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長部日出雄

著者情報
著者名:長部日出雄
おさべひでお
オサベヒデオ
生年~没年:1934~

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      桜桃とキリスト もう一つの太宰治伝
      カテゴリー:小説、物語
      5.0
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      • 太宰治。本名、津島修治は、津軽の富豪の家に生まれ、四十歳に至らずこの世を去った。

        修治が作家とならずにいれば、東大を出た、ただの放蕩者であったかもしれない。
        太宰治は、まさに血で血を洗うような悪戦苦闘を重ねる天才小説家であった。

        少なくとも、この「桜桃とキリスト もう一つの太宰治伝」の著者・長部日出雄は、そのように確信しているようだ。

        長部日出雄は、既に幼年時代から青年時代に至る太宰治を「辻音楽師の唄 もう一つの太宰治伝」に書いていた。
        この作品は、その継続として書かれている本だ。

        太宰治の全体像を描くこと、著者は自身の小説家としての使命をそこに見出していると思う。

        後に太宰の妻となる石原美知子は、太宰作品を読んでひそかにこの作家を敬愛していた。
        太宰治は、井伏鱒二を師と仰ぎ、自身の結婚を恩師に委ね、めぐる縁から彼は石原美知子と結婚することになった。

        誰の目から見ても無頼な新進作家と良家の子女との結婚に見えた。
        著者は、太宰治が何人もの女性と関わりがあり、山崎富栄との心中をもって生涯を終えることを念頭においているから、太宰と美知子の結婚への道までを美しく描いているのだと思う。

        桜桃の季節に亡くなった太宰治は、折々自分をキリストに重ねることがあった。
        著者は、イエスの「己を愛するがごとく、汝の隣人を愛せ」という言葉を、理想の極に見立てていた太宰を重く考えている。

        その言葉どおりにいかない自身を見つめながら、七転八倒する太宰治を、一般のクリスチャンとは異なるキリストに帰依する一人の人間と考えているのだ。

        その人間は、どうしても小説家ではなくてはならなかった。
        キリストの教えを全うしようとすればするほど、周囲の人々を犠牲の縁に追いやり、放蕩無頼を尽くし、自身を自殺に追い込まざるを得なかったのだと思う。

        晩年には、天のように仰いだ師の井伏鱒二をすらあしざまにののしったりしたのだった。

        誠実に自らを苦しめ、なおかつ家族を苦しめ、誠実に放蕩しつくし、誠実に死んでいった太宰治の姿が、長部日出雄の筆をとおして、生き生きと描かれている。

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        2018/08/09 by dreamer

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      笑いの狩人 江戸落語家伝
      カテゴリー:小説、物語
      5.0
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      • 落語のルーツを知る、重要な本。

        並んでいるたった500冊の中から、落語の文字に、何気なくとった本がこれなんて
        赤い糸で手繰りよせられたように、先週(2010年7月)、三国ヶ丘の天牛書店で購入。


        長部日出雄が江戸の芸人たちの生き様を、再生した、貴重なる記録である。
        (昭和55年、刊行)

        江戸時代に活躍した江戸の、鹿野武左衛門、三笑亭可楽、林屋正蔵、都々一坊扇歌、三遊亭円朝の
        五人を描きながら、鹿野武左衛門の生れた1649年から、三遊亭円朝の亡くなる1900年までの、
        250年間を綴る「江戸落語通史」である。

        現在聴いている落語が、古典と呼ばれ、今のものではないのは承知しているが、
        多くのものが、江戸時代、刀を差した武士が往来していた時代にできたものとは、
        落語の世界が、ずばり、現代であったことに、驚嘆する。

        上方の露の五郎兵衛の落ちが軽くて良いと伝わり聴く噺は、今でいう「親子酒」の最後のサゲ。
        それにシゲキされた鹿野武左衛門がつくった噺が、
        「亭主の力ばかりで出来たのではござらぬ。これもみんな、近所の若い衆のおかげじゃ」と、
        今でいう、[近所の若い衆」が350年ほど前に誕生しているとは・・。

        天保時代には、土橋亭りう馬が演じた噺が、音曲噺の「紙屑屋」。
        遊びがすぎて親に勘当され、出入りの頭の家に厄介になっている若旦那が、
        選り分けている紙屑のなかから出て来た清元の稽古本や端唄本の紙切れを見て、
        得意の咽喉でうたい出し、まさに今の形がすべてその時代にできあがっている。

        そして150年前の初代円朝の時代のことだが、
        既に上方で「らくだの葬礼」の噺が、語られていた、と。

        さすがは上方だなぁ。唐人のカンカン節は長崎から伝わって来たと。
        だから江戸で流行する前に、既に上方で流行り、ラクダもオランダ渡りと、
        つまり、両方とも、江戸より大阪の人間の方が早く知っていた。、それにしても
        ラクダとカンカン節を組合わせて、面白い奇想天外な噺に仕立てあげるなんて
        ・・・・・と、のちに円朝になる長蔵という主人公が感心しているが、
        そんな時事ネタで「らくだ」ができたなんて・・・私も、感心も得心でおますな。

        三笑亭可楽の、三笑亭の由来とか、明治の作家たちに、円朝の高座を速記した「速記本」が
        多大の刺激を与え、のちの言文一致体文学誕生のきっかけになったとか、
        上方落語ファンにも、興味深い内容が続く。

        ただ、どこまでが、史実で、どのあたりが長部氏の創作なのか、現時点では、
        私には判断つきかねますが・・・

        まちがいなく、落語の世界にタイムトリップできる、落語ファン必見の本ですな。
        >> 続きを読む

        2013/05/27 by ごまめ

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