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橋爪大三郎

著者情報
著者名:橋爪大三郎
はしずめだいさぶろう
ハシズメダイサブロウ
生年~没年:1948~

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      ふしぎなキリスト教
      カテゴリー:キリスト教
      4.5
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      •  有名な社会学者二人が、キリスト教の疑問に思われる点について、あれこれと対話している本である。素朴な疑問やツッコミどころを、大澤さんが、遠慮なく次々吐き出している所が面白い。逐一、自分の言葉でそれに説明を加えてくれる橋爪さん、それに対しまた思ったことを返す大澤さん…… キリスト教に関心はあるけれどよくわからない、という人でも、結構楽しんで読めると思う。

        ********

         われわれ日本人で、キリスト教徒ではない人にとって、聖書には、読んでいると、どう考えても理不尽だろう、と思われる記述がある。カインとアベルの話も、マリアとマルタの話も、放蕩息子の話も。
         たとえばカインとアベルの話(p.228あたり)を見てみよう。兄がカイン、弟がアベル。カインは農業を、アベルは遊牧をおこない、それぞれ収穫に恵まれたため、初物を神にささげたが、神はアベルの捧げものを喜び、カインのささげものを喜ばなかった。それでカインは怒って弟のアベルを原っぱにい呼び出して刺し殺してしまう。すると神は、カインを殺人の罪で糾弾し、追放する。ここで、なぜ、神はカインのささげもののほうを喜ばなかったのか、については書かれていない。理不尽だ。だけど、そこで嫉妬の感情を持ったり、怒ったりしてはいけないのである。
         人間って必ず、自分より恵まれている・あるいは恵まれていない立場にある人をみつけてしまうもの。他人と自分を比べてしまうもの。生きてたら、ぱっと見、そういう差異に遭遇する経験って絶対あるものじゃないですか?で、それはあって当然だし、いちいちそこに腹を立てたり異議を申し立てちゃいけないっていうのが一神教で、そのことをまず最初に示しているのがカインとアベルの物語だ、という。この部分の説明は、かなり説得的に感じた。
         また、キリスト教には「宗教法」がなく、神がこの世をつくってからそのまま出て行ってしまっているので、神を信じた人間たちがその世界を、理性を通じて分析・研究・発展させる可能性を残していた、という点も面白い(p.315あたり)。 ウェーバーのプロテスタンティズムと資本主義を関連付ける論説は有名だが、たしかに、自然科学の発展の端緒となったものを作り出していったのは宗教改革頃のヨーロッパ世界で、そこに生きた人々は熱心なキリスト教徒だったりもする。熱心な宗教者がそうやって、現世のことの分析に必死になるのって、ほかの仏教やイスラム教の信徒にはない、珍しいことなんですよね。
         キリスト教徒が現世の仕組みにも関心を持って調べたのは、この世界が神によってつくられたもので、そこには、一定の秩序があると考えていたから。人間に与えられた理性を用いれば、ある程度まではそれを説明できると思った。他方、説明できない部分、たとえば先に述べたカインとアベルみたいな不平等さもあることを受け入れていて、それは、完全に神の意思で<恩寵>の働きによるものだとしている。そんなふうに受け入れることができるのは、信者だからで、そういう意味ではもちろん、他との区別がある。けれど、キリスト教というのは、非キリスト教徒や、非宗教的な世界とべつの宗教世界をつくって閉じこもるものじゃなくて、そういう外部をもつくりかえていく力を持つものだったのだと言う印象を受けた。


         そう、一般的には、キリスト教が支配する世界を「脱して」あるいは「排して」、世俗化・近代化や科学技術の発展が成し遂げられた、と考えられがちだけれども、そうではなくて、キリスト教世界が「あったからこそ」、そうゆう発展が可能になったわけである。
         その意味で、現代人が、キリスト教が支配的であった西洋中世世界に関心を持つことは意味のあることだし、キリスト教について、この本にあるみたいに、ちょっと考えてみることは、かなり有意義なことなのだ。そう実感させてくれる、興味深い1冊でした。
        >> 続きを読む

        2017/05/22 by コノハ♦

      • コメント 1件
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      はじめての構造主義
      4.0
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      •  『カント入門』に並んで、2018年上半期に読んだ哲学解説書の中で有益だった一冊。構造主義は、哲学に関わらず、文学や芸術の分野でも語られる(語られた?)が、改めて学ぶ機会を設けることが出来た。レヴィー・ストロースに焦点が当てられており、彼が哲学の思考を、文化人類学に持ち込んだことの偉大さがよく理解出来る。また、橋爪大三郎の文章も読み易さに拍車をかけている。哲学に関わらず、様々な人文科学を学ぶにあたって、基礎知識として読んでおきたい。本書を読めばわかるが、構造主義の考え方のルーツには、理数系の思考が横たわっていることにも注目されたい。 >> 続きを読む

        2018/08/03 by shinshi

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