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宮崎嶺雄

著者情報
著者名:宮崎嶺雄
みやざきみねお
ミヤザキミネオ
生年~没年:1908~1980

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      ペスト
      カテゴリー:小説、物語
      3.6
      いいね! Minnie
      • 【それは、ネズミが死んだことから始まった】
         何度目かの読み直しです。
         194*年、オラン(アルジェリアの港町)が舞台になります。
         異変が起き始めたのは4月16日。
         作品の内容はみなさん既にご存知だと思いますので、今回のレビューは何が起きていったのかに焦点を当てて辿ってみようと思います。

        〇 大量のネズミの死骸が見つかる
         町の至る所で大量のネズミの死骸が見つかり始めます。
         中には、人前に出て来て苦しんで死ぬネズミも。
         何が起きているんだ?

        〇 患者が出て、人が死に始める
         2~3日の間に似たような症例の患者が20名程出ます。
         死者も3人出ました。
         これは……ペストじゃないのか?

        〇 市は事態を認めたがらない
         本作の主人公は医師のリウーなのですが、リウーたちは知事らにペスト発生の疑いがあるので強力な検疫体制を取ることを繰り返し進言します。
         しかし、知事たちはこれを認めたがりません。
         「君はこれがペストだと、はっきり確信をもっているんですか。」
         「これは語彙の問題じゃないんです。時間の問題です。」
         ペストであるのなら、法的な措置を取らなければならず、市民たちもパニックになりかねません。
         行政は、そういうことは認めたがらないのです。

        〇 ペストが蔓延する
         オラン市は20万人の人口を有していますが、事態が発生してから3週間目で死者は302名、5週目には321名、6週目には345名と、確実にペストは蔓延していきます。

        〇 市民がパニックに陥る
         ペストの兆候を示した一人の男は、戸外へ飛び出していき、いきなり出会った一人の女性に抱きつき、「おれはペストにかかった」とわめきながらその女性を抱きしめました。
         どの時代にもいるんだわ、こういう輩が。
         また、市内のあちこちで騒乱が起き、憲兵隊が武器を使用するようになります。
         市の門は閉鎖され、市への出入りは禁止されますが、門の周辺で衛兵と市民との衝突が生じます。

        〇 経済が破壊される
         ペスト蔓延のため仕事が続けられなくなり、失業者が増大します。
         ペスト患者の看護人や死体を埋める墓堀の人手が必要になりますが、皮肉なことにこの人手に事欠くことはありませんでした。
         これらの仕事には危険度に応じて手当てが支払われていましたが、失業者たちは生活のためにこれらの仕事を引き受けていたからです。

        〇 ワクチンが効かない
         オラン市はすぐに中央にペストのワクチンを要請するのですが、届いたワクチンの数が不足しているばかりか、どうも効かないのです。
         型が違うようだ……。
         オラン市在住の医師は、市で流行しているペストから新たなワクチンの製造を始めるのですが……。

        〇 怪しげな予言が流行する
         いったいいつまでこの状態が続くのか?
         不安に駆られた市民たちは、カトリック教会の聖者たちの予言に熱中し、ジャーナリストたちが発表する奇妙な計算をもとにした予測に飛びつき、ノストラダムスなどが引き合いに出されるようになります。

        〇 ペストの増加が鈍り始める
         万聖節(11月1日)を迎えて、ようやくペストの勢いが鈍り始めたように思われます。
         12月に入り、少しずつ終息の気配が漂い始めます。
         市内には、いなくなったと思われたネズミが見かけられるようになりました。
         しかし、1月上旬になっても完全終息には至りません。
         終息が見え始めた頃、市から脱走しようとする人たちが目立ち始めます。
         そんなことをすると厳罰に処せられるというのに。
         ようやくペストの息の根が止まりそうになったが、ここでペストにかかってしまったのでは実も蓋も無い、逃げ出そう!という気持ちからでした。

        〇 開門
         2月になり、市の門は開かれました。
         ペストは終息したと認められたのです。
         発生から8か月以上経っての、多くの犠牲者を出しての終息でした。

         現在の私たちの状況と異なる点は多々ありますが、一方で、人間という奴は、何年経っても、何度繰り返してもまったく学ばないのかと暗澹たる気持ちになる部分もありました。
         今回のレビューでは、客観的な事象に絞って時系列的に追って紹介させていただきましたが、本作中では、登場人物たちの心情も深く描き出されていきます。
         ペストにより変わっていく人たち、変わらない人たち。
         そんなところも読んでいきたいものです。

         なお、私が持っているのは書影の版ではなく、新潮文庫の昭和51年発行の第12刷(宮崎嶺雄訳)なのですが、現在の感覚からするとフォントが小さく、また訳文がちょっと古めかしく感じてしまいました。
         新訳があればそちらの方が読みやすいのではないかと思います。


        読了時間メーター
        ■■■     普通(1~2日あれば読める)
        >> 続きを読む

        2020/04/12 by ef177

    • 他6人がレビュー登録、 26人が本棚登録しています
      谷間のゆり
      カテゴリー:小説、物語
      4.0
      いいね!
      • いろんなところで名前を聞いていましたが、未読でした。誰訳で読むか迷いましたが、とりあえず信頼の岩波文庫で。面白かったです!

        サッカレーの『虚栄の市』と並行して読んでいたら、時代が被って途中少し混乱したりしましたが…語り口がやっぱりフランス文学ですね。
        年上の美女と若い男の組み合わせというのも、いかにもフランス的です。あちらでは、男は女が育てるもの、という考えなのかなぁと思ったり。そして苦い思いをして、男の人はより魅力的になっていくのでしょう。日本の小説にも年上女性と若い男の組み合わせはありますが、そういうのを書くのはたいていが女性作家のイメージです。私が思いつくところでは、芝木好子とかですかね。そもそも貴族社会というのがヨーロッパの特殊なところでしょう。社交界において、女性が華として君臨する文化。そこで若くてきれいなお嬢さんではなくて、堂々としたご婦人に惹かれるのも、やっぱりお国柄なんでしょうかねー。

        しかし『谷間のゆり』の舞台はフランスの田舎です。貴族ではありますが、控えめな女性が貞節を貫く話です。以下、内容に触れますので未読の方はご注意を。






        青年フェリックスの憧れであったモルソーフ夫人は貞節を貫いて死ぬわけですが、結局彼女は満足だったのでしょうか?
        ifの話をしても仕方ありませんが、夫も子供も振り捨てて若い男に走ったとして、フェリックスが心変わりしないとも限りません。そう考えると最後まで少なくとも肉体的な関係にはならなかったことは夫人にとっての勝利であったかもしれません。精神的な連帯感を存分に味わい、私のことを愛してね、ただし親愛の情で、などという無理難題を若い男に強いて、貞節な妻という役目をやりきって死んだ彼女にとっては、ある意味勝利だったかもしれません。
        しかしそれもダッドレイ夫人という浮気相手がフェリックスにいたからでしょう。身体の関係を持つ相手が存在しなければ、フェリックスにこんな生殺し状態が耐えられたでしょうか?そのくせモルソーフ夫人はダッドレイ夫人と関係をもったフェリックスを冷たくあしらうのですから、ひどいものだと読みながらしみじみ思いました。いずれ娘を嫁にやるつもりだったというのも、本当にそんなことができたかどうかはなはだ疑問です。恋は盲目ですからフェリックスはモルソーフ夫人を崇め奉っていますが、いろいろ割り切っているダッドレイ夫人のほうが私は好きです。モルソーフ夫人は自覚のない悪人だと思います。というかフェリックスに、君はそれでいいのかと問い詰めたい。
        しかし好きになってしまったら仕方ないんでしょうね。盲目ですからね。それでも、フェリックスとモルソーフ夫人の愛を純愛とは呼びません。エゴイズムや本能的な情動を、信仰心とか世間体とか貞淑さとか騎士道とかで過剰包装した歪なものです。ダッドレイ夫人も愛想が尽きるってものです。ふたりとも、悲嘆にくれるふりをして充分心で遊んでいるんですから。

        最終的に女性が病に倒れて死ぬというのはフランス文学でよくあるパターンのひとつですが、やっぱりこのままいくとどちらかが裏切らずにはいられないからですかね。完璧な愛は壊れる前に封印すべし。ロミオとジュリエットも、あそこで心中しなければいずれ破局を迎えたのかもしれません。フェリックスとモルソーフ夫人は、崇高な愛というものに酔っぱらっていたようですが、愛ってそんなに気高いだけのものではないでしょう、とダッドレイ夫人は語りそうですし、バルザックもそう思っているのでは?
        ああ、美しい夫人であった、とフェリックスが悲嘆にくれるところで話を終えることもできたのに、最後にナタリーからきっぱり振られているところが、さすがバルザック。このくだりがあるのとないのとでは大違いです。
        昔の恋人の話を子細に語るなんてのは、恋愛的作法でNGなのはどの時代も同じですね。フェリックス、そんなことも知らないなんて、30にもなって…
        ある意味モルソーフ夫人の呪いなのかも。ナタリーは賢明でした。死んだ人にはどうあがいても勝てないし、フェリックスは、もはや一番いい時期は過ぎているようなので。

        しかし脚注を読むと、この後フェリックス君は結婚するそうで、かなり驚きました。その辺は『イヴの娘』に書かれているそうなので、読まなくては…
        >> 続きを読む

        2016/01/30 by ワルツ

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