活に比べると、ずっとずっと恵まれていたのだと思うといたたまれない気持ちになります。

        アンネは、ジャーナリストや作家になって周囲に大きな影響を与えるような人になりたいと夢見ていました。今こうして世界中で日記が読みつがれ、愛されつづけていることがせめてもの救いだと思います。
        >> 続きを読む

        2018/05/20 by カレル橋

    • 他4人がレビュー登録、 18人が本棚登録しています
      シャイニング
      カテゴリー:小説、物語
      4.5
      いいね!
      • 【秀逸なホラーだと思います】
         私の好きな映画の一つに、スタンリー・キューブリック監督の『シャイニング』があります。
         どうも主演のジャック・ニコルソンの『うひひ振り』ばかりがクローズ・アップされがちですが、映像がとてもすごいと思いますし、幻想シーンは圧巻で良質のホラーだと思っています。

         さて、本作は、その原作となった作品です。
         未読でしたので映画との比較も念頭に置いて読んでみました。

         物語は、主人公のジャックが、生活費を稼ぎ出すために冬季閉鎖されるホテルの管理人の職を得てきたところから始まります。
         ジャックは、アル中で癇癖持ちの中年男です。
         高校教師だったのですが、生徒とトラブルを起こし、それが原因でクビになってしまいます。
         小説なども書いており、リーダース・ダイジェストに作品が掲載されたこともあるのですが、すっかりスランプで、新しい作品が書けません。

         すさんだ生活の中、執筆途中の原稿をまだ幼い長男のダニーが汚してしまったことに激怒し、ダニーの腕を折るなどということもしでかした事がある男でした。
         妻のウィンディは離婚も考えたのですが、ジャックが酒を断ったこともあり、かろうじて踏みとどまっているという状況です。
         ジャックは、生活のため何とか収入を得なければならず、かつての飲み仲間で裕福な知人の紹介でホテル管理人の職を手に入れたのです。

         ジャックは一家揃ってホテルに移り住み、冬の間、雪のため外部と途絶されるホテルで戯曲を書き上げようと考えていました。
         確かに美しい場所に建つ老舗のホテルであり、食料もふんだんに蓄えられているので良い仕事とも思えたのです。
         確かに良い仕事ですよね~。
         外部との交通が途絶されるとしても、私もこんな仕事ならやってみたいと思います。

         ですが、ジャックの採用面接をした支配人は危惧感を抱いています。
         それは、前任の冬季管理人は、閉鎖的な生活に耐えきれず、冬の間に発狂し、同道していた家族を惨殺して自分も死ぬというとんでもない事件を引き起こしていたからです。
         支配人は、ジャックが以前アル中だったということも知っていましたので、またおかしくなるのではないかと不安で仕方がないのです。
         本当ならジャックなど雇いたくないのですが、ジャックの裕福な知人の口添えもあることからやむなく採用したのでした。

         さて、ジャックの長男のダニーには特殊な能力が備わっていました。
         それは、他人の心が読めたり、過去あったことや未来起こるであろうことが分かったりと、そんな能力です。
         ダニーはまだ5歳なので、それが特殊能力だということを完全に理解できてはいないのですが、『かがやくもの』と、その力のことを認識していました。
         つまり、『シャイニング』ですね。

         ジャックに連れられてこのオーバールックホテルに初めて来た時、紹介された料理人にダニーの力が見抜かれます。
         料理人も同じ力の持ち主だったのです。
         でも、ダニーの方が数倍強い力を持っていたのですが。
         料理人は、ダニーに217号室だけには行ってはいけないと強く忠告します。
         また、ここで恐ろしい物を見るかもしれないが、それは絵本の挿絵のようなものに過ぎず、お前に危害を加えることはない。
         目を閉じれば消えてしまうから大丈夫だとも忠告するのでした。
         そして、もし何かあったらその力で俺を呼べとも。

         ホテルという場所は、沢山の事が起きる場所です。
         特に老舗のホテルともなると、そこで様々な事件が起き、また、人が死ぬことも少なくないのです。
         ここ、オーバールックホテルも例外ではありません。
         そんな死の痕跡が、ダニーのような能力を持つ者には見えてしまうのですね。

         ホテルに移り住んだ一家は、当初は非常に順調でした。
         夫婦仲も円満に推移し、それが分かるダニーもごきげんです。
         でも、このホテルに巣喰う過去の死や様々な出来事の重圧でしょうか。
         徐々にジャックの様子がおかしくなっていきます。
         特に、物置部屋でこのホテルに関する過去の事件のスクラップブックを見つけて以降は。
         オーバールックホテルでは、過去相当ひどい事件が起きていたことが分かってしまったのです。

         断酒しているジャックは、酒を飲みたいという強い欲求にかられ、過去、酒を飲んでいた時に頻出していた、口をぬぐう癖が再発してしまい、また、二日酔いの時に常用していたエキセドリンを、頭痛を理由に噛み砕くようにして飲み始めてしまいます。
         いえ、実際に頭痛がしたのですが。

         というわけで、上巻は、徐々にジャックがおかしくなり始める辺りまでが描かれます。
         これが映画ではどうだったかというと、上巻の最初の方はあっと言う間にすっ飛ばしています。
         第一部なんてほとんど映画では触れていないんじゃないかな?
         また、小説ではここまで描くあいだに様々なエピソードが挿入されていますが、映画ではそれもすべてカットされています。
         時間の関係ももちろんあるのでしょうが、映画では、非常にシャープにジャックの狂気やダニーが見る幻覚に集中して描かれていきます。
        その手法がクリアなんですよね~。

         キングの原作も、じわじわ迫る狂気と恐怖を描いていて秀逸ですが、それをああいう映画にしたキューブリックの手腕のすごさが、原作を読んでより一層際だったように感じました。
         下巻レビューもお楽しみに。
        >> 続きを読む

        2019/07/04 by ef177

    • 他4人がレビュー登録、 9人が本棚登録しています
      シャイニング
      カテゴリー:小説、物語
      4.7
      いいね!
      • 【映画と比較してみる】
         下巻に入り、ジャックの狂気はますます進行していきます。
         それと共に、幻影? いえ、実態を持った者達がオーバールックホテルの中を徘徊しはじめます。

         装飾庭園に設えられた動物の形に刈り込まれた樹木が動き出したり、夜毎仮面舞踏会が開かれたり。
         酒が欲しくてたまらないジャックの前には、バーテンダーが酒を出してきたり。
         正体無く酔いつぶれて倒れ込んでいるジャックからは明らかに酒の臭いがします。
         あるはずのない酒が一体どこから出てきたというのでしょう。

         長年にわたり、オーバールックホテルに棲み着いてきた悪霊のような者たちが跋扈し、ジャックに取り憑き、ジャックを介してダニーやウェンディを殺害しようとします。
         そうすれば、ジャックはオーバールックホテルに棲み付く者達の仲間入りができると唆されてしまうのです。

         さて、本作は、ある意味では『幽霊屋敷』物と言っても良いでしょう。
         オーバールックホテルという『幽霊屋敷』に巣喰っている霊が人間に取り憑き、狂気に陥れていく物語と言えそうです。

         この狂気を余すところ無く描き出したのが、スタンリー・キューブリック監督による映画版シャイニングだったわけですが、原作といくつかの点で違いがあります。
         まず、映画版で私がもの凄く恐ろしく感じたシーンが原作にはありません。
         それは、ジャックはホテルで戯曲を書き上げようとしていたというのは原作にもある設定なんですが、映画では、一心不乱にタイプライターを叩くジャックの姿が映し出され、その山と積み重なっている原稿を妻のウェンディが見ると、そこには”All work and no play makes Jack a dull boy. ”という文字だけがびっしりとタイプされていたという、ジャックの狂気を描いた場面ですが、これは原作にはありません。

         この”All work and no play makes Jack a dull boy. ”は、ご存知の通り、「よく学びよく遊べ」ということわざの英語版ですが、”makes Jack a dull boy.”というところが、登場人物の名前であるジャックとひっかけられていて何とも言えない恐怖を醸し出します。

         また、狂気に陥ったジャックがダニーやウェンディを襲うシーンですが、映画版ではジャックは手斧を振り回して襲ってきます。
         原作では手斧ではなく、ロークという球戯に使う槌を振り回すとされています。
         この槌が壁に叩きつけられて、「どーん!」という音が響き渡る描写があるのですが、この点は原作の方が恐いかも知れません。

         さらには、映画版では、おそらく前任の冬季管理人が殺害したという二人の娘だと思うのですが、その亡霊が登場し、また、廊下中を川のように血が流れてくるという衝撃的なシーンがありましたが、原作にはそのようなシーンはありません。
         あの二人の女の子は恐かったんですよね~。

         そして、ラストの処理の仕方も映画と原作では異なっています。
         私は映画版の方が好きですが、どういうラストになっているのかはお読みいただいてのお楽しみということで。

         いずれにしても心理的にじわじわくる恐ろしさ満載の、良質なホラーだと思いました。
         続編も書かれているということですので、そちらも楽しみです。
        >> 続きを読む

        2019/07/05 by ef177

    • 他1人がレビュー登録、 7人が本棚登録しています
      揺りかごが落ちる
      カテゴリー:小説、物語
      4.0
      いいね!
      • "ディテールが鮮やかで一気に読まされ、読後感も爽快なサスペンス・ミステリーの傑作"

        この女流作家メアリ・H・クラークの「揺りかごが落ちる」は、彼女の「子どもたちはどこにいる」「誰かが見ている」に続く邦訳3作目の傑作サスペンス・ミステリーです。

        この小説の主人公は女性検事補のケイティ。彼女が交通事故で運び込まれた病院で、深夜に運搬される死体を見てしまいます。だが、この時の彼女は意識が朦朧としていて、現実なのか幻覚なのかはっきりしません。

        ところが、後日、自殺死体として発見されたのは、彼女がその夜に目撃した死体だった、というのが冒頭部分で、実は犯人は最初から登場しているのです。

        わからないのは動機だけなのですが、こちらもある程度の推測はつきます。具体的にはわかりませんが----。それなのに、なぜ面白いのかというと、それはメアリ・H・クラークの他の作品のように、この小説でも、主人公の心理の襞が実に巧みに描き出されているからだと思うのです。

        もちろん、背景に現代医学の最前線における数々の問題点を置き、プロットに趣向を凝らしている点も見逃せないと思います。しかし、客観的に考えると、話自体はすこぶるシンプルで、これをここまで読ませてしまうのは、やはりこの作者の筆力だろうと思います。

        女性作家らしいディテールの鮮やかさを味わうのにもってこいのサスペンス・ミステリーで、この小説を読み進むうちに、いつの間にか主人公と同化して、ハラハラ、ドキドキしてしまうのは、作者の方が役者が一枚上なのかも知れません。

        早く涼しくなって、秋の夜長にゆったりとした気分で、豊穣なサスペンス・ミステリーの世界に浸りたいものです。
        >> 続きを読む

        2016/08/25 by dreamer

      • コメント 1件
    • 2人が本棚登録しています
      ファイアスターター
      カテゴリー:小説、物語
      いいね!
      • ちょっと前に読んだ「読書会」という本で取り上げられていて
        キングのこれは読んでないなぁーと思い手に取った。

        上巻は父と娘の逃亡の巻ですね〜
        さて下巻は、、、

        映画、見てるはずだけど忘れてるから・・・
        まっさらなような感じで読んでますw
        >> 続きを読む

        2016/01/08 by 降りる人

    • 4人が本棚登録しています
      NかMか
      カテゴリー:小説、物語
      4.0
      いいね!
      • 夫婦漫才…。もとい。夫婦探偵のトミーとタペンス、シリーズ第3弾!
        軽いタッチの女子供向けのスパイ大作戦。素人探偵大活躍ってノリのエンタメ作品です。
        トミ・タペはポアロの次に書かれた第2作目だったって知ってました?

        面白いのはこの夫婦。リアルタイムに生きているように、時代にあわせて歳を取っていくのです。
        シリーズ1作目では若くてピチピチだったトミーとタペンスが
        「NかMか」では二人の子どもを成人に育て上げた中年夫婦(トミー46歳!)になっています。
        時は1940年春と明記されていて、第二次世界大戦の真っ最中。
        ナチス・ドイツが英国上陸作戦を実施中の、国中の話題が戦争一色です。
        ベレズフォード夫妻はお国のために働きたくてうずうずしています。
        かつての探偵稼業から足を洗うには我々はあまりに有能で充分に若い。という訳です。

        この時期にトミーとタペンスの長篇が描かれたのには意味があるでしょう。
        第一作目の「秘密機関」は第一次大戦直後の不景気による失業が、再会した幼馴染の彼らを冒険(探偵業)へと駆り立てた背景がありました。
        (この間に短篇は書かれていますが)第二次大戦時に再び登板することになりました。
        きっとそれはクリスティの愛国心と関係があると思います。
        ポワロは外国人ですし、ミス・マープルは片田舎の老人で、イギリス愛を投影したスパイ大作戦には全く不向きですしね。

        いつものクリスティなら、こんな暗い世の中をあえて忘れさせるのが使命だというように、リゾートでの優雅な有閑階級のお話なんぞを描いているのが常ですが、
        本作には彼女の戦争観がはっきり示されていて非常に興味深いです。

        「一種の誇大妄想的な自負――この自分が、自分たちだけが、祖国の名を挙げ、世界に覇を唱えることができるという自負」
        「どこの国でも、いつの時代でも、これは変わらない」

        ナチスを批判し、英国の味方をしていると、そう思わせながら戦争の本質を語るクリスティ。
        彼女はここでも大きな勇気を示している。私にはそう思われます。

        クリスティが読み継がれているのはストーリーテリングの巧さ、ミステリーとしてのプロットやトリックの大胆さが最大の要因ですが、
        登場人物の人間造形の見事さ、それはつまりアガサの人柄の奥深さや魅力とシンクロしているものなのだと、
        きっとこの小説を読めばわかってもらえると思います。
        この作品のストーリーはあまりにも典型的で子供だまし(失礼。だってホントに簡単なんだもん)ですが、それ以上に愛に溢れていてステキ。
        それは夫婦愛、隣人愛だけではなく、本当の愛国心、つまり人間愛なんですね。

        「愛国心だけではじゅうぶんではありません……
         敵にたいして憎悪の念をいだくことがあってもならないのです」
            (キャヴェル看護婦の言葉より)

        「ひとびとの苦しみを軽減するためにすることなら、なんだって尊いんです」

        日本であったなら、どうだったでしょう?
        戦時下にこのような小説が発表されたとしたら…?!

        もちろん、ユーモアや人間洞察も冴えています。

        「男性相手にお追従を言うときには、いつの場合も、これでもかこれでもかと歯の浮くような殺し文句を並べたてる必要がある」

        お見事。


        【ストーリー】
        英国情報部から、内部に潜入しているナチの大物スパイ〈NかM〉の正体を秘密裡に探るという任務を与えられたトミー。
        タペンスを出しぬくために単独でリーハンプトンの<無憂荘>へと向かったが、そこにはブレンキンソップ夫人なる女性が待ち構えていた。
        一見無害な滞在客に思えた面々が、探るうちに疑惑を生じ、ついに事件が起きる。

        伏線も犯人もかなり簡単にわかります。ポアロなら絶対に見逃さないのにね。ってイライラしちゃうくらいに。
        ま、だからこそのトミタペなんだけど。彼らの作品はコメディなので、ね。

        【登場人物】
         トミー&タペンス(ベレズフォード夫妻) 冒険好きなおしどり夫婦
         デリク&デボラ   ベレズフォード夫妻の双子の子ども
         グラント     英国情報部 トミーに仕事を依頼 
         アルバート    探偵時代の助手(今は妻帯者でパブの主人)
         アイリーン・ペレナ  <無憂荘(サンスーシ(Sans Souci))>の女主人
         シーラ・ペレナ    ペレナ夫人の娘
        <無憂荘>の滞在客
         オルーアク夫人    大柄でいかつい女、観察眼が鋭い
         ブレッチリー少佐   典型的な退役軍人
         カール・フォン・ダイニム  亡命中のドイツ人 科学者
         ソフィア・ミントン   編み物上手の初老の女性
         ケイリー夫妻    病気持ちの夫と世話焼き女房
         スプロット夫人   幼い娘ベティの世話でてんてこ舞いの若い母親
         ヘイドック中佐   無憂荘の近所に住む元海軍中佐


        【二つの世界大戦】
        第一次世界大戦は、1914年から1918年にかけて戦われた。
        第二次世界大戦は、1939年から1945年までの6年間、ドイツ、日本、およびイタリアの三国同盟を中心とする枢軸国陣営と、イギリス、ソビエト連邦、アメリカ、および中華民国などの連合国陣営との間で戦われ、人類史上最大の大戦争となった。

        【1940年 ヨーロッパにおける第二次世界大戦】
        6月10日 ナチス・ドイツ軍の侵攻を受け、フランス政は、パリを放棄し降伏。
           同日、ムッソリーニのイタリアもドイツに乗じてイギリスとフランスに対し宣戦布告。
        6月22日 フランス、ドイツ軍への降伏文書に調印。
         これによりドイツはフランスの北半分と大西洋海岸線地域全体を占領

        当時イギリスではチャーチルが首相に就任。挙国連立の戦時内閣(第1期1940年5月10日-1945年5月23日)を発足させ戦争指導に当たっていた。

        西ヨーロッパから連合軍を追い出したドイツは、イギリス本土上陸作戦(「ゼーレーヴェ作戦」)実行を決意。
        ドイツ空軍総司令官ゲーリングは、前哨戦として本格的に対イギリス航空戦を開始するよう指令。ロンドンなどに激しい空爆(バトル・オブ・ブリテン)を行った。
        しかし英国空軍の健闘により制空権を握ることが出来ず、ヒトラーはイギリス本土上陸を断念した。

        9月 ドイツ、イタリア、日本は、日独伊三国同盟を締結し枢軸国を形成した。


        イギリスにとってバトル・オブ・ブリテンは国を護る闘いでしたがやがて攻撃への口実と機会となってしまいます。
        この後、連合国軍はドイツ本土に空襲をかけドレスデン空爆では街の85%を破壊し、15万人とも言われる一般市民を殺します。
        戦争に大義はないです。
        防衛が攻撃に転嫁するのはあっという間。
        決してクリスティの「愛国心」が向かう方向ではなかったはずです。
        >> 続きを読む

        2015/11/27 by 月うさぎ

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      七つの時計
      カテゴリー:小説、物語
      2.0
      いいね!
      • クリスティーのロマンチック・冒険ミステリー。(コメディーです)
        『チムニーズ館の秘密』の姉妹作。
        あの事件から4年後(実際に書かれたのも4年後)、
        再び同じチムニーズ館を舞台に物語の幕が開く。
        前作でとっても気になる存在だったアイリーン(バンドル)が今回の主人公です。

        ロンドン警察の「バトル警視」シリーズでもあります。
        木彫りの面のような顔をした、一見鈍重そうな男
        けっして感情を外にあらわさない。
        ポアロと対照的な地味目な探偵です。


        (ストーリー)
        チムニーズ館に滞在中の客の一人、ジェリー・ウェイドが睡眠薬の飲み過ぎで死亡した。 
        その部屋に並んだ七つの目覚まし時計は何を物語るのか? 
        数日後、親友のロニーも射殺される。これは事故なのか連続殺人なのか?
        秘密結社“セブン・ダイヤルズ・クラブ”とは何の組織なのか?事件との関わりは?
        謎の親玉<ナンバー7>はいったい誰なのか?

        事件の全貌が一気に見えてくるラストでは、見事な反転に驚愕すること間違いなし。


        お転婆で聡明な若い女性バンドルと、女性に弱く多情な風情でありながら
        大型犬のように忠実なビルとの恋愛が笑えます。
        バンドルの父・ケイタラム卿の個性には前作より磨きがかかり、
        思い込みの激しい勘違い男の代表格、政治家のジョージ・ロマックス、執事の典型のような白髪のトレドウェルなども再登板。
        この点については、「チムニーズ」を先に読んでおくと、より楽しめるかも知れません。


        クリスティというと、本格ミステリーを期待する人が多いと思いますが、
        初期作品ではコメディと考えられる作品が結構多いのです。
        これも、青春小説のジャンルに分類されると思います。

        ストーリー的には、私なんかはそれはないでしょ~?と思ってしまいましたが。

        結末は確かにびっくりします。
        でも、だまされた。というより、ちょっとアンフェアかも。
        でも、このどんでん返しが楽しかったというファンも多いので、
        評価ははっきりわかれる作品なのかもしれません。

        けれど、読後感は決して悪くないです。さすが、クリスティ!



        これより後は、「完璧ネタバレ」なので、読後の方のみお読みください。
        既読の方、ぜひ感想を交し合いましょう(^^)



        正義の味方のお友達同士なのに、なんで仮面で密会?
        「そのつもり」で読み直しましたが、会話も何も不自然です。
        仮面の集会は発表当時すでにアナクロだったような節がみられ、
        当の秘密結社を「胡散臭い」「陳腐で荒唐無稽な」と表現しています。
        要するに、ヒーローものの「お約束」って感じなんでしょうかね。


        人物描写によるミスリードの手法は、一種の叙述トリックともいえるます。

        例えばジミーのことを書いた箇所を参考に。(深町眞理子訳)

        ・わが愛すべき青年ジミー・セシジャー(That amiable youth,Jimmy Thesiger)
        ・育ちのよさそうなおっとりした青年
        ・いわゆる紅顔の美青年
        ・見た目はちょっと抜けてる感じだけど――中略――あれで思いのほか頭はいいんだ
        ・お金持ちの御曹司
        ・血色のよい童顔

        こういう描写をされてこの男を悪人視するとしたら、天邪鬼か2時間ドラマに慣れている人(?)
        もしくはクリスティを知り尽くしているか。です。

        いえいえ、ちゃんと書き込んでいますよ。とクリスティは言うでしょう。

        「なあに、もともとぼくは、絞首台で死ぬ運命を背負って生まれてきてるんです」
        なんとまあ、こんなこと、言っていました!!

        サー・オズワルドは言いました。
        「虫が好かん、あの若造めが
        あれこそほんとのごくつぶしというやつさ」
        「ベイトマンの判断が誤りだったことは、一度たりとない」


        種あかしも急転直下の駆け足の説明で、ジミーの本当の動機が再読してもわからない。
        なぜ、2人をあんなに急いで殺さなければならなかったのか?
        そこまでの危機感が感じられないのと、裏表のある殺人鬼としても書かれていないのです。
        ロレーンにしても、ジェリーが死んでジミーに会う以前は
        ジミーとは知り合いですが、そんなに深い中ではなかったと考えられます。
        そんなに急に悪の片棒に変身するのか?
        クリスティは彼女の父親の血統が悪い。と片付けてるけど!
        これはクリスティの「よくない傾向」の一つです。
        こういう落ちのつけ方、他でも見られるのです。

        後年のクリスティは犯人の心理や動機を非常に大事にします。
        ですから、この話は彼女らしくない、ストーリーありきの話と言えるでしょう。

        恋愛もからんでコメディタッチで面白く読めましたが、
        ミステリーとしては甘いので私の評価はいまひとつ。にしました。
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        2012/12/20 by 月うさぎ

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      茶色の服の男
      カテゴリー:小説、物語
      4.0
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      • 元気な冒険ミステリーかつ大恋愛物語。クリスティの4作目となる作品です。

        本の内容は中村能三訳の「茶色の服を着た男」でレビューしています。
        おそれいりますが、そちらをあわせてご参照いただけると嬉しいです。

        こちらは、2011年に出版されたクリスティ文庫 
        新訳 深町真理子訳

        なぜ早川が新訳を出したがるのか、私にはその真意がどうしてもわかりません。
        その理由を書きます。

        深町訳は悪くないです、華やかで言葉が修飾的な感じ。
        中村能三訳は、決して古くはないし、簡潔で意味が取りやすい。
        中村訳のほうが、さくさく読めるのです。
        なぜに、同じ出版社で新訳を出す必要があったのでしょうか。

        翻訳の違いの例をあげてみましょう。

        「さあ、こっちへきて、かけなさい。
        旅の疲れは出なかったかね?
        そうか、それは重畳(ちょうじょう)」 深町

        「まあかけなさい。旅の疲れは?それは結構」中村

        これだけの文字数の差があります。
        大体、重畳って何(^。^;)
        でも、こっちのほうが「新訳」なんです。

        サー・ユースタスの言葉におけるニュアンスの微妙な違いもあります。

        「なあアン、きみにもどうやら頭のあがらん相手がおると見える。
        まあ負け惜しみではないが、ひとつきみたちに忠告しておこう――清廉の士、必ずしも酬いられるものではない、とな」 深町

        「あんたにも頭のあがらぬ相手がいるようだな、アン。
        しかし、きみたちに忠告しておくが、ばか正直は必ずしも引き合わんよ」 中村

        この作品は叙述ミステリー的な部分があるので、
        人物の微妙な印象の違いが作品の全体の評価につながりかねないのです。

        Suzanneという名前が、中村訳ではスーザンですが、深町訳ではシューザンとなっています。
        カタカナにすると日本語的には一般的にはスザンヌです。 
        スザンヌはフランス語の名前なので、英語読みではスーザンになります。
        ここもなんとなく違和感。なんでシューザン…。

        翻訳は好みの問題なので、結果的には読み手のご判断ですが、
        出版社が旧訳を没にして読めなくしていくのは、これまでその作品に馴染み愛してきた読者に対して失礼で、もっと慎重に判断すべき問題だと思うのです。
        他の出版社から複数の訳が選べるのが、最も理想です。
        クリスティにはそうするだけのファンもいるし、作品の力もあります。

        文庫本の解説も1982年の中村訳が出たときの解説をそのまま載せています。
        この本のどこが「新しい」のでしょう?
        私にはさっぱりわかりません。


        あと、表紙のイラストなのですが、画家は原作を読まなかったようです。
        アンは漆黒の黒髪が膝まで届く長さで、ジプシー娘か魔女と例えられています。

        “殺されても死なないような”“テリアに投げ与えて遊ばせるゴムボール”みたいな女の子(どんな女?)なのですから。

        ファッションもこれでは古いんです。
        1920年代というとシャネルなどのドレスやスーツがそろそろ流行している時期。

        サー・ユースタスがアンの「脚線美」を褒めています。
        スカートは短めのボディラインはストレートに近い服装が
        当時の流行です。
        このレトロな女性はいったい誰~?(*゚▽゚*)
        >> 続きを読む

        2012/09/29 by 月うさぎ

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      ペット・セマタリー
      カテゴリー:小説、物語
      5.0
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      • 「怖い」というより「哀しい」話。

        愛する息子が交通事故で、死んでしまった。
        その死を受け入れられない、受け入れたくないために「ある力」に手を出してしまう。

        ペット霊園のそのまた奥、近づく者さえいない深い深い森の中の「ある力」に。
        それが「呪われた力」だと知りながら・・・。

        しかも、何度も同じ過ちを繰り返す、という点が愚かしくもあり、哀しくもある。

        「呪われた力」は、決して完全な形では、家族を返さない。
        愚鈍になったというレベルから、中身は完全に別の(そして邪悪な)「何か」に入れ替わってしまったというレベルまで。

        (決して完全ではないが)良い結果が出る可能性があるからこそだろうか、「呪われた力」には中毒性がある。

        「前の奴は失敗したかもしれないが、自分は、うまくやれるさ。」と。
        ただ、実際は「リスク」を過小に、「リターン」を過大に評価しているだけ。

        そして、この「呪われた力」には、伝染性も。

        「あの人の悲しむ姿を見たくない」
        「あの人は悲しみに耐えられないのではないか」
        という思いから、知る者は、知らない者に「呪われた力」の事を伝えてしまう。

        が、それこそ「呪われた力」の狙い。
        大きな「悲しみ」を抱えた者を自分の所に呼び寄せ、その「悲しみ」を糧とする。

        そして、一度、「力」を利用すると、いずれ再び利用しなくてはいられなくなる。
        得てして新たな「犠牲者」を連れて・・・。

        ただ、この「呪われた力」そのものは、本書のメインではなく、「死」(裏返せば、「生」もしくは「愛」)がテーマ。

        文庫本で上下巻に分かれていて、上巻では飼い猫のチャーチにまつわる奇怪な話(それが下巻の前フリになる)があるものの、概ね主人公の幸せな様子が描かれる。
        特に上巻の最後の方の仲睦まじい父と子の様子の描写が印象的。

        そして「悲劇」は下巻の冒頭に起きる。
        ・・・というか、下巻は、いきなり「悲劇」が起きた後から始まる。

        主人公が半ば自動で動きながら、息子の葬儀の準備をしつつ、「悲劇」の瞬間を思い出していく、という形式。
        その記憶の中では、ラスト、間一髪で息子を救うが、現実に戻った時、息子はいない。

        所謂「死亡フラグ」を使った展開。
        それに加えて、妻の養父との不仲による修羅場の話も交えて、主人公の喪失感が浮き彫りになる。

        さらに上下巻の分かれ目もうまく利用しているのでは、と思った。。
        (単行本の時は、どうなっていたか知らないので、単に偶然かもしれない。
        が、キングならやりそうなので。)

        ただ、子供の描写が生き生きとしている分、同じくらいの年頃の子供がいる人には、読むのがツライかもしれない。
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        2014/04/19 by Tucker

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      シャーロック・ホームズの冒険
      カテゴリー:小説、物語
      4.0
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      • ミステリ界に名探偵は星の数ほどいますが、その優れた叡智と活躍の実績から「名探偵の代名詞的存在」だと誰もが思うヒーローと言えば、シャーロック・ホームズしかいません。

        彼の魅力は躁と鬱、几帳面さとルーズさ、正義感と非道徳的な面、冷徹と温情----と、そういった対照的な要素が同居する人間臭い面が、個人的にはシャーロック・ホームズの魅力だと思っています。

        また、シャーロック・ホームズの唯一の親友にして、彼の探偵活動の多くに随行し、その活躍を記録し、そして世間に発表した作家で、本業は医師のジョン・H・ワトスンも忘れてはいけません。

        天才肌のホームズと比較すると凡庸にも思えますが、実際には平均以上の知性の持ち主なのです。ただホームズの叡智の前に、いつも驚きと敬意の念とそして、少なからず劣等感を感じてしまうという損な役回りを演じているんですね。

        能力的にはホームズと対等ではないものの、彼の探偵としての活動に同道できることを許された唯一の人間である立場に、誇りと矜持を感じているように思いますね。

        そこで今回読了したのは、シャーロック・ホームズシリーズの第一短編集「シャーロック・ホームズの冒険」の中に収められている12の作品の中の「赤毛組合」です。

        燃えたつような赤毛の持ち主で質屋のジェイベズ・ウィルスンは、不服そうな顔で新聞をたずさえてホームズのところへやって来た。

        赤毛の人だけが応募できるという「赤毛組合」の新聞広告を指さしながら、彼は説明し始めた。自分の店に1か月ほど前から商売見習いのために安い給料で働いている、店員のスポールディングに勧められて、その赤毛組合なるものに応募したところ、多くの候補者の中から採用され、この8週間そこへ働きに行っていた。

        組合の仕事は1日4時間、事務所で百科事典を筆写する簡単なもの。しかも、週給4ポンドという割のよい報酬がもらえるのだ。そして、8週間続いたこの仕事は、事務所に残された「赤毛組合は解散した」との声明文とともに終わりを告げるのだった-------。

        他の事務所で尋ねてみると、昨日新しい事務所に引っ越したというのだが、引っ越し先にもそれらしいものは見当たらない、いたずらにしては手がこんでいる-------。

        ウィルスンが帰ると、しばらく推理していたホームズは、ワトスンと二人で音楽会に出掛け、途中でかの質屋の敷石をトントンと強く叩いてから店に入って店員に道を尋ねた。「あの男のひざをみたかったのさ」。ホームズにはすべてがわかったようだった-------。

        この作品は、いわゆるミステリにおけるトリックのひとつ、「赤毛トリック」の嚆矢となったもので、このトリックは世界中の様々なミステリに、手を変え品を変え登場しているので、出会った時にはドイルの原型がどのようにアレンジされているのか、比較して読むというのもミステリ・ファンとしての楽しみなんですね。

        この作品でのホームズの動きは、水際立っている。依頼人の話を聞き、しばし瞑想すると、すかさず捜査に飛び出す。そして、裏付けを早々に終えるや、その夜のうちに犯人を捕縛してしまうのだ。

        しかも、捕物の前に気晴らしにコンサートに赴き、音楽に浸る余裕がまた実に心憎い。「電光石火」という言葉がぴったりと当てはまるホームズの働きぶりだったと思う。

        そして、事件が解決した後の「おかげで退屈しのぎができた」というホームズのセリフも、いつものことながら実に心憎い。

        ホームズにとって人生とは、"平凡な生活から逃れようとする果てしない努力の連続"でしかないのだ。だから、大犯罪を防いだこの作品での活躍も、彼にとっては退屈を紛らす"ささやかな事件"でしかなかったのだ。


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        2018/03/03 by dreamer

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      緋色の研究
      カテゴリー:小説、物語
      5.0
      いいね!

      • このアーサー・コナン・ドイルの「緋色の研究」は、ワトスンがホームズと出会い、最初に起きた記念碑的な事件だ。

        アフガニスタンからイギリスに送還され、あてのない無為の日々を送っていた元軍医のワトスンは、知人の紹介でホームズと初めて対面した彼に対し、開口一番「アフガニスタンに行っていましたね?」とホームズが言い放つシーンなどは、"伝説誕生"の瞬間と言ってもいいと思う。

        そして、共同生活を始めた二人のもとに、グレグスン警部から不可解な殺人事件の相談が持ち込まれる。ロンドン市街の空き家で発見されたのは、外傷もなく、物盗りの形跡もない死体と部屋の壁に残された「RACHE」の血文字。さあ、そこで現場検証から真相に迫る、ホームズの名推理が幕を開けるのです。

        ホームズは独自の現場検証によって、推理の材料を収集すると、すぐさま犯人が「赤ら顔の大柄な人間」だと断言するのだ。このように、現場型の"安楽椅子探偵"とも言うべき彼の真髄は、続く犯人の独白パートなどによって裏打ちされ、より明確なものになっていくのだ。

        この作品では、しばしば原題の「A Study in Scarlet」の中の「Study」の訳し方について、過去いろいろと言われてきたそうです。

        この「Study」には「習作」や「論文」といったニュアンスの言葉があてられることも多く、タイトルを「緋色の習作」とする訳書も実際にあるらしいのですが、ホームズの探偵術は、人間そのものを研究対象としているように思います。

        そして、何よりも、このシリーズ自体が、そんなホームズの活動そのものを研究し、発表しているかのようなワトスンの記述で成り立っているわけですから、やはり、タイトルは「緋色の研究」というのが、一番ぴったりくると思いますね。


        >> 続きを読む

        2018/03/05 by dreamer

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      四人の署名
      カテゴリー:小説、物語
      5.0
      いいね!
      • このアーサー・コナン・ドイルの「四人の署名」は、シャーロック・ホームズものの第2作目の作品。

        この時期のシャーロック・ホームズは、まだ名声が確立していなかったこともあり、彼にまつわる、いろいろな設定が付加されたり、再確認がなされているんですね。

        例えば、コカインの使用癖について、冒頭で退屈な日常を紛らわすべくホームズが、人工的な刺激であるコカインを注射する有名な場面がありますね。

        当時、コカインは違法ではなかったが、ホームズ自身「身体によくないかもしれない」とその弊害は認めていたようですね。
        この作品で使ったのは7パーセントの溶液で、当時の感覚だとそれほど濃度の高いものではなかったようです。

        それから多くの著書の存在やボクシングの達人、変装の名人であることなどの記述があり、ホームズの人物像を知るにあたって、実に興味深いと思いますね。

        またホームズのデビュー作である「緋色の研究」に引き続いて、ベイカー街不正規隊の活躍や、ワトスンのロマンスも描かれ、各キャラクターに関するエピソードも実に豊富ですね。

        恐らく、これはドイルがホームズをはじめとする各キャラクターを、そしてもちろん作品を深化させていこうと考えていたんだろうと思いますね。

        この作品は殺人事件あり、謎の暗号(署名)あり、謎の人物や組織あり、追跡劇あり、大捕物ありと我々ミステリ好きの読者を飽きさせない"動き"が満載なんですね。

        名作「バスカヴィル家の犬」とともに、二部構成をとっていない長篇ということもあり、その疾走感は格別ですね。
        >> 続きを読む

        2018/04/28 by dreamer

    • 1人が本棚登録しています
      バスカヴィル家の犬
      カテゴリー:小説、物語
      4.0
      いいね!
      • 「一見、理性にとって不可解な、圧倒的な謎を解き明かすことを目的とした捜査の物語」という、有名なミステリーの定義があります。この定義を思い出すたびに、迷信とミステリーが近い関係にあることが、よくわかります。

        迷信は、その非合理・非科学性を叩かれてきましたが、我々は本能で迷信の正しさを悟っているような気がします。頭(理性)ではわかっていても、心がいうことをきかない経験は、誰もが持っているはずだからです。

        訳のわからない恐怖や畏怖の心がなくなれば、迷信に裏打ちされる怪奇小説や怪奇映画など、とっくに消滅しているはずだし、手相占い、星占いなどもなくなっているはずです。

        探偵小説やサスペンス小説には、そうした人間の恐怖心をかきたてる状況設定のものが、少なくないような気がします。

        ダートムア地方に伝わる"魔犬伝説"を全面に押し出したアーサー・コナン・ドイルの「バスカヴィル家の犬」が、そのいい例だろうと思います。

        300年ほど前からバスカヴィル家に伝わる「地獄の魔犬」の奇怪な伝説。その伝説のままに非業な死をとげた当主のチャールズ・バスカヴィル卿。

        首都のロンドンを離れた片田舎デヴォンシアのダートムアという陰湿な荒野の沼地から、数百年の時代を経て湧き上がる魔犬の声は、私の心をおびえさせ、不気味な世界へと誘いこむのです。

        その謎を、永遠の名探偵シャーロック・ホームズが白日のもとにさらした時、私はほっとすると同時に、何か拍子抜けした感じで、がっかりもしました。ま、それがミステリー好きの勝手きままなところなのかも知れません。

        アーサー・コナン・ドイルの研究書によると、もともとドイルはこの「バスカヴィル家の犬」を怪奇小説として書くつもりでいたが、うまくいかずにミステリーにしたところ、予想外の成功をおさめたとのことです。

        我が国でも、アーサー・コナン・ドイルの影響を強く受けた、作家の岡本綺堂が、半七捕物帳でしばしば迷信や伝承説話を謎づくりに応用しているというのは有名な話です。

        やはり、迷信とミステリーは双子の兄弟じみたところがあるのかも知れませんね。


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        2018/02/28 by dreamer

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      ABC殺人事件
      カテゴリー:小説、物語
      4.0
      いいね!
      • 【あらすじ】
        あまりにも有名なクリスティの代表作。名探偵ポワロの元にABCと名乗る犯人から予告状が届く。手紙の内容通り、頭文字Aの土地で頭文字Aの人間が、頭文字Bの土地で頭文字Bの人間が犠牲となる連続殺人事件が起こる。

        被害者は住んでいる場所、社会階層、性別、あらゆる要素がバラバラで事件に関連性は見られない。死体の元に置かれたABC鉄道案内を除いては。
        犯人がアルファベット順に殺人を起こす目的は?なぜ予告状をポワロに送りつけたのか?雲を掴むような事件に灰色の脳細胞を持つ名探偵ポワロが挑む。

        【感想】
        僕はパズルゲームのようなミステリーにはあまり興味がもてないのだが、『ABC殺人事件』は探偵ポワロをはじめとして各登場人物の描写も魅力的なため楽しく読むことができた。この作品が今なお読み継がれる理由はクリスティの優れた観察眼と人物描写にあるだろう。

        例えば、P209では第一の事件で被害者となった叔母と誕生日の約束を交わしていたことを思い出して涙を浮かべるメアリーにクラークが”「いつだって、ちょっとしたことなんだ、悲しみをそそるのは。とくに、ごちそうとか、プレゼントとか――なにか楽しくて、自然なこと……」”と語りかけるのが印象的。死が感動を演出する小道具として使われがちな現代でこそ心に響くセリフなのかもしれない。

        また、第三の事件の被害者カーマイクルの秘書を勤めていたミス・グレイという女性が彼の妻に追い出される。そのことに対して周囲の人間は若くて美しいミス・グレイに同情する。しかし、ポワロだけは彼女が計算高い女性であることを見抜くのだ。ミス・グレイの美しさにあてられて盲目となったヘイスティングズとの対比が見事である。

        「それに、着ているものもとびきり上等です。あの重みのあるクレープのドレス、銀狐の襟巻き――最新流行ですよ」(p222)
        後の文章を考えると銀狐の襟巻きはちょっとした皮肉にも感じられる。

        ポワロはいかなるときも冷静で合理的な判断に基いて行動するため冷たく感じるときもある。しかし、彼は決して無機質な名探偵ではない。

        ”そして狐をつかまえて、
        そして囲いにとじこめて、
        そしてぜったい逃さぬように!”(p348)

        この歌詞に対して、狐狩りによって一瞬のうちに訪れる残酷な死のほうがまだマシであると言い、怒りを露わにする激情家な面も持ち合わせている。ラストシーンで「……わたしたちはまたいっしょに悪人狩りをした。そうでしょう?スポーツ万歳!」といって喜ぶポワロはとても魅力的な名探偵なのだ。


        【メモ】
        この作品は1936年イギリスで出版されたものだが、当時のメディアや価値観が現代の日本でも通じるものがあるというのも興味深いところ。

        「死というものはね、マドモワゼル。不幸にして”かたよった見かた”をつくりあげます。死んだひとのことは悪く言わない、という立場を(中略)たしかにその通りです――若い娘さんが死ねば、出るのはみんなそうした記事ばかり。いわく、彼女は快活だった。しあわせだった。やさしく気だてがよかった。この世になんの苦労もなく、好ましからざる人物とのつきあいもなかった。いつの場合も、死者にたいする過大な思いやりがそう言わせる。」(p120)。
        他の場面ではインタビューで言った覚えのないことが記事にされるという描写もある。
        >> 続きを読む

        2016/10/18 by けやきー

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【深町真理子】(フカマチマリコ) | 読書ログ - 読書ファンが集まる読書レビューサイト(著者,作家,作者)

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