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松本清張

著者情報
著者名:松本清張
まつもとせいちょう
マツモトセイチョウ
生年~没年:1909~1992

この著者の本を読んでいる会員ランキング

このランキングは1日1回更新されます。
      点と線
      カテゴリー:小説、物語
      3.7
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      • 汚職が取りざたされる某省の官僚と料亭の女中の遺体が福岡県の海岸で発見される。ありがちな情死事件と見られていたが、福岡県警のベテラン刑事、鳥飼重太郎は男の遺留品である領収書を不審に感じ、独自の調査を進める。省庁の汚職事件の観点から心中を疑う警視庁の三原紀一は、鳥飼の調査結果を受け、捜査の舞台を東京へと移す。女の同僚だった女中たちの証言をもとに、三原はある男を容疑者として固めるが、事件当日に北海道へ出張していた容疑者のアリバイは完璧だった。

        殺人の発生以前の行動もあって序盤から疑わしい人物は明白で、犯人とその動機を隠す意図はない。完璧を誇る容疑者のアリバイをいかに崩すかに焦点が絞られた、典型的なハウダニット型のミステリとなっている。全体に無駄が少なくさばけた印象の作品で、人物の描写も作品として必要とされる最低限にとどめられている。そのこともあって、事件を捜査する主人公が序盤の福岡県警のベテラン刑事鳥飼から、中盤以降は警視庁の若手刑事・三原にリレーしても移行に違和感を感じない。トリックに派手さはないが、シンプルなだけに自然で、読み手を欺くことに重きを置いたミステリに抱くこともあるフラストレーションとは無縁だった。

        発表当時の1958年頃を描いた作品は、今となってはある種の時代ものでもあり、現在とは大きく異なる空気感を感じることができた。おそらく作者は本作で時代や人を描くことを目的とはしていなかっただろうが、意図されていないミステリ以外の要素も楽しめた。作品の結末にもかかわる組織における不条理さは、政治や大企業をはじめとした昨今の報道にも相通じるものがあり、物思わせられる。真犯人の真意についても、あくまで対象から離れた控えめな描き方が好印象で、くどくどしい人物描写よりもかえって感慨深い。

        作品自体は読んでいなくても、語彙として目にする機会も多い「点と線」は、約250ページという多くはない紙数もあって機能的でシンプルな作風でありながらも、人間や時代を感じさせる魅力を併せもつ作品だった。
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        2021/06/11 by ikawaArise

    • 他4人がレビュー登録、 27人が本棚登録しています
      黒革の手帖
      4.0
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      • 詳細は下巻の感想に書きました。
        早く下巻読みたいなぁと思った上巻でした。

        2018/05/20 by ∵どた∵

    • 他2人がレビュー登録、 8人が本棚登録しています
      黒革の手帖
      カテゴリー:小説、物語
      4.8
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      • 銀行員のひとつの歯車として働き、上司にも同僚にも蔑ろにされてきた日々を憂いた主人公元子は、隠し預金を横領することで、その歯車から抜け出すことに成功する。華やかな世界、銀座のクラブのママとなった元子は、しかし予想外に出費がかさむ現実に直面する。やっとの思いで手に入れた自分の城を守るため、やがて大きくするためにとった手段とは。また、その結末やいかに。

        米倉涼子、武井咲のドラマで本作を知った、完全ミーハーです。
        原作の主人公は、米倉さんとも武井さんともまた違う、泥臭さがありました。

        夜の銀座の世界は、会社勤めする自分から見ると別世界。
        その世界を垣間見るだけでも、とても面白かったです。
        作品中、具体的な金額が随所に出てきますが、到底私が一生かかってもお目にかかれないような金額が右から左へとコロコロ転がっていきます。
        それに乗じて、人生までもがコロコロコロコロ。

        大金のそばで生活するの怖い!
        とか思った私は、会社勤めから離れられないんだろうなぁ。

        裏口入学や総会屋、隠し預金など、社会が持つ闇に切り込んでいっているところも、魅力です。
        悪に悪で立ち回る元子。
        動機は元子の欲だしそこに正義はないんだけど、なぜか応援してしまう。

        より多くを知り、より力を持つ人間とのパイプがあり、より知恵が回る人間がのし上がって行くんだなぁと、上巻の元子に対して思った感想が、下巻で違う形で思い知らされます。

        原作面白い。
        読んでよかった作品です。
        >> 続きを読む

        2018/05/20 by ∵どた∵

    • 他2人がレビュー登録、 8人が本棚登録しています
      松本清張傑作短篇コレクション
      カテゴリー:小説、物語
      4.3
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      • 松本清張ファンを自認する宮部みゆきが、責任編集を行なった「松本清張 傑作短篇コレクション」の中に収録されている作品の中で「地方紙を買う女」に魅かれましたね。

        この小説は、ミステリとして非常によく出来ているなと思いますね。
        バーのホステスをしている一人の女が、地方新聞の購読を申し込む。
        連載小説が面白そうだからというのである。

        係からそれを聞いて小説の作者は喜ぶが、一カ月足らずで"面白くないからやめる"と言って来たと聞いて、不愉快になると同時に、その読者の目的が自分の小説を読むために購読の申し込みをしたのではないことに気づくんですね。

        この女は、ピクニックに誘い出した男女を殺害し、それに関連する記事が地方新聞に出るのを読みたかったのだ。

        作家が、バーの客としてホステスをしている女に近づき、次第にその女の秘密に迫っていく経過も、実によく書けていると思いますね。

        女は、シベリアに抑留されている夫を待つ身だったが、たまたまデパートで買い物中に、誤って買い物袋の中に紛れ込んだ正札付きの手袋のために、それを見つけた警備員の男に脅され、身体ばかりか金まで貪られるのだ。

        夫が帰還する報せを受け、追い詰められた女は、ダニのように離れない男を殺してしまうのだ。
        浅慮にも道を誤り、同僚のホステスを道連れにさせて。
        だが、最後の最後まで、謎を孕んだままストーリーが進行していく。

        そして、ラストに至って、女の遺書によって真相が判るのですが、そこで、女の哀れさが一挙に迫って来るんですね。

        真相が判ってみると、何となく呆気ない感じのするミステリが多いものですが、そこは、さすが松本清張だけあって、この作品では、それまで謎に包まれていた女の一つ一つの行動が、改めて蘇って来るという感じで、作者の狙いは明らかに成功を収めていると思いますね。

        >> 続きを読む

        2018/05/06 by dreamer

    • 他2人がレビュー登録、 4人が本棚登録しています
      点と線
      カテゴリー:小説、物語
      3.7
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      • 松本清張という作家は、犯行の動機を重視し、社会悪の告発も行ない、生身の等身大の人間のリアリティをミステリの世界に持ち込み、いわゆる"社会派推理"という新ジャンルを打ち立て、"清張以後"という言葉があるように、その後の日本のミステリ界を牽引していくことになるんですね。

        今回再読した松本清張の初期の代表作の一篇「点と線」は、"社会派推理"でありながら、実にエレガントな魅力に満ちた本格ミステリでもあると思う。

        この作品のメインは、言うまでもなく、アリバイ崩しだ。犯人は鉄道を利用して、緻密なアリバイを構築する。
        この鉄道トリックといえば、列車を意外な方法で乗り継ぐことで、時間を短縮するパターンが一般的だ。

        その中にあって、この作品は、目撃者を作るために"空間"にブランクを作る。
        これが有名な「空白の四分間」になるのだが、これは従来の鉄道トリックを踏まえながら発展させた、独創的なアイディアとして素晴らしいんですね。

        さすがに時代の壁があり、トリックの一つは、昭和30年代の読者には意外でも、現代の読者である我々には、すぐに思い付くものに過ぎない。
        ただ、それをもって、この作品の価値が下がるわけではないだろう。

        この作品は、ミステリ界にリアリズムを持ち込んだと言われています。
        確かに、一読すれば誰もがアリバイを作れるというレベルにおいて、リアルだと思う。

        だが考えてみると、汚職の証拠を消すという卑近な目的のために、犯人は異様なまでに複雑な方法で、鉄壁のアリバイを構築するんですね。

        ここにある犯人の意志は、リアルというよりも、何かグロテスクでさえあると思う。
        しかも犯人は、アリバイを現実世界の常識ではなく、探偵小説から発想するんですね。
        時刻表の本を読み、観念の世界で犯罪のシュミレートを繰り返す犯人の思索は、どこか「怪物」じみている。

        表層がリアルでありながら、深層に過剰でグロテスクな世界を置いたところに、この「点と線」の本格としての醍醐味があると思う。

        >> 続きを読む

        2018/11/06 by dreamer

    • 他2人がレビュー登録、 3人が本棚登録しています
      黒地の絵
      カテゴリー:小説、物語
      4.5
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      • 行間を埋める
        隠したいものが明るみに
        上手い言葉の真実
        私達が見聞きして知ったように思うものも
        全て物語があると
        やはりどれも面白い
        >> 続きを読む

        2019/02/24 by kotori

    • 他1人がレビュー登録、 3人が本棚登録しています
      黒い画集
      カテゴリー:小説、物語
      4.4
      いいね!
      • 寄りそい求めあうように見え
        嫉妬や利権を互いに牽制しあう
        犯罪は彼らには隣の青い芝のようで
        羨み、完全のように感じられ、踏みにじりやすいもののようだ
        >> 続きを読む

        2018/04/01 by kotori

    • 他1人がレビュー登録、 10人が本棚登録しています
      霧の旗
      カテゴリー:小説、物語
      4.0
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      • "ある一人の女性の復讐の物語を特異なプロットの中で展開し、人間の心の中の闇を通して、法の限界、裁判制度の矛盾を抉った松本清張の「霧の旗」"

        何度も映画化、TVドラマ化された松本清張の社会派推理小説「霧の旗」は、特異な女性の魅力を描いた復讐の物語だ。
        この復讐は、物語のオーソドックスなパターンの一つであり、とりたてて珍しいものではありません。

        だが、この作品で描かれる復讐譚は、どこか歪み、ねじ曲がっている。そこにこの作品の特異性があるのだと思います。

        強盗殺人で逮捕された兄は無実です。どうか助けて下さい-------。
        有能との評判を聞き、九州から上京したタイピストの柳田桐子は、兄の正夫の弁護を依頼すべく、大塚欽三法律事務所を訪ねます。

        しかし、愛人の河野径子との逢瀬に気のはやる大塚は、高額な弁護料を主な理由に、これを断わります。

        一度は引き下がったものの、尚も電話で訴える桐子。
        その声を耳に挟んだのが、総合雑誌「論想」を出している論想社編集部の阿部啓一だった。

        興味を惹かれ、桐子から話を聞いた阿部は、正夫が犯人だとされた九州のK市の金貸し老婆撲殺事件について調べるのだった。
        そこには、この件を雑誌の記事にしようとする目論みがあったが、「論想」編集長の反対により実現しなかった。

        こうした中、柳田正夫は、一審で死刑判決を受け、控訴するも、二審の審理中に獄死してしまったのだ。

        一方、桐子からの手紙で正夫の獄死を知った大塚欽三は、ちょっとした罪悪感を覚え、事件の資料を入手して独自の検証を始める。
        径子との会話がヒントになり、犯人が左利きであり、したがって、右利きの正夫は、犯人では有り得ないことに気付くが、全ては後の祭りであった。

        兄の獄死により、故郷を捨てた桐子は、銀座のバー"海草"のホステスになった。
        そして、その店にたまたま来たのが阿部啓一だった。

        この桐子との再会をきっかけに、もう一度、事件を調べ直した阿部は、大塚が独自の検証をしていたことを突き止める。
        さらに想像をたくましくした阿部は、大塚が正夫の無実の証を発見したと確信して、そのことを桐子に告げるのだった-------。

        ここから、大塚の愛人の河野径子の存在が、大きな意味を持って立ち上がってくる。
        径子には大塚の他に、杉原健次という若い愛人がいた。
        健次は、径子が経営するレストランの給仕頭であり、"海草"のママの弟であった。
        その健次が、径子との密会場所の家で殺されてしまう。

        第一発見者となったのは、とある事情で健次の後を追っていた桐子であった。
        現場にやって来た径子が、慌てて立ち去ったのを見ていた桐子は、この奇縁を利用して、径子を犯人に仕立てようとするのだった。

        これがまんまと図に当たり、径子は殺人容疑で逮捕され、さらに大塚と径子の関係が明らかになり、大塚は大打撃を受けるのだった。

        社会的な信用を失いながら、それでも愛人を助けようとする大塚は、桐子が事件の真相の鍵を握っていることを察知して、証言を頼むのだが、桐子はそんな大塚を罠に掛け、さらなる絶望の淵へと突き落とすのであった-------。

        この歪みの原因は、ヒロインの柳田桐子にあるのだと思います。
        ある一途な女は、強盗殺人の犯人と目された兄を救うことが出来るのは、弁護士の大塚欣三だけだと思い込み、兄の弁護の依頼のため、彼に会いに行く。

        しかし、大塚に弁護を断られると「貧乏人には、裁判にも絶望しなければならないことがよく分かりましたわ」と、大塚をなじるのだった。

        そして、その後の、兄の獄死と、阿部啓一の話によって、桐子の復讐心は一直線に大塚へと向かうのだ。
        大塚の推理によって、殺人事件の犯人が明らかになっても、桐子には関係ない。

        あくまでも復讐すべき相手は、大塚なのだ。
        しかし、これを大塚欽三側から見てみると、彼にしてみれば、折り合いがつかなかったために、桐子の依頼を断っただけの話なのだ。
        これで復讐のターゲットにされたのでは、たまったものではない。
        まさに逆恨みそのものなのだ。

        もし仮に、この作品の主人公が桐子ではなく大塚だったならば、理不尽な理由で破滅へと追い込まれる男の恐怖を描いた、サイコ・ミステリになるのではないかと思います。
        まさしく、柳田桐子の行動は、サイコ・ミステリの犯人のそれと酷似しているんですね。

        では、なぜ作者の松本清張はそこまで、ヒロインの肖像を歪んだものにしたのだろうか?

        常識的に考えれば、柳田正夫を冤罪に陥れたのは、検察側のミスであり、日本の裁判制度の矛盾ということになるかもしれない。
        しかし、桐子はそうは考えなかった。

        つまり、桐子は法の在り方の限界を批判し、一般論に解消していくやり方に、最後まで抵抗している。
        つまり、松本清張はこの桐子の在り方を通して、実は法の限界、裁判制度の矛盾などを抉っているのであり、一般論に解消してはならない問題を、しつこく追い続けることによって、桐子の眼と重なる意識をそこに示しているのだと思います。

        やや、頑なに感じられるほど、桐子に大塚弁護士に対する復讐を企てさせるのも、社会一般の事なかれ主義、なれあい主義に対する容赦のない批判が込められているのだと思います。

        そして、このことは、柳田桐子というエキセントリックな性格の女性を創造することで、この作品の意図が鮮やかに表明されているのだと思います。

        ところが、面白いことに、このように歪んだ行動をする桐子は、ある意味、とても魅力的なんですね。
        この作品で描かれる桐子は、縦から読んでも横から読んでも、その復讐心理や行動については、一片の同情すら起こることのない不思議なシチュエーションに置かれている。

        ところが、それにもかかわらず、桐子がどうしても憎めない。
        そして、彼女の気持ちや行動の中に、一片の悪すら見い出すことができないという奇妙な感情に捉われるのです。

        このように、桐子の復讐を肯定したくなるのは、ターゲットが社会的な成功者だからなのだと思います。
        高名な弁護士であり、家庭がありながら、美人の愛人ともよろしくやっている。

        しかも、愛人との付き合いは真剣なものであり、後半、自分の社会的な地位を捨ててまで径子を助けようとする姿からは、男気さえ伝わってきます。

        この大塚欽三、なかなか立派な人間だと言えます。
        しかし、だからこそ楽しいのだ。彼が、破滅へと追い詰められていくのが-------。

        「他人の不幸は蜜の味」とは、よく言ったもので、どうも人間というものは、自分と自分が行為を抱く以外の人間の不幸には、ある種の快感を覚える生きものらしい。

        おまけに、不幸になる人間が自分より地位が高ければ高いほどその快感も高まっていくようだ。
        こうした感情を抱くのは、"人間の業"なのかもしれません。

        もちろん、理性によって、このような"負の感情"を持つことが恥ずかしいことだと、ほとんどの人は分かっていると思います。
        誰もが胸の奥に隠して、日々過ごしているのです。
        その隠している部分を、桐子の行動は刺激し、挑発するんですね。

        かつて桐子の必死の依頼を断った大塚が、愛人を助けるため、桐子の眼前で土下座した時、少なくとも私は、暗い愉悦を覚えずにはいられませんでした。

        恐らく、松本清張は、こうした感情のありかを熟知しているように思われます。
        それだからこそ、大塚から家庭と愛人と社会的な地位を奪い、徹底的に破滅させたまま、物語の幕を引いたのだろうと思います。

        桐子の行動を肯定し、彼女を魅力的にしているのは、"人の心の中の闇"だと思います。
        そのような心の闇が人間にある限り、この作品の輝きが消えることはないでしょう。

        さらに、この作品をミステリの観点から眺めれば、探偵役の設定がなんともユニークなんですね。
        事件の謎を解き、犯人を指摘するのは、桐子の復讐により、破滅に追い込まれる大塚欽三その人なのだ。

        大塚欽三は弁護士だが、一連の事件に関係しているわけではない。
        したがって彼の立場は、素人探偵と言っていいと思います。

        愛人の無実を信じる大塚の推理は、杉原健次殺しと九州の殺人を結びつけ、ついに真犯人を指摘するのですが、桐子の復讐により、それを証明することができないのだ。
        この意外な真犯人が、この作品のもう一つの読みどころだと思います。

        とにかく、この作品はミステリの骨格だけを取り出しても、しっかりした見事な作品で、それを特異なプロットの中で展開したところに、この作品の比類なき面白さがあるのだと思います。

        桐子の肖像と相まって、忘れ難い印象を残す、異色のミステリだと思います。

        >> 続きを読む

        2021/12/26 by dreamer

    • 他1人がレビュー登録、 3人が本棚登録しています
      砂の器
      カテゴリー:小説、物語
      3.7
      いいね!
      • 映画に引き続き原作を。
        真犯人がわかっていて読んでいたせいかもしれないけれど、ミスディレクションが強引で、しかも音を使ったトリックは今読むと強引。ミュージック・コンクレートを題材にしたのは、当時としては斬新だったのだろうけれど。
        その点では、真犯人だけに焦点を絞ってそのほかのエピソードを思い切って刈り込んだ映画版の方が、はるかに面白く見応えがあり、かつ人間ドラマとして圧倒的。これは原作を映画が凌駕した稀な好例だったんだな(ちなみに、近年の好例は「霧島、部活やめるってよ」だ)。
        >> 続きを読む

        2019/04/26 by 室田尚子

      • コメント 2件
    • 他1人がレビュー登録、 12人が本棚登録しています
      砂の器
      カテゴリー:小説、物語
      4.2
      いいね!
      • 名作なので、みなさんが内容と結末はご存じと思われますので振れませんが、私的には新進芸術家の「ヌーボー・グループ」の和賀が前衛音楽なる箇所が気になり頭の中であれこれ考えました。シンセサイザーを使った事などとあるから、今でいう「プログレッシブ・ロック」の「ピンク・フロイド」に近い感じかなと勝手に想像していました。こんな楽しみ方も面白いですよ。 >> 続きを読む

        2018/07/22 by rock-man

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      信玄戦旗
      カテゴリー:小説、物語
      3.0
      いいね!
      • 当時最強を誇った武田信玄の生涯。

        志半ばで散った上、死後その繁栄が続かなかった悲劇の名将の生涯は感慨深い。

        山岡荘八の徳川家康を読んでいる最中だったため、武田信玄には特別な思い入れを持って臨んだ。

        信玄の生い立ちから、実父追放など、家中の話を抑えつつ、ライバルで有る上杉謙信との死闘。
        生命を落とすこととなる上洛戦。そのドラマチックな人生はとても刺激的で有る。

        彼を名将たらしめているのは、結局のところ類まれなるバランス感覚のように思う。
        領内の生産力に十分な配慮をし、付加価値の高い金の産出と独占。

        また、戦時に関しても、机上で十二分にシミュレートした上で必勝を期しているのが印象的。
        とくに印象的なのは、敵同士を噛み合わせたり、睨み合いの状態に持ち込んで動きを取れなくしてしまう術策の妙。

        基本は力と力のぶつかり合いのように見える武者合戦も、裏では現代戦に負けない
        権謀術策が乱舞していたことを考えると、まさに歴史に学ぶことは多いというのが頷ける。

        松本清張、武田信玄と2つのビッグネームに大きな期待を持っていたが肩透かし気味。
        >> 続きを読む

        2011/11/28 by ice

    • 1人が本棚登録しています
      潜在光景
      カテゴリー:小説、物語
      4.0
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      • 初読みの松本清張氏。
        恐怖小説的な味わいのある六篇をおさめた短編集。

        六十年以上も前に書かれた作品もあるが、描かれている心理はとても現代的で、古さを感じさせない。中でも「鬼畜」がおそろしい。愛人との間にできた三人の子供を一人ずつ「始末」していく男と、その妻の行動と心理に寒気を覚えた。

        「雀一羽」は、江戸時代元禄年間の話。順調に出世街道を歩んでいた旗本が、生類憐れみの令に抵触したために無役に落とされ、次第に狂気に囚われていくさまが描かれる。

        順調だった日常が、ある日、突然奪われる。そんなことは、いくらでも現代にある。その恐怖を、抑えた筆致で高めていく本書の作品には、ページをめくるのがちょっとこわい感じもした。


        >> 続きを読む

        2021/05/16 by Kira

    • 1人が本棚登録しています
      奥羽の二人
      カテゴリー:小説、物語
      4.0
      いいね!
      • 表題作を含む歴史物の短編集です。著者は超有名な推理小説家の松本氏ですが、歴史にも非常に造詣が深く、読み応えのある一冊です。
        特に表題作の「奥羽の二人」は、豊臣秀吉の奥州仕置により会津に移封された蒲生氏郷と、若き東北の覇者とも言える伊達政宗を主人公にしたものです。奥州の伊達政宗(会津は伊達政宗の旧領)を抑えるための配置をし、伊達政宗のみならず蒲生氏郷の天下取りの野望さえも抑える、という老獪な秀吉の仕置、また会津を取り返す為の伊達政宗の巧妙な謀反の計画とそれを見事に受け止めた蒲生氏郷の機知や胆力等非常に面白い内容です。 その他、室町幕府管領であった細川家を再興させた細川藤孝(幽斎)を描いた「細川幽斎」等も歴史好きには非常に面白い内容です。
        >> 続きを読む

        2011/09/27 by toshi

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    • 2人が本棚登録しています
      日本史七つの謎
      カテゴリー:日本史
      4.0
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      •  帯に書いてあるように、歴史をテーマとした鼎談が七つ入っている。定価470円なので、一つの鼎談が70円未満、かなりお得な気がする。わたしは二つめの鼎談、”短詩形文学はなぜ日本文学の中心なのか”、これが読みたくてつい買ってしまった。鼎談者は、丸谷才一、大岡信、山崎正和。話の核心部はさらりと流したいので、いきなり結論をいうと、とにかく日本人は短いものが得意らしい。そして、このあとのやり取りがおもしろかった。

         <山崎> あいさつと女のスカートは短いほどいい(笑)
         <丸谷> なるほど。それで短詩形文学中心になったんだ(笑)
         <大岡> スカートは長いほうがいいときもあるけどなあ(笑)

         わたしもそう思います。これではただのスケベで終わるから、もう一つ真面目なやり取りも。

         <山崎> たとえばこのまま能や茶の湯や歌舞伎が世界の芸術になるとは思わない。だけど、その精神とか哲学というところに戻していくと、ほとんど全部が二十世紀後半のもの、ないしは二十一世紀のものだっていう感じがします。

         <丸谷> まったく同感だなあ。
        >> 続きを読む

        2014/12/28 by 素頓狂

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    • 3人が本棚登録しています
      駅路
      カテゴリー:小説、物語
      3.0
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      • 松本清張短編集。どれとは言わないが参考になるものもあった。どれも鈍い切れ味があって、あとで「あれってこういうことだったのかな」とふと思い返されたりする。さすがです。
        妹絡みの殺人のやつはあれ歌われなければ完全犯罪だったのでは??まあそれだけ都会で誰かと争うのは難しい…じゃなくて完全犯罪を行うにはいくつもの危ない橋を渡る必要があるってことだな。いつも誰かに見られてる。安心なような、怖いような。
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        2021/01/14 by aki

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      黒い福音
      カテゴリー:小説、物語
      4.0
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      • "巧みな手法を駆使した、松本清張の倒叙ミステリの傑作「黒い福音」"

        物資が窮乏している、戦後の日本。バジリオ会に所属するグリエルモ協会は、日本への救援物資の横流しで莫大な利益を上げ、教会の勢力を拡大していた。指揮をしているのは、バジリオ会の日本管区長フェルディナン・マルタン神父。それにグリエルモ協会の主任司祭ルネ・ビリエ神父や、元は敬虔な信者だったが、今はビリエ神父と愛人関係にある江原ヤス子など、多数の人々が関わった大掛かりな犯罪であった。

        闇ブローカーの裏切りにより、警察の摘発を受けそうになったこともあったが、日本人信者を犠牲にして切り抜けた。しかしこの件で教会は、ある男と、深い関係を持つことになる。表面上は、順調に発展しながら、それから七年の月日が流れた。

        新しくバジリオ教会の神父になったトルベックは、信者の女性とのアバンチュールを楽しむ日々を送っていた。ある日、信者の生田世津子と出会ってトルベックは、激しい求愛感情を覚える。その一方で、教会の会計係に抜擢されたトルベックは、S・ランキャスターというイギリス人の貿易商を紹介される。

        このランキャスターこそ、七年前の事件をきっかけに、教会の裏側に深く食い込んだ、闇の世界の住人であった。彼はトウキョウ・ホンコン間に新空路を開設する某国の航空会社に人材を送り込み、麻薬の運び屋にしようとしているのだ。そして、その人材として目を付けたのが、生田世津子だったのだ。そうとは知らず、ランキャスターの力で、スチュワーデスになった世津子。

        しかし、トルベックから真実を聞いた彼女は、運び屋になることを拒否。困ってランキャスターに相談したトルベックだが、彼の命令は知り過ぎた女を殺せというものだった。逡巡しながらも、ランキャスターのお膳立てに乗ったトルベックは、遂に最愛の女性を殺してしまった。

        生田世津子の死体は、中央線O駅と高久良町を流れる玄伯寺川で発見された。当初は、自殺だと思われたが、司法解剖によって殺人と断定される。その後、警察の捜査によって、トルベック神父が浮かび上がってくる。ロクサンと呼ばれる藤沢六郎部長刑事と、S新聞社の佐野記者は、それぞれ独自の動きで、有力な情報を入手した。

        その間、意外な形でトルベックの名前がマスコミに露出して、報道陣は過熱する。しかし、バジリオ会の態度は強硬であり、報道も警察も、深く踏み込むことが出来ない。遂に、トルベックを重要参考人として訊問した警視庁だが、彼の頑なな態度に、これも空振りに終わった。しかも、解放されたトルベックは、教会の命により、突如、帰国してしまったのだ。藤沢刑事や佐野記者は、ほぼ真相に達するが、それも虚しく、事件は迷宮入りしてしまったのだ。

        この松本清張の「黒い福音」は、実在の事件をモデルにした作品だ。当時の日本を震撼させた、事件の概要は、昭和34年3月10日、東京都杉並区の善福寺川で、BOAC(英国海外航空会社)スチュワーデスの武川智子さんが、他殺死体で発見された。死因は扼殺。警察の捜査で浮かび上がった容疑者は、カトリック系のドン・ボスコ修道院の会計主任、ベルギー人のベルメルシュ・ルイズ神父であった。

        因みに、ドン・ボスコ修道院は、戦後、強引な布教活動で施設を増やし、さらには、ララ物資の砂糖横流し事件や闇ドル事件を引き起こし、問題視されていた。神父が容疑者、しかも殺人の動機が痴情のもつれらしいとあって、マスコミは沸騰。神父の無実を信じるカトリック信者の発言もあり、侃々諤々の大騒ぎとなったのだ。さらに、重要参考人として訊問を受けたベルメルシュ神父は、これを乗り切り、解放されるや帰国してしまったのである。物証の少なさと、重要参考人の帰国により、捜査は頓挫。事件は迷宮入りしてしまったのだ。

        この事件が話題となったのには、三つの理由がある。ひとつは、殺された女性の職業がスチュワーデスだったこと。昭和30年代の女性の最先端の職業だったスチュワーデスが殺されたというだけで、センセーショナルな話題となったのだ。

        もうひとつが、カトリック系の外国人神父が、容疑者として挙げられたことだ。聖職者が犯罪に関わったかもしれないという可能性は、当時の人々に大きなショックを与えたのだ。

        そして最後のひとつが、外国人が関係した犯罪が起きた時の、捜査の壁だ。敗戦による占領統治を経た昭和30年代の日本は、まだ国際社会の中で低い地位に甘んじなければならなかった。そうした現実の状況が、神父の帰国に対して手をこまねく結果となったのだ。事件の迷宮入りは、戦後の日本の置かれた状況を、はからずも浮き彫りにしたのだ。

        こうしてポイントを並べてみると、いかにも松本清張が食指を動かしそうな事件だということが、よくわかる。松本清張の事件への考察は、まずエッセイ風の論文から始まる。昭和34年8月に発表した「『スチュワーデス殺し』論」だ。清張は論文で、「私はカトリックには無関係で、何らの恩怨もない。ただ、信者が盲信のあまりベルメルシュ神父を頭から無条件にかばい立てるので、少々腹が立ってこの一文を書く気になったまでだ」と、執筆の動機を明らかにしながら、事件の全体像を把握する。

        ベルメルシュ神父を犯人と仮定して、緻密な検証を進めるのだ。その一方で、"非常に空想的な想像であるが"と断りを入れながら、殺人の背後に第三の人物の指示があったのではないかと、大胆な推理をする。そして、「明瞭なのは、この事件の捜査が壁につき当たったのも、ベルメルシュ神父の帰国を警視庁が知らなかったのも、要するに日本の国際的な立場が極めて弱いからである。そして日本の弱さが、スチュワーデスという一個人の死の上にも、濃い翳りを落しているのである」という意見表明で、締めくくったのだ。はっきり言ってしまえば、この論文で「黒い福音」の内容は、言い尽くされていると思う。

        そして、この「『スチュワーデス殺し』論」の三か月後に連載が開始された「黒い福音」は、二部構成の物語となっている。第一部は、教会側の視点で、トルベック神父が恋人の生田世津子を殺害するまでの経緯が、教会の堕落を絡めて描かれている。第二部は、警察と新聞記者の視点を中心に、捜査陣が敗北するまでの経緯が描かれている。殺人が起きるまでは、犯人側の視点であることから、この作品は倒叙ミステリになっている。

        この倒叙ミステリの利点は、犯人の心理を深く掘り下げられることにある。清張はこの利点を十全に生かして、希望に燃えた神学生が神父になり、やがて教会の腐敗に取り込まれ、遂には殺人者となる過程を活写しているのだ。殺人前後のトルベック神父の惨憺たる有様は、物凄い迫力だ。

        さらに、この作品が倒叙ミステリであることには別の理由があるのだと思う。「『スチュワーデス殺し』論」の中で、"非常に空想的な想像"といった、第三の人物を登場させるための仕込みである。第三の人物----この作品のS・ランキャスター----は、あくまでも清張の想像なのだ。

        ノンフィクション・ノベルの体裁をとったこの作品に、いきなり作者の想像が混入したのでは、読む者が戸惑ってしまう。だからこそ清張は、救援物資の横流し摘発の件で、教会とランキャスターの関係が出来たことを匂わせるのだ。教会側の視点で語られるからこそ、その存在が無理なく物語に組み込まれているのだ。

        小説の作法で見れば、確かに巧みな手法であると思う。だが一方で、ランキャスターの存在は、この作品のノンフィクションの部分の味わいを薄めてしまった感があるように思う。それはラストに使われた、BOAC極東航路での密輸事件の摘発についても同様だ。

        当時起きた実在の事件を、物語のオチに持ってきた着眼は、確かに素晴らしい。しかし、スチュワーデス殺しと密輸事件の関係は、定かではない。それを結びつけた結果、どうなったか。ノンフィクション色が、さらに弱くなってしまっているのだ。

        この作品は、作家・松本清張とノンフィクション・ライター・松本清張が、力一杯、綱引きをしているようなイメージがある。結果として、作家としての面が勝ったのは、やはりこの作品が、小説だったからだと思う。

        >> 続きを読む

        2021/02/23 by dreamer

    • 3人が本棚登録しています
      眼の壁
      カテゴリー:小説、物語
      4.0
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      • 松本清張という作家は、ミステリの分野においては、社会派推理小説を確立し、多くの作品群によって国民的な人気を博し、推理小説の面白さを幅広い読者層に広め、日本において推理小説に市民権を与え、戦後のミステリ史において、一時代を築いた稀有な巨匠と言えると思う。

        一方、それまでの江戸川乱歩や横溝正史などの、いわゆる古典的な本格探偵小説を愛好する者からは、仮想敵と見なされていた時期もあったと思う。

        松本清張は、旧来の怪奇的な探偵小説を「お化け屋敷」と批判し、社会性や現実性の重視を標榜したことも、探偵小説ファンにネガティヴなイメージを植え付けた原因だったのかも知れません。

        しかし、現在、彼の主張をいったん棚に上げた上で無心に、彼の膨大な作品群を読み返してみるならば、むしろそこから浮かび上がってくるのは、社会性や現実性の枠内で、斬新なトリックの発明や粘り強い推理の網の構築に、とことん執着した作家の姿なのだと思う。

        そういう意味から、今回読了した「眼の壁」には、我々読者をあっと言わせるような奇抜なトリックが用意されている作品なんですね。

        被害額三千万円の手形詐欺事件の責任を負って自殺した会計課長。
        彼に信頼されていた次長の萩崎竜雄は、事件が闇に葬られ、犯人が何の罪にも問われないという事態に憤りを感じ、友人の新聞記者・田村の協力を得て、犯人を追及しようとする。

        だが、別の方面から事件を探っていた弁護士の助手が射殺され、弁護士も拉致されるなど、巨悪の魔手は事件の秘密を知ろうとする人々に伸びていくのだった-------。

        この作品は、同年に刊行された「点と線」よりも、遥かに社会派色が濃い長篇であり、悪のスケールも更に巨大化している。
        いわゆる"社会派推理小説"のイメージは、この作品によって世間に定着したと考えていいのかも知れません。

        しかし、事件の関係者が、餓死体と腐乱死体と化すエピソードでは、手の込んだ死体処理の方法が最終的に明らかになるなど、数々のトリックが散りばめられた作品にもなっていると思う。

        また、社会的地位の高い人物が、身元や過去を欺くために、さまざまな偽装工作を行なうというのは、"清張ミステリ"の定番だが、そのモチーフが登場した最初の作例が、この作品だと思う。

        従来の本格のフォーマットに頼らず、謎解きを主眼とするミステリの新たなフォーマットを創造してみせた試行は、賛否好悪といった問題は別として、凡百の作家に成し得る業でないことは間違いない。

        その意味で、この作品は、今なお本格の可能性というものについて考えさせる小説だろうと思いますね。

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        2018/12/08 by dreamer

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      蒼い描点
      カテゴリー:小説、物語
      3.0
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      • 松本清張の初期の推理小説の内の一冊、「蒼い描点」を読了。

        編集者の椎原典子は、人気作家の村谷阿沙子から原稿を受け取るため箱根に赴いたが、そこで顔見知りのフリーライター田倉が、阿沙子と一緒にいるのを目撃した。

        互いに接点などなさそうな二人が、なぜ一緒にいるのか?

        翌日、田倉の変死体が発見される。
        彼の死は、自殺として処理されたが、典子は阿沙子に対して疑惑を抱くようになった。

        そして、新たな被害者は意外にも-------。

        とにかく、登場人物がやたらと次から次へと姿を消す小説だ。
        死者も行方不明者も続出し、典子と組んで謎を解こうとする同僚の崎野竜夫まで、しばしば姿を消したりする。

        作中でも、アガサ・クリスティーの「そして誰もいなくなった」が引き合いに出されているが、濃霧の中を彷徨うような印象が最後まで持続する。

        また、この作品の特徴は、典子と崎野が繰り返す推理合戦の描写に、ただならぬ力が籠っている点にもある。
        作中に推理の要素が占める割合の大きさでは、数ある松本清張の推理小説の中でも五指に入るのではないかと思う。

        真犯人も意外だし、シンプルだが意表を衝くトリックも、最後に明かされることになる。

        推理小説として、成功作と言えるかどうかは微妙なところだが、社会派推理小説の巨匠と言われる松本清張ですが、この作品は"本格推理作家としての松本清張"を再認識する上で、決して読み逃せない作品であることは確かだ。

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        2019/02/16 by dreamer

    • 2人が本棚登録しています
      十万分の一の偶然
      カテゴリー:小説、物語
      2.0
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      • アマチュアカメラマンが撮った6人もの死者を出した悲惨な交通事故の写真。それが新聞で年間最優秀賞に選ばれあまりに事故直後を写せている事から、1万分の1か、いや10万分の1の偶然をものにした写真ですと評価されていた。

        しかし、偶然こんな写真が撮れるだろうか?と、この事故で婚約者を亡くした人が疑い調べていく・・・。

        ちょっと最初から先がよめすぎてつまらない印象でした。
        >> 続きを読む

        2014/10/20 by yan

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      かげろう絵図
      カテゴリー:小説、物語
      5.0
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      • 松本清張は社会派推理小説の雄として有名だが、時代小説においても、数多くの傑作を書いており、そのような中の「かげろう絵図」(上・下巻)は、推理小説系列の作品群と共通する要素が、多く含まれていると思う。

        主人公の島田新之助の胸のすくような活躍が、中盤以降の読みどころとなるのだが、かといって単純な勧善懲悪の物語というわけでもない。

        全篇を統一しているのは、巨大なシステムとシステムの闘いの前では、善であれ悪であれ、個々の人間の力など、ささやかなものでしかないという世界観であり、悪の勢力が一瞬で没落するラストも、どこか寂寥感を漂わせている。

        この世界観は、社会悪のありようを剔抉しようとした、松本清張の他の作品群とも共通するものだ。

        また、お多喜が足を滑らせた踏み台の消失に始まり、菊川の死体処理、寺社奉行謀殺のトリックなど、推理小説的な要素が極めて多く含まれていると思う。

        そもそも、石翁一派の極めて頭脳的な悪事の数々と、それを暴こうとする主人公サイドの、虚々実々、丁々発止の知恵比べは、まるで推理小説における、名犯人対名探偵の対決を連想させるような描き方なのだ。

        個性豊かな登場人物たちの中では、黒幕の中野石翁の描き方が、実に上手い。
        彼は、人命を塵芥としか見なさず、不要となった味方さえ切り捨てる極悪人ではあるものの、結末で見せる引き際の潔さは天晴であり、魅力的な敵役として、鮮やかな印象を残すのだ。

        一方、与力の下村孫九郎、加賀藩用人の奥村大膳、大奥添番の落合久蔵ら、利権のおこぼれに与ろうと、石翁に諂う小悪党たちの卑小さ加減も実にリアルだ。

        これまた、松本清張の現代小説における、悪の描き方に通じるものを感じるのだ。

        >> 続きを読む

        2020/06/12 by dreamer

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