読書ログ - 読書ファンが集まる読書レビューサイト
こんにちはゲストさん(ログインはこちら) | 読書ログ - 読書ファンが集まる読書レビューサイト →会員登録(無料)
1クリック登録
やっぱり野沢尚はミステリーというよりサスペンス的な作品が多い。文中で幾度となく語られる「真実なんてどうでもいい」「目を釘付けにすればいいんでしょ」を体現している作品だった。物語は主人公である搖子によって報道被害を受けた麻生という男の復讐に焦点が置かれるが、搖子もまた「謎の人物」から送られてきたフィルムの報道被害者になっていく。二人の、まさに運命共同体な行動が面白い。 >> 続きを読む
2016/06/29 by yuria
12歳で成長が止まった少年・呼人の物語。 脚本家・推理作家であった著者の描くヒューマンドラマです。特にドラマの脚本で高い評価を受けていた方のようですが、経歴には「名探偵コナンーベイカー街の亡霊」の脚本なんてのもあります。個人的には劇場版コナンでは「ベイカー街」が一番です。 まずは、あらすじから。 1985年、呼人は親友の厚介・潤とともに、小学生最後の夏休みを過ごした。雑木林の中に作った秘密基地、のどを潤すコーラの味、自転車で疾走する坂道、そして行方不明になった幼馴染・小春を探した一晩の冒険……それらは大人になれば得られなくなる代わりに、かけがえのない思い出として、成長の糧となるはずだった。しかし、その夏を境に呼人の成長は止まった。 時は容赦なく過ぎていき、やがて、厚介は自衛隊員に、潤はニューヨークの銀行マンになり、小春は若くして結婚していた。かつての幼馴染たちが大人の社会でもがき、傷つけられる姿を、呼人は見つめ続ける。そして、呼人自身も、自分の出生の謎を解き明かすために、失踪した母親の痕跡を追い始める。「12歳から成長しない」というなかなかインパクトのある設定を持っている主人公ですが、思ったよりも、その設定を生かした展開は抑え気味です。もちろん主人公は物語の中心ですが、物語の軸として、その周りを回る人々を見つめている、といった具合です。歳を取らない主人公を視点として、幼馴染たちとの対比することで、時間の流れを描いているのかもしれません。 呼人の場合、あの「身体は子供、頭脳は大人」というのとは少し違います。勉強すれば知識は身に付きますが、心は12歳のままです。そのため、子供らしさが露呈することがままあります。 ところで、子供・大人という区別はどこにあるんでしょうか。私は、「いつまでも子供の心を忘れないようにしたい」と青臭いことを思ってもいますし、同時に「もっと大人にならなければ」と、しょうもない決意を持ってもいます。しかし、何が子供で何が大人なのか、この部分はとても曖昧です。結局、都合の良いように子供と大人を使いわけたいだけなのかもしれませんねぇ……。 もっと色々やってくれても良かったのになぁ、と思う部分もありましたが、様々なことを考えさせられる良い小説でした。 読み終わってみると、まだ彼らが子供だった1章の物語が非常に輝きを放っているように思います。大人になるというのは、様々なことに慣れることなのかもしれません。経験の分だけ、多くのことに対処し、物事の取捨選択ができるようになりますが、反面、日々の煌めきに鈍感になり、諦めを覚えてしまうのではないでしょうか。「大人は夏に喘いでいる。夏だから、ぼくらは走る」(p.16) とりあえず、この夏に喘がず走ってみようかと思うのでした。 >> 続きを読む
2015/07/31 by あさ・くら
感想、ただ一言、これだけで良い。「ページを捲る手が止まらない」エンタテイメント色の強い作品だけど、リアリスティックな描写で緊迫感を楽しめる。 >> 続きを読む
2015/05/12 by yuria
第22回吉川英治文学新人賞受賞 江戸川乱歩賞の「破線のマリス」は面白かった。その後も評判のいい本があったので買ってきて積んでいたが、この「深紅」がミステリを語る中で何度も目に入ったので読んでみた。衝撃的な出だしからすっかり夢中になって時間を忘れて最後まで読んでしまった。 目次は第一章から第五章まである。まず第一章 事件が起きたとき修学旅行で信州の高原にいた小学校六年生の秋葉奏子(かなこ)の話。 旧友たちとふざけながら寝る用意をしていた時、緊張した気配で担任が部屋に入ってきて、すぐ自宅に帰れと言った。よくない予感がしたが、付き添われて高速道路を使って帰ってきた。行き先が監察医務院だと言う。不安は的中して、霊安室で両親と二人の弟に対面した。頭があるところがへこみ白布の上からでもいびつな形をしていた。家族思いで仕事も順調に成長し、新しい家も買った優しい父。ハミングしながら台所で働いていた母、可愛い年子の弟たち。呆然としている間に父方の叔母がきて、滞りなく葬儀が終わった。一人生き残った奏子に事件の話はひた隠しにされたが、テレビや週刊誌で自然に目に入ってきた。頭を金槌で殴られて倒れていった両親、可愛い幼い弟たち、床に広がった深紅、どんなに痛く苦しかっただろう。世間は一家に同情して、生き残った奏子に優しかった。事件現場で茫然自失の様子で座り込んでいた犯人はその場で逮捕された。人でなしの犯人は死刑にしろ。という。 第二章 犯人都築則夫の上申書が一回目の公判前に裁判長に提出された。 秋葉則夫は家庭が崩壊した農家の生まれで、高校卒業後教材会社に就職、関東以北の土地を営業で回っていた。知り合った学校職員の千代子と結婚し娘・未歩が生まれた。その頃は営業一課の係長になっていた、幸せだった。その頃、秋葉由紀彦と知り合った。由紀彦の会社から機器を仕入れ、自社製品とセットにして売った。その利益の1%を秋葉の会社の口座に振り込んでいた。秋葉は取引先の要人という立場をとり目上の付き合いだった。 秋葉の実家は開業医だったが、能力がなくその劣等感をバネにしてきたが、成功して独立するのでよろしくといった。もちろん否といえる立場ではなかった。その頃体が弱かった妻が死んで保険金が入った。8千万という金は今まで家を買い未歩の学資にと切り詰めてきた夫婦の気持ちが無念さだった。 世話になった秋葉は葬式の時にそっと涙をためて妻を見送ってくれた。それにほだされて、秋葉の父が予備校を開設するという、その資金の保証人を引き受けた。秋葉と連帯保証人ということだったが蓋を開けるとあ秋葉の名前が無く、全て自分の借金になっていた。取立て屋が来る頃は一千万円が二千五百万に膨れ上がっていた。それを貯金から返済した。秋葉はのらりくらりと言葉を濁し、ついに詐欺だったことがわかったのだが、秋葉の会社に依存して業績を伸ばした手前、会社の命運もかかっていた。バックマージンを2%に上げて分割で返していくと秋葉は言った。謹厳実直な性格はそれを許すことが出来ず、犯行に及んでしまった。夫婦を殺したことは覚えているが子供のことはショック状態で何も覚えていないと言う。心神耗弱か喪失常態か、裁判は子供殺しの点で紛糾した。上申書が公表されると、世間の風向きが変わってきた、だが一審の判決は死刑だった。 都築は控訴した。死刑は覚悟している罪は認めて償うといっていたが。 第三章から最終章まで怒涛のようなショッキングな進行で読み進んだ後、ここからは8年後。奏子も未歩も二十歳を前にしている。 奏子が太めにした雑誌にッルポが乗っていた、以前取材に来た貴社の名前入りの記事だった。犯人の娘のその後が書いていった。 奏子は同じ年に生まれたその娘に合いたいと思う。立場は違っても辛い生き方は牡マジだろう、しかし自分は未歩の父のために取り返しの出来ない人生を歩む破目になっている。何とか未歩に合った自分の立場を知らせたい、娘に対して出来るなら復讐をしたい。 記者から無理に聞きだした未歩のアルバイト先に訪ねていき名前を隠して近づいていく。あとがきは、吉川英治賞の選考委員の高橋克彦書いている。二章までの怒涛の展開、緊張感、重いテーマに絡ませる子供たちの立場、犯人の立場。稀に見る凄惨な現場を作り出した男。それを群を抜く作品として自信を持って認めた。奇跡的傑作だとある、亡き野沢さんへのオマージュの言葉と読めた。 読んでいてぞっとするほどの恐ろしい感じがある心理的に視覚的に。残された子供たち、世間の感心の深さ、マスコミの執拗さなど息が抜けない。 都築の控訴の根拠が読者に迷路を歩ませる。 三章から子供たちの話に移ると、日常生活の描写が幾分ゆるく感じられる。一、二章の流れで、読者の意識下に残虐なシーンが残っていてこそ、奏子に感情移入が出来るが、立場を変えると未歩の過去も悲惨である。どう生きて来たか、これからどう生きるか、二人が生身でぶつかったとき、話の幕が閉じる。 44歳で亡くなった野沢さんは、多方面で心に残る作品を残している、創作でありながら孤独で悲しいこんなミステリはまだ読み足り無い。 >> 続きを読む
2015/06/18 by 空耳よ
一つの主軸を元に連なる短編集。いかに人が闇に堕ちていくのか、じっくりと感じさせてくれる。『破線のマリス』と並び、脚本家でもある野沢尚ならではの作品。 >> 続きを読む
小説でこんなにエンタテイメント性溢れる作品が書けるのは、さすが脚本家でもある野沢尚なんだと思う。一文一文読み進める度に、その情景が克明に頭に浮かぶ表現力は物凄い。この作品は中でも群を抜いている。 >> 続きを読む
未完成であるのが残念です。
2014/01/06 by ほそやん
年代別の日本代表に選ばれた16歳のサッカー少年、志野リュウジはスペイン代表との試合で存在感を示すものの、日本でサッカーを続けることへの限界を感じてしまいます。しかし、試合での彼の活躍に目を付けたサッカーチームからの誘いを受け、リュウジは高校を中退し、スペインに渡ることを決意するのでした。サッカーに全てを捧げるリュウジの危ういストイックさ、ヒリ付くようなピッチの熱気が感じられてドキドキする作品です。小説という形でサッカーのスピード感を損なうことなく伝えることができる野沢尚氏の力量に驚かされます。もう続きが読めないと思うと残念でなりません。 >> 続きを読む
2015/02/08 by UNI
サッカー選手としてスペインで戦い続けるリュウジ。レンタル移籍先では監督の戦術と合わず、出場機会に恵まれなかったり、新たなライバルの登場など、試練は続きますが、ピッチの外では恋の予感も。そして、クライマックスの相手は何とサムライブルー。リュウジはどう立ち向かうのでしょうか? >> 続きを読む
2015/02/09 by UNI
遂にリュウジが青のユニホームに袖を通し、アテネオリンピックで無敵艦隊、カナリア軍団を相手に闘います。厳格な平義監督との確執、隠されたドラマも読み応えがありましたし、『我が魂よ、不死を求めることなかれ。 ただ可能の限界を汲み尽くせ』というギリシャのことわざにはいろいろと考えさせられました。残念ながらリュウジの物語はここで終わってしまいますが、いつか、現実の日本サッカーに『リュウジ』が現れることを願います。 >> 続きを読む
十年以上前にテレビの連続ドラマでやっていて何話か見たのですが、とても惹きつけられるスリリングな内容で好きでした。大好きなドラマだったにもかかわらず、見逃した回もあったり、挙句最終回も見られず、顛末は知らずじまいでした。最近になって本で読んでみようと思い立ち、古本屋さんに寄ってみたら、ボロボロでしたが108円で一冊だけおいてありました。即買いしました。本でも夢中になってしまうストーリーに引き込まれ、数日で読み切りました。最後の方は失速していく感じがありましたが、全体的には大満足です。この作家さんの最近の作品てないのかなぁと思い、調べてみたところ、残念な事に2004年にお亡くなりになられてるんですね。 >> 続きを読む
2017/08/15 by xhiro
【野沢尚】(ノザワヒサシ) | 読書ログ - 読書ファンが集まる読書レビューサイト(著者,作家,作者)
ページの先頭に戻る
会員登録(無料)
レビューのある本