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二葉亭四迷

著者情報
著者名:二葉亭四迷
ふたばていしめい
フタバテイシメイ
生年~没年:1864~1909

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      浮雲
      カテゴリー:小説、物語
      5.0
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      • 明治時代に端を発す「言文一致運動」の記念碑的存在、ということで古文を勉強している私は、その言文一致の歴史を知る意味で読むべき作品と思い、読むに至りました。

        免職になってしまった男、文三と、その叔母、園田家のお政や、従姉妹のお勢、元同僚の昇などの人物を通して描かれる、文明開化後の明治情緒溢れる作品。
        まず素晴らしいと思ったのが、何よりもその文体・文章です。和歌の修辞技法や英語と日本語の言葉遊びも交え、活き活きと写実的に描写された、東京の下町言葉・江戸言葉によって進んでいく物語の調子は、さながら軽快な江戸落語家の語り口を思わせるようで、「サアそうなると」などという地の文の合間合間に、「トントン!」と扇子を叩きつける落語家の挙動が目に見えるようです。

        第一篇・第二篇では文体において、例えば「」のカッコ受け(」)がなかったり(そのことでまた独特のリズムが生まれていますが)、地の文で「ト」や「ズット」など、場面の文節でカタカナ語を多様され、軽快な調子であったのが、第三篇になると、文三の置かれた境遇と合わせ、どこか重苦しい調子になり、それは四迷が影響を受けたドストエフスキーなどのロシア文学におけるそれを思わせるようです。文章における創意工夫が多分に見られます。

        私が思ったのはこの「粋」な江戸言葉を使う登場人物たちの繰り広げる日常劇は、つまるところ注解にも著されている、四迷の談話「予の愛読書」での「人間の依て活くる所以のものは理ではない、情である。情といふものは無論私情の意にあらずして純粋無垢の人情である」と論ずるが如く、四迷はまだ江戸幕府体制の香りが色濃く残る、どこか可笑しい明治に生きる東京人たちの「人情」を描いているのだと思いましたが、解説を読んでみるとどうやらそう単純なものでもないようです。

        福沢諭吉の「学問のすすめ」に代表される、明治維新の後の、文明開化の風潮にあった日本において「学問」は尊ばれる反面、次第に立身出世のための道具と見なされるようになってきた「学問」への偏重した日本人の「信仰」に、学問を積んでも、本をいくら読めてたとしても免職となって、園田家の人物や、昇との不和を経験する文三をして警鐘を促す側面もあるようです。「一体何のための学問なのか?」 これはそう昔の事とはいえない、日本の近代社会においても根強く残っていた「信仰」のひとつではないでしょうか。
        いい学校、いい会社、いい家庭に恵まれてこそ、幸福であるといった根拠のない「信仰」、、、題の「浮雲」は、江戸時代以来「あぶない・あぶなし」と訓読されてきた言葉のようで、そうしたフワフワとした、「浮雲」のような価値観に、四迷は「あぶなし!」と、声をあげているかのようです。

        本作は第三篇で一応のところ「終」とされており、後に続く悲劇的な腹案もあったようですが、作者が筆を投げるような、未完の形で終わった本作「浮雲」は、明治時代の風俗を知る歴史資料でもあり、文学的・国語的にはかなりの挑戦的な試みのなされた「実験小説」でもあり、文明開化後の日本に沸き立った「浮雲」という「魔物」を「あぶない!」と、警鐘を促す思想小説としての側面もある多角的・多面的な作品で、繰り返し読むに値する文学作品のひとつだと思いました。
        >> 続きを読む

        2018/02/21 by KAZZ

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