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アル中の中年バーテンダー島村圭介は、休日は、公園でウィスキーを飲むのが習慣。しかし、いつものように新宿の中央公園で飲んでいると、いきなり同じ公園内で、爆弾テロ事件が発生する。偶然居合わせただけの島村だったが、現場近くに飲み残しのウィスキーの瓶とカップを置き忘れたことから、警察に追われる身となってしまう。彼は22年前に学生運動をやっていたおりに、ある爆破事件に関わったことがあり、指名手配を受けるという過去があったのだ。今回の事件は、過去の事件と関係があるのか?爆弾による死者の中に、かつての大学闘争の頃の仲間である、優子と桑野誠の名前を発見した島村は、自分で真相を突き止めようと調べ始めるのだった--------。江戸川乱歩賞を受賞し、単行本化された時に読んでいたので、今回、再読となるのだが、読んでからしばらくたつので、新鮮な気持ちで読む事ができましたね。江戸川乱歩賞と直木賞をダブル受賞した作品なので、良い作品であることは間違いないのだが、再読してみて、確かにこれは凄い小説であると、改めて感じさせられた。この作品の主人公は、アル中の中年バーテンダー、島村圭介。島村は、過去にとある事件を起こして、身元を隠したまま生き続け、現在は、アル中のバーテンダーとして過ごしている。こんな冴えない主人公は、なかなかいないだろう。しかし、それは世間をはばかる仮の姿に過ぎなかった。島村は、重い十字架を背負って生きてきた男で、物語が進むにつれて、この上もなく魅力的な主人公へと変化していく。とにかく、読んでいくうちに、グイグイと惹き付けられるものがあり、そこがまた不思議に思えた。プロットなども良くできているとはいえ、何が他の作品と異なって、ここまでリーダビリティがあるのかと疑問に思いつつも、最後まで一気に読まされた。冒頭でいきなり起こる、新宿中央公園での爆弾テロ事件。プロローグも何もあったものじゃない。島村の静かな日常が急転し、彼は容疑者として追われる身となる。爆弾テロの犠牲者の中には、島村のかつての恋人である優子が含まれていた。この冒頭のシーンで、私は戸惑いつつも一気に引き込まれてしまった。プロットは複雑ながらも、最初から最後まで、読者の興味を惹きつつ、物語が展開されていく。この冒頭の、公園の爆破事件に始まり、掘り起こされる過去に起きた爆弾事件、暴力団の介入、麻薬の密売、爆破事件による過去の知人の死。こういった様々な要素が、公園での爆破事件をきっかけに浮かび上がってくることになる。一見、それぞれの事件が、何も関係なさそうに見えながらも、最終的には、始まりは全て一つのところから発生したものであったという力技を見せ付けられる。人間の感情的な面から見ると、少々突っ込みを入れたくなる部分もなくはないのだが、大筋では非常にうまくまとめられていると言えるだろう。主人公の島村を含めて、脇を固める登場人物たちも、それほど個性が強くないとはいえ、そのバランスがうまく作品にマッチしていて、全体的に、筋をうまく生かす設定になっていると感じられた。島村、優子、浅井、塔子、そして真犯人-------。それぞれの過去から現在が、徐々に絡み合う。そして、最後に島村と浅井が至った真相とは? -------。決してハッピーエンドとは言えない結末だろう。しかし、読了後に残される、この爽快感はどうだろう。浅井の台詞を引用するなら、登場人物たちに「背骨が通っている」ということに尽きるだろう。要するに、江戸川乱歩賞と直木賞を受賞するに値する作品であったということを、まざまざと見せ付けられた気がする。再読するのに、相応しい作品であり、これからも何度か読むことになるだろう、オールタイムの小説であると言い切っていいと思う。 >> 続きを読む
2021/06/18 by dreamer
飲料会社の課長堀江が会長から託されたビデオ。広告のためにという内容だが、中身はCGで加工された救出劇だと堀江は見抜く。その夜会長は謎の自殺を遂げ、堀江は会長との縁から真相を突き止めようとする。次第にこの堀江にはある過去が分かる。サラリーマンだけどこれはほとんどハードボイルド。40度近い高熱の中、普通に外に出るという荒業。この堀江というキャラの信念のようなものが見えるのだが、個人的にはそこまでのれなかった。キャラの特徴はよく出来ているが、物語の本筋に要らない部分が多かった印象。 >> 続きを読む
2019/04/26 by オーウェン
藤原伊織さんは若くして突然に亡くなったが、この作品は江戸川乱歩賞と直木賞を同時受賞をして話題になった。私はこの作品も好きだが、「シリウスの道」「ひまわりの祝祭」「手のひらの闇」などに夢中になった。もう次が読めないのが残念。特に「シリウスの道」は広告業界の内部が興味深く、ドラマにもなったので頼んで録画してもらったのだが、期待していた緊迫した山場がカットされていて薄味だった。「テロリストのパラソル」は1996年に放送されたそうだが16年もたったのに、時代の流れもあまり影響がなくとてもよくできていた。原作はほとんど忘れていたが、最初の新宿中央広場の爆弾事件から始まる部分は非常に面白く、読んだころの記憶と重なるドラマティックな出だしだった。学生運動の同士で友人だった三人のその後。二人は警察に追われ、逃げ続けて20年後に再会する。生活の陰に隠れて、薄暗いスナックで生きている男が、爆発事件で存在があらわになる。しばらく同棲したことのあるかっての同士だった女性がこの日に爆発で死に、友人だった男の名前も挙がる。あまりの偶然に、20年の間知ることもなかった二人の過去を調べ始める。スナックにかくれて生きているアル中の男が萩原健一、かって同士だった男に根津甚八、恋人だった女性が高橋恵子、そのほか西岡徳馬、大杉漣 など。若い木村佳乃も。あまりべたべたしない演出や脚本もよかった。監督の気持ちが入りすぎて、見ているほうが押されそうな意欲作もたまにはいいが疲れる。内容は重いが、それぞれの生き方が物悲しい、いい作品だった。藤原さんの作品ジャンルは「ハードボイルド」らしい。なんだか過ぎた時代を感じさせる作品で、懐かしかった。 >> 続きを読む
2015/05/30 by 空耳よ
フジワライオリは天才。ギャンブラー&酒飲みもいいし。早世が悔やまれてならん。たぶん5、6作しか残していないのでは。テロリストのパラソル。タイトルも含めて、最高傑作だと思います。中学生のころに青春の門読んで以来くらいですね。これほど心を揺さぶられた本は。 >> 続きを読む
2015/02/23 by masa1011
前作の「テロリストのパラソル」で、史上初の江戸川乱歩賞と直木賞のダブル受賞の快挙を果たした藤原伊織の「ひまわりの祝祭」を読了しました。ゴッホの幻の絵画をめぐる謎を描いていて、ミステリを読む至福の時を過ごせました。今は亡き藤原伊織の作品は、いつも男心をくすぐりまくる。端正で格調の高い文体、主人公のたたずまい、切れ味のいい会話の妙、掘り下げのきいた人物像、用意されたミステリの規模、そして物語を転がしていく"友情"や"仁義"の使い方------。そこには男が憧れてやまない"夢"の形が、十全に配備されており、心地よく酔わせてくれるのだ。この作品の主人公もまた、そんな理想形のまさしくド真ん中。昔は、超優秀なデザイナーだったのに、今は世捨て人同然、おまけに銀座在住、そんなことはないよねえと思いながらも、作者・藤原伊織の語り口の素晴らしさから逃れられないのだ。とにかく、ストイックな文章、周到に張り巡らされた伏線の巧さ。読んでいる間中、読書の悦びを感じさせてくれる作品でした。 >> 続きを読む
2018/03/18 by dreamer
主人公は強くて、頭がよくて、女にもてるが、どこか人生を投げているようで情けない。この情けなくてカッコいい処がハードボイルドなんです。スーパーマン的に強くてカッコいい主人公が出てくる物語もハードボイルドと言われますが、私の中では人生を投げて、酒に溺れるような情けなさが重要なんです。藤原伊織さんの描く主人公は秀逸です。もう亡くなられて何年でしょうか。新作が読めないのはさびしい限りです。 >> 続きを読む
2015/02/23 by 甘口カレー
【藤原伊織】(フジワライオリ) | 読書ログ - 読書ファンが集まる読書レビューサイト(著者,作家,作者)
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