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丘沢静也

著者情報
著者名:丘沢静也
おかざわしずや
オカザワシズヤ
生年~没年:1947~

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このランキングは1日1回更新されます。
      飛ぶ教室
      カテゴリー:小説、物語
      4.0
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      • メリークリスマス!
        クリスマスにふさわしい一冊ですね。
        小学生のころ、児童文学の定番として買い与えられていたので、何度か読んでいます。今回は数十年ぶりでの再読でした。

        「飛ぶ教室」って実はあまり面白いと思っていなかったんです。
        ケストナーではなんてったって「ふたりのロッテ」が一番のお気に入りでした。
        「点子ちゃんとアントン」もステキなお話しです。
        私は女の子だったから、主人公が少年の話に馴染まなかったのか?という訳ではないのです。
        少年が主人公の話はいくらでも読んでいましたし、
        同じくギナジウムの寄宿生の少年たちの物語で「犬のウォータンは同級生」という小説があるのですが、これはそれこそ何度も読み返しているほど大好きで、つい先日も図書館で探して読んだのですが、やはりとびきり楽しい小説でした。
        「飛ぶ教室」より、ずっとずっと面白いと今でも断言できます。

        成績はいつもトップで絵も得意でリーダーシップもあって貧乏で奨学金をもらっているマルティン。
        大食いで喧嘩がめちゃくちゃ強くて、勉強は全然できないけれど弱いものに優しいマティアス。
        親に捨てられて善人の船長に引き取られ、作家を夢みるジョニー、好奇心旺盛で読書家で頭の回転が早く口が立つ(口がすぎる?)ゼバスティアン、ひ弱で弱虫コンプレックスを抱えているウーリの5人組がメイン。
        舎監の先生で少年たちに圧倒的に慕われている「正義さん」とあだ名されるベーク先生。
        世捨て人のように市民菜園に置かれた列車の禁煙車両で暮らしている「禁煙さん」
        魅力的な若い大人も子供たちに重要なかかわりを持っている。

        これで面白くないわけがない。のですが。

        子ども心に戻って「飛ぶ教室」を味わいつつ、不満な点を挙げてみます。

        まず、真面目過ぎるんですね。
        学校同士の出入りの喧嘩にしても弱い者いじめの話にしても、親子の問題にしても。
        正しいことがある。という前提です。
        喧嘩でさえも、味方と敵。敵でも、立派なリーダーとクズ。のような色分けがあります。
        チビのウーリは、蛮勇を見せて自分に自信を持つことができるようになりますが、彼を好きになれないんですよね。
        しかも彼は元々貴族で支配階級の人間であることが仄めかされています。

        教師も全て善人です。
        子どもの為に良かれと思ったことを成すのが教師です。
        しかし子供に都合の良い事ばかりが起こるのは、現実的ではありません。

        確かに、子どもたちは常に正しくありたいと思っています。
        でもそれができない自分もわかっています。
        世の中が「正義」と「不正」に色分けできないことだって、実は知っているのです。
        だから「飛ぶ教室」の主人公たちのように個性はバラバラで欠点だってあるけれど決して「悪」ではない子どもや先生たち。
        それは子どもにとってはフィクション(憧れるけれど現実ではない)なんですね。

        こどもというのは、もっと大嘘な小説をたくさんよんでいるために(小公女や小公子、フランダースの犬とか長くつしたのピッピだとか15少年漂流記だとか王子と乞食だと宝島とか、そういう数奇な運命や冒険の物語がいっぱいありますからね)
        マルティンの貧乏やジョニーの孤独などは、子どもにはどの程度の深刻さかなんてわからなかった気がします。
        愛するお父さんお母さんがいて、休暇に会えないだけなのに。もっと可哀想なのは、親に愛されている確信が持てない子どもでしょうに。とか。

        大人になってから読んだ方が感情移入できるように思える部分がかなりありました。
        親の目線で子どもを思いやることが今の私にはできるからです
        禁煙さんと正義さんの古い友情についても、大人になればこその味わいを感じることができました。

        しかし、犬が物語を盛り上げてくれることもあって、プロットとしては「犬のウォータン」の方が面白いんですよ。

        「犬のウォータン」にも体格がよく勉強ができない落第生とひ弱な少年の対比がでてきます。ひ弱な少年はそういえば、これもやはり木から落ちるんだった。よく似ていますね。
        でもキャラクター設定が全然違うんです。
        力自慢の少年は親との関係が悪く、落第も親を困らせる為でした。
        赤毛でひ弱な少年も、めちゃくちゃ向こうっ気は強いんです。口もたちます。仲間内で喧嘩もします。
        主人公はごく普通の男の子。双子の姉妹たちの中でたった一人の男の子で、女の子にちょっとウンザリしています。
        つまり、人間的により身近な感じがするのです。
        先生達も長所も短所(クセというべきか)も持っている、同じ人間って感じがします。


        ストーリーよりも、事件が起き、それについて、誰が何を語ったか?
        これが「飛ぶ教室」の胆です。
        ウーリのはしご飛び降り事件のあとのゼバスティアンの名言
        「ウーリのほうが恥を知ってるってことなんだよ」
        禁煙さんの「金や、地位や、名誉なんて、子どもっぽいものじゃないか。おもちゃにすぎない。そんなもの、本物の大人なら相手にしない」

        それ以上に作者ケストナーの言葉
        「人生で大切なのは、なにが悲しいかではなく、どれくらい悲しいか、だけなのだ。子どもの涙が大人の涙より小さいなんてことは絶対にない」
        「自分をごまかしてはいけない。ごまかされてもいけない。災難にあっても、目をそらさないで。うまくいかないことがあっても、驚かないで。運が悪くても、しょんぼりしないで。元気をだして。打たれ強くならなくちゃ」

        子ども時代を決して忘れないと約束してもらいたいというケストナー。
        その人の生き方そのものが小説の形で魅力として迫ってくるから、彼の小説が今でも読まれ続けているのです。
        歌が、その技術以上に、歌い手の人間性や想いを伝えるものであるように、小説にも作家その人の想いが読み手に流れてくることがあります。

        ケストナーは子どもに期待したのでしょう。
        よりよく生きるように。世の中をもっと明るく強いものにしてもらいたいと。

        「どんな迷惑行為も、それをやった者にだけ責任があるのではなく、それを止めなかった者にも責任がある」
        クロイツカム先生の罰則は、メッセージの一つ。
        ナチスの暴走を止められなかったドイツの同朋への批判でもある訳です。
        どうか、同じ過ちを繰り返さないで。
        ああ、今の時代にも、この言葉は伝えたいですね。

        だからこの本は、親が子どもに「読ませたい本」であり続けているのです。

        ケストナーの反骨精神は、確かに打たれ強かった。
        そしていつも市民の側にいた人でした。
        彼の本も同じですね。

        ちなみに「飛ぶ教室」というのは彼ら5人が脚本から演出から舞台美術、役者まで自分たちでやる、クリスマス祭に体育館で上演する演劇のタイトルです。
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        2018/12/25 by 月うさぎ

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      数の悪魔 算数・数学が楽しくなる12夜
      カテゴリー:数学
      4.3
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      • 小学生にもわかりやすく数学を教えるために書かれた本。ゼロの発見や順列組合せなど、興味を引くように説明されていて面白い。こんな算数の授業だったら、子ども達の創造性を引き出すことができるに違いない。古い本だが、楽しく読むことができた。 >> 続きを読む

        2018/03/07 by KameiKoji

    • 他1人がレビュー登録、 5人が本棚登録しています
      クマの名前は日曜日
      カテゴリー:小説、物語
      4.0
      いいね!
      • 日曜日という名前のクマのぬいぐるみと、そのクマを友人と信じる少年の物語。

        春先にヴィレッジ・バンガードで偶然、ミヒャエル・ゾーヴァの絵本を見つけたので購入してみました。

        朝起きたら隣に寝ていたクマのぬいぐるみを生きているクマと思い込み、そしてしゃべらないので弟分でもあるかのように世話をする少年がなかなかに微笑ましい感じです。
        でも、クマのぬいぐるみがいっこうに動かないので疑いを持ち始めて・・・。

        挙句には無理やり朝食のトーストを食べさせようとしてジャムとミルクだらけにしてしまいます。

        その後、日曜日は洗濯機へ運ばれて・・・。物干しに吊るされている日曜日の悲しそうな目を見て少年は反省します。

        でも、その夜。

        少年は日曜日と少年の立場が入れ替わった夢を見ます。おもちゃ屋さんでクマに買われる時をずっと待っている少年の悲しい夢。

        そして朝を迎えると・・・。

        ミヒャエル・ゾーヴァ絵と話の愛らしさが良い感じの絵本です。
        小さいお子さんをお持ちの方にお勧めです。
        >> 続きを読む

        2013/12/21 by Shimada

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      ツァラトゥストラ
      4.0
      いいね!
      • 光文社の古典新訳シリーズにはしばしばお世話になっています。古い訳は訳自体が難解で読む気がしなかったり、字が小さすぎ、行間が狭すぎて読む気がしなかったりするもので。

         『ツァラトゥストラ』もニーチェの代表的な作品と言われ、「神は死んだ」というフレーズだけなら誰でも知っているのですが、未読だったので今夏挑戦しました。内容をまとめるのは非常に難しい本で、たくさんのアフォリズム(警句)で構成された作品です。反聖書と言われているそうで、そこここに聖書のもじりがあったり、イエス・キリストやキリスト教の神を批判する内容が出てきます。

         主人公ツァラトゥストラは山の上にある洞窟で隠者のような生活をしていますが、ある使命感にかられて山から人間のいる地上へ下ってきます。しかしツァラトゥストラの話は全然受け入れられず、地上をさまよい歩いたあと、また山にこもります。再び地上にやってきて、また山にこもり、最後は山の洞窟に「高級な人間」らしきさまざまな人たちがやってきて、彼らとしばらく話を交わしたあと、再び一人になってさまよいます。ツァラトゥストラと常に一緒にいるのは鷹と蛇です。これは誇り高さと知恵を示しているようです。

         神は死んだ、それは人間への同情によるものなのだとツァラトゥストラは言います。また神様に何でもお任せにしている人間を批判しています。ツァラトゥストラは人間を非難しながら、人間がもっと高い存在になれるはずだと語り、そのために努力するよう勧めます。しかしそれは暗い顔をして修行をしたりすることではなく、自由になることを意味するようです。ツァラトゥストラは「笑い」や「ダンス」を強調します。イエスは全然笑わなかった。むしろ今笑うものは不幸だと言った。ツァラトゥストラはイエスを批判し、あらゆる価値や権威を笑い飛ばし、軽やかになることを勧めます。この、人間が高みに登るあたりを読んでいると、仏教的な感じがします。仏教ではブッダは目覚めた人の意味で、固有名詞ではありません。後世、シッタルダ以上の人が現れなかったので、ブッダというとシッタルダを指すようになっていわば神格化されてしまいますが、もともとは誰でもブッダになれるというのが仏教の考え方です。ツァラトゥストラも人間が「超人」になれると説きます。

         かの有名な「永遠回帰」とか、「大いなる正午」の話も出てきますが、はっきりと書いてあるわけではなくよくわかりません。これも仏教的な意味での輪廻転生や解脱のことなのだろうかとも思いますが、ツァラトゥストラが言っている永遠回帰は同じ事を繰り返すということですから、輪廻とも違う気がします。永遠であり一瞬であるという時間感覚を超越した世界に入ることが大いなる正午なのでしょうか。

         キリスト教や神を批判しているので、もっと反宗教的かと思いきや、むしろツァラトゥストラは最も真面目な求道者のように見えます。巨大な組織となってしまった教会、神なしで勝手な解釈をされている信仰はニーチェの時代も今の時代もあるのでしょう。思えばキリストが地上に来た時にはユダヤ教が神の意図とはずれてしまったことにイエスは批判をしたのでした。最も神に忠実に教えを説いたイエスは殺されてしまった。ツァラトゥストラは近代の預言者なのでしょう。彼もまた現状のさまざまな価値を批判し、ひっくり返しています。中でも「からだ」の賛美は今こそ読んで面白いところです。精神とからだを分離して精神を高みに置く考え方に限界が来ていることを現代人はよく知っていると思います。ニーチェの時代にそれに気付いているところが面白いところです。身体が思想である。むしろ精神は身体に従属しているとツァラトゥストラは説きます。ニーチェには現代人が読んで面白いアフォリズムがたくさん含まれています。

         
        >> 続きを読む

        2014/08/20 by nekotaka

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