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中勘助

著者情報
著者名:中勘助
なかかんすけ
ナカカンスケ
生年~没年:1885~1965

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      銀の匙
      カテゴリー:小説、物語
      4.7
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      • 今回読了したのは、日露戦争から大正期にかけて一大ブームを巻き起こしたと言われている、追憶文学の白眉とも言える中勘助の「銀の匙」。

        この作品は、子供時代の思い出を、ある意味淡々と述懐していく。
        とりたてて大事件も起こらないんですが、何がいいかと言うと、恐らく著者本人の投影らしき、この語り手の子供が、凄く人嫌いなのです。

        そこをこう書いています。「生きもののうちでは人間がいちばんきらいだった」と。

        生きもののうちって、何か凄い言い方だと思うんですね。
        縁日だのお祭りだの、とにかく人混みがまるで駄目なんですね。
        こういうところが、私も共感を覚えるところで、とても素敵です。

        そのうえ、どこか懐かしくもある。掛け布団の日向くさいところに顔を寄せたりとか、天井の染みが不気味でしょうがなくて、育ててくれてる伯母さんと一緒に寝たりとか、育った時代が私とは全く違うのに、子供の感性において普遍性を獲得しているんですね。

        そうかと思うと、〈ひらがなの「を」の字はどこか女のすわった形に似ている〉ので、慰謝を求めてこの字ばかりを並べ書きしていたとか。

        聞けば、五つくらいまでは、ほとんど土の上に降りたことがないくらいの乳母日傘ぶりだったらしいのだ。
        なよやかさと、選ばれし者の恍惚みたいな感覚の、いかにも芸術家になるべくしてなった人らしいセンスを感じます。

        お兄さんと海に行くところもそうで、みんなは嬉しくてはしゃいでるんだけど、自分だけうじうじしてるもんだから、〈お友だちはふりかえりふりかえりしてたがしまいに立ちどまって くたびれたのか、気分でもわるいのか と親切にたずねたので正直に「波の音が悲しいんです」〉って答えるんですね。

        多分、この子にとって世界はわけもなく哀しいんだろう。そこが実にいいんですね。
        この子にとっては、世界が哀しみでできているという感じなんですね。

        それから、露天で葡萄餅を売ってるお婆さんのエピソードも凄く好きですね。
        〈七十ぢかいしなびかえったばあさんが ぶどうもち とかいたはげちょろの行灯をともして小さな台のうえに紙袋を数えるほどならべてるがついぞ人の買うのをみたことがない。---私は市のたんびに幾度となくそのまえを行きつもどりつして涙をためていた。が、いつも買いおおせずに本意なく帰ってきてしまった。とはいえある晩とうとう思いきって葡萄餅の行灯のそばにたちよった。ばあさんはお客だとおもって「いらっしゃい」といって紙袋をとりあげた。私はなんといってよいかわからず無我夢中に二銭銅貨をほうりだしてあとも見ずに少林寺の藪の陰まで逃げてきた。胸がどきどきして顔が火のでるように上気していた〉。

        実にいいなあと思いますね。この侘しいものへの怯えの感性。

        子供なのに気鬱をかこっているところもたまらない。
        それと、女性性が強いというか、女の人の方が好きなんですね、この子は。

        男の人のことは、ちょっと怖いと思っている。山の手に越してやっと友達ができるんですが、それも女の子。
        そういう、何というか、アンチ・マッチョ的な性格も可愛い。

        母親でも姉でもなく、お婆さんとか伯母さんていう人たちへの思慕、無垢なんだけど、ひたむきな女性たちへの温かさも特徴的なんですね。

        これは多分、病弱な子供だから面白いんだと思う。やっぱり、体の弱さと子供のイノセンスというのが、何か喪失感みたいなところで、クロスしているんでしょうね。

        >> 続きを読む

        2018/09/21 by dreamer

    • 他2人がレビュー登録、 10人が本棚登録しています
      銀の匙
      カテゴリー:小説、物語
      4.0
      いいね! Moffy
      •  時代が違うので、なじみない物も多かったけど、とにかく夢中にさせる一冊だった。
         表現がとてもきれい。
         幼い心で感じたことや見たことがとても細かく書かれていて、目の前に一つ一つの景色が広がりそうだった。

         一回目読み終えたが、何度も読むに値する作品だと思う。
         いや、何度も読まないと、完全に味わいきれない。

         機会あったら、また読んでみたい。
        >> 続きを読む

        2017/05/25 by deco

    • 他1人がレビュー登録、 2人が本棚登録しています

【中勘助】(ナカカンスケ) | 読書ログ - 読書ファンが集まる読書レビューサイト(著者,作家,作者)

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