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小尾芙佐

著者情報
著者名:小尾芙佐
おびふさ
オビフサ
生年~没年:1932~

この著者の本を読んでいる会員ランキング

このランキングは1日1回更新されます。
      アルジャーノンに花束を
      カテゴリー:小説、物語
      4.5
      いいね! momomeiai Minnie sunflower tadahiko Erika
      • チャーリーがどのような人生を歩むのか気になって、最後まで頁を繰る手が止まりませんでした。

        3/3-10/21までの記録、短期間で起こった出来事です。
        そのことに私は恐ろしさを感じずにはいられません。
        なぜアルジャーノンの死を見届けずに、手術が決行されてしまったのでしょうか。

        感動というよりは怖さばかりを感じ、ショックを受けながら読み通しました。



        「この知性が私と、私の愛していた人々とのあいだに楔を打ちこみ、私を店から追放した。
         そうして私は前にもまして孤独である。」

        人間の幸せって、何なのだろう。
        チャーリーはずっと、頭がよくなることで友を、もっとたくさんの愛情を欲していました。
        「人間的な愛情の裏打ちのない知能や教育なんてなんの値打もない」
        ストラウス博士やニーマー教授に突き付けた、この言葉がすべてだと思います。
        一番心に残ったシーンです。


        小尾さんの訳が素晴らしい。
        知能が幼児のとき、手術によりIQが高くなっていく過程の経過報告、そして退行。
        この特殊な設定を、違和感なく日本語で上手く表現されていると思いました。
        名作を名訳で読む幸せを感じました。

        私はこの本を再読しようとは思いません。
        それだけ心に突き刺さりました。
        >> 続きを読む

        2016/08/18 by あすか

      • コメント 8件
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      アルジャ-ノンに花束を
      カテゴリー:小説、物語
      3.7
      いいね! emi
      •  あまりにも有名な作品ですが
        手に取ったことがなかったため、
        古本屋の100円コーナーにあったのを機会に
        読んでみました。
         
         期待どおりに名作でした。
        これは原作も素晴らしいのでしょうが、
        訳も非常に上手ですね。
         
         もともと知的障害のあった青年が
        医学の進歩のための実験と知りつつ手術を受け、
        一般人の域を越える知能を得るも
        それは一時的なもので
        やがては元の知能よりも低いレベルまで下がってしまう・・・。
         
         その急激な知的レベルの変化に
        心の成長が追いつかない主人公は、
        仕事、友情、性、愛情そして人間関係
        さまざまな問題に直面していきます。
         
         一番コアな問題となるのは家族。
        かつての彼を愛し、最終的には弾き出してしまった
        母、父、妹 とはどのように気持ち的に清算をつけるのか。
         
         よくもこれだけのテーマを内包しながら
        うまく物語を収束したものだと思います。
        最初から終着点は見えているのですが、
        そこに至るまでに著者が読者に問いかけたかったものは
        きっと見事に響いてくるに違いありません。
        少なくとも私には届きました。
         
         そういえば中学生の頃
        友人が読んでいたのを思い出しました。
        原本も英語の勉強にちょうど良い本だそうです。
        機会があったら自分で使ってみるか、
        子供にすすめてみたいと思います。
        >> 続きを読む

        2016/11/26 by kengo

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      夏への扉
      カテゴリー:小説、物語
      4.3
      いいね!
      • ロバート・A・ハインラインによるSF小説。小説を知ったきっかけは現在も観劇している「演劇集団キャラメルボックス」で舞台化され、そのお芝居を見たのがきっかけ。普段SF小説をあまり読まないので、翻訳された文章を理解するのに少々苦戦したが、読み慣れてきた後半部分では映画や舞台(この劇団はSF、ファンタジーものが非常に得意なので)を見ているようで面白く読み進めることができた。後から調べてみたら、「スターシップ・トゥルーパース」もこの方の著作を元にしているらしい。こちらも時間的に余裕があれば手にしてみたい。 >> 続きを読む

        2016/06/27 by oniken0930

      • コメント 3件
    • 他3人がレビュー登録、 6人が本棚登録しています
      ジェイン・エア
      カテゴリー:小説、物語
      5.0
      いいね!
      • ああ。懐かしい。私はついにジェインに再会しました!
        小尾芙佐さんが「ジェイン・エア」の翻訳をしている!!!という嬉しい情報を知ってからいつか再読しようと心に決めていました。
        ブロンテ姉妹と比較されるオースティンの「高慢と偏見」を読んだ勢いでこの本に取り組みました。
        翻訳者は2作共に小尾さんという幸運。

        この小説を最初に読んだのは中学1年の時。ちょっと分厚い児童文学ではないハードカバーの本を借りて、大人気分で。

        衝撃でした。

        ひとつには、初めての本格的恋愛小説だったこと。

        児童書ではジェインの生い立ちが印象的(メイン?)で、子どもの頃こんな苦労をしたのに最後は幸せになりました。的なおめでたい小説になっているらしいのですが、本書はただの成長物語でも恋愛小説でもありません。
        ジェイン・エアという女性の波乱万丈の人生を描いた自伝であり、宗教的な良心を説きつつも、ミステリーでもありちょっぴりホラーでもあるのです。

        ところどころ、結構怖いです。(子供心には)

        ジェインの半生は、実際にシャーロット・ブロンテその人の人生に重なる部分が多々あるそうです。

        牧師の娘として生まれたこと。姉達とプロテスタント系の寄宿学校に入学し、そこでの厳しい生活と不衛生が元で、二人の姉が肺炎で亡くなってしまったこと。(ローウッド養育院でおきたことはお約束の悲劇の演出ではなく事実の告発でした)。上流階級の家庭の住込み家庭教師として自立した生活を送った経験。などなどです。


        (上巻のストーリー)
        両親を失い引き取られた先の伯父も亡くなり、無慈悲な伯母リード夫人のもとで愛の無い毎日を送る10歳の少女ジェイン。
        虐待や無視が日常の生活が続き、怯えいじけた心と怒りを託つ日々。ある事件を機についに伯母はジェインを寄宿制の慈善学校、ローウッド養育院(実態は孤児院に近い)へと追いやったのだ。
        環境の劣悪な学校であったが志の高い女性教師や親友との出会いは彼女の人生を変えた。
        「憎しみに完全に打ち勝つものは暴力ではありません――痛手をよく癒すものは復讐ではありませんよ」
        「人生ってとても短いものだから、憎悪を育んだり、ひどい仕打ちを恨んでいるひまはないのよ」
        ヘレン・バーンズのこれらの言葉と信念にジェインは癒されこの教えを胸に成長する。
        学業を終えても行き場のないジェインはそのまま教員としてこの学校の指導者になり、8年もの歳月を外の世界を知らずに過ごしたが、自由や別の世界への憧れが高まり「職業」を持ち自立する道へと歩み出す。
        少女アデルの家庭教師として移り住んだお屋敷ソーンフィールドでは初めて自分が人間として対等に迎え入れられたという安らいだ気持ちを持つことができたが、ここでもさらに広い世界への想いが募り始める。
        そんなある日、普段は留守がちな屋敷の主、ロチェスター氏が帰館し、屋敷は急遽賑やかになる。
        ロチェスターの個性の強烈さとジェインのそれに負けない真面目な芯の強さとの静かなぶつかり合いはやがて二人の心を接近させていく。
        しかしこの屋敷にはなにか不穏な気配が漂っていたのだ。
        事件は起こった。謎の使用人グレイス・プールの存在もジェインには不気味でならない。
        この屋敷には何か重大な秘密が隠されている…。


        ジェインが一人称で語る自伝形式の小説なのですが、幼少期のジェインの物語は子供の目線と大人の目線が並行して現れますし、ジェインが小説内から読者に直接呼びかける場面が何度もあり、メタフィクションのスタイルを取っています。

        内容的にも画期的な点がいくつもあります。
        まず、ジェインが自立した職業を持つ女性である点。
        家事をすることも厭いません。
        (中流以上の家の出の人間は仕事をするなんて考えもしないのが普通でした。自分の食事の支度さえ、やるのは労働者階級の料理番か女中の仕事であり、自らはやらないのが普通でした)

        ヒロインが美人ではない点。
        小柄でやせっぽちな体格、青白い顔、茶色い髪と緑の目
        要するに英国における美少女要素がゼロということです

        ついでに言うとロチェスター氏のほうも厳つい系で、美男ではありません。

        当時の社会における身分差別や男女差別をふまえ、かつそれを乗り越える人を描いた小説であるといえます。
        労働者階級の人間や農民にも人格や個性や徳があることをしっかり描いています。

        最も重要なのは女性に自由と意志と自立を与えた事。

        ジェインは金持ちの伯母の家で贅沢な生活を続ける代償として隷属する道を捨てます。
        彼女は勉学によって職業的スキルを身に着けるという意識を持ち、自活をめざします。
        たった一人で世の中を渡っていく決心をし、それを勇気をもって実行できる女性です。
        しかし決して男まさりなのではなく、ナイーヴで傷つきやすく、真面目で純真で切ないほどに愛を求める少女でもあるのでした。
        そんな彼女が恋に落ちます。
        18歳の乙女と20歳ちかく歳の離れた男性との身分違いの恋です。
        しかもこのエドワード・ロチェスター氏はなんとも個性的でめちゃくちゃ「熱い男」なんですわ。
        もう。ドラマチックでないはずがないです。

        二人がどうしようもなく惹かれあい、打ち消せど運命が二人を手繰り寄せ…。

        二人の愛を語る言葉やラブシーンには、中学生の私はさぞドキドキして赤面しつつ読んだんだろうなぁと(もう忘れちゃったけど)思います。

        この小説の描かれた時代はビクトリア朝時代。
        古めかしくて道徳的で、宗教的な力が非常に強大で、男女の規範の縛りがとても厳しく戒められていた時代
        享楽的なことや性的なことはNGでした。
        ということを踏まえれば、この小説の「熱さ」が尋常でないことが想像していただけるかと思います。


        私は若干12~13歳で「ジェイン・エア」を知ってしまい、これ以上の恋愛はない!と固く信じ、ちゃらい恋愛小説では決して心が動かない、恋愛偏差値が高い女になってしまいました。

        恋愛というのは「恋」と「愛」です。
        その両方が描かれないと「恋愛小説」ではないのです。
        そして恵まれた二人が恵まれた結びつきをするだけでは愛は試練に打ち勝ったとは言えません。
        たまたま偶然ラッキーな二人ってだけかもしれないじゃないですか。

        人は何をもって人を愛すると言いえるのだろうか?

        シャーロット・ブロンテはその答えを「ジェイン・エア」の中に描きました。

        凄まじい恋愛小説です。
        ストーリーだけをかいつまんでみれば女子供が喜ぶメロドラマかもしれませんが
        でも「誠の愛」というものを私に叩き込んだ最強の一冊であったことは間違いないです。
                (下巻へ続く)
        >> 続きを読む

        2017/05/24 by 月うさぎ

      • コメント 2件
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      高慢と偏見
      カテゴリー:小説、物語
      4.0
      いいね!
      • まるでシェイクスピア!というのが第一印象でした。
        笑いを内に秘めた諧謔や、人間を達観視した分析的な言葉が散りばめられ、人物像を浮き立たせる会話を中心に展開しています。
        何とも演劇的です。セリフはもちろんドラマチックな見せ場も舞台映えしそう。
        一方、作家の人柄を反映した率直さが感じられる点などは、近代を先取りした新しい文学の萌芽と評価されたことと納得できます。われわれが読む時その価値に気付かないほどに、現代の文学に近いものがあるように思いました。例えばドイツ文学に比較してみれば、本作は余りに違うでしょう。
        オースティンは難解な文学だと聞いたことがあったのですが、それも全く感じませんでした。
        日本語の文学と似た話法を使っている為もあるかもしれません。
        オースティンの英語は「文の骨組み自体は、仮定法、分詞構文、倒置、強調、省略の連続」だそうで、本書の読者層は上流階級の人々でした。
        読みやすいと感じられたのは、ひとえに翻訳がきちんとしていた為だったのでしょうね。ありがたいことです。

        それにしても男性優位の英国社会において、中流階級女性の活躍が難しいものであったことは想像に難くありません。しかもこれを書いたのが20代の頃だと言うのですから驚きです。
        まるで実在する人物のような性格設定、セリフの妙、心理分析、階級社会の正確な描写、ヒロインの魅力、文章力などが後の文学に大いなる影響をあたえたかもしれません。彼女の文学の系譜にアガサ・クリスティが連なるのではないかしら?などと想像してみました。少なくとも私にはとても似ている部分があるように思えました。


        では「高慢と偏見」とはどんなストーリーなのでしょうか?
        時はナポレオン戦争時代。ヴィクトリア朝時代以前のちょっとゆるい時代。
        中流及び上流階級の、土地や財産を持ち労働をせずに暮らしていくのが当たり前の地主(ジェントルマン)達。要するに金銭的に恵まれた人達の結婚願望が描かれているだけ…っちゃだけです。
        舞踏会やら狩猟やらお食事の招待やらで頭が一杯の日々を送っています。
        事件らしい事件は起こりません。最大の事件が駆け落ち…っていうか結婚しないまま男女が行方をくらまして同棲したってレベルです。
        上巻では、主役のエリザベスの目は上流階級や外見という「時代的社会的価値観」を引きずった「偏見」と自分の賢さという「自尊心」により曇っており、感心する程の魅力を発揮してはいません。

        これって面白いですか?
        英国社会に興味がない人にはそれほど面白く思えないのではないかしら?
        でもこんなたわいのないストーリーを興味深く読ませる技量が作者にはあるのです。
        簡単に言うと喜劇の要素です。
        エリザベスのモノローグや人々のセリフに演劇的な喜劇の要素が存分に含まれているんですね。

        物語はこう進むのではないかという期待を読者に持たせつつ下巻へ!

        【登場人物】
        (ベネット夫妻とその5人の娘たち)
        ジェーン  長女 心優しき美女 まさに「天使」 エリザベスと仲良し
        エリザベス 次女 主人公 聡明で快活で行動的な美人 父の寵愛を受けている
        メアリー  三女 姉妹の中で最も不細工なため教養こそ人間の価値と勉学に励む変人女となる
        作者にも虐げられている気の毒な存在
        キャサリン(キティ) 四女 末の妹に感化され浮ついていたがあまり自分がないタイプ
        リディア  五女 歳の割に長身でませている おしゃれ好きで男好き 愛嬌のある積極的な性格で世間体などお構いなし 母親が溺愛しているためワガママで奔放

        (婚活相手の男たち)
        チャールズ・ビングリー 優しく人当たりの良い金持ちのボンボン
        ダーシー  貴族の叔母を持ち大金持ち。上流階級クラスの家柄の当主
         非常にプライドが高い男 正直すぎて損をするタイプ 裏返せば誠実である
        ジョージ・ウィッカム 美男子で話し上手で上品さもあるモテ男 
         ダーシー家の使用人の息子だが現在はダーシーとは険悪な間柄 軍隊に所属 
        ウィリアム・コリンズ  ベネット家の親戚で相続権をもつ牧師 
         25歳の若者とは思えない卑屈さと尊大さの混淆した奇妙な性格の男性でベネット家の娘を花嫁候補と考えエリザベスに求婚する

        (近所の住人)
        シャーロット・ルーカス  エリザベスの親友 父は貴族の称号を持つが成り上がりで貧乏 
         器量もよくないために売れ残りを心配されている

        女性にはファーストネームがありますが男性は名前で呼び合うシーンはありません。
        (特にダーシーの名が不明です。彼の名をフィッツウィリアムとしている記事もありますが、フィッツウィリアムは苗字のはずですから家系を示すミドルネーム的に使われるものではないかしら?)
        また興味深いことに、コリンズ氏以外は自分の考えや心の動きなどはほとんど描かれないのです。男性の無名性には、かなり恣意的なものを感じます。

        社会が押し付ける父権的なもの男性目線の価値を否定したい気持ちは伝わりますが、一方で美女でないと女は価値が下がるという「事実」を描いて見せてもいます。ジェンダー的意識は作者にはどうも無いようです。
        女性が家庭内で料理をすることを貧乏の証明になるとして退けていることからも、所詮は著者の環境(中流階級)を肯定するレベルの社会意識を反映しています。(労働者階級の人間は個性を持った存在としては描かれません)

        形は恋愛小説なのにいろいろいいたくなる小説ですね。なんとも。
        >> 続きを読む

        2017/05/11 by 月うさぎ

      • コメント 4件
    • 他1人がレビュー登録、 3人が本棚登録しています
      高慢と偏見
      カテゴリー:小説、物語
      4.0
      いいね!
      • 「なんて見下げはてた真似をしたのだろう!」
        エリザベスの目からうろこが落ちていく様が楽しい下巻。
        ここまで赤裸々な自己分析ができる女性を描いた小説はおそらく以前にはなかったでしょう。
        聡明で柔軟で快活な彼女の人柄がいよいよ開花する感覚。
        エリザベスの衝撃シーン。少々長いですが引用してみます。
        「このわたしが、炯眼を誇るこのわたしが!才気を自慢にしているこのわたしが!何事もよいほうに考える姉を小馬鹿にしていたこのわたしが、いたずらに人を疑って己の虚栄心を満足させていたとは。まったく面目丸つぶれの大失態ではないか!とんだ恥さらしだ!たとえ恋をしていても、これほど物事が見えなくなるとは。愛情ではなく、虚栄心がわたしの目を曇らせてしまった」

        その後、エリザベスがダーシー様に惹かれていくのを自覚し、何度も自問するところなどは、今度こそ自分に正直になろうとする真摯さに好感がもてますし、心の変化も不自然ではありません。演劇的な滑稽さと写生的な表現のバランスがとれており、ドラマティックでありながら目の前でおこっているような自然さが失われないのはオースティンの筆力のなせる業だと思います。

        最初こそシェイクスピアっぽく始まりましたが、作者の関心は徐々に言葉よりも心のほうに軸が移ったようで、エリザベスその人を丁寧に丁寧に描いていきます。
        身分という社会規範に無条件に従うことなく、自分の心をありのままに見つめる姿勢は、今では当たり前の人としてあるべき姿かと思いますが、この時代では型破りだったことでしょう。
        そんな女性を応援している自分がいました。
        オースティンもまたエリザベスを実の娘の様に愛していたそうです。
        きっと自分の分身でもあったのでしょう。
        そうでなかったならこの小説が放つ魅力は半減していたに違いありません。

        多くの恋愛物語が理想化した女性を崇め奉る狂った心に酔いしれる男の独白なのに対し、エリザベスの心理描写のクールさが気持ちいいです。
        やはり女性はこと恋愛に関しても男性よりも実用的。
        男を見る目に「経済力」という要素が絶対的に絡んでくるということも外すことはできません。
        そんな「世の常識」を破る存在は末娘のリディアです。
        お金持ちの男よりも色男への恋に一目散。あまりに考え無しの幼い恋ですが、潔くさえあります。
        彼女は当然家族のお荷物のダメ娘として描かれますが、著者の中に彼女を礼賛したい気持ちがゼロとは思えません。
        世間では認められない奔放さを一種の憧れとして、自分の中に秘めていなければ、リディアをあのようにいきいきと活躍させることは難しいでしょう。
        リディアが主人公なら…と妄想した私ですが、実際にパロディが出ているらしい(?)

        リディアと真逆なのはシャーロットです。こちらは物語のヒロインには絶対なれない平凡な女性です。
        しかし現実的には彼女の生き方が賢い選択であり自己実現を地道に目指す彼女の生き方が正当なのです。
        シャーロットは身分は貴族の家柄のお嬢様ですが、格下のコリンズ氏との結婚を決断しました。
        (当時の社会常識としてありえない縁組なんだそうですよ)
        最初は親友が身を落したと失望したエリザベスもシャーロットの生活を間近にして考えを改めます。
        女は夫に生活面で頼らざるを得ませんが精神性まで支配されずに自分に対するプライドを保つことはできるのだということを彼女を通して学んだのです。
        これをテーマに小説にすればすごい作品になったかもしれませんが、時代はそこまで進んでいなかったということでしょうね。
        結果的にエリザベス自身は「尊敬できる男性」と格上婚をしてシャーロットのような努力は不要なご身分になるのです。
        最後はシンデレラ物語でThe Endなのでした。

        このように実は本作は小説としては破綻しています。
        あれこれドタバタした挙句の果ては、エリザベスはこの二人から何も学ばないでいいご身分になってめでたしめでたしなのですから。

        「高慢と偏見」は恋愛群像劇の映画を見慣れている今でこそ普通に感じますが、物語のテーマは一つではなく、誰の立場から見るかによって異なった意味が出てきてしまう訳です。
        実はそういう難点があるほうが論議がしやすい(つまり論文が書きやすい)んですよね。


        告白すれば、残念なことですが、オースティンが文学的にどれほど優れた「文章力」を持っているのかは翻訳家でも文筆業でもない私には理解しきれませんでした。
        プロ好みの文章なのかもしれません。
        英国でもジェーン・オースティンのファンは知識自慢の男性がメインだったそうな。

        当時の社会常識では女性が小説家になるということはまだ認めてもらえなかったそうで、オースティンは匿名、その後に登場するブロンテ姉妹も男性の名で作品を発表していたそうです。
        これらの小説の女性的なことっていったら!!見破れない方がおかしいと思うのですが…ね。

        ちなみに今回選んだ翻訳は小尾芙佐氏の新訳古典文庫です。
        同じ翻訳者の「ジェイン・エア」と比べたいという思いもあっての選択でした。
        彼女の努力はオースティンの時代と文章のニュアンスを再現することに向けられています。
        現代風にアレンジしたり自己の余計な言葉をつけたしたりをしていないように感じられました。
        多少現代文的には読みづらかったり言葉が古めかしく思われる方もいらっしゃるかと思いますが、私としては子供の頃に読んだ「小公女」などの文学に近い世界観で懐かしかったですね。また原文の発音になるべく似せたいということでしょうが、MRをミスタと表記している点が(好き嫌いは別れるでしょうが)彼女の工夫のようです。その昔はMRは「氏」SIRは「卿」と一律に訳すのがお約束だったみたいですが。

        文学的価値ということを考えなければ、エリザベスは自立もしなければ冒険もしない。金持ちと恋愛結婚し玉の輿と周囲に祝福されめでたしめでたし。という王道の物語なのですよね。
        エリザベスは既存の価値に挑戦する気概はある女性ですが実質的に彼女が自らの人生を切り拓く要素はゼロです。
        ゴシック小説というジャンルの、心理無視の非現実的メロドラマが当時から存在し、その殻を破った新鮮な作品ではあったようですが。
        新しさというよりは「現代に通じる」という評価が概ね一般的なのはそのためでしょう。
        私が恋愛小説が苦手なせいかもしれませんが、テーマ性という点からみると、いまひとつ大作という印象は受けませんでした。
        いや、それもオースティン自身が100も承知のことみたいですね。
        彼女の小説とは「二インチ四方ほどの小さい象牙板に施されたきれいな彫刻」なのだそうですから。その繊細な美や職人の手仕事をこそ堪能すべき小説だと思います。
        >> 続きを読む

        2017/05/17 by 月うさぎ

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      われはロボット 決定版
      カテゴリー:小説、物語
      5.0
      いいね!
      • アイザックアシモフ代表作。有名なロボット三原則をテーマに陽電子頭脳をもつロボットと人間の付き合いを、一人のロボット工学者から見て数十年でどのように変わっていき成功したかをショートストーリーで綴っているSF作品。
        1編めのロビーなんて初出は1940年です。それでいて色あせずとても面白い。コギトエルゴズムとか、ロボットの優秀さと人間への忠誠心(愛情)、人間の反発、ロボットにも感情があるので人情物なのです。あり得る未来、夢があります。ただ優秀すぎるロボットは愛、敵対、どちらになっても人間を滅ぼす気がしますがね。我々も社会の変化にさらされているので空想、現実、それぞれ見つめ直す遊びのきっかけになるとも思います。例えば携帯には禁止の三原則必要でしょ。
        >> 続きを読む

        2014/09/28 by pasuta

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      アルジャーノン、チャーリイ、そして私
      3.0
      いいね!
      • 凄く良かった。

        アルジャーノンに花束をの小説ができる過程から世に送り出されるまでの過程を知れた。

        小説ができてからというものの、世に送ることにダニエルキイスは苦労したんだなぁと感じた。

        今と昔では作家の求められるレベルが違うだろうし、大人の事情がこんなにも一つの小説に介入しているんだと大変だなぁと感じた。

        小説は作家のすべてが映し出されているものだと思ったが、こんなにも編集者や出版社から、この物語はこう変えた方がいいとか口出しされるもんだと知って、小説家は芸術家ではないんだと自分の勘違いを認めた。

        それにしても出版社が最初に提案した「アルジャーノンに花束をは、チャーリイの知力を後退させるのはやめて、天才のままキニアン先生と無事結婚、めでたしめでたしで、小説を書き直してくれ。読者はハッピーエンドを好むんだ。」とダニエルキイスに提案したシーンは、あほか!と思った。

        そのように書き直してくれたら、この小説をうちから出版しよう!なんてダニエルに提案するが…やれやれ。

        出版社は売れるものを世に出したい。
        作家は自分が良いと思ったものを世に出したい。

        それを私たちは読んで何を感じる。

        そういうことも考えさせられた本だった。

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        2015/10/03 by snoopo

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      第三の女
      カテゴリー:小説、物語
      3.0
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      • 死体がない殺人という紹介に惹かれて買った。
        犯人のまさかの正体にびっくりだった。
        リヴァ夫人がけがをしたと聞いた時のポアロの悪態が頭に残ってます。
        これいいね!
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        2014/10/31 by えま子

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      It
      It
      カテゴリー:小説、物語
      5.0
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      • どんなに長かろうと、どんなにItが「えっ?」って思うものであろうと読まなければならない本。読まないと損です。

        「スタンド・バイ・ミー」が好きなら、アクション映画が好きなら、これ一冊にみんな入っています。

        この内容なら!この長さは仕方なし!
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        2015/04/20 by soulfull

    • 4人が本棚登録しています
      ジェイン・エア
      カテゴリー:小説、物語
      5.0
      いいね!
      • 「この二十一世紀という時代に、あなたのジェイン・エアをふたたび甦らせましょう」
        尾美佐さんはこの小説の翻訳を受けてから原作を再読し、心を昂らせ涙をあふれさせつつこう誓ったそうです。
        「よもやこのような感動がもたらせようとは」
        そうなんです。さまざまな小説を読み翻訳をこなされたプロの心を動かすほどの、パワフルな小説なのです。

        昔好きだった小説が今も色あせないでいてくれる。これはなんともいえない嬉しいことです。
        時を経て感動がいずこへ消え去ってしまうケースも時々あるものです。
        若くてうぶな心には刺激的であっても人生経験をつんでちょっとやそっとの読書体験では驚かなくなってしまった今の自分の鑑識眼に耐える物かどうか。
        それは初恋の人に再開してがっかりしたくない気分とちょっと似通っています。

        そしてこの「ジェイン・エア」
        この度の再読は、懐かしさでいっぱいでした。
        それでも新しい発見は数知れず。
        胸をときめかせるストーリーと台詞と人間性への共感!
        ジェインはやはり私のジェインでした。

        小説世界はヴィクトリア朝時代が舞台で、現代とは感覚も価値観もまるで異なっていますので、なんだか大げさだなと思われるかもしれませんし、「純愛」なんて、今時実在しないよねと、思われるかもしれませんが。
        恋愛小説には決して古びない部分が必ずありますよね。

        ジェインとロチェスター氏の恋愛に比べれば、世の恋愛小説の主人公たちのなんと軽薄なことか。
        「ロミオとジュリエット」は若いが故の暴走だし、ツルゲーネフの「初恋」は病気だし「高慢と偏見」は綺麗ごとだし「雪国」なんか芸者遊びに過ぎません。
        愛のハードルが高ければ高いほどその試練を越えた愛は輝くのです。
        ああ、こんな風に愛されてみたい。
        こんなにも深い部分で真摯な愛を捧げ合える相手に出会えたら…。

        もしも、恋愛小説なんて女子供の読むものだと考えている大人の男性がいらっしゃるなら、
        この小尾さんの翻訳の本書を騙されたと思って読んでみて欲しいです。
        (大昔の翻訳は演技がかり過ぎて実感が湧きにくいかもしれませんが、この翻訳はとてもよいです)
        男の書いた恋愛小説とは別物。ひょっとするとずっとハートにグッとくるかもしれませんよ。
        本作は漱石さんのお勧め本の一つなのですから。

        文学者の喜ぶ難解な小説ではないです。
        ですが、ちょっと意味不明な「嵐が丘」より文学的な評価が低いというのは納得しかねます。
        発表当時から読者に圧倒的に受け入れられたのは「ジェイン・エア」であったというのは事実です。
        わかりやすい感動を与える作品はレベルが低いとでもいうのでしょうか?
        一人称語りのシンプルな構成だから工夫が無いというのでしょうか?
        とんでもない。
        階級制度、男女差別、宗教と愛、神の掟と人間の法のせめぎ合い、人権の問題、教育の重要性など多くの要素が考慮されています。
        治癒の見込みのない重病患者を抱える家族の心的負担への言及はおそらくは小説として描かれるのは初めてなのではないでしょうか。
        そして何よりも、こんなにも心を抉られる小説なのです!

        ただ一つ心配なのは、精神異常についての前時代的な解釈がされている点。
        こればかりは現代の目からはどうしても奇異に映ることでしょう。

        もう一点英国の「離婚事情」を知っておく必要があります。
        アガサ・クリスティの小説のレビューでも触れましたが、英国では当時は原則として「妻が浮気」をしたケース「以外の離婚」は許されないものでした。いわゆる「神が結びたもうた婚姻」っていう宗教縛りによるものです。
        (この時代は夫の浮気は不問です。男女不平等です)
        この前提に立たないと彼らの苦悩が理解できませんので末尾に「英国の離婚事由の変遷」を記載しておきました。
        「ジェイン・エア」を誤解しないためにご参考にしていただけたら幸いです。

        あと私事ですが、昔読んだ「ジェイン・エア」にはセント=ジョンなる人物は出てきた記憶が全くないのです。どうもその部分は省かれていた気がします。
        その方がストーリーはジェインとロチェスターの二人に焦点が絞れ、スピード感が出るんですね。
        本作(完全版?)では神への愛と人間への現世的な愛の違いをロチェスターと真逆の男性を登場させることで対比させているのでした。
        男女の愛が神への愛に劣るというのはおそらく当時の時代の「建前」だったはず。
        それに理論的にNOを突き付けたブロンテの、これはぎりぎりの手段だったのでしょう。
        ちょっと歯切れが悪いというか、苦肉の策というか。そんな気がしないでもありません。

        小説に描かれるジェーン・エアは、特に美人ではなく、ごく普通の容貌をした女性です。(自分を必要以上に不細工と思い込んでいるのも普通の女の子的ですね)
        これも当時の小説としては珍しいことだったようです。

        容姿が美しいから愛するのではない。
        愛した人がその人にとって好ましい姿に映るのだという。この真実。

        「高慢と偏見」が恋愛未経験な女性のみた夢であり「嵐ヶ丘」は100%想像力から生み出された異世界であるのとは異なり
        「ジェイン・エア」は著者の人柄や思想、実体験を元に生み出されました。
        勇気あるジェイン・エアは勇気あるシャーロット・ブロンテによってしか描かれえなかったと言えるでしょう。

        この小説を読んで涙も溢れず鳥肌も立たないとしたら、恋愛小説不感症ですよ。
        伊良部先生の所へ行きましょう(^_-)-☆

        もう一度いいます。
        「ジェイン・エア」は究極の恋愛小説です!


        【英国における婚姻事件法(Matrimonial Causes Act)の変遷】 

        ☆婚姻非解消主義(聖書主義)
        1857年  婚姻事件法
        離婚事由:妻の不貞行為、または夫の近親相姦・重婚等の加重不貞行為

        裁判所で判決を得ることを要す
        離婚と別居の区別は維持する
        *離婚後の妻、相姦者との再婚を禁じられる

        1923年  夫の不貞行為が離婚事由になる

        1937年  婚姻事件法(有責主義の維持)
        3年以上の遺棄、虐待、5年以上の不治の精神病、別居判決後3年以上の不治の常習的濫酒癖
         死刑を減刑して言い渡された修身懲役の判決
        が離婚事由として拡張された

        ☆破綻主義の採用
        1969年 離婚法(Divorce Reform Act)改正 
        婚姻の回復し難い破綻を唯一の離婚原因とした

        要するに1937年(昭和12年ですよ!)まではアル中であろうとDVの恐怖にさらされようと家計にお金を一銭もいれなかろうが、いったん教会で式を挙げてしまったら、相手が犯罪者であろうがきちがいであろうが決して離婚できなかったという訳です。
        相手が浮気をしてくれないことには。
        >> 続きを読む

        2017/05/25 by 月うさぎ

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【小尾芙佐】(オビフサ) | 読書ログ - 読書ファンが集まる読書レビューサイト(著者,作家,作者)

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