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かつて、あらゆる民族の共有物であり、生きとし生けるものすべての運命をつかさどっていた宝石、人々はこの宝石を<月>と呼んだ。もっとも固く禁じられていること――いとことの恋におちいってしまった甲虫の戦士ジローは旅に出た。この宝石を探し出し、奪い返せば、ジローの望みはかなうという。牡牛の頭の仮面をかぶった女呪術師ザウアーと神の寵児〈バム〉チャクラという旅の友を得たジローは巨大な魚が空を飛ぶジャングル体長3メートルを越えるイナゴが跋扈する草原火を吹くサラマンドラが巣くう砂漠を、<月>の手がかりを求めて進んでいくが・・・奔放なイマジネーションで、独自の幻想的未来を描き出した星雲賞受賞作。これも再読です。異世界を構築するのにここまで、貪欲に現実世界の動物や神話を利用・解体し再構築していく。註釈の多さにも圧倒されますが(この作品のお蔭で『抱朴子』『山海経』まで手を伸ばすようになったのもいい思い出です)二十数年?もう三十年近く前に(ヒロイック・ファンタジーなどごく一部の人間が読んでいた)時代にこれだけのものを作ってしまいなおかつ、最終的にはきちんと、SFとして結実せてしまう技量にはやはり、感服してしまいます。この著者の初期の作品のテーマの一つである絶対者に対する反抗であったり主人公や登場人物たちも後々の作品で登場する“原型”のような趣があり面白いです。特に旅に同行する一人、神の寵児=“狂人”チャクラのキャラクターは今、読んでも新鮮です。特に中期の傑作『神獣聖戦』の重要なギミック“鏡人=狂人”として洗練・転化されていきます。 >> 続きを読む
2013/06/18 by きみやす
今回読了したのは、日本推理作家協会賞と本格ミステリ大賞をW受賞した山田正紀の「ミステリ・オペラ」に続く、"オペラ三部作"シリーズの2作目の「マヂック・オペラ」。昭和13年の満州で、五族共和を象徴するオペラ「魔笛」を撮影する一団が巻き込まれる連続殺人事件と、それから半世紀後の平成元年に「宿命城殺人事件」と名づけられた文書を見つけ、平行世界を夢見るようになる女性の物語が、虚構と現実の狭間で交差する、大変トリッキーな物語だった前作の「ミステリ・オペラ」に対して、この「マヂック・オペラ」は、二・二六事件を背景として、これまたウルトラ・アクロバティックな話になっているんですね。二・二六事件前夜、置屋で芸者が刺殺される。その詳細を綴ったのが、取調官による「乃木坂芸者殺人事件備忘録」と、刑務所内で縊死した囚人が残した「感想録」。特高警察の警部補・志村は、このシリーズの探偵である"検閲図書館"・黙忌一郎に命じられ、二つの記録を読まされるのだが-------。「なぜ、特高である自分が、本来の任務とは何の関係もなさそうな記録を読まなければならないのか?」と疑問を抱く志村同様、我々読者もまた物語の中盤まではたくさんの「?」を頭の中に蓄えながら読み進めることになるんですね。映画「押絵と旅する男」に登場する芥川龍之介と江戸川乱歩にそっくりな二人の男は何者なのか? 置屋で殺された芸者の自称、情夫であり、思想犯として小菅刑務所に入れられた真内紳助が綴る「感想録」の中に出てくる、萩原朔太郎の弟・恭次郎がこの事件の中で果たす役割とは? 怪人二十面相のように誰にでもそっくり成り変わることのできる男の正体は? そして、その男を操る者の本当の狙いとは?-------。黙忌一郎の依頼で、調査を始めた志村が遭遇する奇怪な出来事の数々。密室殺人、ドッペルゲンガーといったギミックを駆使する謎めいた物語の中に、江戸川乱歩、芥川龍之介、小林多喜二、阿部定といった実在の人物を効果的に配し、二・二六事件のあっと驚く"真相"を明らかにする手さばきは、まさに"山田正紀マヂック"そのもの。江戸川乱歩の大失敗作として有名な「猟奇の巣」を、換骨奪胎してみせる大技も見事に決まった、実に魅力的な本格ミステリにして、歴史SFになっていると思いますね。 >> 続きを読む
2018/06/24 by dreamer
検閲図書館を名乗る神秘的な探偵、黙忌一郎の登場する、山田正紀の"オペラシリーズ"の第3作目の「ファイナル・オペラ」は、昭和史を背景に、架空の秘曲をめぐる殺人の顛末を描くという伝奇的な謎解き小説だ。敗色濃い昭和20年の日本。八王子の神職・明比家に口伝のみで承継されてきた能の秘曲「長柄橋」が上演されようとしていた。人柱伝説を背景に、子を失った母の物狂おしい嘆きと憤りを描いたとされるこの曲は、全貌を知る人の稀な謎めいた存在であり、ひとたび演じれば歴史を反転させる力が宿っているとの噂さえ、つきまとってきた。しかも、14年前の上演のおりには能楽師が殺され、その犯人は知れないままになっているのだ。上演の日を待ちながら、明比家の人々はかつての惨劇に思いを馳せるが、彼らにも戦争と軍国主義の暗雲は、重苦しくのしかかっており、事件をめぐる物語はおのずと「昭和」の記憶と絡み合うのだった。しかし、この作品は、例えば「長柄橋」の秘密を解くことによって神々を召喚するといった、世界の中心や特権的な鍵を探求する物語ではないのだ。むしろ、作者は、世界の中心や、歴史を統べる特権的な秘密があるという思考にあがらい、これを解体しようとする力の側に与しているらしいのだ。検閲図書館とは、権力が歴史から抹殺しようとするすべての言葉、すべての嘆きに耳を傾け、記憶する人間なのだから。そんな黙忌一郎が、「長柄橋」という能のたどった運命に殺人事件の謎解きを重ね合わせる時、我々読者の前に現われるのは、正統的な歴史が絶対に汲み取らないであろう、人々が能という絵空事と取り組んできた関係の壮大な絵図なのだ。能であれ探偵小説であれ、いったんこの世に生み出された絵空事は、絵空事であるがゆえに、人々の欲望や妄執や嘆きや祈りを吸い寄せ、また、自らもそうした人々の心の動きに応じて姿を変えてゆく。そんな営みから生まれる無数の声が、ここではミステリとしての仕掛けによって、浮かび上がるのだと思う。 >> 続きを読む
2018/06/26 by dreamer
あ〜面白かった!読みたい本や再読したいのがたくさんだよw読書会したいなー
2015/12/27 by 降りる人
【山田正紀】(ヤマダマサキ) | 読書ログ - 読書ファンが集まる読書レビューサイト(著者,作家,作者)
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