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山田風太郎

著者情報
著者名:山田風太郎
やまだふうたろう
ヤマダフウタロウ
生年~没年:1922~2001

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このランキングは1日1回更新されます。
      妖異金瓶梅
      カテゴリー:小説、物語
      4.0
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      •  どういう男がモテるかについての俗言は多いけれども、そのなかでも話芸がある、要するに会話のおもしろい男がモテるという説がもっとも心当たりがある。断るまでもないが、ぼくがそうだからではなくて、ぼくがおもしろいと認めた男が喋りだすと、それを聞く女性陣の顔つきが変わる様を悟った経験が一度や二度ではないからだ。そういうときはニヤニヤしながら家に帰りたいと思う。
         十くらい年長の先輩によれば、おもしろい話をするのは造作もないことらしい。自慢話をユーモラスに脚色すればいいそうだ。ただ、自慢が勝ちすぎてもダメだし、もちろん脚色が勝ちすぎてホラ話と思われてもいけない。これらを調節する力こそ人生経験というのがその先輩の口ぐせで、入学試験のシーズンになるとこんな逸話を披露してくれた。
         
         入試というやつは本当に運だよ。オレはまあ勉強は苦手ではなかったから、学部も院も京大だったけど、学部の試験はすんでのところの合格だった。
         最初の科目がはじまっても問題に集中できなくて、冷静になってみると前方から悪臭がするのに気がついた。どうも前の席の足元、そいつが履いている靴が怪しくて、およそ洗剤の味を知らない汚れっぷり。ほらいたろ、上履きをまったく持って帰らないやつ。最初の科目は鼻をつまみながら泣く泣く解いたよ。周りのやつらも迷惑している感じだった。だからオレはそいつをトイレに連れていき、
        「人生を左右する大事な試験なんだ。頼むからその靴をどうにかしてくれ」
        と頭を下げた。するとそいつは何かに気づいた表情で足を洗い、オレに詫びて、便所のスリッパを履いてすたすたと試験場に戻っていった。
         それで最初の科目の失点をなんとか挽回して滑り込んだわけさ。
        「で、その靴の男も合格したんですか?」と聞き手がたまらず尋ねると、
        「もちろん合格だ。なにせあいつは彼女にフラれた理由を考えてたんだぜ。それを教えてくれたオレには足を向けて寝られないだとさ」
        「よかったですね」
        「ああ、アイツの足にはもうこりごりだ、もう少しでどちらも足切りになるところだったよ……」

         と、ミステリー風味に幕を下ろしたこの辺から、おまけの本の紹介でもしましょうか。でもね~、何を書いてもネタばれになっちゃうんです。だって前半の11章は全部ミステリー仕立てなのだけども、その全ての「犯人」と「犯行の動機」がおなじなの。だから興味がある人はどうぞご覧あれというしかない。
         とはいえエロい描写はそれなりにあって、主人公の境遇は男にはたまらない。ぼくも愛妾をたくさん侍らせてみたいです。しかしそういう不純な考えで読みすすめると、後半のほうでガツンとやられる。前半の11章は遊びではなく、掉尾を飾るための伏線であり、一人の女の狂気ともいえる愛情をあらわしていた。
         ここまで愛してくれる本妻がいれば、なにも愛人を囲む必要はないなあ~と頭では分かっていながら、でもそんな妻はいないので、やはり会話のスキルを磨こうと決意をあらたにしたところであります。


        追記とネタばれ
         題名のとおり『金瓶梅』の人物たちが出てきます。もちろん武松も出てくるし、なぜか『紅楼夢』の林黛玉もちょっと出てくる。ちなみに犯人は潘金蓮です。とっても魅力的だけど問題の多い絶世の美女といえばこの人でしょう。表紙のあられもない姿の女性も潘金蓮なのかな~と食い入るように見つめるぼくちゃんでした。
         それともう一つ余談、第一章の「赤い靴」は江戸川乱歩も絶賛したそうです。
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        2015/07/25 by 素頓狂

      • コメント 10件
    • 1人が本棚登録しています
      甲賀忍法帖
      カテゴリー:小説、物語
      4.0
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      • 時は江戸時代、徳川家第3代将軍を
        家光にするか忠長にするか、
        家康は、様々なしがらみにとらわれて
        決められずにいた。

        そこで行き着いたのは、
        家光=伊賀、忠長=甲賀とし、
        それぞれのトップ10の忍者を戦わせ
        生き残った忍者が多い方を
        「世継ぎ」と決定する策であった。

        互いの関係が変わりつつあった伊賀と甲賀が
        再び決戦の火蓋が切られる。

        とにかく、総勢20人の忍者の個性が強すぎる。
        能力のバリエーションも想像を絶するのだ。

        時代小説を読んでいるのに、
        SFの世界に入り込んだような摩訶不思議感。

        先の展開がまったく読めず、
        あっという間に次への勝負に移り変わる。

        この小説が50年も前の小説とは思えない!

        アニメ『バジリスク 〜甲賀忍法帖〜』、
        映画『SHINOBI』の原作だったのも読後に知った。

        インパクトがありすぎて、
        リアルに見たくなるのはうなずける。
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        2020/07/17 by NOSE

    • 2人が本棚登録しています
      人間臨終図巻
      5.0
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      • 『死は大半の人にとって挫折である。しかし、奇妙なことに、それが挫折の死であればあるほどその人生は完全形をなして見える。』
        読み方次第で、暇つぶしのお供にもなるし、死生観を考える哲学書にもなる。
        古今東西の著名人の死に様が、余計な描写を一切せずに淡々と記されているので、むしろ胸に迫ってくるものがある。
        Kindle版で読んだけど、紙媒体で手元に置きたくなった。
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        2019/04/25 by ちまき

    • 3人が本棚登録しています
      伝馬町から今晩は
      カテゴリー:小説、物語
      4.0
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      • 幕末の群像の中で、ずば抜けたドラマ性をはらんでいるのが、蘭学者の高野長英ではないかと思っています。

        幕政批判の書「夢物語」が幕府の逆鱗に触れ、1839年の「蛮社の獄」で逮捕、そして伝馬町の牢へ。1844年、その牢獄が炎上し、三日を限りに放たれたが帰らず、薬品で面相を変えて地下に潜った長英。1948年、幕府の追っ手に襲われ、隠し持った短刀で自死。

        確かに劇的な生涯なのです。その運命の数奇さを、すでに明治期から歌舞伎役者が舞台に乗せ、小説家が書き、講談師がうなったものです。

        もちろん、希代のストーリー・テラーの作家・山田風太郎がほうっておくはずもなく、そしてもちろん、山田風太郎がかつての作家たちと同じことを書くはずもありません。

        「山田風太郎コレクション」の5編からなる連作集の幕末編と銘打ったこの作品の表題作の「伝馬町から今晩は」は、この異才を放つ蘭学者をめぐって、作家・山田風太郎の空想力を縦横無尽に駆使した、奇想天外な作品だ。

        史実の扱いは、いつもの山田風太郎と違って、意想外にデリケートだ。この作品でも「高野長英伝」(高野長運著)などの文献には目配りを怠らない。

        その上で、思いがけないところに奇想が湧いている。牢を放たれた長英が、三日の期限内に、誰の家を「今晩は」と訪ねるか。同志の学者たちの家の戸をたたくのは「高野長英伝」に従っているんですね。

        ところが、山田風太郎はいわば「空白の一日」をそこに作り、獄を出た高野長英に、悪魔的な獣欲のカーニバルを演じさせるのだ。たった一日、フィクショナルな日付を作ることで、この天才蘭学者の"怪物性"が、ひと際、際立っていると思う。

        歴史に「空白の一日」を探し、想像の楔を打ち込む。その裂け目から、山田風太郎流の「稗史」の面白さが噴出しているのだ。


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        2018/03/13 by dreamer

    • 2人が本棚登録しています
      八犬傳
      カテゴリー:小説、物語
      4.0
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      • 図書館本。読んだのは新装版の上巻。初読みの作家さん。面白すぎて、440ページ余りを一気読みした。

        滝沢馬琴が『南総里見八犬伝』の筋を葛飾北斎に語って聞かせる「虚の世界」と、馬琴の日常生活や心情を抉る「実の世界」が交互に描かれる。冒頭から引き込まれて、八犬士が誕生するいきさつや、犬士が一人ずつ出現して巡り会っていく運命のからくりにわくわくした。

        上巻では八人のうち六人が互いにまみえるが、運命によって散り散りになったところで下巻に続く。アニメ『八犬伝 東方八犬異聞』を夢中になって見たことがあるので、犬士や登場人物たちの名前になじみがあり、いっそう楽しめた。妖刀「村雨」も出てくるのがうれしい。

        伝奇物語の醍醐味を存分に味わうことができたのも、この作家さんのおかげだと思う。作中で馬琴が語るように、原書には説教じみたものが加えられているのだろうか。確かめてみたい気もする。

        >> 続きを読む

        2018/10/07 by Kira

    • 1人が本棚登録しています
      八犬傳
      カテゴリー:小説、物語
      4.0
      いいね!
      • 図書館本。下巻。

        滝沢馬琴が執筆前の『南総里見八犬伝』のあらすじを葛飾北斎に語って聞かせる「虚の世界」では、七犬士たちが漂泊の末に再会し、最後の犬士で未だ少年の犬江親兵衛がドラマティックに登場する。

        聞き手が渡辺華山に代わった後、最終章の「虚実冥合」では馬琴の最晩年がいかに恵まれないものであったかが、『八犬伝』の大筋を交えながら描かれる。この最終章には、伝奇と伝記が融合したような不思議な感覚を覚えた。作者の創作や伝奇小説に対する思いも現れている。

        ラストの一文で、八犬伝が大デュマの『三銃士』に先立つこと三年と記されているのが印象的だった。

        >> 続きを読む

        2018/10/13 by Kira

    • 1人が本棚登録しています

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