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河合隼雄

著者情報
著者名:河合隼雄
かわいはやお
カワイハヤオ
生年~没年:1928~2007

この著者の本を読んでいる会員ランキング

このランキングは1日1回更新されます。
      生きるとは、自分の物語をつくること
      4.2
      いいね! oka-azu
      • 当時、文化庁長官もつとめていた心理学者で心理療法家の河合隼雄と、小説家である小川洋子の対談が主な内容です。2005年と2006年に行われた二回分の対談が約100ページ、対談の翌年に亡くなった河合氏に向けた小川氏による追悼文が約30ページです。

        第一回は2005年の雑誌・週刊新潮における対談で、映画化作品も含めて小川氏の小説『博士の愛した数式』を主要な話題としています。これを受けて翌年に行われた第二回は、カウンセリング、箱庭療法、『源氏物語』、宗教(小川氏の両親・祖父母が信仰していた金光教についてを含む)、日本と西洋の価値観の比較など、扱うトピックは様々ですが、大きくは物語とは何であるかを巡る対話となっています。全般に、どちらかといえば小川氏が河合氏から知見を引き出す傾向が強かったように思います。河合氏がときおりダジャレを発すのは、村上春樹との対談同様でした。

        二回目の対談の終わり方を見る限り、継続的な対談が企画されていたように見受けられます。文字サイズも大きく一冊の書籍としてはボリュームが不自然に少ないのは、対談から二か月後に河合氏が倒れて翌年に亡くなったために計画が頓挫した影響でしょう。自然と小川氏による追悼文は、二回の対談を振り返る意味合いが色濃くなっています。

        以下、印象に残った言葉を私なりに箇条書きで要約して残します。

        ・友情は属性を超える
        ・良い作品(仕事)は作り手の意図を超えて生まれる
        ・分けられないものを明確に分けた途端に消えるものが魂
        ・やさしさの根本は死ぬ自覚
        ・魂だけで生きようとする人は挫折する
        ・カウンセラーには感激する才能が必須
        ・一流のプレイヤーほど選択肢が多い
        ・奇跡のような都合のよい偶然は、それを否定している人には起こらない
        ・物語を必要としなかった民族は歴史上、存在しない
        ・小さい個に執着すると行き詰まる
        ・人間は矛盾しているから生きている
        ・矛盾との折り合いにこそ個性が発揮され、そこで個人を支えるのが物語
        ・望みを持ってずっと傍にいることが大事
        >> 続きを読む

        2020/10/23 by ikawaArise

    • 他5人がレビュー登録、 10人が本棚登録しています
      こころの読書教室
      カテゴリー:読書、読書法
      4.5
      いいね!
      • 「このごろ本を読む人が少なくなった」ことを残念に思い、臨床心理学者という立場で、おすすめの本について4回行った講義の記録のような本書。なので語り口調で、参加者からの質問も少し載っている。

        「無意識」とか「自我」とか、「自己実現」とか、考え出したら訳が分からなくなりそうで、途中何が何だか・・・というところもあったが、単純に自分の理解を超えていたというだけで、本書が悪いわけではない(笑)

        臨床心理学という分野が理解できるかどうかはさておき、本書にあげられた本は少しづつ読んでいこうと思った。

        ちなみに、村上春樹や吉本ばななは大学時代にわりと読んだが、最近はあまり好まず、長いこと遠ざかっていた。本書を読んで、彼らの何がすごいのか、どうしてこんなに人気なのか少しわかった気がする。
        >> 続きを読む

        2020/04/30 by URIKO

    • 他3人がレビュー登録、 5人が本棚登録しています
      村上春樹,河合隼雄に会いにいく
      2.8
      いいね!
      • なんだかしっくりこなかったというのが本音。

        心理学の専門用語…箱庭療法などいったいどういうことをするのかぼんやりとしかわからないまま読み進めていったり。

        村上春樹の使う横文字の多さ。
        それもほぼ理解できなかった。

        あとこの本の中によく出てくる、「ねじまき鳥クロニクル」だが、まだそれを読んでいないので理解できなかった部分もあると思う。

        3時間ほどでサラっと読めたが、ん~って感じだったなぁ。
        >> 続きを読む

        2015/04/20 by snoopo

    • 他2人がレビュー登録、 10人が本棚登録しています
      こころの処方箋
      カテゴリー:人生訓、教訓
      3.2
      いいね! Tukiwami
      • 不安や不満があるが、解消のしかたが分からない…。そういうことは皆に起こりうる。
        りたいことがあるけど踏み込めない…
        自分を押し殺して頑張ってるのに成果が出ない…
        思い切って意見を述べたのに、分かりあえなかった…
        そんなトラブルの時、考え方の転換法を教えてくれる一冊。
        読んだら、力んでいたのがすっと軽くなるかも。
        >> 続きを読む

        2016/07/23 by botan

    • 他2人がレビュー登録、 13人が本棚登録しています
      絵本の力
      カテゴリー:読書、読書法
      5.0
      いいね!
      • とてもいい本でした。

        河合隼雄、松居直、柳田邦男の豪華面々での講話・対談集。

        ・絵本は読ませるものではない。読み聞かせるべきもの。
        ・絵本の中には音も歌もある。
        ・大人になって読み返した絵本こそが残したい絵本。
        ・・・

        共感を覚えるフレーズが多い。

        各人の絵本の紹介も巧みで、
        ・ヴァイオリン
        ・100まんびきのねこ
        ・だいくとおにろく
        ・わすれられないおくりもの
        ・ポケットのなかのプレゼント
        ・ラチとライオン
        なんかは是非とも買って子どもに読んであげたい。


        上の子は絵本が大好きで、読んでとよく求めてくるし、時に一人で、文字も読めないのに声に出しながら絵本を朗読してたりする。
        これが親としてとても嬉しい。

        読書も勉強もお稽古も、楽しんで自発的にやって貰えるようになればこれほど嬉しいことは無いけれども、得てして、言われるからやる、言われないとやらない、実はそんなに好きじゃ無い

        なんてことになりがちな領域。

        好きなことだけやったらよくて、好きなことだけを伸ばしたら良いと、
        はじめは思っていてもそこはどうしても親のエゴあり、
        なんとかしてやってもらうように四苦八苦。

        折角買ったのに、やりたいって言ったじゃない、どうしてやらないの・・・

        除夜の鐘を聞きながら、年を取るにつれ、煩悩は減るどころか増したように感じます。

        そんなこんなの中、この絵本だけは、先天的に備えてくれたのか、或いは、壁一面の本棚作戦が功を奏したのかは不明ながらも、自発的に大好きと言ってくれていて、これほど親冥利に尽きることもありません。


        ただそんな中、子どもは絵本が好きだから基本的に端から気にせず読んでいくのだけれど、
        あ、これちょっと読んで欲しくないな、これなんか今一だな、
        なんてのが多いのです。

        折角手にとって繰り返し読んでくれる本なのだから、親として、「良い」と思えるような絵本を読んで欲しい。

        もちろんこれも親のエゴなのですが、さはさりながら、じゃあ良い絵本ってなんだろう。絵本ってそもそもどういう世界なんだろうと。

        そう思って書店を歩いていて巡り会ったのがこの一冊。
        名だたる人物がこぞって絵本を力押しするわけで、迷わず購入。

        良い一冊でした。
        心のつっかえがとれて、気持ちよく新年を迎えられています。

        今年も子どもに絵本をたくさん読んであげることを抱負にしたいと思います。
        >> 続きを読む

        2017/08/18 by フッフール

    • 他1人がレビュー登録、 2人が本棚登録しています
      影の現象学
      4.5
      いいね!
      •  本書は1969、1970年の二年間にわたって「心理療法における悪の問題」という京都大学での講義がもとになっている。1976年に思索社より出版され、1987年に講談社学術文庫として新装された。心理学の専門家ではないので、ここに書かれていることが現在どれくらい有効なのかは分からないが、素人が読むかぎりでは全く内容は古びていない。特に本書の題名ににもなっている「影」についての考察は人間を考える上での普遍的な側面を扱っていると思われるため、常に立ち帰って自分を問い直したく考えだと思う。 
         影は自分が生きてこなかった半身である。これが対人関係の中で出てくるとき、自分の影の相手への投影という現象として現れてくることがある。どうしても好きになれない相手の気に入らない部分が実は自分の中の影が相手に投影されている。だからその人自身を見ているというより、自分を見ているといってもいい。その自分が好きになれない人が、他の人とはうまくやっている、自分の好きな他の人とも仲良くやっている。自分には合わないというような時はいよいよ自分の影の投影を疑った方がよさそうである。
         この考え方はわりあい今は受け入れられているのではないだろうか。ちょっとした自己啓発本などにも載っていそうである。河合隼雄の言っていたことが、つまりユングの説が浸透しているというべきかもしれない。
         ただ、影についての話はこうした自分の影といえるものとは他に集合的無意識のレベルの影がある。集合的無意識は神話に出てくる恐ろしい怪物や、自然災害など、人の力では対抗し得ない圧倒的な力であり、洋の東西を問わず伝説や昔話の形で語られてきたものの中に姿を現している。これらは破壊であるとともに創造であるような、逆説的な存在であり、うまく関係を持つことができれば創造的な力を私たちに与えてくれるが、自我が影に乗っ取られるような状況になると破滅が待っているという恐ろしいものである。その辺のことについては数多くの物語や神話、映画や小説、臨床での経験を紹介しながら河合隼雄が語っている。河合隼雄は昔話と深層心理についてもよく語っているが、こうした語り継がれてきたお話の中に人間の真実が語られているというのは本当に面白いことであるし、それがある国、地域に限定されずに世界中に共通するお話として語られているというのは神秘的でさえある。宗教も一つの物語であると思うが、どんな宗教にも他宗教と共通する、言語化できない部分、比喩や物語でしか語れない部分があるというのは、同じことを指しているのだと思う。心理学という学問が発見したかのように語っていることが、おそらく古代においては自明のこととして共有されていたのだろう。人間が何事も論理で片づけようとする中でそうした叡智が忘れられていったのであろう。
         本書にはさまざまな心の病気に罹った人が紹介されており、影との関係において論じられている。もちろん守秘義務があるので様々な事例をもとに要素を混ぜたりしているのだろう。筆者もあとがきで書いているように、職業上クライエントの情報を漏らすわけにはいかないので、こういう書き方になったが、分かりにくくなっているだろうと断っている。臨床の現場で出会うことは私たちからみると神秘のような不思議なことが結構起こるらしい。確かに本書を読んでいると「見ないで信じる」という気分になるところもあり、難しいところだが、そうは言っても人間相手の仕事をしている私には河合隼雄の言っていることは真実であると直感的に分かる部分がある。
         たとえば、本書に紹介されているこのような話。とても人望があって紳士的で周囲の人たちに人格者と思われている人の子どもが学校に行くことができない、とかいうことがある。そういう時は、その人格者である父親の代わりにその人の影を近しいところの弱い者が負わされる場合がある。私はこのようなことがあり得るということを認める。しかしまったく受け入れられない人もいるだろう。人間には誰しも影の部分がある。それを抑圧してしまうと思わぬ所で噴出してその人を破滅に導いたりする。そうではなく、影を自己に統合していくこと、それが成長につながるのである。清濁併せ飲むふところの大きな大人になっていくことが人格の円満な発展のためには必要である。
         文系学部が軽視され、実学指向が強まる今日。コミュニケーション力が重視されると言いつつも、コミュニケーションがとれない人が増えていると言われる今日。世の中が硬直した扁平な正しさに蔽われつつあるように見える今日。本書は今こそ読まれるべき本であろうと思う。  
        >> 続きを読む

        2015/11/22 by nekotaka

    • 他1人がレビュー登録、 4人が本棚登録しています
      猫だましい
      カテゴリー:文学史、文学思想史
      3.0
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      • 古今東西、昔話、寓話、漫画、絵本、小説など、猫の登場する話を心理学者の河合さんが分析していく本です。

        序文にまず、河合さんのたましいの解釈、エジプトにおける猫神信仰、心理療法の見地からみた猫など、猫という動物が人にとってどのような存在と取られてきたのかを解説しています。この本の中でもとても興味深く、面白く読める個所です。

        その後に続いて紹介、心理学的解析がなされるのは、河合さんの豊富な読書量を思わせる選りすぐりの名書の数々です。マイナーなもの、よく知られたものとりまぜてありますが、ところどころ心理学に通じている人にはしっくりくるのかも知れないけど、私には飛躍と感じられる部分があり、なんだかケムに巻かれている気がしました。

        読みたい本を増やしてくれる罪作りな本ですし、河合さんの文章は読みやすいので猫が好きな人は一度読んでみればいいと思います。
        >> 続きを読む

        2016/12/08 by MaNaSo

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      こころと脳の対話
      5.0
      いいね!
      • 敬愛し尊敬するお二人の対談だけに、知的刺激に満ち溢れている。
        脳をいくら研究しても、こころには届かないだろうと思っているので、納得感が大きい。
        それに、茂木さんが、河合さんの前で、子どもみたいにはしゃいでいるように感じてしまうのが、とても好ましいと思う。
        自分は、箱庭をやったことがないので、一度やってみたいと思う。
        そ、その一方で、多少の怖さもあるのは本音。
        自分の気づかない自分が、そこにいるんだろう。
        しかし、河合さんの臨床経験からくるお話は深くて、発展性も大いにあると思う。
        >> 続きを読む

        2015/06/05 by けんとまん

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      子どもの宇宙
      カテゴリー:教育学、教育思想
      4.0
      いいね!
      • 秘密がアイデンティティを創る。秘密は物語になった時、人に話せるものになるような気がします。でももしかして逆かな?人に話すから物語になるのかもしれませんね。http://naniwa1001.blog108.fc2.com/blog-entry-139.html >> 続きを読む

        2015/04/25 by hayato

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      ユング心理学入門
      5.0
      いいね!
      • 知識として「ユング心理学」というものを知っておこうと読み始めましたが、
        最終的にどこか救われたような気持ちになりました。

        河合隼雄さんの本は初めて読みましたが、感じたのは、
        「優しい」
        ということ。
        文章から伝わってくる筆者の人柄。
        学術的な書籍なのに、ぬくもりを感じることに驚きました。

        心理学って、人を客観的に、ある種システマチックに分析する学問なのかと思っていたけど、
        悩んでいる人を救おうとする、優しい学問なのかもなぁと思いました。
        >> 続きを読む

        2014/11/26 by ぽてちん

      • コメント 3件
    • 2人が本棚登録しています
      大人の友情
      カテゴリー:その他の特定主題
      4.0
      いいね!
      • 大人の友情・・・なるほどと思わせるのは、さすが河合先生だ。
        こうやって読んでみると、いろんな視点があるものだと、再認識。
        果たして、今、親友という人がどれだけいるだろうか?
        いやまてよ、友といえる人がどれだけ?とすら思ってしまった。
        一方的に思うだけでは違うんだろうな。
        そういう意味では、相思相愛的な部分もあるのかもしれない。
        親友と悪友はちょっと違うしな。
        >> 続きを読む

        2014/06/18 by けんとまん

    • 1人が本棚登録しています
      大人の友情
      カテゴリー:その他の特定主題
      3.0
      いいね!
      • 臨床心理学者による友情論。様々な友情の形について書かれている。

        たとえば、幼なじみの関係は世間の評価や利害など関係なく認め合える存在だが、互いが共有している過去の話が主で、未来の話にはあまり乗ってこない。

        男女の友情についても述べられている。
        ちなみに私は、男女の友情があったら素敵だなと思っている。
        よく男女の友情は無いという意見も世の中には多く聞かれるが、結婚してからの夫婦は戦友とも呼べる。または、かつては夫婦、恋人同士だったが、その関係が消失した後に友人として付き合うパターンもある。いわば「性」を卒業してしまった関係である。

        著者は男性なので、女性同士の友情に関しては詳しく記されていないが、友情ひとつとっても色々な形があるというのを教えてくれた。
        >> 続きを読む

        2019/02/27 by May

    • 2人が本棚登録しています
      昔話の深層 ユング心理学とグリム童話
      カテゴリー:伝説、民話(昔話)
      2.0
      いいね!
      • ううむなんだろうね…
        空想、想像、連想の上に論理を展開しているようにしか思えず。
        には合わなかった、という事なのでしょう。
        ユングが合わないのか河合隼雄が合わないのか、フォンフランツが合わないのかは知らない。
        >> 続きを読む

        2016/04/08 by maru

      • コメント 2件
    • 3人が本棚登録しています
      とりかへばや、男と女
      カテゴリー:小説、物語
      5.0
      いいね!
      •  河合隼雄のとりかえばや物語論です。前半は「とりかえばや物語」をストーリーに沿って解説していきますので、「とりかえばや」を読んだことがない人でも楽しく読めます。河合隼雄自身が言っていますが、「とりかえばや」は国文学界であまり評判のいい作品ではありません。文学史ではたいてい『源氏物語』を最高峰として、それ以降の物語を「源氏模倣作品」と一緒くたに論じ、「とりかえばや」はだんだんダメになっていった物語の極めつけのような扱いだったと思います。

         河合隼雄は「とりかえばや」から、男と女の問題について深く掘り下げていきます。また、物語という形でしか語られない真実について、臨床心理士らしく解説を加えていきます。というのはカウンセリングとは「語る」という行為によってクライアントが自ら治癒していくもののようだからです。

         後半ではユングの「アニマ・アニムス」の概念について専門的な解説をしています。アニマは「内なる男性」アニムスは「内なる女性」のことのようですが、河合隼雄は一人の人間に男・女・アニマ・アニムスの4つがあると考えているようです。そこに自分の前にいる相手の性(もちろん相手も4つを持っている)によって、さまざまに役割分担をしていくといいます。対話は相手との間にだけ起こるのではなく、自分の中でも内なる男女の語らいが、あるいは同性同士の語らいが行われているのです。物語の世界ではそれが独立の男女になって展開していくと指摘しています。とても説得力のある考え方です。「とりかえばや」で男女の性を逆転されて育てられた姉弟が、同性愛的な段階(相手は異性愛として接してくるのだが)を経て本来の性を取り戻して異性愛に落ちついていく過程は確かに誰にでも起こる得る内的成長かもしれません。

         河合隼雄はさらに古今東西の文学作品やオペラを取りあげて自説を補強しつつ、西洋的な男性優位社会の特性と日本的な社会との違いと物語への現れ方を解説していきます。この辺りを読んでいると、改めて河合隼雄の博識に圧倒される思いです。もう少し長生きして一層混沌としてきたこの社会を見て欲しかったです。西洋的な倫理と日本的な美についての論究ももっと知りたいと思います。混沌に触れてめちゃめちゃになってしまうのではなく、「美」という基準によってブレーキがかかるという話は納得できるものがありました。「とりかえばや」で真相を知りたがった中将や帝が知らない方がよいこともあると思いとどまる、あるいは説得される場面、本当の母に会ったと思いながらそれを口に出さない子ども、これらの規制は「美」であると指摘されています。たぶん、現代の日本がしんどい一つの理由もここにあるのかなと思います。「それは美しくないからやめよう」という規制が働かないのです。しかし河合隼雄はそこまでは言っていませんが、そういう価値観が共有されているかどうかは社会の開放度に反比例するのだと思います。

         ユングは男性優位の社会に浸かっていたためか、アニマを強固なものとして考えていたようだと指摘しています。河合隼雄はたましいのレベルでは両性具有的なものがあるのではないかと考えています。プラトンが紹介している、古代の人類は手や足が4本あって前後左右どちらにも動くことができ、強大な力を振るって神に対抗しようとしたので、ふたつに切り裂かれて、男女になった、だから男女は互いの半身を求め合うのであるという話や、『記紀』にある混沌から始まる物語などを引きながら、たましいのレベルでは混沌とした両性具有的な何かがあり、次に生理的な性、そして社会的な性役割(ジェンダー)があるのではないかと指摘しています。

         旧約聖書の冒頭がそうであるように、人間は二分法が大好きで、それによって考えていくことで発展してきました。コンピューターが二進法で動いていると知って、河合隼雄は、さもありなんと思ったそうです。しかし時に人生さえ狂わせてしまう強大な力を振るうエロスの引力に苦悩し、傷つくとき、この混沌レベル、たましいのレベルにまで到達して人間は成長するのだと河合隼雄は言います。エロスの神はかつて畏敬されていましたが、時代が下るにしたがってキューピッドのようなかわいらしく小さな存在に描かれ、キューピー人形にまで成り下げされましたが、これは人間が獣性を理性で克服できたとする、あるいはそう思い込むために起きた現象で、エロスの力は弱まってはいないと言います。確かに性にまつわる事件は後を絶ちません。この辺にも近代の限界、二分法、理性の限界を感じます。河合隼雄は臨床心理士として現代の最も先端的な病理に向き合ってきたはずです。そのためか、ここに書かれていることの多くは予言的に聞こえますが、ドラッカー風に言えば「すでに起きた未来」を河合隼雄は見ていたのでしょう。

         人間の中にある4つの性、またたましいのレベルへの気づき。混沌や苦悩を切り捨てるのではなく立ち向かうこと、それが人間的な成長、こころの豊かさへ通じる道だというのがよく理解できます。
        >> 続きを読む

        2012/12/21 by nekotaka

      • コメント 6件
    • 1人が本棚登録しています
      働きざかりの心理学
      カテゴリー:発達心理学
      5.0
      いいね!
      •  本書の初出は昭和56年ということだから、1981年。私は7歳。高度経済成長で豊かになった日本人のあり方が、かつてのあり方から変更を迫られているという時代を背景としている。親の世代はたくさんの兄弟に囲まれ、親は仕事や家事に忙しく、一人一人のこどもに構う時間がなかった。貧しく苦労して育った親世代は、自分の子どもには苦労はさせまいと多くのモノを与え、要求を満たし、快適な生活を提供してきた。それなのに子どもが不登校になったり非行に走ったり、理解できないことが頻発しているという現象が起こり始めた時代である。著者はこのような時代には、「出来ることをしない愛」が必要だと説く。そしてそれは出来ることをするよりも多くの心のエネルギーを使うのだと。このようなことは長谷川博一氏も指摘している。しつけはしないと思って今の時代はちょうどよいと。

         本書は「働きざかりの心理学」「働きざかりの親子学」「働きざかりの夫婦学」「働きざかりの若者学」「働きざかりの社会学」の5章に渡っている。「働きざかりの」とあるとおり、話題の中心は中年世代である。子どもの問題、高齢化の問題、思春期の問題は語られるようになってきたが、社会の中核を担う中年に関する研究は極めて少ないと筆者は指摘する。

         会社での人間関係、昇進、評価、劣等感、夫婦の関係、子どもとの関係、中年が背負う課題は多い。しかもそれが前時代を参考にできないというのが苦しいところだ。それぞれのテーマに関して、筆者のカウンセラーとして経験した豊富な事例を引用しながら、具体的に解き明かしていく。自分のことに当てはめて指針とするべき金言があちこちに転がっている。生身の人間に接し続けた人の言葉は重い。「こう生きるべきだ」というような啓発本は数多くあるが、本書はいわゆる「答え」を呈示しない。生きるということはどういうことかを考える上での、ちょっと違った視点を与えてくれる本である。

         3・11を経験して、いよいよ西欧的な文明の行き詰まりを感じている現在、ふり返りにはちょうど良い時期なのかもしれない。
        >> 続きを読む

        2012/10/23 by nekotaka

      • コメント 5件
    • 1人が本棚登録しています
      こころの声を聴く 河合隼雄対話集
      カテゴリー:読書、読書法
      4.0
      いいね!
      • だいすきな河合隼雄先生が、
        こりゃまただいすきな方々と対談されているのを
        まとめた一冊。
        私にとってはまさにドリームブックでした!

        それぞれの著書をテーマに対話がされていて、
        本の裏側を知ることができるのにも満足!
        話されている著書についても興味が湧いてきて、
        読みたい本が増えました(*´∀`)
        >> 続きを読む

        2016/09/24 by botan

    • 2人が本棚登録しています
      心の深みへ 「うつ社会」脱出のために
      カテゴリー:心理学
      4.0
      いいね!
      • 対談自体は'85年~'02年にかけて行われたものを再編集したものだそうですが、内容は全く古さを思わせないです。
        人としての幸福をつい一般的な価値観や見えるものではかってしまいがちですが、本来人生とはとても深いもの。
        自分自身、まだまだ勉強不足で消化しきれていませんが、もっとさまざまな事柄に目を向け、思いを馳せられるようになりたいと思える一冊でありました。
        >> 続きを読む

        2017/06/25 by あいら

    • 2人が本棚登録しています
      なるほどの対話
      5.0
      いいね!
      • 彼のどの本もそうなのですが
        河合隼雄さんの本を読むと心が軽くなる。
        柵がなくなる。
        格好つけたってしょうがないじゃないかって思える。

        本来のじぶんに戻させてくれるなぁと今回も感じた。
        >> 続きを読む

        2017/01/12 by snoopo

    • 2人が本棚登録しています
      生きるとは、自分の物語をつくること
      2.0
      いいね!
      • この対談が実現したのは、映画化された「博士の愛した数式」で、以前数学教師をしたことがある河合隼雄先生が、興味を持たれたのがきっかけだそう。
        なるほど、対談は、「博士の愛した数式」に沿って始まり、数学の美しさや素晴らしさを語るところから始まった。
        特に、対談にテーマを設けず、話の流れのまま…というスタイルをとったせいか、河合先生の臨床心理のお仕事の話から、宗教へと、話のすそ野はどんどん広がっていって、多少、話についていけずに消化不良気味。
        >> 続きを読む

        2016/01/05 by shizuka8

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      とりかへばや、男と女
      3.0
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      • 男と女をゼロイチの軸で見ることの危険性は理解できたと思う。実際にはデジタル的なものの見方は、物理現象の解釈を始めとして極めて危険なので、人文的な分野でも同じことが言えると理解できて、アナログ視点を大切にしていきたいと思わされた。 >> 続きを読む

        2020/07/11 by 兼好坊主

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【河合隼雄】(カワイハヤオ) | 読書ログ - 読書ファンが集まる読書レビューサイト(著者,作家,作者)

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