こんにちはゲストさん(ログインはこちら) | 読書ログ - 読書ファンが集まる読書レビューサイト →会員登録(無料)


島尾敏雄

著者情報
著者名:島尾敏雄
しまおとしお
シマオトシオ
生年~没年:1917~1986

この著者の本を読んでいる会員ランキング

このランキングは1日1回更新されます。
      死の棘
      カテゴリー:小説、物語
      5.0
      いいね!
      • ついこの間、ネットのニュースで51歳の男が妻をハンマーで殴り殺したという事件を読んだ。仲良さそうに登山をしている姿が写真で掲載されていた。パソコンを壊した云々と言うよくわからないことが殺人の原因らしい。
        その時ちょうど私は島尾敏雄の「死の棘」を読んでいる途中だったが、このニュースを知ってその残忍な殺し方よりも、当事者夫婦の絆の弱さのようなものを感じた。
        島尾夫妻の絆の強さと比較していたのかもしれない。

        作者である島尾敏雄は、外に女をつくっていた。それも10年ぐらいもの間。その事を知った妻が、徐々に精神をきたしていき、夫を責め尋問し、それを四六時中受けた夫も完全に鬱になっていく。たまに妻は正常に戻り夫は束の間の安息を得るが、すぐにまた妻の発作が起こる。その繰り返しで作品が進んでいく。読んでいるうちにその夫婦間の諍い(カテイノジジョウと作品の中でされている)は、夫婦の絆を確かめるために行われているのではないかという思いが、私の中に芽生え、そして固まっていった。
        最終的には妻は精神病院に夫付き添いのもと、入院となる。妻の病状がだんだん悪化していくのとは逆に、夫婦を繋ぐ糸は決して切れないような物質にまで硬化していったように確信した。(精神病院に二人でいる場面の)ラストの文章に、島尾の妻への思いが如実に現れている。

        "逃亡を防ぐために窓には縦横に格子を打ちつけた、がらんとして調度品のない病室のベッドに腰かけて、寂しさをおさえてすがるような目なざしを送ってよこした妻のすがたが焼きついてはなれないのだ。この世で頼りきった私にそむかれた果ての寂寥の奈落に落ちこんだ妻のおもかげが、私の魂をしっかりつかみ、飛び去ろうとする私のからだを引きつけてはなさない。妻が精神病棟のなかで私の帰りを待っているんだ。その妻と共にその病室のなかでくらすことのほかに、私の為すことかあるとも思えなかったのだ。"

        親と子、兄弟は生物学的に遺伝子の繋がりがある。
        でも夫婦は生物学的にみれば、全くの他人である(近親結婚なんかは除いて)。
        でもそこにはある意味親子とは毛色の違う目に見えない強固な絆が存在している。それがなぜ存在しうるのか、その意味は何なのか、さらに掘り下げて考えてみようかと思った。
        >> 続きを読む

        2017/09/08 by Reo-1971

    • 4人が本棚登録しています
      ちくま日本文学全集
      カテゴリー:作品集
      4.0
      いいね!
      • ちくま日本文学全集032。

        島尾敏雄の作品はまったく初めて。
        「死の棘」という作品名は聞いたことがあるけど、作者の傾向やジャンルもまるっきり知らなかった。

        で、感想はどうかというと、気に入りました。
        テーマは重たいのに、気に入りましたなんていうのはなんだけど、こういう言い方が自分としてはぴったり。

        この中での最高傑作は「島の果て」。

        おなじ経験を「出孤島記」「出発は遂に訪れず」でも書いていて、それはそれで立派だけど、物語として完結した宇宙を築くことに成功した「島の果て」には及ばない。

        でも、この人はこれだけ造形力の強い文体を持っているのに、それを物語を構築するためには使わないで、自分の身辺というか、私小説的な方に使ってしまったのはなぜなんだろう。

        この本のところどころで夢の内容を描写しているけれども、実にリアル。夢という支離滅裂な内容をここまで読ませるというのはなかなかありません。
        現実に存在しないイメージを現前感をもって描き出せるのはもっと虚構性の高い作品を描くときの最大の武器になった筈なのに、そういう作品がここではほとんど収められていません。たぶんそういった作品は少なかったんだろうと思いますが、もったいないなあと勝手に思っています。

        とはいってもどの作品も高い緊張感が漲っていて文句なしに面白い。作者の身辺に題をとった作品でもまるでハードボイルドの作品を読んでいるような気がします。

        読んでいるうちに作者が自分の生活や自分自身の内部をずっと凝視しているというイメージが生まれてきました。
        この作家の強靭な精神力に驚くとともに、それはしかし、周囲としてはかなり耐え難いことではなかっただろうかなどど思いました。

        私にとっては、新しい作家を発見した一冊です。
        >> 続きを読む

        2017/11/02 by Raven

    • 1人が本棚登録しています

【島尾敏雄】(シマオトシオ) | 読書ログ - 読書ファンが集まる読書レビューサイト(著者,作家,作者)

会員登録(無料)

今月の課題図書
読書ログってこんなサービス
映画ログはこちら
読書ログさんの本棚

レビューのある本