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尾崎翠

著者情報
著者名:尾崎翠
おさきみどり
オサキミドリ
生年~没年:1896~1971

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      尾崎翠 1896-1971
      カテゴリー:小説、物語
      4.0
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      • 『ちくま日本文学 004 尾崎翠』(尾崎翠) <ちくま文庫> 読了です。

        小野町子シリーズ
        ・こおろぎ譲
        ・地下室アントンの一夜
        ・歩行
        ・第七官界彷徨
        ・アップルパイの午後
        の他、
        ・山村氏の鼻
        ・詩人の靴
        ・新嫉妬価値
        ・途上にて
        ・花束
        ・初恋
        ・無風帯から
        といった掌編、短編、中編、
        ・杖と帽子の偏執者
        ・匂い
        ・捧ぐる言葉
        といった、エッセイとも散文詩ともつかない作品、
        ・神々に捧ぐる詩
        という数編の詩からなる作品集です。

        驚いたのは、小野町子シリーズの文体、雰囲気は小野町子シリーズの中で閉じられていて、他の作品は全く異なる文体、雰囲気で書かれていることでした。
        小野町子シリーズの文体が好きで買った作品集でしたので、少し目論見は外れました。
        しかし、その他の作品も興味深く、再読してみたいと思っています。

        小野町子シリーズが好きで他の作品集で小野町子シリーズを全部読んだ、という方には敢えておすすめはしませんが、他の作品も読んでみたい方には非常におすすめです。

        特に、エッセイ(散文詩?)にはちょっとびっくりすると思います。
        >> 続きを読む

        2015/09/26 by IKUNO

    • 他1人がレビュー登録、 2人が本棚登録しています
      第七(なな)官界彷徨
      カテゴリー:小説、物語
      5.0
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      •   「読みおえたあとの耳にひびく男女の歌声」

         今さらながら、ぼくは林志玲(リン・チーリン)に恋をした。
         この頃はどんなに美人の大和撫子を見かけても、ある呪文を心のうちで唱えるだけで、台風のあとの天気のように清々しくなる。その呪文とは、

         「リン・チーリンはまだ独身」

         といえども、ぼくのような、身長は低い、収入も低い、会話はつまらない、容姿は十人並みで髪はうすく、知性のかけらもない、こんな自分ではとても彼女と釣り合わない。
         どうやらまた失恋したらしく、お得意のはじまらない恋のおわり。失恋すると詩がつくりたくなるが、それはちと手に余る。
         ということで、私はひとつ、人間の第七官にひびくようなレヴューを書いてやりましょう。

         
         私はこの小説を幾度も読みかえし、そのたびに多岐にわたる心証が残ることにおどろいた。しかも、言葉そのものは年季がかっているくせに、言葉に込められたセンシビリティは清新で、誤解を恐れずにいえばいつまでたっても昨日書かれたように思える。こういう小説はめずらしく、詩と小説を区分けすることが、文学の世界では瑣事にすぎず、形式に縛られない散文はそのまま詩でも小説でもよいことを教えてくれる。
         たとえば本文に、

        「誰かいちばん第七官の発達した先生のところに郵便で送ろう」

         この先生とは(これはあくまでぼくの考えですが)、萩原朔太郎でも問題なくて、彼の代表的な仕事である詩集「月に吠える」のこの詩を私は思い出す。

         
         およぐひと

         およぐひとのからだはななめにのびる、
         二本の手はながくそろへてひきのばされる、
         およぐひとの心臓(こころ)はくらげのやうにすきとほる、
         およぐひとの瞳はつりがねのひびきをききつつ、
         およぐひとのたましひは水のうへの月をみる。

         
         これは疑いなく第七官の発達した人の詩であり、「第七官界彷徨」の根底に流れるリズム、いや息づかいは、この水を泳ぐ人の息継ぎに近いように思う。そして第七官の一面をあらわしている。
         
         
         この小説にはたいした物語はなくて、話の大筋は、詩人をめざす女の子の小野町子と、兄の小野一助、二助、それから従兄の佐田三五郎との、いたって風変わりな共同生活がそのほとんど。兄の一助は精神病の患者を受け入れる病院に勤め、二助は失恋して蘚(こけ)の研究に打ち込み、佐田三五郎は音楽学校を狙う浪人生。
         とはいえ印象に残るシーンは多い。
         たとえば、第七官について思案するところはおもしろい。二助の部屋から淡いこやしの臭いが流れてきて、その臭いが三五郎のピアノの哀しい音色を際立たせた。そのとき町子は思ったのである。ある感覚の上にべつの感覚が塗りかさねられることで生じるこの哀感こそ第七官ではないのか? そしてあるときは、仰向いて空を眺めているのに、自分の心理は俯いて井戸をのぞいている、この相反した感覚が第七官ではと惟る。
         これらを要約すると、第七官は、潜伏的な記憶が刺戟を受けたときの、心理の乖離や情味の結合といったところか。しかしそんなむずかしい話はどうでもよくて、この小説はおもしろく、読了してもひとしきり、どこか懐かしげなコミックオペラの歌声が耳に心地よい。


        追記
         本文におもしろい一節がある。

        「僕の友だちは、肉体をそなえた女に恋愛をするのは不潔だという思想なんだ」

         おいおい、現代のアニメオタクかい!! と澄ました顔でいられないぼくだけど、リン・チーリンのような女性を見ると、まだまだ現実の女性も捨てがたいと思うのだ(笑)。
        >> 続きを読む

        2015/07/21 by 素頓狂

      • コメント 13件
    • 4人が本棚登録しています
      ちくま日本文学全集
      カテゴリー:作品集
      5.0
      いいね!
      • ちくま日本文学全集020

        2017/10/27 by Raven

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