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小野寺健

著者情報
著者名:小野寺健
おのでらたけし
オノデラタケシ
生年~没年:1931~

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このランキングは1日1回更新されます。
      遠い山なみの光
      カテゴリー:小説、物語
      4.4
      いいね! KEMURINO
      • カズオ・イシグロの王立文学協会賞受賞作「遠い山なみの光」を読了。

        今年の4月に末娘のニキが、英国の田舎町に住んでいる悦子をロンドンから訪ねてきた時、話に出たのはニキの姉の景子のこと。
        景子は、日本にいた時の夫との間の娘。

        しかし、景子は少し前に、マンチェスターの自室で首を吊って自殺していたのです。
        そしても悦子はふと、戦後間もない長崎にいた時期に親しくなった佐知子とその娘・万里子のことを思い出すのだった------。

        悦子とニキの会話、そして悦子の回想によって、この物語は進んでいきます。
        長崎に住んでいたはずの悦子が、なぜ今は英国に住んでいるのか、長崎に住んでいた時の夫・二郎との間に一体何が起きたのか。

        そして、佐知子や万里子が悦子の人生に、本質的な意味でどのように関与しているのか分からないまま、悦子の回想は続いていきます。

        「景子は、ニキとはちがって純粋な日本人だった」という文章から、景子が恐らく二郎との間の娘であったこと、その後、悦子が日本人ではない男性と再婚したこと、夫が娘に日本名をつけたがったという部分から、その男性が親日家らしいことだけは分かるのですが、再婚相手の男性が今どこでどうしているのかも分からないのです。

        どうやら、今は家にいないようなのですが、生きているのでしょうか、亡くなっているのでしょうか。
        謎があっても最後には解明される作品に慣れているので、この作品の謎のほとんどが、結局分からないまま終わってしまい驚きました。

        確かに人が過去を回想する時、他人に分かるような説明的なものは一切ありません。
        そういう意味では、この回想はとてもリアルです。
        しかし、幼い頃に英国に渡り、そのまま帰化し、日本語を外国語として育ったカズオ・イシグロ氏が、このような作品を書かれたということが驚きです。

        この作品には、はっきり言わなくても察して欲しいという、日本人ならではとも言える情緒が感じられるような気がします。
        回想シーンを見る限り、悦子と佐知子はまるでタイプの違う女性。
        二人の会話はどこまでいっても噛み合いませんし、理解し合っているとは言いがたい状態です。

        良き妻であり、数ヵ月後には良き母になろうとしている悦子と、あくまでも「女」である佐知子とは全く相容れません。
        しかし、後から振り返ってみると、佐知子と万里子の関係は、悦子と景子の関係に重なるのです。

        佐知子と悦子の、当時は予想もしていなかった共通項は、結局「母」や「妻」であるよりも、「女」であることを選んだということ。
        それは結果的に、景子の自殺という形となって現れ、悦子を苦しめていますし、ニキにも「わたしには初めからわかっていたのよ。初めから、こっちへ来ても景子は幸せになれないと思っていたの。それでも、わたしは連れてくる決心をしたのよ」と述懐しています。

        しかしまた、過去のその時点に戻れたとしても、恐らく悦子は同じ選択をするのでしょうね。
        一人の女性の中に「母」であること、「妻」であること、「女」であることが、上手く同居できれば良いのでしょうけれど、大抵はどれか一つに比重が傾きがちでしょうし、それが自分の本当の望みとは違っていた場合は-------。

        万里子はその後、どうなったのでしょうね。語られていない部分が気になり、余韻を残す作品です。

        >> 続きを読む

        2021/10/09 by dreamer

    • 他4人がレビュー登録、 12人が本棚登録しています
      嵐が丘
      カテゴリー:小説、物語
      3.7
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      • 19世紀英国版の「家政婦は見た!」って言っていいかしら。自分の事しか考えない人間が寄せ集まったら、なんともドラマチックな愛憎劇が出来上がりましたとさ、というシロモノ。愛するにも憎むにも泣くのにも絶望するのにもパワー全開。これらのパワーに圧倒されながら物語を追っている途中に「なぜ、敢えてそこへ行く!?」とツッ込みたくなる事しばしば。でも、みんな本気で命がけ。だったら、こっちも物語の舞台にどっぷりとハマってやろうじゃないの! つまり読む方もそれなりの体力が必要ってコトよ。 >> 続きを読む

        2021/08/28 by かんぞ~

      • コメント 2件
    • 他1人がレビュー登録、 4人が本棚登録しています
      フォースター評論集
      5.0
      いいね!
      •  『民主主義には二度万歳をしよう。一度目は、多様性を許すからであり、二度目は批判を許すからである。ただし、二度で十分。三度も喝采する必要はない。三度の喝采に値するのは「わが恋人、慕わしき共和国」だけである』(144ページ)
         民主主義をひたすら称える思想は多い。笑う思想も多い。疑うだけ疑って、仕方なく居直る思想も多い。しかし、ある程度認めて、あとはそっとして置く、このような思想は余り多くないのではないか。そう考えたが最後、E・M・フォースターの虜になっていた。
         わたしはその程度がひどく、例えば、頭のなかを整理するとき、E・M・フォースター座りで行う(もちろん、一人のときだよ)。まず、椅子に包まれるようにして座り、そのとき臀部が座の奥にあるか確認する、そして背中を背板にやや凭れさせ、窓の外遠くを眺めるような姿勢になれば完成だ。人には思索が捗る姿勢があるらしく、英国詩人ワーズワースは、部屋を真っ暗にして詩作に励んでいた。これをシェリーが耳にして、真似をしようと暗闇で羽ペンを走らせたのは有名な笑い話。
         もちろん、フォースターにも欠点はある、いや多いともいえる。フォースターは絶えず考える人である反面、その行動力は乏しく(旅行は好きだったが)、彼の思想から未来を切り開く突破口は期待できない。あくまでも相談相手止まり、アリストテレスやカントのような追いかけるべき背中を見せてはくれない。
         それでは、フォースターの思想は、時代遅れで役に立たないのであろうか。否、そうではないとわたしは信じたい。二、三年前、戦後最大の民間思想家である吉本隆明が亡くなったが、吉本の思想の基底には「個人」があった。「個人の生活は国家よりも大きい」「個人から世界を見るべきだ」 これは、つねに「個人」を第一としたフォースターの思想の系譜を引くものと考えて間違いない。ところで、このレヴュー、何回思想という言葉が出てくるのかしら、まあいいや。だから、こう賞賛しておく。
         E・M・フォースターには二度万歳しよう、と。
        >> 続きを読む

        2015/01/17 by 素頓狂

      • コメント 1件
    • 1人が本棚登録しています
      嵐が丘
      カテゴリー:小説、物語
      3.0
      いいね!
      • 光文社古典新訳文庫、上下巻の上巻。

        ブロンテ3姉妹の次女、エミリー・ブロンテ1847年の作品です。
        イギリス、ヨークシャーの荒野が舞台となり、リントン家とアーンショウ家で起こるとてつもない悲劇が描かれています。

        読み始めから不穏な空気が漂います。
        場面場面で人と人との争いが絶えません。この先の話はどうなってしまうのかと不安な感情に襲われます。
        同時代の作品だと、貧しく過酷な環境でも、懸命に生きていればそこから一筋の希望が見えてくるという物語(例えばシャーロット・ブロンデとかディケンズとか)が主流なので、ズブズブと泥沼にはまっていくような展開をなすこの作品は、当時では異質だったことでしょう。
        私も他とは違う違和感を覚えました。

        ただ語り手が次々に入れ替わる作品の構造とか、人間の悪・闇の部分をかなりの筆圧で描ききっている所はすごいと感じました。

        いずれにせよ、こういう内容で書こうと思ったE.ブロンテのぶっ飛び具合に感服してしまいます。

        さて後半はどうなるのか、前向きな話には絶対ならないところへ向かう重い気持ちと、どこまで落ちるんだろうという怖いもの見たさとが入り混じった気持ちでいます。
        >> 続きを読む

        2018/01/17 by Reo-1971

      • コメント 1件
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