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塩野七生

著者情報
著者名:塩野七生
しおのななみ
シオノナナミ
生年~没年:1937~

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このランキングは1日1回更新されます。
      コンスタンティノ-プルの陥落
      カテゴリー:小説、物語
      4.8
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      • 面白かったー!!

        ヴェネツィアを描いた『海の都の物語』を読み終えたので、次はトルコの快進撃です。3部作1作目の、『コンスタンティノープルの陥落』から。
        出来事自体は『海の都の物語』にも出てきたので、すんなり読めました。
        まごうことなきランドパワーのトルコと、シーパワー寄りのビザンチン帝国。だいたいビザンチン帝国ってなじみがなくてよくわからなかったのですが、だんだんぼんやりとつかめてきました。本作で滅びちゃいましたけど。

        マホメッド2世ってすごかったんだなあ、と実感しました。ナポレオンのような時代の寵児だったのでしょうね。しかしナポレオンよりも権力の土台がしっかりしている。大砲を戦いに導入した、というのが印象的です。騎馬隊はいずれ滅び去る運命というのは知っていましたが、武器の進化で戦い方って変わるんですよね。世界大戦時の航空機もひとつのターニングポイントでしたし。そういえば本作のトルコの物資や人材のチートぶりは世界大戦時のアメリカを連想しました。モノって、大事ですね。逃げれば死ぬから敵に向かうしかないというのは怖すぎですが、たしかに効果はありそうです。
        私は日本人なので、コンスタンチノープルの話を読みながら日本のことを考えてしまうのですが、船で敵国に向かって異なる言葉を話し異なる信仰を持つ異なる民族と刃を交えるというのを、西欧組はもう何百年も繰り返しているわけで、そりゃあ年季がちがうよな、と思わざるをえません。日本にも戦国時代はありましたが、せいぜい国土も限られていますし、船を使っても川をうまく使うとか、海からわざわざ攻めるようなこともしなさそうですし、戦い方が根本的に違うんですよね。西欧東欧を地図に収めて、法王の在所をチェックしていたマホメッド2世のスケールの大きいことと言ったら…!海を越え山を越えの移動距離の長さがすごい。

        そしてやはり塩野さんの筆はすごいな、と思います。豊富な史料を駆使して物語として仕立てる腕がすごい。次はロードス島戦記ですね。楽しみです。
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        2016/09/14 by ワルツ

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      海の都の物語 ヴェネツィア共和国の一千年
      カテゴリー:イタリア
      4.7
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      • 〇塩と魚しかなく、土台固めの木材さえ輸入しなければならなかったヴェネツィア人には、自給自足の概念は、はじめからなかったにちがいない。しかし、この自給自足の概念の欠如こそ、ヴェネツィアが海洋国家として大を為すことになる最大の要因であった。(P66)

        〇私は、マキャヴェリの言葉に示唆されて、ヴェネツィアという国家を、一個の人格として取りあつかうつもりでいる。(P78)

        〇しばしば歴史には、イデオロギーを振りかざす人がいったん苦境に立つや、簡単にその高尚なイデオロギーを捨てて転向してしまう例が多いのを思えば、ヴェネツィア人の執拗さは興味あるケースである。自分にとって得だと思うほうが、こうあるべきとして考えだされた主義よりは、強靭であるかもしれない。西と東の強国のいずれにも決定的に附かず、独立と自由を守り抜いたことによって、ヴェネツィア人は、やはりずいぶんと得をしたのである。(P126)

        〇現実主義者が憎まれるのは、彼らが口に出して言わなくても、彼ら自身そのように行動することによって、理想主義が、実際は実にこっけいな存在であり、この人々の理想を実現するには、最も不適当であるという事実を白日のもとにさらしてしまうからなのです。(P144)



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        2017/03/01 by シュラフ

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      ローマは一日にして成らず
      カテゴリー:古代ローマ
      4.0
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      • 約10年振りに読んだ、ローマ人シリーズ。
        「知力では、ギリシア人に劣り、体力では、ケルト(ガリア)やゲルマンの人々に劣り、技術力では、エトルリア人に劣り、経済力では、カルタゴ人に劣るのが、自分たちローマ人である。それなのに、なぜローマ人だけが一大文明圏を築きあげ、それを長期にわたって維持することができたのか」
        この言葉に惹かれ、再読を決意。
        前回は「シリーズ8 ユリウス・カエサル ルビコン以前」で断念してしまったので、読書ログの力を借りながら、ゆるゆると読み進めていこうと思います。

        初代王ロムルス以降、7代続く王政の下、ローマという国家の基本形態が整えられていきます。
        2代王ヌマによる内部充実の時期を経て、3代王トゥルス・ホスティリウスは軍事力を率いて戦いに戦いを重ねます。
        敗者に対して隷属化せず、奴隷にもせず、ローマ化するやり方が興味深いです。
        先住者と同等の市民権が与えられるだけでなく、有力者には元老院の議席までもが提供されるなんて。
        5代王のタルクィニウス・プリスコは敗者をローマ化させる政策は取りませんでしたが、この王はなんと、混血エトルスクの異邦人。
        住みつく気さえあれば、王にでもなれるのですね。
        6代王も、生まれは定かではありません。
        そして7代王「尊大なタルクィニウス」(5代王の息子、元々持っていた野心に火をつけられ、簒奪)により、ローマの王政も終わりを迎えます。
        以後、500年もの間続く共和政時代に入ります。

        7人の王が長期政権で、それぞれ才能を発揮したことに驚きました。
        適材適所というか、偶然にもその時代に合っている人が選ばれた、読んでいてそんな印象も受けました。

        共和政になってからは、法の成文化を求めギリシアに調査団を派遣。
        話の中心はペルシア戦役へ移り、終盤はアテネやスパルタが中心となります。


        かなり久々に読みましたが、最初から最後まで本当におもしろかったです!
        前回読んだのはイタリア旅行後だったので、このときの楽しかった記憶も蘇りました。
        がっつりローマの歴史が描かれているのに、飽きの来ない一冊です。
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        2016/05/06 by あすか

      • コメント 30件
    • 他2人がレビュー登録、 9人が本棚登録しています
      サロメの乳母の話
      4.0
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      • 歴史に名を遺した人の「身近な」人(一部、馬)の独白、という形での短編集です。塩野さんならでは、という感じで、面白かったです。歴史のIFは、無意味ではあっても面白いですよね。にやりとさせられるユーモアは、さすが塩野さん。

        小説ですが、史実からうまく想像を膨らませているので話に無理もなく、そもそも読者である私は史実をあまり知らないので特に違和感を覚えることもなく、楽しめました。人間というのは1000年、2000年経ってもそこまで変わるものではなく、いるわぁー、こういう人、というのが楽しい。ユダの母親とか。

        史実を追い求めるのも楽しいのですが、IFを想像するのもまた楽しいものです。歴史上の人物は有名になればなるほどキャラクタが固定されていくので、本当にそうなの?と想像する本書は、読みながら古代のワイドショーを観る気分でした。ワイルドの『サロメ』もちょっと読み返したいですね。あれもワイルド視点の一種のIFですし。

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        2016/12/13 by ワルツ

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    • 他1人がレビュー登録、 4人が本棚登録しています
      海の都の物語 ヴェネツィア共和国の一千年
      カテゴリー:イタリア
      4.5
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      • 資源に恵まれないヴェネツィアのような国家には、失政は許されない。だからこそ彼らは現実的であり、合理的なものの考え方をする。例えば、聖遺物信仰についても生きた聖者に信仰を捧げて牛耳られないようにするものだ、と塩野七生は指摘する。なるほどと思う。塩野七生のこういうものの見方というのは大変に勉強になる。西欧とイスラムの対立の中、統治能力の優れた政府を持つ必要があったヴェネツィアが選んだ政体は共和制。共和国国会のメンバーを世襲制にして政治のプロ階級をつくることで個人の野心と大衆の専横を抑え込んだ、という。

        【このひと言】
        〇芸術家は、史実に忠実でなければいけないと言っているのではない。出来栄えさえ見事であれば、それで十分なのである。

        〇マルコ・ポーロの幸運は、大旅行を終えて後に、この時期しばしば起っていたヴェネツィアとジェノヴァの戦いに巻き込まれ、ジェノヴァの捕虜になり、牢の中で暇をもてあましていた時に、彼の話を聞き、それを書きとめておく気になった男に恵まれたことである。

        〇簿記の記入に不可欠なアラビア数字がヨーロッパにもたらされたのは、1200年代はじめのピサ人の功績による。はじめのうちは、憎っくき異教徒の産物ということで、教会関係者をはじめとする人々から、少なからぬ抵抗を受けたらしい。しかし、ローマ数字と比べれば、便利なことでは比較にならない。書きちがい読みちがいも少なくなるうえに、0という観念もある。それで、現実的な商人の間では、教会の妨害にもかかわらず拡まっていった。

        〇信者には信仰の対象が必要だ。それを信仰することによって、彼らは、心の平安を得るだけでなく、天国の席の予約もしたつもりになれるのである。この場合の信仰の対象が、聖者の骨ということになっている骨の一片や、キリストが架けられたという十字架の切れはしであったりすれば、これらはいかに信仰を捧げられても、その人々を扇動しようとはしないから実害はない。聖遺物購入に費用がかかっても、これならば安い代価である。一方、合理的と自認していたフィレンツェ人には、聖遺物信仰はなかったが、それだけに生きた聖者に信仰を捧げ、彼らによって牛耳られることがたびたび起った。

        〇資源に恵まれないヴェネツィアのような国家には、失政は許されない。それはただちに、彼らの存亡につながってくるからである。都市国家や海洋国家の生命が短いのは、この理由による。
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        2017/03/04 by シュラフ

    • 他1人がレビュー登録、 2人が本棚登録しています
      海の都の物語 ヴェネツィア共和国の一千年
      カテゴリー:イタリア
      4.5
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      • 地中海の覇権をめぐり、ヴェネツィアとジェノヴァとの戦いが苛烈を極める。航海技術などはジェノヴァのほうが上回っていたようであるが、ジェノヴァの欠点は個人主義的で天才型であるがゆえに、まとまりがなく内紛がたえない。結局、ジェノヴァは政局混乱のうえに消滅していく。ジェノヴァの自滅と、ヴェネツィアの勝利。勝利を決した要因は双方の国家の社会組織能力ということ。ジェノヴァの個人主義放任の害が国家に不利益をもたらしたと、塩野七生は指摘する。個人の利益と国家の利益をどちらを優先すべきか、それは間違いなく国家である。

        【このひと言】
        〇国力が昇り坂にある時は、個人主義放任も害を及ぼさない。それどころか、良い結果を生むことが多い。

        〇エリートは、修道僧の僧が神のために無償の奉仕をするように、与えられた名誉のためだけに奉仕すべきである、と言う人がいるが、このように言う人々は、まったく人間の本性に対して盲目であると言うしかない。修道僧には、神がいるのである。死後に天国での第一等の席も、保証されている。まあ、保証されていると信じることが彼らにはできるのだ。一方、キリスト教徒であっても、神に奉仕を誓ったわけでもない俗界のエリートたちには、無償の奉仕をするほどの理由はない。やはり、能力には、それにふさわしい報酬が与えられてこそ、彼らも、その才能をより以上に発揮する気持になるというものである。

        〇現実主義は、人間の理性に訴えるしかないものであるところから、理性によって判断をくだせる人は少数でしかないために、大衆を動員するためにはあまり適した主義とは言えない。

        〇戦争は悲惨なものである。しかし、その戦争にも、一つだけ積極的な意味がある。各人の欲望を単純化するという効能である。

        <解説>
        〇保守であれ、リベラルであれ、極端なイデオロギーのもとに「理想の追求」を急ぐときに大きな災いがもたらされることは、歴史の証明するところである。バーリンは、キリスト教を絶対視することなく、人間性の現実を冷徹に直視することを唱えたマキアヴェリを高く評価しているが、それはまさにこうした理由によるものであって、決して権謀術数的な政治手法の擁護にあるのではない。塩野さんがマキアヴェリを敬愛する理由も根源的には近いのではないかと私は推測している。

        >> 続きを読む

        2017/03/05 by シュラフ

    • 他1人がレビュー登録、 2人が本棚登録しています
      海の都の物語 ヴェネツィア共和国の一千年
      カテゴリー:イタリア
      4.5
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      • ただミラノの官吏によるエルサレムへの聖地巡礼のお話なのであるが、第九話「聖地巡礼パック旅行」に考えさせられてしまった。時代的には地中海では海賊が跋扈して、また西欧がトルコと対峙していた、という緊張の時代だったと思うのだが、なぜかのんきである。トルコの軍船の接近に恐怖し、船員の事故死を哀しみ、熱気に苦しむという苦難の旅ではあるのだが、それでも彼らはエルサレムに感動して、そして免罪を得たことを喜ぶ。あー、いったい人間とはなんなのだろうと思ってしまう。危険をおかしてまでわざわざ苦労などする必要はあるのだろうか。

        【このひと言】
        〇外交の重視は、その国が軍事力だけでは対抗できなくなったという証拠でもある。
        〇現実の同盟というものは、不幸にして、互いの立場を理解し、それを尊重し合う精神があるから結ばれるものではない。第三者に対する恐怖から結ばれるものである。そうでなければ、今のところ敵にまわす必要がないから、ひとまず結んでおく、という程度のものでしかない。
        〇権力者は、権力者同士の話し合いを好むものである。
        >> 続きを読む

        2017/03/11 by シュラフ

    • 他1人がレビュー登録、 2人が本棚登録しています
      海の都の物語 ヴェネツィア共和国の一千年
      カテゴリー:イタリア
      4.5
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      • 16世紀以降、ヴェネツィアは手工業部門にも積極進出。海洋貿易中心であったが、大航海時代による香味料貿易の危機に伴う方針転換。西欧諸国の戦乱を逃れてきた職人たちを受け入れた結果、ヨーロッパ毛織物工業の中心のひとつになるほど発展。さらに絹織物工業、石けん、ガラス工業、眼鏡、出版業など次々と展開。この海洋貿易から国内産業への転換について塩野先生は、ヴェネツィア人は資本の効率性を重視する民であるがゆえ、と説明する。時代環境が変わったことで産業構造が変化したということだろう。どうも塩野先生はホレた男に甘い気がする。

        【このひと言】
        〇歴史は複雑であることに醍醐味があるとは言っても、醍醐味が味わえる程度には整理される必要はあると思う。
        〇外交というものは、思っていても胸の中におさめて、口には出してはならない時もあるということを教えている。
        〇戦争でも平和でも、思いどおりに決められるのは、政治的能力によるものではない。軍事力である。量である。
        >> 続きを読む

        2017/03/12 by シュラフ

    • 他1人がレビュー登録、 2人が本棚登録しています
      海の都の物語 ヴェネツィア共和国の一千年
      カテゴリー:イタリア
      4.5
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      • 1797年、ヴェネツィア共和国は滅亡する。直接的な原因はナポレオンのヴェネツィアへの進軍ということなのだろうが、経済・政治・軍事的に三流国に転落してしまっていたヴェネツィアにとって滅亡はさけられなかったように思える。ではなぜヴェネツィアはそこまで衰退したのか。塩野先生の見解は、ヴェネツィア人の精神構造の変化をもたらした投資対象の変移が原因だという。かつて海洋貿易国家時代には人材の上下への流動性があったものが、農工業時代になると動脈硬化のように社会が膠着化してバイタリティーが失われた。日本の教訓とすべき話。

        【このひと言】
        〇マキアヴェリの著作が、ルネサンス時代を代表するだけでなく、時代を越えて通用する政治哲学の古典となり得たのは、理想を述べたからではなく、現実を喝破したからである。
        〇投資の対象の変移は、それをする側に、その投資が定着するにつれて、精神構造の変移をもたらさずにはおかないものである。ヴェネツィア人は変わったかもしれない。だが、それは彼らが奢った結果ではない。投資の対象の変移につれて、彼らの精神も変わっただけなのである。一民族の衰退の原因を、その民族の精神的堕落の結果とするよりは、よほどこのほうが恐ろしい。
        〇独占の弊害は、それが経済的な必要以上になされることによって、社会の上下の流動が鈍り、貧富の差が固定化し、結局は、その社会自体の持つヴァイタリティの減少につながるからである。
        >> 続きを読む

        2017/03/12 by シュラフ

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      生き方の演習 若者たちへ
      カテゴリー:人生訓、教訓
      4.0
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      • 自分の頭で考えること・疑うことの大切さ。
        そして、何より国語をきっちりと学ぶことの大切さ。
        この2点は、自分の思いとまったく同じ。
        ネット社会でコピペが多くなっている今、自分の頭で考えることは重要だし、外国語をいくら学んでも、頭の中は国語で考えているのだから、国語が先である。
        上手く喋るよりも、自分の思いをしっかりと伝えることのほうが、相手も聞いてくれるというのは、そうだろうと思い、意を強くした。
        >> 続きを読む

        2015/06/10 by けんとまん

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      黄金のローマ 法王庁殺人事件
      カテゴリー:小説、物語
      4.5
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      • 今回ローマへこの本「黄金のローマ」を連れて行った♪
        この小説は、作者曰く「都市が主人公」。つまり主役はローマなのだ。
        (殺人事件というサブ・タイトルですが、ミステリーとはいえません)

        じっくり読み返す時間はなく、舞台となっている街並み、広場、屋敷などを
        個別に見て回る時間がなかったのが返す返すも心残りだけれど、
        それでも、地図を見て、位置関係、景観の記憶などが
        全く未知な町の時とまるで異なってくることに驚く。

        「百聞は一見にしかず」という言葉には、一理ある。
        哀しいかな自分の想像力の限界よ…。

        例えばテヴェレ河をはさんで、サンタンジェロがどう見えるか。
        それをイメージできるだけでも、物語から『みえてくる世界』が変わるのだ。


        時は1537年夏。ローマは、ルネサンス最後の法王と呼ばれる法王パオロ三世の治世。

        ヴェネツィア貴族・マルコ・ダンドロとコルティジャーナ*のオリンピア
        2人の美しい中年の恋人たちが、道案内役だ。
        (この二人以外の名のある登場人物は全部実在人物だそうだ)

        *コルティジャーナ(高級遊女):この時代に突出した存在の高級娼婦。売春婦とは別物。
        日本の江戸代の花魁にもちょっと近いかな。
        芸術、教養にたけ、社交界に出入りし、貴族との交友を持つ。
        もちろん美女。


        ローマの名門ファルネーゼ家出身の法王は、息子のピエール・ルイジ・ファルネーゼを教会軍総司令官に、
        孫アレッサンドロは枢機卿に据え、絶大な影響力を持っていた。
        人文主義者で、ローマ出身の彼は、古代文明への愛と芸術への理解も備え
        ドイツのプロテスタント問題の解決などにも心砕いていた。

        ミケランジェロの才能を高く評価し、システィーナ礼拝堂の最後の審判を描かせた人でもある。

        この小説で何よりも嬉しいのは、ミケランジェロが作中に登場することかも。
        (私はミケランジェロのファンなんです。作品も人物も両方の意味で)

        システィーナ礼拝堂の壮大な天井画、「天地創造」を書き上げた彼は、
        今は正面祭壇画の「最後の審判」(1541年~)を描いている真っ最中。

        カピトリーノの丘(カンピドリオ広場)の改修、
        サン・ピエトロ大聖堂のクーポラの設計もミケランジェロの手によるものだ。
        ファルネーゼ家との親密な関係により都市計画も想定されていた。
        古代とルネッサンスの時代の融合を夢みたミケランジェロの息吹が伝わってくるように思われた。

        彼はフィレンツェ人だが、ローマでより完成した仕事をしているのは、
        単に法王がスポンサーとして強力だったからだけではなく、
        ローマに本物の古代があったからなのだろうと、改めて理解できた気がした。


        『すべての国の歴史は、もっとも華やかに見える時期こそが「終わりのはじめ」であったことを実証している』

        ヴェネツィア、スペイン、法王庁の連合艦隊がプレヴェザの海戦でオスマン=トルコに敗れるという大事件が起こり、
        マルコにはヴェネツィア共和国への想いが熱くよみがえる。

        ヴェネツィアという現代的な都市国家も、衰退への道を歩み始めたのだ。

        マルコは一介の私人としてオリンピアと結婚を考えていたが、
        2人の恋の行方は果たしてどうなるのか?
        恋愛はどうでもいいや。という読者も結構いるかもしれませんが(^^;)


        『緋色のヴェネツィア』『銀色のフィレンツェ』『黄金のローマ』
        と3部作の完結編。
        今回、ローマに行くので再読したのですが、あとの2冊も読み直してみよう♪
        いつか、ヴェネツィアとフィレンツェも行かなくては。と心に誓う私です。
        >> 続きを読む

        2013/04/08 by 月うさぎ

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    • 2人が本棚登録しています
      チェ-ザレ・ボルジアあるいは優雅なる冷酷
      カテゴリー:個人伝記
      3.0
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      • ルネサンス期、小国が連立していたイタリアで、イタリア統一の野望に燃えた男、チェーザレボルジアの話。時のローマ法王の息子で、27歳の時には軍事、政治面で広範な領土ロマーニャを支配してしまう能力は素晴らしい。飛ぶ鳥を落とす勢いだったが、物語の後半でマラリアに罹患してしまい、そこからというもの人生が一気に変わってしまう。権謀術数の体現で有名だが、敵を作りやすいのもあって、一気に攻めこまれてしまっている。もし、マラリアになっていなければ、その後の歴史がかなり変わっていただろう。高校の世界史でもう少し名が取り上げられていたかもしれない。
        高校の世界史では文化史の面で、マキャヴェリやレオナルドダヴィンチやユリウス二世という名前を見かけた気がするが、彼らはこの本に登場してきてチェーザレボルジアとかなり絡んでいたので、知識が繋がって勉強になった。

        優秀な人材の登用、部下の離反、病気などの要素は銀河英雄伝説でも見かけたので、ラインハルトのモデルになったのかなと思った。
        先にモームの昔も今もを読んでいて、マジョーレの反乱などには予備知識があったので読みやすかった。
        >> 続きを読む

        2016/02/17 by harubou

    • 3人が本棚登録しています
      ロ-ドス島攻防記
      カテゴリー:小説、物語
      4.5
      いいね!
      • 『コンスタンティノープルの陥落』に続く二作目です。とはいえ短編でも楽しめる1冊。今回の題材は、1522年のロードス島での戦いです。聖ヨハネ騎士団VSオスマン・トルコ。

        『コンスタンティノープル~』では、トルコのスルタンはマホメッド二世でした。今回のトルコはスレイマン一世を大将に据えていました。うーん、世界史でやったような、やらないような…
        もともと片仮名の名前が苦手な上に、N世という名前になじめなくて、世界史は苦手なほうでした。ストーリー的には面白かったのですが、当時はイスラム世界に興味を持つほど大人ではなかったというのもあります。イスラム絨毯のチューリップ、かわいいんですけどね。

        話がそれました。
        以下、ネタバレ含むのでご注意ください。






        騎士団というのもファンタジー小説でしかお目にかからないものではありますが、日本のサムライと同じようにイメージが先行してもはや正体がわからないような。しかし騎士団が現存しているとは驚きでした。
        テンプル騎士団の末路にも興味はありますが、今回の主役は聖ヨハネ騎士団、そしてスレイマン一世率いるトルコです。

        騎士団の滅びの美学もさることながら、やっぱり気になるのはトルコの存在感ですね。イエニチェリ軍団と圧倒的物質量。日本人としては少数の精鋭で烏合の衆を倒す、というのにわくわくする気もあるのですが、現実にはやはり兵の数で勝敗が決まるものです。アメリカがチートだったのも、圧倒的物量でしたもんね。しかし兵を使い捨てで来られたらたまらないよなぁ、と思います。どうしても戦いというのは守る側が不利になるものですし。

        戦いの決着は意外なものでした。
        相手を尊重するというのが礼儀を尽くすことだとしたら、お互いにそうした結果であるといえなくもないでしょう。スレイマン一世が紳士的だったのはその通りなのでしょうが、それとともに、彼はなかなかの策士だったのかも。キリスト教徒憎しは建前で、どうせ支配した後も信教の自由は認めるのであれば、騎士を殲滅する必要はありませんもんね。むしろ明らかに勝ちを知らしめることができるなら、別に見逃してやったっていいし、支配後のロードス島民を手なづけるにも都合がいい。

        むしろ騎士団が敗北後も命を永らえることを受け入れたことのほうが意外でした。やはり欧州はそうなのか。もっとも戦で敵を一族郎党皆殺しにするのは、相手憎しというよりも未来の敵を殲滅するためという合理的な理由があるんですけど、よく考えたら中国なんかではよく相手の軍門に下って戦ったりしているし、負けて土地を明け渡すにも、もともとの土地ではないからセーフって感じなんでしょうか。そう、そもそも騎士団はロードス島で生まれたわけでもないですからね。
        しかし欧州に戻った騎士たちが「お前よくものこのこと…!」みたいに迫害されなかったのか。そこが不思議です。生きて帰って許されるのかー。

        続きにあたる『レパントの海戦』も、もちろん読みます。
        >> 続きを読む

        2016/10/08 by ワルツ

    • 3人が本棚登録しています
      レパントの海戦
      カテゴリー:小説、物語
      4.0
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      • ヴェネツィア旅行のために読み始めた、『海の都の物語』で塩野さんにはまり、続けて読んだ『コンスタンティノープルの陥落』、『ロードス島攻防記』につづいて『レパントの海戦』、読み終わりましたー!そしてヴェネツィアも行ってきましたー!いやぁ、間に合ってよかった。
        ヴェネツィアではドゥカーレ宮殿の元首の執務室に潜り込んだりサンマルコ寺院に見とれたり鐘楼の鐘の音に聞きほれたりしました。いやぁ、いい街でしたよ。本当、読んでいってよかったです。建物ほとんど残ってるので、感慨深いです。聖ザッカーリア教会も残っています。

        とはいえレパントの海戦の舞台はヴェネツィアではありません。まったく出てこない訳ではないですけど、やはり舞台は海の上。地中海のレパント、名前は知っていましたが、実際どのあたりなのかというのを、初めて把握しました。

        これまでもちょくちょく出てきていたスペインですが(十字軍に熱心だった。魔女裁判とか異端審問とか…)、いよいよ海洋国としてのスペインが生まれつつある時代のようです。オランダあたりも海洋国としてだいぶ儲けていたはずですよね。あまり詳しくないですし、本書にもそのあたりは詳しく書いていないのですが(時代が違うので)、海の覇者となったのはオランダ->スペイン->イングランドの順でしょうか。ちょっとそのあたりも調べたいところです。

        しかし確実なのは、地中海使わない航路がメジャーになっていたというところですね。だから地の利がなくなったヴェネツィアは沈んでいった、と。スペインのこの後の快進撃も気になりますが、トルコも気になります。歴史は興味を持つと尽きることがないですね…

        そして相変わらず塩野さんはディティールから物語として膨らませるのが上手ですね。適度な距離感がいい。

        ヴェネツィアではない、他の作品もぜひ読みたいです。
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        2016/10/26 by ワルツ

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      マキアヴェッリ語録
      カテゴリー:政治学、政治思想
      5.0
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      •  一言で述べてしまうのならば「タイトルの如く」です。マキャヴェリの言に関して著者が解説を加えて行くのかと思いきや、語録しか載っていません。「君主論」「政略論」をはじめとしたマキャヴェリの記述をそのまま載せているだけです。ダイジェスト版とでも言えば良いのでしょうか。

         勿論、著者は巻頭の「読者へ」と言う部分でなぜこのような形になったのかという説明がなされています。要約すると、マキャヴェリの政治論に対しては賛否両論様々な意見が過去に述べられていますが、著者はその両者ともに納得しがたい部分がある。故にマキャヴェリの言のうち、本質的な部分をそのまま載せてしまったというものです。

         結果的にその選択は非常に正しいものと言えるでしょう。まず、マキャヴェリに対する賛否は、それを専門的に研究する人を除けばあまり必要のないものだからです。私なんかは「マキャヴェリはこういう事を言っている」と言う事が分かれば良く、それに対して自分がどう考えるかが重要なのですから。

         また、この語録は他にもマキャヴェリを知らない人に恩恵をもたらしています。以前に『君主論』を読みましたが、中世イタリア史への深い理解が無ければ分かりにくい部分も多い本でした。注釈と本文を右往左往する事が多かったのです。この本はそれを考慮する事でマキャヴェリの思考をよりとっつきやすいものに昇華させています。

         私は結果的にこの本が以前読んだ「君主論」のおさらいというか、より理解を強めるための道具となりましたが、入門書としても活用できるのではないでしょうか。もちろん「君主論」や「政略論」の本編も合わせて読んでみることもオススメしますが。(といいつつ『政略論』はまだ読めていないんですけどね(笑))
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        2017/02/11 by aokaze

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      ルネサンスとは何であったのか
      カテゴリー:イタリア
      4.0
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      • ルネサンスと呼ばれる中世ヨーロッパに起こった社会現象についての考察の本。

        ルネサンスとは何であったのかについて冒頭にまず会話形式にて纏められます。
        「見たい、知りたい、分かりたいという欲望の爆発こそが、高背の人々によってルネサンスと名付けられることになる精神行動の本質でした。」
        そして、創造することが理解の本道と。

        この本はルネサンスという現象とその時の人々の思いを記した本です。

        中世という時代は信じる事を強制する時代でした。信じる者は救われる。プロセスに従っていれば天国に行けるのです。運悪く天国に行けなかった場合は記録抹消されるだけです。そして大抵は細かい指摘の連続で天国へはいけませんと告げられる。あとは実在しない地獄という概念で脅すというわけです。死人に口なしですので非実在も証明できませんしね。ちなみに地獄という概念を最初に生み出したのはインドのようです。

        それに対しルネサンスというのはなぜそうなんだと問いかけ続け続けるという事です(whying)。要するに中世ヨーロッパの青春時代でした。

        コンスタンティヌスの寄進状、すなわちヨーロッパは教会のものという概念から崩されていきます。そして権力の実行力である聖務禁止令と破門の発令に対する冷めた視線。聖務禁止令がおこなわれると冠婚葬祭の一切がおこなわれなくなりますし、破門されると村八分です。

        ですが、こういったことをくっだらない権力闘争や政治劇、その時の気分(要は権力者の全能思想)で決められては庶民としては堪ったものではないでしょう。全く安定しない。だからルネサンスが発生したのです。

        本書は当時の時代を生きた人物の置かれた事情や組織の都合や考え方を追いながら、ルネサンスというレジスタンスを対話形式で語っています。

        ただ、この後には統一性を復旧させようとする旧体制派とルネサンス対応した新体制派の衝突による異端審問という恐怖による悲しい時代がやってきます。

        ですが、この時代に作られた芸術作品の巧緻なる事、華やかなる事の事実です。問いかけは社会全体として価値の無いものではないのでしょう。むしろ価値を生み出す根源となりえるのでしょう。

        ルネサンスという精神運動に興味を持った人にお勧めです。
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        2013/11/23 by Shimada

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      塩野七生『ローマ人の物語』スペシャル・ガイドブック
      カテゴリー:古代ローマ
      4.5
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      • 塩野七海の「ローマ人の物語」に関連するガイドブック。
        中身は古代ローマ史に注力した写真集になっていまして、あたかも学生時代の社会の授業の時に教科書の他に用意されていた資料集のような感じです。

        「ローマ人の物語」を読むにあたって特に資料が必要という事は無かったのですが、古代ローマに関する様々な遺跡、彫刻、壁画、当時の食べ物等の写真が見れるというのは興味深いものです。

        ガイドブックなので当然ですが、「ローマ人の物語」の順におおよそ沿っていて、部分部分で「ローマ人の物語」の本文を引用しつつ本文で作者が伝えたかったことを解説する内容になっています。そこに写真がふんだんに加わることで具体性が増しています。当時の人々の姿や生活の営みや町の様子といった物語の背景が垣間見えるかのよう。

        本書、西はイギリスから東はトルコ、北はドイツから南は北アフリカまで様々な土地の写真が出てきます。場所によって気候も風土も生活の様式も全く異なっているのですが、それを見るにつれ古代ローマ帝国の広大さに驚かされますね。

        有名なルビコン川や、アレシア台地が写真で見れるというのが嬉しいところです。写真を見ているだけで古代ローマ帝国圏を旅した気分になれるそんな本です。

        休日のリラックスした時間にお勧めの本です。
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        2013/09/01 by Shimada

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      ローマは一日にして成らず
      カテゴリー:古代ローマ
      4.0
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      • ゲルマン人の襲来からイタリア半島統一まで共和制ローマを描いたローマ人の物語第2巻。ローマは一日にして成らず下巻。ローマを建国してからイタリア半島統一までの500年…本当に、「ローマは一日にして成らず」なのである。

        「知力ではギリシア人に劣り、体力ではケルトやゲルマンの人々に劣り、技術力ではエトルリア人に劣り、経済力ではカルタゴ人に劣るのが、自分たちローマ人である。それなのに、なぜローマ人だけが一大文明圏を築きあげ、それを長期にわたって維持することができたのか」

        著者はひとまずの結びとして言う。ローマ興隆の要因は他の民族も内包関係になりやすい狂信的でない宗教観、ローマ共和制独自の政治システム、そして敗者でさえも自分たちと同化する彼らの生き方、この3点を含むローマ人の開放的な性質なのだと。

        この結論だけ聞くと元々歴史の知識も興味もそれほど持っていない私のような人は「ふーん、なんか難しそう」とか思って終わってしまいそうなところ、この本を読んでみるとなんと興味深いことか。それぞれのエピソードが歴史とは思えないほど面白く読める。そして2000年以上前に生きたローマ人から現代人が学ぶべきことのなんと多いことか。

        「歴史の主人公である人間に問われるのは、悪しき偶然はなるべく早期に処理することで脱却し、良き偶然は必然にもっていく能力ではないだろうか。」

        次は、ハンニバル戦記。とても楽しみである。
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        2016/12/30 by chao

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      危機と克服
      カテゴリー:古代ローマ
      4.0
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      •  本書では、歴代のローマ皇帝の功罪が記載されており面白いが、強大な権力を持つローマ皇帝の暴走を防ぐ、という意図で「皇帝弾劾のシステム」があったというのが興味深い。これは「元老院」に与えている権限で、暴君として有名なネロもこのシステムで有罪となった皇帝の一人であるが、内容的には、『有罪となった皇帝の象像が破壊される』、ということの他に「記録抹殺刑」というのもあったようだ。これは有罪となった皇帝の記録を全て抹殺するというもので、例えば記録が銅板に記載されているものは銅板自体を溶解する…等の方法で徹底的に抹殺した。また面白いことに、この名残は20世紀になっても存在し、第二次世界大戦の敗北の責任者として、ムッソリーニが建設した建物の彼の名のところはセメントを流し込む…等の方法で徹底的に名前が消されたようである。 >> 続きを読む

        2012/01/30 by toshi

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      ローマ人の物語
      カテゴリー:古代ローマ
      5.0
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      • トルストイの『アンナ・カレーニナ』の引用からはじまる。「幸福な家族はいずれも似ているが、不幸な家族はそれぞれちがう不幸をかかえている」。ローマ帝国は皇帝が相次ぎ変わるという政局不安定の時期を迎える。塩野先生は、カラカラ帝のローマ市民と属州民の差別を撤廃した「アントニヌス勅令」に着目。この勅令により、ローマ人がローマ人でなくなった、ということなのだろう。ローマ人でなくなれば、それに付随する義務感も責任感もなくなるわけで、ローマ帝国の基盤が失われる。そして乱世の時代になると、塩野先生の筆がますます冴える。

        【このひと言】
        〇公正な税制こそが善政の根幹であると言われる由縁だが、なぜなら善政とは正直者がバカを見ないですむ社会を実現することだからだが、税率を可能なかぎり低く抑えしかもそれを上げないことも、善政を目指すならば忘れてはならない重要事になる。
        〇後世の研究者たちも、ローマ帝国は税金を広く浅くとることに成功していたと、口をそろえて証言している。それは、帝国の税制を確立したアウグストゥスとその後につづいた皇帝たちが、税制を経済だけの問題とは考えずに、政治と考えていたからだと思う。
        〇全員が平等でなければならない社会では、異分子、即ち他国人に対して、閉鎖的になるのは当然の帰結である。昨日まで他者者であった人を、今日からはわが家の一員だとして同等の発言権を与えて仲間に加えた場合を考えてほしい。昨日までの長い歳月を「わが家の一員」でがんばってきた側から、反発が起こるほうが自然ではないだろうか。全員平等とは、異分子導入にとっては最もやっかいな障害になるのである。
        〇人間は、タダで得た権利だと大切に思わなくなる。現代の投票時の棄権率の高さも、これを実証する一例になるだろう。なぜなら実利が実感できないからだ。
        〇誰でも持っているということは、誰も持っていないと同じことなのだ。
        〇ベテランの利点は、不測の事態になっても彼ら自身で収容でき、何であろうと打開の道を見出せるところにある。それが経験の不足する兵士になると、苦戦になるや容易にバニックに陥ってしまい、逃げることしか考えなくなる。
        〇人間とは、事実だから信ずるのではなく、事実であってほしいと思う気持ちさえあれば信じてしまうものなのである。
        〇治安の重視は、公正な税制とともに善政の根幹だと私は思っているが、皇帝アレクサンデルも、治安を乱す者は「国家」の敵であると公言している。治安が乱れて最も被害をこうむるのは、一般の市民なのだ。権力者のボディーガードは国費でまかなわれる。富裕者は、ボディガードであろうとガードマンであろうと雇うカネに不足しない。一般の市民はそのどちらでもないのだから、彼らの安全は「共同体」が配慮すべきことなのであった。
        〇だが、この若者には、困難な事態への対処には不可欠な柔軟性と、必要とあれば悪にさえもあえて手を染める決断力が欠けていた。善良で責任感が強いだけでは、リーダーは務めきれないのである。
        〇パルティアが、敵であっても与しやすい敵国であった理由の第二は、ローマもパルティアも最高権力者の存在が明確であったことにある。
        〇現実主義者が誤りを犯すのは、相手も現実を直視すれば自分たちと同じように考えるだろうから、それゆえ愚かな行為には出ないにちがいない、と思いこんだときなのである。
        〇しかし、「理」さえあればやってよいということにはならない。一寸の虫にも五分の魂があるのが、人間の世界なのだから。
        〇歴史は、現象としてはくり返さない。だが、この現象に際して露になる人間心理ならばくり返す。それゆえ、人間の心理への深く鋭い洞察と、自分の体験していないことでも理解するのに欠かせない想像力と感受性、このうちの一つでも欠ければ、かつて成功した例も、失敗例になりうるということを、このエピソードは教示してくれていると思う。
        >> 続きを読む

        2017/03/11 by シュラフ

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【塩野七生】(シオノナナミ) | 読書ログ - 読書ファンが集まる読書レビューサイト(著者,作家,作者)

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