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小野寺健

著者情報
著者名:小野寺健
おのでらたけし
オノデラタケシ
生年~没年:1931~

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      フォースター評論集
      5.0
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      •  『民主主義には二度万歳をしよう。一度目は、多様性を許すからであり、二度目は批判を許すからである。ただし、二度で十分。三度も喝采する必要はない。三度の喝采に値するのは「わが恋人、慕わしき共和国」だけである』(144ページ)
         民主主義をひたすら称える思想は多い。笑う思想も多い。疑うだけ疑って、仕方なく居直る思想も多い。しかし、ある程度認めて、あとはそっとして置く、このような思想は余り多くないのではないか。そう考えたが最後、E・M・フォースターの虜になっていた。
         わたしはその程度がひどく、例えば、頭のなかを整理するとき、E・M・フォースター座りで行う(もちろん、一人のときだよ)。まず、椅子に包まれるようにして座り、そのとき臀部が座の奥にあるか確認する、そして背中を背板にやや凭れさせ、窓の外遠くを眺めるような姿勢になれば完成だ。人には思索が捗る姿勢があるらしく、英国詩人ワーズワースは、部屋を真っ暗にして詩作に励んでいた。これをシェリーが耳にして、真似をしようと暗闇で羽ペンを走らせたのは有名な笑い話。
         もちろん、フォースターにも欠点はある、いや多いともいえる。フォースターは絶えず考える人である反面、その行動力は乏しく(旅行は好きだったが)、彼の思想から未来を切り開く突破口は期待できない。あくまでも相談相手止まり、アリストテレスやカントのような追いかけるべき背中を見せてはくれない。
         それでは、フォースターの思想は、時代遅れで役に立たないのであろうか。否、そうではないとわたしは信じたい。二、三年前、戦後最大の民間思想家である吉本隆明が亡くなったが、吉本の思想の基底には「個人」があった。「個人の生活は国家よりも大きい」「個人から世界を見るべきだ」 これは、つねに「個人」を第一としたフォースターの思想の系譜を引くものと考えて間違いない。ところで、このレヴュー、何回思想という言葉が出てくるのかしら、まあいいや。だから、こう賞賛しておく。
         E・M・フォースターには二度万歳しよう、と。
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        2015/01/17 by 素頓狂

      • コメント 1件
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      遠い山なみの光
      カテゴリー:小説、物語
      5.0
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      • カズオ・イシグロの処女作。
        舞台は長崎とイギリス。
        長崎は主人公悦子が妊婦の時代のシークエンス。イギリスは悦子の2人目の夫との子、ニキとのシークエンス。それらのシークエンスを交互に織り混ぜて作品は成り立っている。

        長崎では仕事人間の夫次郎と暮らす。次郎の父緒方は戦前の常識を引きずったままの言わば堅物。緒方は悦子の恩人。そして近所に住む佐保子。その7.8才の娘万里子。
        イギリスでは英国人の夫と暮らす。長崎の時お腹の中にいた景子は、自殺してしまってこの世にいない。
        ニキはロンドンに一人で住んでいる年頃の娘。

        何か無理をしているような強がっているような長崎での友人佐保子。空回りして無理をしているような母に半分放置され、暗い影が見える、子供らしい無邪気さを見せない万里子。
        そんな佐保子とそれに無理にあわせるしかない悦子。
        戦前の価値観が正しいと信じて疑わない緒方と、それを疎ましく思う息子次郎。
        いろんなことがズレている。噛み合わないまま物語中でそれらが修復した気配はない。

        佐保子はアメリカ人と暮らすと言い、長崎を出てどうなったか分からない。景子は何故死んだのか分からない。最初の夫次郎と何故別れたのかも分からない。
        何か足りないような余韻を残したまま、物語は進む。
        でも最終的に悦子はイギリスで平和に暮らしている。

        長崎とイギリスの景色だけぽかんと頭の中に残る。
        >> 続きを読む

        2017/10/13 by Reo-1971

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