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鈴木主税

著者情報
著者名:鈴木主税
すずきちから
スズキチカラ
生年~没年:1934~2009

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      メディア・コントロール 正義なき民主主義と国際社会
      カテゴリー:社会学
      3.0
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      • ・民主主義とは
        もし、みなさんが民主主義の定義を聞かれたら、僕達国民に主権があり、情報に自由にアクセスでき、その情報を元に意思決定をし、政治に参加し一定の影響力を与えるものと答えるでしょう。辞書の定義も大体そのような意味になっているはずです。しかし、著者は権力者と呼ばれる特定の人間が、大衆を特定の方向に誘導していると指摘し、それにはマスメディアと知識人が大きく加担していると言います。そして、アメリカの仕掛けた戦争はテロと変わらないと断罪し、その手口を暴いていきます。さらに、マスメディアや知識人に疑いの目を向けることの大切さを僕たちに語りかけます。

        ・戦争とマスメディア
        本書ではマスメディアの宣伝効果により、他国を絶対的な「悪」であると民衆に思い込ませ、敵国に仕立てあげた事例をあげています。「相手は我々を滅ぼそうとしている敵である。だから、我々の身を守るために戦わなければならない」と民衆に信じさせ戦争の合意を得たことを指摘しています。これはプロパガンダの典型的な手口でもあります。イラク戦争では「大量破壊兵器がある」危険国であるという理由で戦争を始めはずだったのに、実際にはそんなものは見つからなかった。

        それとこの事件について僕は知らないのだが、本書によると1986年5月にエルサルバドル人権擁護委員会の生き残りメンバーを逮捕して拷問したという事件が起こったらしい。アメリカ合衆国陸軍少佐に拷問された囚人もいたようだ。監獄の中の430名分の拷問についての詳しく書かれ、彼らの署名が入った宣誓供述書や、彼らの供述の様子を映したビデオテープが監獄から持ちだされた。ところが、アメリカの全国紙も、テレビ局もこれを報道するのを拒否したという。

        また、戦争は国内の不満を外部に向けるのにとても好都合であることも指摘しています。国民を無視した政治を行い国内に数々の問題が発生しても、戦争が起こればそういった問題へ目を向ける余裕がなくなります。これも統治の常套手段です。中国の反日政策なんかはこういった意図があってやっていると言われていますね。

        ・知識人も噓をつくし間違える
        頭のいい人の情報だから正しいだろうと盲目に信頼してはいけません。かつて東大教授が「プルトニウムは飲んでもすぐ排出される」なんてとんでも発言をしたことがあります。彼は原発推進派でした。知識人だって人間です。当然利害で動きますし、そのためには噓をつくことだってあります。ポジショントークなんてものはこの世にありふれているのです。専門家が専門外の話題でトンチンカンなことを言うなんてことも日常茶飯事です。ですから、彼らのいうことを鵜呑みにしてはいけないのです。著者は自分達の利益を優先し、大衆が認知していない情報をあえて公開しなかった知識人へも批判を浴びせています。


        ・分割統治
        「分割して統治せよ」とフランスの国王ルイ 11世は言いました。被支配者同士を争わせることで、統治者のほうへ矛先が向くのを防ぐということです。本書では第二次世界大戦付近のアメリカの労働者組合を取り上げています。民衆の団結を好まない人間が市民団体の悪評を流し、その団体は公益に反する破壊分子であると考えさせたのです。みなさんはそんな危険な団体のストライキやデモなんかに参加せずに、平和を愛し大人しくしましょうねとこういった具合です。凄いですよね、ここまでくると感心する他ありません。

        日本だと冤罪事件の問題や年金問題が分割統治にあたる危険を孕んでいるといえるでしょうか。本当は司法の腐敗や、政府がつくった問題なのに男vs女、老人vs若者という構図になれば政府はさぞや政治をしやすいことでしょう。何をしたってとがめられず、勝手に民衆同士で争っているのだから好き勝手できるというものです。

        ・インターネットこそが希望
        ネットには自分より優秀な人がたくさんいて、そういう人たちが発信している情報を容易に受け取ることができます。メディアの情報をそのまま鵜呑みにするのではなく、「複数の」専門家や他人の意見を聞き、「自分自身で考えること」でメディアや政府の情報操作の影響を軽減することができるでしょう。

        また、Wiki Leaksという政府、企業、宗教の機密情報を告発するサイトがあります。そのサイトで米のNSAが日本政府を盗聴していたことが告発されニュースになったり(日経が記事にしています)、最近では猪瀬氏が内田茂についての告発情報をネットで発信していたりということが実際に起こっています。

        インターネットがなかった時代にはこれらの情報は表にでてこなかったかもしれません。ネットの存在が情報の隠蔽を防いでくれる可能性があります。権力者にとってネットの存在はさぞ目障りなことでしょう。なるべくネットの自由を奪いたいと考えていると思われます。「子供の犯罪被害を減らすために」などの美しい大義名分でネットの自由(実名制にするなど)を制限されないように気をつけたいものです。この世にそのままの姿であらわれる悪徳はない。必ずそのうわべに美徳のしるしをつけているのですから。

        ・総論
        本書が出版されたのは2003年です。今日ではメディアや知識人によって世論調査や思想が特定の方向に誘導されているなどの言説は珍しいものではありません。ネットではメディアの偏向報道は日頃から叫ばれていますし、熊本地震の時にもメディアが被災者の邪魔になっていることが騒がれたりするなど、昔と比べればマスメディアを絶対視する人間は少なくなっていることは明らかでしょう。しかし、恐ろしいのはそうした認識が広まりつつある現代でも、やはり、僕たちはマスメディアに誘導されうるし、多かれ少なかれ実際にそうなっているだろうということです。
         
        僕は基本的にマスメディアが嫌いです。しかし、ネットでニュースサイトをめぐっても情報元はたいがい各大手メディアです。マスメディアから情報を受け取らざるを得ない現在、その影響力は依然として大きいものでしょう。この影響から完全に逃れることは難しいですが、前述したようにネットを活用することによる対症療法的な対応をするしかないと考えます。
         
        発信された情報について懐疑的になっても、さらに難しい問題が残ります。それは「発信されなかった情報」が存在するという問題です。都議の樺山氏が変死した状態で発見された時にメディアは自殺だと報じた。けれど、その背景にあるいじめの問題については語られなかったと猪瀬氏は指摘しています。発信された情報が本当か噓かを疑い、精査すること自体はコストこそかかるものの、それほど難しいことではありません。しかし、「何が書かれていないのか?」を見出すのは非常に難しいことなのです。この問題の解決方法は僕にはわからないけれど、そういったこともあるということを頭にいれておくだけでも、少しは見えてくるものがあるかもしれません。
         
        それと、僕はマスコミが嫌いですが、「ジャーナリストとしての正義を!」といった情緒的な論説は好みません。なぜなら、利害を越えた行動を他人に求めて、それを実践させるのは単純に考えて難しいと思うからです。個人では正義でも、組織の意向には逆らえなかったりするという問題もあります。彼らだって生活がかかっているのですから。こういったアプローチでは問題解決につながらないと思います。この点については十分考察できていませんが、僕はやはりシステムに問題があるのではないかなと思っています。現在のシステムでは政治家や警察の顔色を伺わざるをえません。大切な情報源だからです。彼らの機嫌を損ねて、情報を提供してくれなくなったら困るのです。お金を出してくれているスポンサー企業の顔色を伺うのも当然のことです。この構造をなんとかしないかぎり、公正な報道はありえないと考えています。そもそも、マスメディアが必要なくなる時代がくればいいんですけどね。マスメディアに代わるなにか……。答えがでないので、最後に著者チョムスキーの言葉を引いて筆を置きます。

        「市民運動が言論の自由の範囲を広げたのです。現在まで自由は保障されてきています。だが、このまま保障されつづけるわけではない。こういう権利は勝ち取られたものです。闘わなければ勝ち取ることはできない。闘うのを忘れてしまえば、権利は失われていくのです。天与の贈り物のように、降ってくるわけではないのです。」(p133)
         
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        2016/08/06 by けやきー

    • 3人が本棚登録しています
      なぜこの店で買ってしまうのか ショッピングの科学
      カテゴリー:商業経営、商店
      5.0
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      • 面白い!自分があまりモノを買わないだけに、どうやって買わせるかを調査して考え抜く仕事は非常に興味深い。店の見方が変わるかも。 >> 続きを読む

        2013/06/15 by freaks004

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