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山尾悠子

著者情報
著者名:山尾悠子
やまおゆうこ
ヤマオユウコ
生年~没年:1955~

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      ラピスラズリ
      カテゴリー:小説、物語
      4.7
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      • 『ラピスラズリ』(山尾悠子)<ちくま文庫> 読了。

        研ぎ澄まされた言葉の数々。
        寡作だとは聞いていたが、一つ一つの言葉をこれほど磨き上げているのであれば、寡作であるのは無理からぬ事だろう。

        冒頭は次の一文から始まる。
        ----------
        「画題(タイトル)をお知りになりたくはありませんか」
        ----------
        いきなりこのような会話文(問いかけ)から始める作家はいくらでもいるので、最初の八行は飛ばしてしまおう。
        その次のパラグラフは次のような文章から始まる。
        ----------
        そもそも深夜営業の画廊などに入っていった理由さえ思い出せないのだったが、たぶん理由などなかったのだろう。列車の到着を待つ時間潰しの所在なさも手伝ってか、声をかけられるまでわたしはじぶんでも気づかないままずいぶんと時間をかけて一枚ずつを眺めていたようだった。
        ----------
        たったこれだけの文章だが、ずいぶんたくさんの情報が含まれている。
        ○ 深夜に営業しているという特殊な画廊が存在する街にいる。
        ○ 「理由さえ思い出せない」くらいなのだから、語り手は普段から画廊に出入りするような人物だろう。
        ○ 時制から過去の出来事を思い出しながら語っている。
        ○ 深夜に列車を待つのだから、かなり遠くへ、それも急な出立だったのだろう。
        ○ 一枚ずつを時間をかけて眺めていながら「ようだった」とまるで他人事のように語られている。
        丁寧に調べていけば、まだまだ情報が含まれているかもしれない。
        たったの二文にこれだけの情報を詰め込んでいるのだから、一冊を読み上げるまでどれほど神経をすり減らされるのかまるで想像できない。
        一つ一つをしっかりと理解しながら読まないと今自分がどこにいるのかをすぐ見失ってしまうのは宮下奈都の比でははい。
        そして言葉を選ぶその神経の細やかさは、先に現れる「なかなかよく考えた巧妙なやりかただ」といった普通ならなんでもない言葉が、陳腐で不用意なつまらない言葉に感じてしまうくらいだ。

        また、これらの謎を含んだ情報が読み進める中で明らかになっていくと思ってはいけない。
        読めば読むほど混沌の度を増して、深夜営業の画廊の夢の中に取り込まれていくような思いをする。

        言葉だけではない。
        この作品を構成する「銅版」「閑日」「竈の秋」「トビアス」「青金石」という五つの中短編がどのようにつながっているのかがよくわからない。
        各編がつながっていることは共通して現れる物事や事象から明らかなのだが、具体的にどういうことだったのかはついに明らかにされることはない。

        先に「深夜営業の画廊の夢」と書いたが、全体が山尾悠子の夢の中にいるような印象を受ける。
        理詰めで理解する作品ではなく、詩のように読者がそれぞれに感じ取る作品なのだろうと思う。

        言葉を磨き上げる技工の跡がありありと見えてしまうのがやや残念ではあるが、魅力的な作家であることは間違いない。
        これからもこの作家の作品は読んでいこうと思う。
        >> 続きを読む

        2019/02/11 by IKUNO

    • 他3人がレビュー登録、 5人が本棚登録しています
      ラピスラズリ
      カテゴリー:小説、物語
      5.0
      いいね! Tukiwami
      • 【冬眠者と人形】
         何とも不思議な味わいの作品でした。
         たいへんデリケートな作品です。構成としては5編の中、短編からなっています。

         最初の「銅販」で、この物語全体を見通すような主題が語られているのでしょうか。
         深夜の画廊で何かの物語の挿絵のような3枚の銅版画を目にします。
         1枚目は「使用人の反乱」というタイトル。
         秋の終わりの森の中、荷車に積み上げられた高貴な身分と思われる人達を、その使用人と思われる人達が投げ捨てているように見えます。
         高貴な人達はまだ死んではいないようですが、ぐったりしています。

         2枚目は「冬寝室」。
         六角形の、塔の上の部屋と思われる部屋に男性とも女性とも見分けがつかない人物がベッドに寝ています。
         そのそばには大振りな人形が描かれています。窓の外は冬の景色のようです。

         3枚目は「人形狂いの奥方への使い」。
         幾何学庭園に庭道具を手にした老人と木箱を担いだ旅装束の若者が描かれています。
         山となった落ち葉が焚かれていて白煙を上げているのですが、常緑樹で作られた庭園に何故落ち葉があるのでしょう?

         その後に続く中、短編は、この銅版画のモチーフを基にして語られているようです。
         2編目と3編目はまさにそうで、特に3編目の「竈の秋」という中編ではその城のことが詳しく語られています。
         この描写が、「ゴーメン・ガースト」を彷彿とさせるのですよ。
         ええ、マーヴィン・ピークのあの奇作です。
         あれに近い感覚を味わいました。

         ところが、4編目になると、舞台はいきなり日本に戻ってきます。
         「これは?」とややとまどいを覚えたのですが、これは……人形つながりなのか?
         あるいは、季節の巡りを言いたいのか?

         そしてラストの「青金石」で静かに幕を閉じます。

         余韻の深い作品です。
         まるで夢を見ているような。でも、その夢は決して楽しい夢などではないのですけれど。
        >> 続きを読む

        2019/01/09 by ef177

      • コメント 1件
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