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仁科邦男

著者情報
著者名:仁科邦男
にしなくにお
ニシナクニオ
生年~没年:1948~
      犬の伊勢参り
      カテゴリー:哺乳類
      4.0
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      • 【♪ 恋する金比羅わんわん~】
         犬が伊勢神宮にお参りする……これはどうやら事実らしいのですね。
         様々な記録に遺されていて、最初に伊勢参りをした犬の記録は明和8年(1771年)4月のことと記録に遺っているそうです。
         本書は、そんな犬の伊勢参りに関する一冊。

         犬の伊勢参りが成立したのには様々な要因があったようです。
         その一つは、昔の犬の飼い方にあったようです。
         以前、日本では、個人が犬を飼うということは稀なことで、多くの場合、「里犬」として一定の地域につながれもせずに何頭かの犬が暮らしていたのが当たり前だったのだそうです。
         それらの「里犬」は、誰か特定の飼い主がいるというわけではなく、その地域全体の共有的な存在で、みんなで餌などの世話をしていたとのこと。
         犬の方も、その地域をテリトリーとして、住民達と共存していたのだそうです。

         そんな時、「おかげ参り」という風習がこれに合わさったのではないかというのです。
         昔は、一生に一度は伊勢参りに行きたいとみんな思ってはいたものの、金がある人は別として、多くの人はそうそう伊勢参りなどできなかったというのが実情でした。
         それでも行きたい!
         じゃあどうしたかというと、地域の人々と示し合わせて、雇い主やご主人、親などに無断で着の身着のまま伊勢を目指したのだとか(抜け参りとも言うらしい)。

         街道筋の人々は、こうした伊勢を目指す一行を見ると、施行(お金や食べ物などを振る舞うこと)をしてくれたので、それを頼りに伊勢参りを成し遂げたようなのですが、ここで「里犬」が加わります。
         自分たちが住む地域の人々がこぞって歩き出すと、それについて行く犬もいたようなのですね。特に普段から遊んでいる子供たちがいるとそのあとをついていく。
         そうしているうちに伊勢まで同行しちゃってお参り犬になっちゃったということではないかというのです。
         なるほどね。

         で、そういう犬がお伊勢様のお札をもらって帰ってくると「これは感心な犬だ」ということで評判になり、世間に知られていくわけです。
         このように、伊勢参りをする犬が認知されると、誰かについていくというわけではなく単独で伊勢参りをする犬も現れたというのです。
         その代表的なものは、「代参り」。
         何かのきっかけで、誰かの代わりに伊勢参りをしてきなさいと送り出される犬が現れ始めたというのです。
         そんな犬は、首に住んでいる地域の名前、伊勢参りに行くということが分かる札を下げ、いくらかのお金を首紐に通されて出かけたそうです。

         街道筋の人々がそんな犬を見つけると、「これはまた感心な犬だ」というわけで、わずかなお金を取って餌をあげたり、逆にお金を足してくれたりと世話をして、次の宿まで送り届けてあげる。
         これが繰り返されているうちに、無事に伊勢にたどり着き、お札をもらって帰りも札に書かれた地域まで送り届けられてお参り完了ということになったのではないかという考察です。
         当時の人々は、こうした伊勢参りの犬に同情的で、出かけた時よりも多くのお金をもらって帰ってくる犬もいたのだとか(犬が持ちきれなくなると同行する人が運んでくれたのだそうですよ)。

         中には、別に伊勢参りをしに来たわけではないのに、みんなに誤解されて伊勢参りの札をつけられてしまう犬もいたんじゃないだろうかと考えられています。
         一度そんな札をつけられたらもうそれは伊勢参り犬です。
         みんなの厚意(?)に支えられて、無事に伊勢まで送り届けられてしまうわけですね~。

         その後、「里犬」という存在は消えてしまい、犬は現在のように特定の飼い主のもとで生活するようになると、誰か知らない人のあとをついていく犬なんていう存在もなくなってしまいますし、そうなると今の私達のように犬が伊勢参りするなんてにわかに信じられなくなり、その認知度が低下するとたまさかふらふら歩いている犬がいても、「伊勢に行くんだ」などと思いつくことはなく、誰も手助けもしないので当然伊勢まで行く犬など現れて来ない……こういうことなんじゃないかというのが著者の考察です。

         なるほどね、結構納得。

         犬がお参りするというと、高松の金比羅様にも「こんぴら狗」という存在があったと伝えられています。
         私、今年の4月まで高松に住んでいて、金比羅様にも行ってきましたが、境内にはこんぴら狗のことが沢山紹介されていて、こんぴら狗グッズも売っていましたよ~。
         本書によると、こんぴら狗は、伊勢参り犬が広く認知された後、生まれたのではないかということです。
         中には、金比羅様とお伊勢様と両方参拝して帰ってきたわんこもいるんだそうですよ。

         何にしても、健気な犬だからこそのお話かなと思いました。
         楽しい一冊でした。
        >> 続きを読む

        2019/07/07 by ef177

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