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高橋健二

著者情報
著者名:高橋健二
たかはしけんじ
タカハシケンジ
生年~没年:1902~1998

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      デミアン
      カテゴリー:小説、物語
      4.0
      いいね! Outsider Tukiwami
      • 究極の自己探求の物語。
        読了後、価値観を揺さぶられるような圧倒的な力があった。

        『いつも正しく、堅実な父母と姉妹。綺麗で清浄なものだけに包まれた家で、平和で安穏とした生活を送っていた少年シンクレール。

        しかし、その明るい世界の傍らには、もう一つの世界が存在している。一歩家を飛び出した先の路地や隣家では、押し込み強盗や殺人等、煤にまみれた背徳的な世界が広がっているのだ。

        正反対のように思えるそれら二つの世界は、隣り合わせに存在していた。明るい生活に属しながらも、どこか暗い世界の闇に心惹かれてしまう。繊細な筆致で描かれる、少年の心情の機微。

        そんなある時、シンクレールは不良少年に絡まれ、その時に放ってしまった心にもない嘘から、罪の意識に苛まれるようになる。誰にも相談できず独り苦しみ続けてきた彼の前に現れたのが、転校生のデミアン。彼は、シンクレールに、明るく綺麗な世界とは異なる、別の世界を魅せることになる』

        人間として生まれてきた意味。
        人は、人生で何を為すべきなのか。

        この本は、誰しもが一度は悩んだことのあるこの大きな問いかけに、真剣に挑んでいる。何のために生きているのか、そういう悩みを一度でも抱いたことのある人には是非手に取っていただきたい。ある一つの指針を示してくれると思う。

        たしかに、難解で、何度読み返しても中々頭に入ってこないねっとりした文章の数々が並んでいる本だとも思う。それでも、私は読むのをやめられず、夢中で読んだ。文章の持つ独特の雰囲気に圧倒され、惹きつけられ、なんとか書かれてあることの意味を理解したいという気持ちが昂ってきて、何度も読み返した。読み込むうちに、自分なりにこういうことなのかなと解釈できた時には、感動とともに深く胸に刻まれた。

        薄い本なのに、驚く程読むのに時間がかかる濃密な物語だった。自己の内面を徹底的に追及しているという意味では、物語というよりも、哲学的な色合いが濃いかもしれないけれど。

        自分らしく生きることの大切さ、そして、その困難。
        心底、出逢えて良かったと思える本だった。

        『あるものをぜひとも必要とする人が、この必要なものを見出したとすれば、それを彼に与えるものは偶然ではなくて、彼自身、彼自身の願望、必然が彼を導くのである』
        『各人にとって本当の天職は、自分自身に達するというただ一事あるのみだった』
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        2018/06/24 by *久里*

    • 他6人がレビュー登録、 22人が本棚登録しています
      クヌルプ
      カテゴリー:小説、物語
      4.3
      いいね!
      • 「クヌルプ」 ヘルマン・ヘッセ 高橋健二訳 新潮文庫

        第一部「早春」、第二部「クヌルプの思い出」、第三部「最期」の三部作仕立て。

        一八九〇年代の初め。第一次世界大戦前のドイツでしょうか。自然と歌と詩と踊りを愛する、流浪の靴職人、クヌルプの青年時代に始まり、彼の飄々とした生き様がドイツの牧歌的な自然描写と共にのんびりと描かれます。

        十三歳の時分のクヌルプは、フランチスカという二つ年上の女性に恋をしますが、いわゆる文弱ではない、職人などの「逞しい男子」が好きなフランチスカに相応しい男になろうと決心したクヌルプは、故意にラテン語学校でのラテン語の勉強を怠けるようになり、フランチスカの弟の国民学校に入ることになります。

        ですが、国民学校に入り、二ヶ月が過ぎた頃、フランチスカが技工職人の男とイチャついているのを目撃・・・クヌルプは失恋してしまい、これが彼の生涯に癒えぬ傷痕を残すことになります。第三部「最期」の終盤の「神さまとの対話」では、もはや社会的地位も何もない病身のクヌルプが、
        「私が一四歳で、フランチスカに捨てられたころのことです。あのときなら私はまだ何にでもなれたでしょう。でも、あれから私の何かがこわれてしまうか、台なしにされてしまいました。それ以来私はぜんぜん役に立たなくなりました。ーーーああ、なんということでしょう。まちがいと言えば、あなたが私を一四歳で死なせてしまわなかったということだけです! 死んでいたら、私の生涯は熟したリンゴのように美しく完全だったでしょう」と、神さまに駄々をこねる子供のような物言いを訴えますが、神さまはクヌルプに寄り添い、クヌルプが行く先々で芸事や遊興に興じ、人々に「喜び」や「楽しみ」を見せたではないか、と優しく諭します。このラスト七頁は、思わず感涙しそうになりました。

        神学校に進むも、「詩人になるか、でなければ、何にもなりたくない」と脱走した、本作の著者であるヘッセは、ある書簡では、
        「最も正しくて真理に充ちた唯一の宗教といったものは古今東西どこにもない、と私は考えている。各地にいろんな宗教があるのではなく、ヴェーダが必要だった時代もあり、仏教が必要だった時代もあり、キリスト教が必要だった時代もあっただけではないだろうか。」と論じています。

        しかし、第三部「最期」の「神さまとの対話」で描かれる「神さまのすがた」は、下記に引用する一節によるところに、まさしく「キリストの愛」です。
        ---「わたしが必要としたのは、あるがままのおまえにほかならないのだ。わたしの名においておまえはさすらった。そして定住している人々のもとに、少しばかりの自由へのせつないあこがれを繰り返し持ち込まねばならなかった。わたしの名においておまえは愚かなまねをし、ひとに笑われた。だが、わたし自身がおまえの中で笑われ、愛されたのだ。おまえはほんとにわたしの子ども、わたしの兄弟、わたしの一片なのだ。わたしがおまえといっしょに体験しなかったようなものは何ひとつ、おまえは味わいもしなければ、苦しみもしなかったのだ」--- 「解説」で訳者の高橋健二氏は、クヌルプを「人生の芸術家となった」と評しており、「得意の人」ではなく「失意の人」とも形容しておりますが、そうした人間も神は益として下さる、どのような生き様であってもすべての魂が、死せるその時まで「神の御心」によって用いられ、肯定される・・・こんな希望があって良いものでしょうか。

        神学校を脱走し、反権威主義的だったというヘッセの真意は分かりませんが、クヌルプの人となりにどこか相通ずるものを感じ、そして何よりもクリスチャンである私としては、終盤の「クヌルプと神さまとの対話」は、それだけで「福音的掌編小説」の価値を有している、自分の「生」が神によって限りなく肯定される思いが募った、素敵な作品でした。
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        2018/12/17 by KAZZ

    • 他1人がレビュー登録、 6人が本棚登録しています
      河出世界文学全集
      カテゴリー:叢書、全集、選集
      4.0
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      • ゲーテの「ファウスト」「若いウェルテルの悩み(若きウェルテルの悩み)」「ヘルマンとドロテーア」の3作品と概要、年表、解説が載った作品。

        私が今のところ読んだのは「若いウェルテルの悩み」だけである。そしてこの作品は先に読んだゲーテの「親和力」とよく似ている。もっと単純化されたもののようだ。

        自由な精神が人生の喜びを与えてくれる。恋愛はその中でも強いもので、若者は恋するだけで世界が一変してしまうが、人生を上手に運ぶには喜びだのなんだのは関係なく、生活に秩序を持たせる事が必要だ。
        しかし、世界を変えてしまうほどの人生の喜びはその他一切、人生すらも大事ではないものに変えてしまう。

        私たちは、人生はバランスをとるべきと正論を振りかざしてしまうがそんな人間にはもう人生の究極の喜びを味わうことはできないのかもしれない。


        人が間違った行いをするのは考え足らずや間違った考え、感情を持っていたからではない。
        その行いを正しいものと考えていたからなのだろう。

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        2016/04/06 by ryochan333

    • 1人が本棚登録しています

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