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土屋政雄

著者情報
著者名:土屋政雄
つちやまさお
ツチヤマサオ
生年~没年:1944~

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このランキングは1日1回更新されます。
      わたしを離さないで
      カテゴリー:小説、物語
      4.4
      いいね! KEMURINO
      • 限りなくフィックションの小説に何を求めて、本を買ったり、借りたりするのか? 

        それは、いまだ知り得ぬ世界を見れるかも? という勝手な期待感に尽きるんだ、という小説の面白さを改めて実感した個人的に記念すべき本に出会えた。

        これまで、著者の作品は3作読んだが、いつも頭の片隅にノーベル文学賞受賞者作品という余計な冠(情報)がつきまとっていた。

        今回は、その冠をまったく気せず、予測不能の物語の行方に翻弄され、読み進んだ。この吸引力こそ小説の楽しさだぜ!と実感。

        1990年代末、イギリスという設定で静かに始まる「です」「ます」調、主人公目線の手記タッチ。アンを思わせる、施設で暮らす思春期少女の成長記と思いきや、「提供者」「介護人」「保護官」という関係性が飲み込めない違和感に引っ張られながら、第20章あたりから、「えー!マジ! 聞いてないよ!」と驚愕。

        登場人物たちの言動、感情など、それまでめくってきた全ページが、歩に落ちる、物語構成に打ちのめされた。

        ノーベル文学賞ってSF、純文学、大衆文学なんていう狭いカテゴリーをはるかに超越した世界を創造できる人に与えられるんだぁ、と納得。映画もぜひ観たい。
        >> 続きを読む

        2020/09/15 by まきたろう

      • コメント 2件
    • 他23人がレビュー登録、 64人が本棚登録しています
      日の名残り
      カテゴリー:小説、物語
      4.4
      いいね!
      • 【一流の執事というものは……】
         イギリス以外の国には召使いはいるが、執事はいない
         これは作中に出てくる言葉です。
         本作は、一流の名家であるダーリントン・ホールに執事として勤めた、主人公スティーヴンスの物語です。

         一家の主ダーリントン卿は3年前に他界し、屋敷は現在アメリカ人の富豪の持ち物になりました。
         新しい家主は、イギリスの一流の執事を所望したため、スティーヴンスも屋敷に残ったのすが、屋敷を去る使用人も多くいました。
         時代が変わった今では(1956年が本作の時代になります)優秀な使用人を得ることは困難だということで、少ない人数で屋敷を切り盛りすることになったのですが、いかんせん人手不足は否定できません。

         ある時、新しい主人から、「しばらくアメリカに帰るから、その間スティーヴンスも旅行でもしてくれば良い」と言ってくれたことを機会に、スティーヴンスはある計画を立てます。
         それは、かつてダーリントン・ホールに努めていた女中頭を再度屋敷に呼び戻そうというものでした。

         主人が貸してくれた車に乗り込み、この計画の実行に着手するスティーヴンス。
         本作は、旅行の過程での、スティーヴンスの執事論、回想録といった内容になります。
         優れた執事たるものこうあるべきであるという話が主となりますので、一風変わった内容の作品になっています。

         ダーリントン卿は、ナチス・ドイツ・シンパであるということで、かなり批判もされているのですが、卿を尊敬してやまないスティーヴンスは、それは誤解であり、真実は違うのだと力説します。
         そして、その様な素晴らしい主人に仕えられたことは執事として大きな幸せであり、自分は一流の執事として常にベストを尽くしてきたのだと自負しています。

         しかし、物語のラストでは……。

         一人称で淡々と語られる執事の回想録であり、何か大きなできごとがあるという作品ではありません。
         英国執事とはどういうものなのかを得意気に語るスティーヴンスの語りを負う作品ですが、最後の最後でもの悲しさを味わうことになるでしょう。

         本作は、アンソニー・ホプキンス主演で映画化もされたそうです。
         見てはいませんが、おそらく静かな渋い映画になったのではないかなと想像しちゃいます。

        >> 続きを読む

        2019/09/12 by ef177

    • 他15人がレビュー登録、 34人が本棚登録しています
      月と六ペンス
      カテゴリー:小説、物語
      3.3
      いいね! Tukiwami
      • ゴーギャンをモチーフにした小説。ある若手作家の視点で、他人とは異なった価値観を持つ天才画家、その家族との交流を通して、天才画家の中にあった思想、実現したかったことを探す。成人しかかった子供を含めた家族を捨て、支援者の妻を寝取った挙げ句に自殺を止めず、自らの芸術を完成させる理想郷としてタヒチに移り、現地の女性アタを都合の良い存在として扱う。
        人権など、彼の芸術の前では存在してないかのよう。
        癩病を患い、視力を失いながら人生のカウントダウンが進む中、人としての生活はほぼ破綻していながらも、アタの献身によって彼の芸術は完成する。それは「医師は絵のことを何も知らない。だが、ここの絵はそんな医師にも強烈に作用してきた。…(中略)…なんとこれは天才の業か…」と表現される。モームはこの部分をどう表現しようか相当に悩んだだろうが、言いたいことは日本人である私にも朧気ながら伝わった。そして、芸術も芸術家もわからないというのが、読後の感想だった。
        >> 続きを読む

        2019/08/04 by 兼好坊主

      • コメント 1件
    • 他4人がレビュー登録、 10人が本棚登録しています
      終わりの感覚
      カテゴリー:小説、物語
      4.8
      いいね!

      • ジュリアン・バーンズの2011年度英国ブッカー賞受賞作「終わりの感覚」を再読。

        この小説は、二部構成になっていて、一部は引退生活を送っている年老いた男による、若き日々の回想の記。

        アントニーこと「私」の親友で、大学在学中に自殺してしまったエイドリアンと、初めての交際相手だが、後に自分と別れてエイドリアンと付きあうようになったベロニカにまつわる思い出が綴られている。

        二部の舞台は、現代。見知らぬ弁護士による、「ある女性が死に際して、エイドリアンの日記と五百ポンドをあなたに遺した」という手紙が届く場面から物語は、動き始める。

        その女性とはベロニカの母親。なぜ、彼女がエイドリアンの日記を自分に読ませたいのか。
        当然「私」は、日記の引き渡しを要求するのだが、所持するベロニカは拒否。

        なぜなのか。「あなたはほんとにわかってない。昔もそうだったし、これからもきっとそう」。
        再会したベロニカが繰り返すこの言葉は、何を意味するのか。

        すべての謎が解けるラスト。ショックを受けるのは「私」だけではない。
        本当のことを知っておののき、その哀しい顛末に心震わせるのは「私」だけではない。

        時間の中に生き、時間に翻弄され、時間に騙される、それが生きるということ。
        人間とは、自分の人生を語るたび、あそこを手直しし、ここを飾り、そこをこっそり端折るといった具合に、捏造する生きものだということ。

        その苦い苦い苦い真実に、リアルに迫るこの物語に最後までつき合うと、「私」の痛い体験が他人事ではなくなるのだ。

        この小説は、切実な、老いと人生に関する思索を迫ってくる作品だと思います。

        >> 続きを読む

        2018/12/24 by dreamer

    • 他3人がレビュー登録、 4人が本棚登録しています
      わたしを離さないで
      カテゴリー:小説、物語
      4.8
      いいね!

      • カズオ・イシグロの「わたしを離さないで」の語り手は、優秀な介護人キャシー・H。

        彼女は提供者と呼ばれる人々の世話をしています。
        キャシーが育ったのは、ヘールシャムという全寮制の施設。
        介護人として働きながら、キャシーはヘールシャムのことを思い出します。

        図画工作といった創造性の高い授業に力を入れたカリキュラム。
        毎週の健康診断。保護官と呼ばれる教師たちが、時に見せる奇妙な言動。
        生徒たちの優秀な作品を展示館に集めている、マダムと呼ばれる女性。

        恩田陸の学園ものの雰囲気に似たミステリアスな寄宿生活を送る中、キャシーは知ったかぶりのルースや、癇癪持ちのトミーと友情を深めていくのだが-------。

        ヘールシャムは、どんな目的で運営されているのか?
        提供者と介護人の関係は?

        そうした、早々に我々読者に明かされてしまう幾つかの謎なんか、実はどうでもいいのです。
        大切なのは、例えばこんなエピソードです。

        子供時代、一本のカセットテープに収録された「わたしを離さないで」という曲が気に入って、繰り返し聴いていたキャシー。

        ある日、何者かによって盗まれてしまったそのカセットテープと、キャシーは後年、トミーと共に再会することになるのです。
        この物語の感情的なキーポイントとなる、特別な場所で。

        この曲の歌詞は、物語の終盤でトミーのこんな言葉と呼応し合うんですね。
        「おれはな、よく川の中の二人を考える。どこかにある川で、すごく流れが速いんだ。で、その水の中に二人がいる。互いに相手にしがみついてる。必死でしがみついてるんだけど、結局、流れが強すぎて、かなわん。最後は手を離して、別々に流される。おれたちって、それと同じだろ?」

        この作品は、為す術もなく人生を奪われる"人間の存在理由"を描いて、厳しい物語だ。

        流れの速い川の中で、互いに「わたしを離さないで」としがみつくような愛を育んでも、否応なく引き裂かれるしかない運命を描いて、切ない恋愛小説だ。

        そして、子供時代をノスタルジックに描いて、その夢心地の筆致ゆえに残酷なビルドゥングスロマンになっているのだと思う

        「なぜ、彼らは理不尽な運命に逆らわないのか」という疑問を抱く人もいるかもしれません。
        けれど、この小説の舞台は、現実とは異なる歴史を持つ、もうひとつのあり得たかもしれない世界なんですね。

        今此処にある当たり前が、当たり前として通用しない世界に、今此処の常識を当てはめるのはフェアな態度ではないと思う。

        ラストシーンがもたらす深い悲しみと苦い読後感-----、いつまでも余韻を引きずりながら、心に残ります。

        >> 続きを読む

        2019/02/10 by dreamer

    • 他2人がレビュー登録、 7人が本棚登録しています
      夜想曲集 音楽と夕暮れをめぐる五つの物語
      カテゴリー:小説、物語
      3.8
      いいね! KEMURINO
      • 人生、ちょっと枯れてきたな、こんなはずではなかったな。もうちょいイケてたんじゃないかな?

        過去と今と未来を行き来する自我の浮遊感がめちゃおもしろい短編集。

        カズオイシグロ体現3冊目は、大人のためのノクターン小説!

        自立しているはずの大人たちが抱える子どものままの精神とどう折り合いをつけるか?

        奏でるはしから空気に消えてゆく音色に、あまたの男と女が残した足跡を感じる。切なさと、滑稽さが滲み出る登場人物たちの立ち振る舞いと言動が実に洒脱!

        昨日に戻れない針で進んでゆくメトロノームに促されるそれぞれの人生に、それぞれねノクターンが鳴り響いているんだな、という味わい。
        >> 続きを読む

        2019/11/03 by まきたろう

    • 他1人がレビュー登録、 7人が本棚登録しています
      夜想曲集 音楽と夕暮れをめぐる五つの物語
      カテゴリー:小説、物語
      5.0
      いいね!
      • カズオ・イシグロは、長篇小説で本領を発揮する作家だと思っていた。

        彼の作品ではいつも、語り手の「私」の言葉を追っているうちに、どうも変だ、この「私」は何か大切なことを隠しているのではないかという、疑念と不安が大きくなっていく。

        率直で明快に見える言葉の向こうに、真実を探すことの"快楽と緊張"が、カズオ・イシグロを読むことにはあり、当然かき分ける言葉が多ければ多いほど、得られるものは大きくなる。

        今回読了したのは、いつか読みたいと思っていた彼の五つの短篇小説からなる「夜想曲集」。
        自らの十八番を封じて、どのような技を見せてくれるのか、大いなる興味を持って読みました。

        この短篇集では、1作を除き、語り手やその他の登場人物の多くがミュージシャンなんですね。
        そして、彼らの誰一人として、音楽の世界で成功しているとは言えない。

        今ひとつ「イケてない」彼らに共通するもの、それは音楽への限りなく深い愛情だ。
        だからこそ、忘れ去られた老歌手も、売れないのは顔のせいだと整形手術を受けさせられるサックス奏者も、チェロを弾けないチェロ教師も、音楽は夜のように分け隔てなく、優しく包み込み、愛に応えてくれる。

        それまでのカズオ・イシグロの作品の主旋律とも言える「私は何者なのか」という問いは、この短篇集で表立っては現われない。
        むしろ、それぞれの短篇で、語り手は音楽をきっかけに他者と出会い、強く惹きつけられ、その他者が何者なのかをストレートな言葉で語る。

        ふと耳にしたフレーズやメロディーのように、他者の記憶がいつまでも忘れられずに甦る。
        音楽は確実に、そして軽やかに人と人とを結びつけている。
        この軽やかさこそ、この短篇集の真骨頂なのかも知れない。

        「夜想曲集」というだけあって、全体のトーンは哀切だ。だが夜のとばりが不意に、笑いで揺れることがある。
        特に「降っても晴れても」「夜想曲」の2篇で登場人物たちが繰り広げる言動は、抱腹絶倒のおかしさに満ちている。

        読み終えてみて新たに思うのは、カズオ・イシグロは、本当に芸域が広い作家だなということですね。

        >> 続きを読む

        2018/10/14 by dreamer

    • 1人が本棚登録しています
      IBM奇跡の"ワトソン"プロジェクト 人工知能はクイズ王の夢をみる
      カテゴリー:情報科学
      4.0
      いいね!
      • DeepBlueでチェスの世界王者に勝利したIBMが21世紀に入って次に挑戦したのは人気クイズ番組でクイズ王達との対決に挑むという無謀なプロジェクト。

        コンピューターはどこまで人間に近づくことが出来るのか?前代未聞の挑戦の内情を記録した科学ドキュメンタリー作品。

        全世界の航空管制を担うことが出来るほどの驚異的な性能を誇る2880個の並列POWER7プロセッサと数億ページに相当するテキストデータを収納したストレージを武器に天才たちが育て上げたワトソンプログラムが出題内容を瞬時に理解し回答する・・・。

        自然言葉を理解するというのは人工知能の基本ともいえる機能でSF映画では古くから描かれているものの、現実世界でのその分野は未だ人間の頭脳には遠く及ばない。

        ましてや相手は驚異的な正解率と早押しテクニックを有する二人のクイズ王。果たしてIBMは赤っ恥をかくのか、それともDeep Blue以来の偉業を達成するのか?

        今日ではiPhoneにユーザーの問いかけに答えてくれるSiriが搭載され、チェスよりさらに複雑な将棋でもコンピューターがプロ棋士に勝ち越し、自動運転の車の公道試験が始まるなどなど人工知能の時代の幕開けを身近に感じるようになりました。
        一方でこの作品を通して現在の人工知能の難しさ、限界を知ることができます。

        この作品では後日談は描かれていませんがIBMは「ワトソン」の事業化を目指しているそうです。
        自然言語を理解した上で過去の膨大な医療データ(ビックデータ)から瞬時に症例を導き出しアドバイスする。そんな有能な助手が若手医師を助け医療ミス防止に貢献する日が来るのも近いのかも・・・。
        >> 続きを読む

        2014/05/11 by ybook

      • コメント 5件
    • 2人が本棚登録しています

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