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藤沢周平は長編より短編、などと書いたが、すぐその誤りを見せつけられた。解説の中で文芸評論家の秋山駿氏はスタンダールの「赤と黒」を例に出しながら、本作の出だしの部分は、西欧的近代文学の正当な嫡子といった趣であると述べているが、出だしだけでなく、全体のがっちりした構成は、たしかに日本の時代小説というよりも、19世紀のヨーロッパ文学を思わせる。とくにフランス文学で、私はスタンダールよりもバルザックを思い出した。それも抒情味あふれる清新で清潔なバルザックを。本格長編小説という言葉にふさわしい作品。表紙のイラスト。どの場面だったか、いま気がついた。感慨無量。 >> 続きを読む
2017/09/11 by Raven
何度めかの再読。初めて読んだのは2004年で、映画化にともなって新装版が出たのか、『隠し剣孤影抄』とともに本屋に平積みされていたのを見つけてわくわくした。ちょっと変わった剣士の物語を含む武家もの九篇で、読み返すたびに夢中になる。今回の再読で、藤沢氏の剣技の描写はとても静かだと思うようになった。池波正太郎氏や佐伯泰英氏の描写はにぎやかで、まさにチャンバラだと思う。佐伯氏なんて、血が飛び散る様子まで擬音語で描写してくれる。それに比べると藤沢氏の描写は静謐そのもので、息詰まるような迫力に満ちている。そういうふうに見ると、「盲目剣谺(こだま)返し」が印象深かった。登場する剣士たちはいずれも浪人ではないので、宮仕えや武家社会の理不尽さに対する悲哀も感じた。上意討ちを逆恨みされる「孤立剣残月」は、気の毒だが哀しいユーモアに満ちている。いつも思うことだが、藤沢氏の作品はどれを読んでも味わい深い。 >> 続きを読む
2020/02/22 by Kira
江戸時代の三大俳諧師といえば松尾芭蕉、与謝蕪村。そして『小林一茶』。日本の風雅を鮮やかに俳句に表した二人に比べ、一茶は日常の風景、庶民の喜怒哀楽を素直に句に残してきました。その生涯で遺した句は二万句以上とも言われます。しかし一茶が稀代の天才と評価されたのは没後時代が流れてから。一茶の人生を藤沢周平が綴る時代小説「一茶」継母とそりが合わず実家から追い出されてしまった少年時代。俳人として華々しい活躍を見せたわけではなく、田舎俳句と馬鹿にされ俗にまみれ貧困に苦しんだ江戸。故郷で農業を続けていた弟との醜い遺産相続争い。藤沢周平の流れるような年月の描写で生々しく人間・小林一茶の姿、その苦しむ内面が浮き彫りになります。この作品を読む前後で一茶の句に対する印象ががらりと変わりました。決して楽しんで日常を切り取っていたわけではない。無情な人生に苦悩し続けたからこそ表現できた句なのだと。 >> 続きを読む
2018/07/07 by ybook
藤沢周平の作品は、映画「たそがれ清兵衛」(2002年 出演:真田広之、宮沢りえ)、「隠し剣 鬼の爪」(2004年 出演:永瀬正敏、松たか子)、「武士の一分」(2006年 主演:木村拓哉、檀れい)で観たことがあったが、小説を読むのは初めて。時代小説を読むのは、隆慶一郎がほぼ初めてだった、読むべき本が山ほどありそうだ。 >> 続きを読む
2017/09/14 by Raven
藤沢周平の時代物短編集。江戸時代の庶民や下級武士の人々が織りなす様々な物語。非常に完成度の高い短編が7話収録されている。これまで藤沢周平の作品は隠し剣シリーズしか読んだことが無かったのだが、こちらの作品の方が個人的には好ましいと思う。人の心の僅かな揺らぎというかそういった機微が上手に表現されている作品が多い。藤沢作品は映画化で成功した作品が多いので、ぜひこの短編集の作品も映画として撮ってもらいたいくらいだ。あとがきで著者の藤沢周平が何故江戸時代を背景にした作品を書くのかを語っているが、読んでて納得がいった。 >> 続きを読む
2018/02/18 by くにやん
おとくの神おとくの神様は、仙吉に貰った土人形。それがあれば、怠け者の仙吉を支えて働く日々にも、おとくは耐えられたのだが…。 >> 続きを読む
2019/05/09 by playbook
図書館本。それぞれに一癖ある下級武士の姿を描いた八篇を収録した短編集。主人公の特色と名が各話のタイトルになっている。主人公はいずれも剣の遣い手で、その腕を見込まれて上意討ちを命じられたり、非業の最後を遂げた者に代わって仇討をするという話が多い。理不尽さに耐えながら城勤めに精を出す下級武士の悲哀が漂うものもある。特に気に入ったのは、「ど忘れ万六」「祝い人(ほいと)助八」の二篇。 >> 続きを読む
2019/09/01 by Kira
藤沢周平のデビュー作「溟い海」(藤沢周平全集 第一巻所収)は、晩年の葛飾北斎を主人公にして、盛名、地に落ちた芸術家の無惨孤独な老境を、仮借なく抉った作品だ。暗い情念そのものは、創作のモチベーションとして、さほど珍しいものではない。ただ、そうした新人作家は、自分の想いだけが先走り、小説の完成度に難がある場合が、多いものだ。ところが「溟い海」は、新人作家のデビュー作とは思えないほど、完成度が高いのだ。例を挙げるならば、ごろつきの鎌次郎や、北斎の息子の嫁の扱い方。どちらも非常に巧みなのだ。若い広重の才能に嫉妬して、鎌次郎たちを雇って襲わせようとする、晩年の北斎像も秀逸。そして、主人公のキャラクター造型や、人物の出し入れも実に見事だ。確かに「溟い海」は、作者・藤沢周平の暗い情念を吐き出した作品だと思う。しかしそれを、巧みな小説技法でコントロールして、読み応えのある物語へと昇華させている。暗い情念と、それを支える小説技法。ここに初期の藤沢周平作品の特徴があると思う。 >> 続きを読む
2019/12/27 by dreamer
実家を出て裏店暮らしを始めた剣客の神名平四郎が、もめごとの仲裁を商売にする話のあれこれをおさめた連作短編集。上巻は十二話所収。平四郎は旗本の息子でありながら妾腹のため実家で冷遇されていたが、友人がもちかけた道場開設の話に乗って家を飛び出る。しかし、その友人に資金を持ち逃げされ、長屋に住みついて「よろずもめごと仲裁」というあまり金になりそうにない商売を始める。兄が持ち込んだ監視の役目を自分の仕事の合間にしながら、金はないが気楽な裏店暮らしの日々を過ごす。この作品は軽妙洒脱という言葉がぴったりの読みやすいもので、十二話のいずれも大いに楽しめた。蘭学者に対する弾圧の後日談として、あの「妖怪」鳥居耀蔵の名が出てくるのも面白かった。下巻も十二話で、引き続き楽しめそう。 >> 続きを読む
2020/04/09 by Kira
下巻。十二話所収。「よろずもめごと仲裁」という変わった商売を始めた神名平四郎だが、口コミで少しずつ客が来るようになる。鳥居耀蔵を探索する目付の兄にたびたび呼び出されて、その護衛をつとめることもある。姿を消した元許嫁の早苗との再会に胸を騒がせながらも、平四郎は道場開設に向けて準備を進める。市井ものと武家ものがうまく合わさった二十四話の時代背景は、老中水野忠邦の改革が経済や文化を締めつけている頃で、平四郎は改革の影響をまのあたりにする。失脚した水野を見に見物人が走って行くラストシーンが印象に残った。 >> 続きを読む
2020/04/17 by Kira
主人公の立花登は、江戸小伝馬町の牢獄に勤める青年医師。柔術の達人でもある。居候先の叔父夫婦の一人娘おちえは、現代風のバカ娘。主人公とおちえの今後の展開に目が離せない。 >> 続きを読む
2017/09/10 by Raven
解説を読んだら、物語の主要な眼目がネタばれされていて、興覚め。しかもそれでもって作品を誉めたつもりになっている。こういうのって、サッカーの録画を見る前に結果を告げられるのと同様で、せっかくの楽しみがおじゃんである。物書きを生業とする人間が、その程度の最低限度のマナーをわきまえていないというのは噴飯もの。解説した女流作家はもう亡くなっていて文句の言いようもないのだが、版を改める際にでも差し替えすべきだろう。 >> 続きを読む
主人公が江戸時代の牢獄医という設定から、暗くて陰惨な話が中心だろうとイメージしていたが、読後感はカラッとして明るい。おもわずニヤッとするやりとりがたくさん出てくる。この設定から、こういう楽しい読物を創り出すのは、作者の力量というほかない。 >> 続きを読む
すべて読み終わってみて、感想を一言でいうと、さわやかな物語だった、ということ。小伝馬町の牢獄医師という主人公の設定の他に、4冊それぞれのタイトルに「檻」という単語が用いられているので、窮屈で真面目な話というイメージもあったのだが、そんなことはまったくなかった。なぜそういうタイトルにしたんでしょうね。手品のように次々に物語が生み出されていくさまは圧巻ともいってよく、中井貴一主演でNHKでテレビドラマ・シリーズが作られたそうだが、それも当然である。 >> 続きを読む
2005年に買って何度か読みかけたが、通読したのは今回が初めて。巻末の解説によれば、本作は1976年に「狐はたそがれに踊る」というタイトルで雑誌に一挙掲載された長編。とある居酒屋の常連である四人の男たちが、商人風の男に誘われて押し込みに手を貸す話の顛末で、それぞれが抱える事情から運命の歯車が回り出し、やがてきしんでいくさまが描かれる。報酬の百両を手に入れたいという男たちの抱えるしがらみは、いずれも暗くて重い。特に、労咳で死期の迫った人妻とひっそりと暮らす武士伊黒の心情に、作者の体験が映し出されているようである。運命に押しつぶされそうになりながらも、なんとか踏みとどまった先にあるのがささやかな希望だとするラストが、せめてもの救いだった。 >> 続きを読む
2018/11/18 by Kira
六篇収録の短編集。映画『たそがれ清兵衛』の原案のひとつである「竹光始末」は、仕官先を求めて苦労する妻子持ちの浪人の話。武士の魂である刀を売り、竹光を腰に仕官の条件である上意討ちに向かう。武士であれ、町人であれ、男にはプライドがある。そのプライドだけでは飯は食えないだろうに、と思うのは女の浅はかさか。そんなことを感じさせてくれる六篇だった。 >> 続きを読む
2020/03/27 by Kira
武家もの二篇、市井もの九篇所収の短編集。どうしようもなく暗い絶望感に満ちた結末の「疫病神」と「夜の雷雨」、ちょっとした捕物帳の「昔の仲間」と「神隠し」が印象に残った。中でも「昔の仲間」のオチにはO・ヘンリーの短編に通じるものを感じて興味深かった。 >> 続きを読む
2020/04/23 by Kira
もとは凄腕の岡っ引伊之助が十手に頼らず探索をするシリーズの第一弾。岡っ引をやめた伊之助は通いの版木彫り職人として生計をたてているが、ある日、行方不明になった娘を探してくれと、もとの親分に頼まれる。娘の行方を追ううちに伊之助は、材木商高麗屋と作事奉行の黒いつながりをあばくことになる。藤沢氏が挑んだ新趣向の捕物帖ということだが、主人公の伊之助にいまひとつ個人的に惹かれなかった。版木彫りの仕事にも、頼まれたとはいえ探索にも、どちらも中途半端な感じがしてしかたがなかった。妻に裏切られたあげくに死なれた過去を引きずっているのか、幼なじみの女との関係にも踏み込んでいけないところもある。第三弾まであるシリーズの続きを読むか、考え中。 >> 続きを読む
2020/05/01 by Kira
山桜「手折って進ぜよう」男は無造作に頭上の枝をつかんだ。折り重なって咲いている山桜は、かすかに芳香をはなっていた。 >> 続きを読む
2019/06/12 by playbook
用心棒日月抄シリーズ第2弾。面白い。途中で止めるのが難しい。しかし主人公は、すこし人を斬りすぎではなかろうか。 >> 続きを読む
【藤沢周平】(フジサワシュウヘイ) | 読書ログ - 読書ファンが集まる読書レビューサイト(著者,作家,作者)
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