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杉本苑子

著者情報
著者名:杉本苑子
すぎもとそのこ
スギモトソノコ
生年~没年:1925~

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このランキングは1日1回更新されます。
      散華 紫式部の生涯
      カテゴリー:小説、物語
      5.0
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      • 永井路子と共に長年に渡って、愛読する女性作家に杉本苑子がいます。

        彼女は吉川英治の愛弟子として有名ですが、彼女が紡ぎ出す歴史小説の数々は、永井路子とはまた違った角度から、歴史とその歴史のうねりの中で翻弄される人間像を描く事にアプローチしていて、その確かな史眼と歴史解釈には胸を打たれるものがあり、暇を見つけては彼女の作品世界に浸るようにしています。

        杉本苑子の作品には、「孤愁の岸」のように自らの戦中体験を軸に、時代の権力構造を剔抉するダイナミックな作品もあれば、第12回吉川英治文学賞を受賞した名作「滝沢馬琴」を初めとして、世阿弥を主人公にした「華の碑文」、近松門左衛門を描いた「埋み火」など、作家や芸術家の作品創造の過程に自らの作家的姿勢を投影させた一連の作品があり、繰り返し何度でも熟読しては、歴史小説の醍醐味、素晴らしさを満喫しています。

        そして、今回読了した彼女の作品は「散華 紫式部の生涯」で、その内容はと言えばこうです。

        三十六歌仙の一人であった祖父の、風雅の血を受け継ぎ、知識や教養を重んじる藤原為時。しかし彼は、その生来、無欲恬淡な人柄のため、時の政治の中枢から外されていました。

        皇位継承をめぐる内紛や、娘たちを政治の道具にして、権勢拡大に明け暮れる藤原一門。栄華のための権謀術数がはりめぐらされる世相にあって、為時の娘、小市、後の紫式部は、父の影響から、好きな読書に興じる日々を送っていました。

        そして、ある日、本の貸し借りで友人となった橘為義の娘、万奈児から、時を超え読み継がれていく、"書物の普遍性"というものを説かれるのです----。

        その後、小市は、藤原宣孝と結婚をしますが、夫は浮気性で、しかも結婚三年目に病死します。心に傷を負った小市は、「蜻蛉日記」に触発されて、理想の男性像を希求した物語「源氏物語」の執筆を決意するのです----。

        杉本苑子の作品には、作家・芸術家の作品創造の過程に自らの作家的姿勢を投影させた一連の作品があり、このような試みが、古典との対応の中で、一つの頂点を極めたものが、力作「新とはずがたり」を経て執筆された、この「散華 紫式部の生涯」なのだと思います。

        「新とはずがたり」は、自身の性の遍歴を赤裸々に記した、鎌倉時代後期の女流文学の傑作と言われる「とはずがたり」を、原典とは違った立場から再構成し、併せて、後深草院と亀山院の抗争から南北朝迭立の問題をも活写する事に成功した、"歴史と文学の問題"に迫った力作だったと思います。

        一方、この「散華 紫式部の生涯」は、それを更に発展継承させた形で、日本文学史上最大のヒーローである、"光源氏誕生の秘密"を自己の文学観と二重写しにしながら、解き明かしていった渾身の一作だと思います。

        藤原氏の一門にありながら、無欲な漢学者を父に持ち、"理想と現実の落差"を文学によって超克しようとした紫式部----。

        三年にも満たぬ不幸な結婚や皇位継承をめぐる権力抗争を見据えつつ、「源氏物語」の完成に執念を燃やす彼女の胸に去来していたものとは何なのか? ----。

        紫式部は「蜻蛉日記」に触発され、叔母の周防の「難のない人間はいないはず、不条理や不公平を伴わない愛もない。それが現実ならば、せめて物語の中ででも、理想の男性像を求めるしかないわね」という言葉に動かされるまま創作に踏み切りますが、それは「宇治十帖」執筆のくだりで、「もともと自分の生き身の証を求めて、自分に課した『書く』という孤独な作業に、賞讃なり、他の声を期待するのがまちがいなのだ。自分の内面とだけ向かい合って、生みの苦しみに喘ぐ作者の姿勢に、もし共感する人がいたら、たとえ一人でも二人でもいい。そういう読者の無言の励ましを支えに書きぬくほかはない」という確固たる信念へと変わっていくのです。

        "永遠に読み継がれていく文学の力"に較べれば、一つの時を支配する権力などは、"一抹の儚い夢"にすぎない----。この事は紛れもなく、作家・杉本苑子自身の祈りであり、戦中派の感慨を胸に作品を紡ぐ事によって、戦後を生きてきた、杉本苑子という作家の"強固で揺るぎのない信念"なのかも知れません。

        この小説の題名にもある「散華」とは、恐らく、そうした思いを抱きつつ、生き、散っていった多くの人々に捧げられたものなのではないかと思います。
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        2016/10/10 by dreamer

    • 1人が本棚登録しています
      ごめんあそばせ独断日本史
      4.0
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      • 特に「伊豆の修善寺」の大日如来像の中から北条政子の髪の毛が見つかった…とかの話しが鎌倉時代の歴史を背景にしながら「対談形式」で記されているのが非常に面白いです。あるいは、戦国時代の衆道(所謂男性の同性愛)の話し等ちなみに、男性の同性愛=衆道は、当時は社会的認知があり、おおらかであり、お互い「生死を共にする」というような現在のホモとは内容が異なる面も多く、時の権力者(例えば織田信長と森蘭丸とか)や他の戦国武将達にも多くの例があったようです。 >> 続きを読む

        2011/08/31 by toshi

    • 1人が本棚登録しています
      決断のとき 歴史にみる男の岐路
      カテゴリー:日本
      3.0
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      • 8代将軍 足利義政(京都の銀閣寺を建てたことで有名)の記載内容が面白い。世評では、「ダメ将軍」とのレッテルを貼られている感がある
        室町幕府8代将軍足利義政(京都の銀閣寺を建てたことで有名)は、3代将軍義満(室町幕府が最も強かった時の将軍で、金閣寺を建てたことで有名)の時のように「幕府の権威」を取り戻そうと、彼なりの想い(ビジョン)から、諸々のことを実行するのだが、結局幕府自体の力の衰えはどうしようもない状態で、義政の思いどおりにならなかった様々ないきさつが面白い。
        また、本能寺の変で主君織田信長を討った明智光秀の決断に至るまでのいきさつ等も面白い。信長の方針によって人質となっていた母が殺されたこと等の「恨み」が、主殺しの理由とか世評では諸々言われているが、無防備な(少ない兵しかいない)本能寺に主君が滞在している今が
        自分(光秀)が「天下をとる」絶好のチャンスで「今しかない」…という気持ちが最大の理由であったと筆者は言っている。
        とき(土岐)は今あめが下しる五月かな。と光秀が「決意」を詠んだと
        されるうた(連歌)も印象深いものがあります。
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        2011/07/20 by toshi

    • 1人が本棚登録しています

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