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加藤広

著者情報
著者名:加藤広
かとうひろし
カトウヒロシ
生年~没年:1930~

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      秀吉の枷
      カテゴリー:小説、物語
      3.7
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      • 信長の棺に続く三部作の第二作。
        極めて面白かった。
        定説にここまで挑戦してくれる作品もなかなかないだろう。躍動感あり、説得力あり、是非とも司馬史観並に発展してほしいものだ。

        確かに問われてみると不思議な事実は多い。

        なぜ桶狭間で奇襲が成功したのか。そもそもなぜ今川義元は京都への道程から少しそれる桶狭間に寄ったのか。
        光秀が本能寺の前日に俳句の会で詠んだ句に謀反が仄めかされていたというが緻密な光秀がそんなことをするはずがあるか。
        疑り深い信長が一向衆の浪人うずめく京都で手薄な防備で構えてたなんて本当か。
        秀吉の中国大返しは毛利に本能寺をだんまりにしたから可能だったというが本当にそんな時の運だったのか。

        などなど。
        取分け興味深かったのは桶狭間と本能寺。いずれも、今川と信長の慢心を理由に挙げがちだが、両者とも極めて近かったとはいえ全国制覇は未完の途上。両者とも疑り深い人物として語られることを考えると慢心説は怪しい。
        むしろ、彼ら自身が周りや相手を欺いた、との確信があったからこそ、人からさらに欺かれるなどと想定できず奇襲を食ってしまったのではないか、とする著者の説明は極めて人間的で合理的。
        著者の説が「事実」かどうかは置いておいて、奇跡や偶然といったベールで包んだ定説にはない合理性は非常に気持ちの良い納得感を読み手に与えてくれる。
        次作の明知左馬介の恋も楽しみ。


        読みながら感じたことは、信長の殺戮は気違いに近い。宗教分離の第一人者などと良く語られることもあるが、冷静に考えて、一万人単位で殺戮する人間は人格的に崩壊している。
        虐殺だけで5万人近く、戦争での死者数も含めると恐らく10万人近く殺している。
        信長の後の秀吉がスピーディに全国をまとめたこともあるが、恐らくは秀吉がまとめられなくとも、比較的平和裏に全国統一はできたのではなかろうか。恐らく全国の武将が、信長の治世を繰り返してはいけないと感じたのではないかと思う。

        よく光秀はその後のプランも無く中途半端に謀反したから三日天下に終わった、と言われるが、恐らく光秀が謀反しなくてもすぐに誰かが謀反しただろう。晩年の信長は多くから裏切られたことから分かるように、信長の人間的逸脱は部下含め多くの武将から生理的な拒絶を受けていたはずだ。
        (ちなみに著者の作品では秀吉が信長を殺めたという説をとる)


        特に光秀は、当初出世頭が後年は秀吉に追い抜かれ、信長からは散々に苛められ、しかも本能寺に踵を返す出陣は、ライバル秀吉の中国制覇を信長が眺めに行くその露払い的なものである。
        自尊心ははち切れんばかりのところに、最早悪魔としか言えない信長を撃ち殺すことは正義を標榜できる(崇拝する天皇からの指令書もあったとのこと)。
        自分が光秀でも踵を返したのではないだろうかと感じる。

        ちなみにこれは信長の棺の中で詳しいが、光秀は決して世でイメージされているように、突如思い立ったように本能寺に踵を返しているわけではない。
        相当綿密な謀反を計画しており、当日の行動も極めて意図的な道程を通っていると。

        そういわれると確かに、秀才と言われた光秀が直感で動くわけないし、天才と言われた信長が、「あの光秀が謀反したなら逃げ道はないだろう」とあっさり諦めている(山岡荘八作)わけないよなあ。世界地図も知らずに地球が球体であるべきと予想した超天才である、近臣の謀反など想定の想定内だったはずで、むしろ謀反と聞いてほくそ笑んだのではなかろうか。

        いやしかし面白かった。
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        2017/08/18 by フッフール

    • 他1人がレビュー登録、 3人が本棚登録しています
      神君家康の密書
      カテゴリー:小説、物語
      3.0
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      • 初めて読んだ、加藤廣さんの本。
        読みやすい文体だった。
        75歳で作家デビューに敬礼!
        >> 続きを読む

        2015/02/17 by なおみ

      • コメント 1件
    • 2人が本棚登録しています
      秀吉の枷
      カテゴリー:小説、物語
      3.0
      いいね!
      • この本を読んで、去年見られなかった
        京都醍醐寺の桜が見たくなりました。

        2015/03/12 by なおみ

      • コメント 1件
    • 1人が本棚登録しています
      明智左馬助の恋
      カテゴリー:小説、物語
      3.5
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      • 素晴らしい作品だったと思う。

        定説と向き合う
        自分の真摯な疑問に向き合う

        そんな強さが持つ魅力に触れられる秀作だと思う。


        あれほど律儀な光秀が何故謀反に思い立ったか
        美意識が強く、礼説を重んじる光秀が、いくら逆賊とはいえ一日仕えた主に対し、討ち果たすとの単純な謀反を本当に考えていたのか
        世で語られるように、酷い扱いを受けた私的感情に耐えきれず謀反に至った、と、そんな矮小な人物像で本当にいいのか


        史実上の是非はともかく、極めて納得感のある疑問・仮設からスタートし、論理の構成は努めて実証的である。
        情景の想像力は素晴らしく、小説としても充分に楽しめる

        圧巻は、信長がなぜ狂人のように殺戮に走ったのか
        について小説の後半で登場人物に語らせているシーンだろう

        所謂一般の光秀像への挑戦に留まるかと思いきや、それを一層発展させ、光秀を自然の感情で見直すならそもそもなぜ信長がかくも変わったかも不思議といわねばなるまい、という読者の沸き起こる疑問について、丁寧に向き合っているのである。

        一人ひとりの内面に肉薄し、えてしてイメージで固められやすい過去の英雄に対し、人間らしい目線で描き直す著者の腕前には感嘆する。


        最後に、このタイトルが面白い。
        左馬介の恋なぞ、最初と最後にちょこっと出てくるだけで、光秀問い直しが中核といえるこの作品には似つかわしくないようにも思える。


        想像力を働かせてみると、著者が描き出したかったのは、明智家の律儀さではないだろうか。

        律儀さが持つ、儚さと虚しさと弱さと、美しさだろう。

        左馬介は光秀の娘と再婚するが、その嫁さんは過去の中絶の傷で、体を触られると痛みに悶えるという症状。

        健気な嫁さんは、自分は女としての務めが果たせないから、側室を持てと進めるも、左馬介は、良い良いと笑って優しく慰める。

        おとこ30代。その耐えがたい衝動に対し、自分は馬術に打ち込むなどで昇華させられるからと平然と嘯き、実際に貞節を貫く

        側室が当然の世の中にあって愚直なまでに信念を貫く
        仕える光秀の呆れるほどの律儀さに苦笑しながら、しかしそれに惚れこみ、光秀との人生を貫く律儀さ

        騙し騙されあいが当然の世の中にあって、律儀さは極めて弱い。
        光秀が時流を手にできなかったのもむべなからずである。

        だがしかし、そこにある律儀さの、極めてか細くも滲みだす美しさについて、我々は何かを感じ直すことができるのではなかろうか、と。

        そんな著者の思いだったのではないだろうか。
        >> 続きを読む

        2017/08/18 by フッフール

    • 3人が本棚登録しています

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