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川口篤

著者情報
著者名:川口篤
かわぐちあつし
カワグチアツシ
生年~没年:1902~1975

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      ナナ
      カテゴリー:小説、物語
      3.3
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      • 【腐乱する肉体】
         ゾラのルーゴン・マッカール叢書の一冊。前回「ナナ」と間違えて「居酒屋」を読んでしまいましたが(それはそれで良かった)、「ナナ」はその後のお話に当たります(居酒屋が第7巻、ナナは第9巻)。

         「居酒屋」では、ナナは造花工場で働き、時には酒場で踊りを披露していたちょっとはすっぱな大柄の女の子でしたが、その後の本作では舞台女優となって登場します。
         とは言え、演技力もなければ歌も駄目(噴霧器の様な声と描写されています)。だけど、女性的な魅力は抜群で、ただただその肉体的魅力のみでのし上がっていきます。
        官僚の偉いさんや伯爵などのパトロンもつき、彼女の家には男性がひっきりなしに訪れるという有様。

         でも、やはりルーゴン・マッカールの血を引いているのでしょうか。
         生活力がゼロに近く、パトロンから大金をもらっているはずなのに、湯水の様に使い果たしてしまい、何故か借金取りも押しかけるのです。
         そんな生活に自分でも嫌気がさしたナナは、何故か同じ劇場の冴えない俳優と逐電してしまいます。
         有り金全部持って、家を放り出して逃げ出すのです。
         
         二人の生活は、最初は幸せそうではありましたが、徐々に様子がおかしくなってきます。
         ナナは相変わらず生活力はなく、また、男優の方もDV常習者。
         ナナを殴る、蹴るするのですが、何故かナナはそんなダメ男から離れられません。
         だって愛しているのよと。
         殴られればしばらくは泣きはらすのですが、すぐにケロリと治ってまたいちゃいちゃし始めるわけです。
         こういうダメ男から逃げられない女性っていつの世にもいるわけでしょうかね。

         ついに、その男優は残っていた有り金全部を独り占めしてしまい、家に入れると約束した生活費すら入れなくなります。
         いえ、たまに生活費を渡そうともするのですが、何故かナナの方が「昨日もらったお金がまだあるから(昨日、お金なんてもらってはいません!)いいのよ」などと言って受け取ろうとしません。

         じゃあ、どうやって生活費を得ているかと言えば売春です。
         ナナは昔の仲間と共に街娼となって金を稼ぐようになるのです。警察の取り締まりの目を恐れながらね。
         どうして一線の女優からここまでたやすく墜ちるかなぁ……。

         ですが、それでもナナには魅力がありました。男に暴力を振るわれれば振るわれるほど、怪しい魅力が出てくるようです。
         以前、ヒドイ目に遭わせて袖にした伯爵などもナナに未練があり、ナナと再会するや豪奢な生活を与えることと引き替えに囲い者にします。
         とは言え、ナナだっておとなしく囲われているわけもなく、他にも男を作って伯爵の目を盗んでは家に引き入れます。
         そんな男達もナナに搾り取られていくのですよ。資産を食い潰しながらもナナから離れられない馬鹿な男達。
         また、以前の売春婦仲間ともつき合いだし、同性愛的な様相も呈してきます。
         もう、本当にとんでもない程の巨額を貢がせ、それを蕩尽し尽くすナナです。
         ナナの前に零落していく男達は数知れず。
         パリの女性達の間で、君臨すらするナナなのです。モードを作るし(女性達はみんな真似をします)、どんな贅沢でも思いのままです。
         どうしてこんな生活が成り立つのだろうという位の狂気が描かれます。

         終盤に、競馬場のくだりがあります。
         破産寸前の名士が最後の勝負を賭けていたりもするのです。
         その出馬する馬の中にナナという名前をつけられた馬がいます(ここにちょっとしたからくりがあるんですけれどね)。
         放蕩の限りを尽くす競馬場での騒ぎがまるで絵画のように描き出されます。

         ……そして、ナナの最後を迎えます。
         もう、古典なのでネタばれしても良いですよね。
         ナナは、突然そんな社会から姿を消し、外国に行ってしまいます。
         どこぞの王侯をたぶらかしているとか、そんな噂も絶えなかったのですが、ある日、パリに戻ってくるのです。

         とあるホテルの一室。
         もう、ナナは瀕死です。
         ええ、どこかで天然痘にかかってしまったらしいのです。
         巨大なダイヤを持ち帰ったとか、いくつもの輿にお宝を満載して帰ってきたとかいう噂もあるのですけれど、当のナナはもう、膿にまみれ、肉が崩れた、見るも無惨な腐乱した身体になっていたのです。

         天然痘ってそんなだっけ?と思って、以前あかつき先生から勧められて読んだ「Disease」をめくってしまいましたよ。
         ああ……。
         そうなんだ。
         そう。ナナは、それまでの全ての醜悪を一身に抱いて、今は、腐る身体のまま死んでいくのですね。

         やや、冗漫な部分もありますが、非常にインパクトのある作品です。
         ゾラの、ルーゴン・マッカール叢書は、今一度読み直してみるべき作品かもしれないと強く感じています。
         ですが、日本では、先の「居酒屋」、この「ナナ」は比較的良く読まれますが、それ以外の所はほとんどメジャーになっていないのですね(そもそもちゃんとした邦訳が揃っているんだろうか?)。
         これはもうちょっと読むべき作品ではないかと思っている次第です。
        >> 続きを読む

        2020/05/12 by ef177

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