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土屋政雄

著者情報
著者名:土屋政雄
つちやまさお
ツチヤマサオ
生年~没年:1944~

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このランキングは1日1回更新されます。
      わたしを離さないで
      カテゴリー:小説、物語
      4.2
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      •  ノーベル文学賞を受賞された、カズオ・イシグロ氏の代表作です。
        図書館に予約していたのが届いたので読んでみました。

         結論から言うと、読者を選ぶ本ですね。
        絶賛する人もいれば、まったく伝わらない人もいそうな本です。

         テーマはとても重たいものです。
        そして、大切な情報を伏せられながら物語が進むので、否応なく、なんとなく、モヤモヤした違和感のようなものを感じずにはいられません。

         これは「教えられているようで、ちゃんと教えられていない」という感覚を、読者に実体験してほしかった著者の試みだったのかなぁ…なんて深読みしすぎでしょうか。

         断片的に与えられる情報から予想される主人公たちの境遇が、やはりそうだったのか!とオープンになっても、劇的にスピードアップしたり大事件が発生することもなく、淡々と物語は進みます。
        ある意味ここがすごい。

         どんな教育を受けたのか分かりませんが、主人公たちは彼らの境遇をほぼ100%受け入れているのです。
        一般的な感覚をもっている人間なら耐えられないような驚愕の事実ともいえそうな内容で、実際 彼らの教師の中には思い悩み当惑してしまう人も出てきてしまうのですが、彼ら自身は当たり前のことだと受け入れているのです。

         マインドコントロールと言ってしまえばそれまでですが、この点は読者にある種の衝撃をあたえます。
        伏せられていた設定に対するモヤモヤ感からつながって、作品全体を覆う違和感のようなものが増大するとでも言いましょうか。

         けれど、物語はこのまま終わらず、主人公たちはささやかな抵抗を試みます。
        それは彼らに定められてしまっている人生のむごさからしてみたら、本当にささやかなものです。
        それでも、彼らにしてみたら一大事なのです。

         しかし、それさえも意を満たさぬ結果に終わった時、彼らには何が残ったのか。
        読者にはほとんどすべてのカードがオープンにされた状態でのエンディング。
        ですが、その心象風景から何を読者に投げかけたかったのか、わたしには本当に分かりませんでした。

         風に吹き飛ばされて集まってきたゴミ…私たちの人生もそんなようなもの…
        でもまったくの無意味ではない、たしかにそこに存在はしていた…
        そんな受け取り方でいいのか、読み手に考えさせる文学は本当に苦手です。

         全体的に暗くて、盛り上がりも特になく、読みにくい小説かもしれませんが、興味を持たれた方は是非 手にとってみて下さい。
        読みなれた御手軽な小説などとは一味も二味も違う何かを投げかけてくれる作品です。
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        2018/04/30 by kengo

    • 他18人がレビュー登録、 51人が本棚登録しています
      日の名残り
      カテゴリー:小説、物語
      4.5
      いいね!
      • この本は、「古き良き時代」を懐古するという退屈な小説では決してなく、単純に泣けるとか笑えるとかいう類の作品でもありません。ただ静かに、しかしとても心の奥深いところに語りかけてくる作品です。特に終盤Mr.スティーブンスが人生を振り返るような部分にはジワッとくるものがあります。

        Mr.スティーブンスが語る過去のエピソードの中に見え隠れするのは、徹底したプロ意識とそれに対する自問自答であるような気がします。でもMr.スティーブンスはMr.スティーブンスであって、そのようにしか生きられない人なのだと思いますし、その中でこそ高貴なる品格を失わなずに生きることが彼の生き様だったのだろうなあと思います。

        誰しもきっとある程度の年齢になれば「あの時こうしていれば」とか「他に違う生き方があったかもしれない」とどこかで思うところがあるのではないでしょうか。

        Mr.スティーブンスも多分ちょっとだけそう思っていながらも、最後に「これで良かったんだ」と、そして「自分の生き方は間違っていなかった」と振り返ります。
        それは彼が彼自身である理由を見失わずに、ストイックに生きたからこそそう思えるのでしょう。

        きっとMr.スティーブンスのように、いつか見知らぬ海岸沿いでそんなことをつぶやけることが幸せなことなのかもしれません。

        設定が現在の日本から遠いのは確かです。例えばMr.スティーブンスのような「執事」はもう英国にさえいないのかもしれず、もしかしたら日本の侍のように、本当にその人達が過去にどんな精神性を持っていたのかは誰にもわからないような、もう消えた人種なのかもしれない。時代も国も違うし、少なくとも自分の周りに「〜ではありますまいか。」なんて言う人はいない。

        でも300ページ以上に亘るMr.スティーブンスの語りかけに耳を傾けていると、こんなことを思うのです。「自分はこうあらねばならない」と思って生きている人って、とても一生懸命で、真面目で真っ直ぐで、だからとても不器用で頑固で誤解されることもあったりして、人生損してるような感じですよね。で、大抵アメリカンな時代感覚からかけ離れていたりしますよね。良い悪いとか好き嫌いではなくて、いますよね、そういう人。

        自分はそこまでストイックに生きていないと思うのだけれど、少なくとも後悔はしないように、できるだけ自分にできることや自分が大切にすることを見失わないように、生きていたいと思うのです。

        そんなことを、執事というペルソナに当てはめて語らせるカズオ・イシグロさんはさすがです。

        他の方のレビューで翻訳が良いと書かれていたのですが、期待を裏切らないきれいな言葉ばかりでした。堅苦しくならずに品格を維持する語りは本当に凄いと思います。
        思わず、「〜ではありますまいか。」っていう言い回しが日常でも口をついて出てきそうなほどに、素敵な翻訳でした。(皮肉ではありません笑)
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        2018/05/16 by lafie

    • 他9人がレビュー登録、 25人が本棚登録しています
      終わりの感覚
      カテゴリー:小説、物語
      4.7
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      • 先に映画を観ました。
        細部が気になり原作の翻訳を読みましたが、大筋同じでした。(映画は面白かった)

        主人公が昔の恋人に「あなたは本当にわかっていない」と言われるのを聞けば、若い頃の私は「じゃあ教えてやれよ」と思ったものです。
        この歳になり、「現実や事実から目を逸らす男のなんと多いことよ」と思い、説明する気にもなれない気持ちがわかります。
        >> 続きを読む

        2018/04/11 by belami

    • 他2人がレビュー登録、 3人が本棚登録しています
      わたしを離さないで
      カテゴリー:小説、物語
      4.5
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      • 2018/02/27読了

        ノーベル文学賞を受賞する前にドラマ版を観た。
        わりと好きなドラマだったから、読みながら思い出しつつ、
        共に映像が浮かんできた。
        その後、映画版も観た。

        どれも、ちょっとづつ描き方が違っていたが、
        原作の雰囲気は壊していなかったように思う。


        倫理とか、そういう観点からいえば有り得ない話だと思うけれど、
        登場人物が、その運命に抗わずに受け入れていく、その強さが切なくて。
        良い作品だと思う。





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        2018/02/27 by ゆ♪うこ

    • 他1人がレビュー登録、 6人が本棚登録しています
      月と六ペンス
      カテゴリー:小説、物語
      4.0
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      • 【あらすじ】

        「私」がストリックランドとはじめて出会ったとき平凡な男であるという印象を受けた。17年間株式仲買人をして妻子を養ってきた平凡な男。そんな男がある日 なんの前触れもなくパリに出奔してしまう。夫人の依頼を受けて「私」はストリックランドを連れ戻そうとする。なぜ17年間も連れ添った妻と子供を捨てて、パリに訪れたのかと問うと彼は絵を描きたいからとおよそ常人には理解できない返答をするのだった。

        今でこそ天才画家と称されるストリックランド。彼は有名人の例に漏れず、世間から様々な人物像を描かれることとなる。多少なりともストリックランドと交流があり作家である「私」が、彼がどういう人物であったかを書こうと思う。

        【感想】
        ストリックランドは人でなしとしか言いようのない人物だ。「私」は妻子を捨てたストリックランドに対して常識的な非難を浴びせるのだが、彼は微塵も揺るがない。

        「奥様はどう暮らしていけばいいんです」
        「十七年も食わしてやったんだ。そろそろ自力でやってみてもいいと思わんか」
        「無理です」
        「やらせてみるさ」
        (中略)
        「奥様がどうなってもいいのですか」
        「いいとも」(p81)

        あっさり自分の罪を認めた上で、妻がどうなっても構わないと言い切る場面は「私」と同じく、思わず笑ってしまいそうになった。しかし、世間からどう思われようと気にしないと心から言うストリックランドからは薄情さよりも先に野生の力強さを感じた。

        後にストリックランドはパリで、唯一自分の才能を見出す三流画家のストルーブと出会う。しかし、ストリックランドは散々世話してくれたストルーブの人生を滅茶苦茶にする。ここがこの小説のクライマックスだと思う。鬼畜としかいいようのないストリックランドへの怒りや嫌悪はほとんどわかず、道化として描かれた善人ストルーブへ嘲笑を浮かべさせる構造になっているのはなんとも意地が悪くて面白い。善なるものは時に六ペンスほどの価値もないのかもしれない。

        パリ編が終わり、タヒチ編ではストリックランドの生涯の終わりが描かれる(ロンドン→パリ→マルセイユ→タヒチ)。ここは大きな展開があるわけではなく、彼の生涯を第三者から断片的に聞かされるという構造になるため、エンタメ性がガクッと落ちる。けれど、それがかえってストリックランドという画家の実在感を高めている気がする。理想郷、楽園、黄金時代。社会や常識、文化や文明という鎖を食いちぎり、ここではないどこかへ辿り着いた人間が確かにいたのだ。
        >> 続きを読む

        2016/12/24 by けやきー

    • 他1人がレビュー登録、 6人が本棚登録しています
      IBM奇跡の"ワトソン"プロジェクト 人工知能はクイズ王の夢をみる
      カテゴリー:情報科学
      4.0
      いいね!
      • DeepBlueでチェスの世界王者に勝利したIBMが21世紀に入って次に挑戦したのは人気クイズ番組でクイズ王達との対決に挑むという無謀なプロジェクト。

        コンピューターはどこまで人間に近づくことが出来るのか?前代未聞の挑戦の内情を記録した科学ドキュメンタリー作品。

        全世界の航空管制を担うことが出来るほどの驚異的な性能を誇る2880個の並列POWER7プロセッサと数億ページに相当するテキストデータを収納したストレージを武器に天才たちが育て上げたワトソンプログラムが出題内容を瞬時に理解し回答する・・・。

        自然言葉を理解するというのは人工知能の基本ともいえる機能でSF映画では古くから描かれているものの、現実世界でのその分野は未だ人間の頭脳には遠く及ばない。

        ましてや相手は驚異的な正解率と早押しテクニックを有する二人のクイズ王。果たしてIBMは赤っ恥をかくのか、それともDeep Blue以来の偉業を達成するのか?

        今日ではiPhoneにユーザーの問いかけに答えてくれるSiriが搭載され、チェスよりさらに複雑な将棋でもコンピューターがプロ棋士に勝ち越し、自動運転の車の公道試験が始まるなどなど人工知能の時代の幕開けを身近に感じるようになりました。
        一方でこの作品を通して現在の人工知能の難しさ、限界を知ることができます。

        この作品では後日談は描かれていませんがIBMは「ワトソン」の事業化を目指しているそうです。
        自然言語を理解した上で過去の膨大な医療データ(ビックデータ)から瞬時に症例を導き出しアドバイスする。そんな有能な助手が若手医師を助け医療ミス防止に貢献する日が来るのも近いのかも・・・。
        >> 続きを読む

        2014/05/11 by ybook

      • コメント 5件
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【土屋政雄】(ツチヤマサオ) | 読書ログ - 読書ファンが集まる読書レビューサイト(著者,作家,作者)

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