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老人性痴呆は「病気」ではない。老いの表現である。「痴呆老人」というと、何か暗い、難しい話と思われるかもしれませんが、そんなことはありません。専門的な知見を臨床実例を交え、優しい語り口で楽しい読み物にして、読者に新しい視点を与えてくれる素晴らしい本です。認知症の老人に接する人はもちろん、介護の可能性がある人だけでなく、健康な人、若い人、全ての人に読むことを勧めたい1冊です。まず第一に、人は誰しも老いることは避けられない。先々生きていくつもりなら、明日は我が身です。老いは自分の問題として、人間の問題として見つめてみるべき生物の理だからです。そして、「われわれは皆、程度の異なる「痴呆」」でもあるからです。大井氏の論考は終末医療にとどまらず、「私」とは何かという深いテーマに対し、心理学・仏教哲学までひき、さらに日米の文化論にまで広がっています。本の最期は「地球という完全な閉鎖系世界」での「生存戦略と倫理意識を見直すべき」という大きな重要な提言で結ばれています。薄いながら非常に豊富な内容を含む面白い著作ですので、タイトルにこだわることなく手に取ってみて欲しいと思います。恐ろしい人格破壊として知られる問題行動は、環境次第で解消可能。誕生~成長~老い~死 という循環は宇宙のサイクルと等しく老いてなお終末の時まで健康に生きることは可能である。末期がん患者が「健康」に社会とつながって生きることが可能であるのと同じように。プエブロインディアンの老人の言葉が紹介されています。『今日は死ぬのにもってこいの日だ。生きているものすべてが、わたしと呼吸を合わせている。すべての声が、わたしの中で合唱している。すべての美が、わたしの目の中で休もうとしてやって来た。あらゆる悪い考えは、わたしから立ち去っていった。今日は死ぬのにもってこいの日だ。』 P.187誰でも死ぬのです。死は、特別なことではなく、普通のことです。それを、どのように受け入れられるかが、最後まで幸せに生きられるかどうかのカギだと思います。そんな心の準備を与えてくれる著書なのです。平凡な私は、即学びを実践できませんので、こういう提言を繰り返し読む必要がありそうです。第一章 わたしと認知症第二章 「痴呆」と文化差第三章 コミュニケーションという方法論第四章 環境と認識をめぐって第五章 「私」とは何か第六章 「私」の人格第七章 現代の社会と生存戦略最終章 日本人の「私」 >> 続きを読む
2012/12/31 by 月うさぎ
【大井玄】(オオイゲン) | 読書ログ - 読書ファンが集まる読書レビューサイト(著者,作家,作者)
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