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山尾悠子

著者情報
著者名:山尾悠子
やまおゆうこ
ヤマオユウコ
生年~没年:1955~

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      ラピスラズリ
      カテゴリー:小説、物語
      4.5
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      • 「これは古びた竃の石が囁く秋の枯れ葉のものがたり。」

         三枚の銅版画から始まるものがたり。
        そこに描かれているものは何か?枯れ葉がうずたかく積み上げられた庭。
        冬の寝室。そして、常緑樹の幾何学庭園の老人と若者。

         それぞれの物語は、この銅版画の世界をなぞるようであり、時系列はかなり分散されており、決してすらすらと流れが頭に入ってくる物語ではありません。

         どうも、大きな館で、支配者層たちは冬は「冬寝室」で冬眠するらしい。
        その準備に追われる使用人たち。闊歩するゴースト。眠りー死を暗示するような痘瘡病の影。

         冬眠する者は支配者層であり、冬の間は呼吸も止まり、成長も止まる。幼い体力のない子どもは春になっても目覚めないかもしれない恐怖の冬眠。

         しかし、描かれるのは、その準備にうんざりしている使用人たち。
        そして、じわじわと流行っていく痘瘡病。
        冬眠の時に必ず、かたわらに人形を置いて寝る姿。
        そんなものが、コラージュのように描かれていきます。

         眠るということは一時的に死ぬことだ、と誰かが言っていたのですが、霜月の物語では、だんだん、眠くなって寝室にこもろうとする高貴な身分の人たちがでてくる。
        使用人たちは、大わらわ。いがみあい、ののしりあい、忙しく働く中で「ぐっすりと死んだように眠る」とはなんと贅沢なことか。

         この冬眠する支配者層と使用人たち、そして使用人たちの反乱。病の影。
        これはアメリカの独立運動から、当時、絶対王政だったフランスにフランス革命が起きたことを思います。
        王侯貴族は贅沢の限りをつくし、民は貧しさと飢えに苦しむ。そんな上下関係がひっくりかえされたのが革命。

         しかし、この物語のタイトルは「ラピスラズリ」(青金石)
        深い青の物語なのですが、青は出てこず、秋の枯れ葉といった茶色や冬の到来を示す白、または、使用人たちが汚れているような灰色の世界がほとんどをしめています。

         しかし、最後になるとラピスラズリのことが、ふと、わかるのです。
        生命を止めた冬が終わって、春の空はラピスラズリのように青い。その青を見ることが出来るのは誰か。冬をむかえるもの、冬を眠って過ごすもの、冬を堪え忍ぶもの・・・そして冬を祝うということを知った人びとが見る事のできる春の空の色、ラピスラズリ。

         そして聖母の青、ラピスラズリ。冬寝室で冬眠する館の人びとは、中世ヨーロッパのようでありながら、宗教色が一切ありません。
        しかし、最後に聖母マリアが必ず身につける色、青が水面に石を投げ入れたように広がる。眠るということを呪術的、幻想的に描き、そして秋から冬へそして春が来る予感と余韻を描いた物語。
        >> 続きを読む

        2018/05/27 by 夕暮れ

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