こんにちはゲストさん(ログインはこちら) | 読書ログ - 読書ファンが集まる読書レビューサイト →会員登録(無料)


石牟礼道子

著者情報
著者名:石牟礼道子
いしむれみちこ
イシムレミチコ
生年~没年:1927~

この著者の本を読んでいる会員ランキング

このランキングは1日1回更新されます。
      苦海浄土 わが水俣病
      カテゴリー:公害、環境工学
      5.0
      いいね!
      • 著者である石牟礼道子さんが亡くなったのは今年の2月。生憎と
        私は入院中で、訃報がもたらされた時はテレビや新聞を見られる
        状態ではなかった。だから、亡くなったのを知ったのは退院して
        からだった。

        『苦海浄土』を初めて読んだのは高校生の頃だったろうか。文庫
        新装版である本書は発行後に購入していたのが、読む機会を逸した
        まま積読本の山に埋まっていた。

        気力・体力共に低下していたので、退院後もなかなか本書と対峙
        出来なかったのだが5月1日に行われた水俣病犠牲者慰霊式のあと
        にチッソ社長の「救済は終わった」発言に唖然として、本書と
        対峙する決断がついた。

        ノンフィクションでも、ルポルタージュでもない。いくつかの
        事実は散りばめられているが、本書は水俣病患者とその家族を
        見て来た石牟礼さんが創作した、水俣病犠牲者の心の声であり、
        魂の叫びだ。

        土地の言葉を活かした文章の向こう側に、有機水銀に汚染されな
        がらも青さをたたえた水俣の海が広がる。その海が与えてくれた
        豊富な魚介類が、まさか体と心を破壊してしまうとは誰も思いも
        しなかっただろう。

        そして、原因はチッソ水俣工場から排出される排水に含まれた
        有機水銀であると、早い時点で特定されていたにも関わらず
        救済を遅延させたチッソ及び行政の罪は重く、改めて怒りを
        感じる。

        「銭は一銭もいらん。そのかわり、会社のえらか衆の、上から
        順々に、水銀原液ば飲んでもらおう。(中略)上から順々に、
        四十二人死んでもらおう。奥さんがたにも飲んでもらう。胎児性
        の生まれるように。そのあと順々に六十九人、水俣病になって
        もらう。あと百人ぐらい潜在患者になってもらう。それでよか」

        「あとがき」に書かれている言葉である。切なすぎるだろう。
        加害企業として犠牲者に補償するのは当然だが、どんなに補償金
        を積まれても、亡くなった人は戻って来ないし、有機水銀に害され
        た体は元には戻らない。

        チッソの現社長・後藤氏は、本書を百万遍読んだらいい。
        >> 続きを読む

        2018/05/16 by sasha

    • 他2人がレビュー登録、 6人が本棚登録しています
      食べごしらえおままごと
      4.5
      いいね!
      •  食べ物を美味く書ける作家は小説も間違いなく巧い、と開高健がたびたび書いています。この言葉が彼に当てはまるかどうかは議論の余地があるところですが、石牟礼道子はやっぱり旨いですね。

         トイモの根のみかけは里芋そっくりだけれど、伸びてくる芋柄を外側から順々に切りとって、おみおつけや煮染めや白和えなどにする。夏はしかし、生のままはすにそいで塩をふり、ぎゅっと絞った酢のものがいちばんで、さくさくとした歯ざわりが涼しく、咽喉がひきしまるような食感である。

         ここで「芋柄」とよばれているのは、全国的には、おそらく「ずいき」とよばれる食材だと思います。うちでは「はすがら」といいます。
         サトイモの仲間に、もっぱら茎を食用にするハスイモという植物があって、その茎が「はすがら」。
         この酢のものが、ぼくは大好物なのですが、実はこれ、誰にもつくれる料理ではありません。人によってはアレルギー反応を起こして手が腫れ上がります。

         不思議なもので、手が痒くなる人のこしらえた芋柄料理はえぐくなるのである。酢のものなど、味つけはほかの者がやってもよいのだが、皮むきと、塩もみ、絞りの段階で痒みが出たら、料理はもう台なしである。

         特に、絞るところが難所です。ぼくも少し痒くなるクチなんですが、妻にやらせたらそれどころの騒ぎじゃないので、自分でやります。まあやっぱり少しえぐいかな。ぼくの母は全然大丈夫なんですねどね。一方、祖母は全然だめでした。

         そうそうそのとおりと、母や祖母の顔を思い浮かべながら懐かしく読んだことでした。
        >> 続きを読む

        2013/07/02 by 弁護士K

      • コメント 5件
    • 2人が本棚登録しています
      椿の海の記
      カテゴリー:小説、物語
      5.0
      いいね!
      • 4月21日の水俣病講演会ー花を奉るーの休憩中にロビーで購入。その日のうちに夢中で読み終えました。
        なんともいえず懐かしい本です。もちろんそれはぼく個人の記憶にもとづいて懐かしいということなのですが、おそらく、それぞれの読者固有の経験に働きかけて共鳴させる力をもった作品なのではないでしょうか。
        こういう素晴らしい文学者が、あの時代のあの水俣という地にいたことは、文学史的には素晴らしい幸運であったように思えます。
        これについても「弁護士Kの極私的文学館」で扱っています。
        >> 続きを読む

        2013/05/16 by 弁護士K

      • コメント 3件
    • 1人が本棚登録しています
      世界文学全集
      カテゴリー:叢書、全集、選集
      5.0
      いいね!
      • 20年以上前に第1部を読んだだけで、第2部、第3部は読まないままになっていましたが、この池澤夏樹個人選世界文学全集のお蔭で通読することができました。

        生死のあわいにあればなつかしく候
        みなみなまぼろしのえにしなり

        おん身の勤行に殉ずるにあらず ひとえにわたくしのかなしみに殉ずるにあれば
        道行のえにしはまぼろしふかくして一期の闇のなかなりし
        ひともわれもいのちの臨終 かくばかりかなしきゆえに
        けむり立つ雪炎の海をゆくごとくなれど
        われよりふかく死なんとする鳥の眸に遭えるなり

        4月21日、この詩を石牟礼さんの朗読で聴きました。
        パーキンソン病による震えは遠目からも明らかで、本来ならばドクターストップがかかるところ、これまで縁のあった人に、そして縁のなかった人にも、ただお礼がいいたいばかりに、今回を最後の講演にするつもりで演壇に上ったとのことでした。

        間に合ってよかった、とほんとうに思いました。

        池澤夏樹個人選世界文学全集に収録されている日本文学は、この作品だけです。
        それを知ったときには、ずいぶん大胆な選択だと思ったものですが、実際に読み終えて納得しました。
        >> 続きを読む

        2013/05/16 by 弁護士K

      • コメント 3件
    • 2人が本棚登録しています
      みなまた海のこえ
      カテゴリー:小説、物語
      5.0
      いいね!
      • 石牟礼道子さんが文章を書いている絵本。

        かつて、あらゆるいのちが仲良くつながって幸せだった水俣の海や山や村。
        生まれてくる子どもは、みんな喜ばれ、みんなでそのいのちが生まれてきたことをよろこんで、これから幸せな人生を送るだろうとみんなで思っていた。

        しかし、最初にチッソの工場が来た時に、山からキツネたちが巣を爆破されて追い出されて天草に逃れていき、

        徐々に、海や湧水に毒がたまり、魚や生きものたちも、そして生まれてきた子どもまでが、毒にやられて苦しみながら死んでいく。

        彼らの無念の声と、かつてこの地がどれほど豊かで幸せな地であったかを、絵も文章も入魂の筆で描いていた。

        多くの人に一度手にとって読んで欲しい。

        また、水俣病の淵源は、決して昭和の三十年代ではなく、もっと昔から、戦前の、工場が進出した時からに始まる、ということをキツネの物語を通じて描いているところに、考えさせられた。
        自然が狂いだすのは、本当にひどい状況が目に見えるようになってからだけでなく、ささいなところから始まっているのだと思う。
        その時に、その変化や声に耳を傾けることができていたら。

        声なき悲しみや無念の声を代弁する石牟礼さんの言葉は、本当に貴重なものだと思う。
        >> 続きを読む

        2013/04/30 by atsushi

      • コメント 6件
    • 1人が本棚登録しています
      あやとりの記
      カテゴリー:小説、物語
      5.0
      いいね!
      • 「椿の海の記」の世界を、別な角度から、別の語り口で描いた作品。
        宮崎駿ファンには是非読んでほしい1冊です。

         ところがそんときの鹿は、なかなか淵の中からあがってこんじゃった。日が昏れて谷も暗うなった。三日月さんの出なはった。谷の水も冷とうなる、父さんも寒うならす。射とうかね、と父さんは思わいた。しかし、頭と角だけ、暗か水の上に出しておるのを射てば、角が折れる、頭もくだける。それでは銭にならんと我慢をしておらいた。我慢しておらいたがひもじさもひもじ、辛棒が切れて、鹿がちょっと水の上に肩のあたりまで出したときに、ズドーンとやらいた。
         そしたらなあ、不思議じゃったち。暗か淵の水の上に、白い鹿の角がみるみるひろがって、美しか木になったち。するするするする枝をひろげて、淵の中から生えたげな。その美しさが桂の木の如ったち。父さんな、ああ! しもうた、神さまじゃったと思わいたげな。
        >> 続きを読む

        2013/05/16 by 弁護士K

      • コメント 3件
    • 1人が本棚登録しています

【石牟礼道子】(イシムレミチコ) | 読書ログ - 読書ファンが集まる読書レビューサイト(著者,作家,作者)

会員登録(無料)

今月の課題図書
読書ログってこんなサービス
映画ログはこちら
読書ログさんの本棚

レビューのある本

失踪者