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鴻巣友季子

著者情報
著者名:鴻巣友季子
こうのすゆきこ
コウノスユキコ
生年~没年:1963~

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このランキングは1日1回更新されます。
      嵐が丘
      カテゴリー:小説、物語
      4.1
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      • イギリス北部、ヨークシャー近郊にあるハワース。
        <嵐が丘>アーンショウ家と<鶫の辻>リントン家の間で起こった激しい愛憎劇が描かれています。作品の持つパワーに終始圧倒されていました。あまりに激しくお互いがぶつかりあうので、読んでいる方は大変疲れました…。打ちのめされはしましたが、出会えてよかったと思えた作品でした。そして、人生初の乱丁本に当たった本でもあります。

        復讐に固執する男・ヒースクリフや気性の激しいアーンショウ家の人たちによって物語は加速していきます。
        しかし一番怖いのはこの人たちではなく、女中のネリーでした。彼女が動くことで事態をよりややこしくしていたと思います。キャサリンの夫エドガーに告げ口したことごとくが火に油を注いだ結果となりました。「ネリーこそ隠れた敵だ」とキャサリンがわめいていた通りで、不信感が増すばかりでした。物語を進めていくと、ここぞという場面でそれが発揮されます。この人が黙っていれば…と思うことしばしば。ネリーが嵐が丘と鶫の辻のことを語っているためヒースクリフなんぞ悪鬼の如く散々なのですが、信頼できない語り手の言うことなので、本当はどのような人物なのかイマイチ掴めません。
        都会から移り住んできたロックウッド視点の方がよっぽど信用できます。彼はネリーの話だけでなく、キャサリンの日記も嵐が丘の人たちも実際に見ていますから。ネリーが天使のように讃えているキャシーを見て、「あまり取っ付きやすくなさそうだ。ディーンおばさんの触れ込みほどには」という感想を漏らしています。
        嫌悪感を抱きつつも、このキャラクターが動かす物語のおもしろさも理解できます。

        激しい復讐劇ではありましたがラストの穏やかさを見ると、やはり恋愛ストーリーだったのかな、とも思います。
        子ども世代が可哀想でした。特にリントンが…。ネリーが語っている部分なので怪しいのですが、子世代までも復讐の対象にはしてほしくなかったなぁ。
        ヘアトンとキャシーが良い関係となったのが救いでした。
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        2021/09/05 by あすか

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      緋色の記憶
      カテゴリー:小説、物語
      4.0
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      • 何かの本でクックの「記憶シリーズ」のことを読んでいた。読んでみようと本屋で4冊買ってきたのだが、読むなら順があるだろうと思い、最近やっと読み始めた。気持ちが予想以上に入り込んで、あっという間に終わってしまった。
        面白くて止められなかったからで、ミステリは暇があるときに楽しむだけのもの、という偏見はさらに改めなくてはいけないと思った。

        文庫の奥付を繰って初版日で並べみると、この「緋色の記憶」が1998年3月だから最初のものになる。

        知らないと笑われるくらいファンの多い作者らしく、こういうところに紹介するのはいまさらの感もあるようだ。
        あとがきを読み解説を見ると、これなら時間の浪費にはならないと決まった。そして、読後はいつもの感想ながら、いくら読んでも次々に面白い本を書いてくれる人があって幸せ、だった。

        原題の通り、ニューイングランドのチャタム校を巡って起きた事件である。
        8月、海辺の小さな村に停まったバスから緋色の襟から襟足を輝かせた女性が最後にゆっくりと降りてきた。
        当時チャタム校の生徒であったヘンリーは教会の階段で本を読みながらそれを見ていた。それがミス・チャニングであった。

        海辺の片田舎の町にふさわしくない美貌の女性に出会ったこの時のヘンリーの印象は、後になって「時よ止まれ」と思わせるくらいに輝いて見えた。

        父は校長で、 彼女を黒池と呼ばれる沼のほとりのコテージに住まわせ、美術の教師にする。
        父親と世界を旅し自由な気風を身に付た彼女の授業は、男子校であり厳格な校風のチャタム校ではまず好奇心で迎えられる。

        学校には戦争で足が不自由になり木の杖をついている、レランド・リードという教師がいた。
        彼女は次第に彼に惹かれていく。彼は、黒沼に沿って回っていった先に妻と子供が住む家を持っていて、
        彼女は時々そこにボートを出しているリードの姿をみる事ができた。

        リードは彼女と二人でいつか海岸から船出して自由な世界へ出て行きたいという夢をもってしまった。

        15歳の夏から始まるこの死と別れの話は後年帰省して法律事務所を開いた老いたヘンリーの記憶が呼び起こす物語である。
        過去の出来事は、現在の風景の中から現実のように思い出され立ち現れてくる。
        そして記憶の底にうずもれていた真実に突き当たるのである。
        ひとつの風景からちょっとした出来事から、過去の細かな出来事が蘇えってくる。クックの作風は時間を過去に引き戻しながら、最後には思いもよらない結論を導き出す。すでに人々の中では終わったはずのものたちの、奥に隠された真実が心を打つ。
        長い回想の中で生き生きと登場した人々が、今はヘンリーとともに老ていたり、亡くなってしまったり、すでに影でしかないということも時間の深い闇の底を覗くようである。
        >> 続きを読む

        2014/10/31 by 空耳よ

      • コメント 4件
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      恥辱
      カテゴリー:小説、物語
      5.0
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      • 現代南アフリカを代表するノーベル賞作家、J・M・クッツェーが、1999年にイギリスのブッカー賞を受賞した「恥辱」を読み終えました。

        小説の舞台は、人種間の対立や犯罪の横行といった社会問題を抱えた、現代の南アフリカ。

        主人公は、五十二歳の大学教師。離婚歴が二回あり、現在は独り暮らしだが、娼婦を金で買い、「セックスの面はかなり上手く処理してきた」。

        ところが、ある日、美しい女子学生に抑え難い欲望を抱いたために、転落の道が始まる。
        教え子に告発された彼は、申し開きをせずに大学を辞め、田舎で自作農園を営む娘のもとに身を寄せるのだ。

        これだけなら、大学を舞台にした今時よくありそうな「セクハラ小説」のようだが、しかし、この先の意外な展開を通じて、この小説は俄然、深みを増すんですね。

        主人公の娘は同性愛者で、田舎で独り暮らしをしながら、農業を通じて土地に根をおろそうと努力している。
        彼女には彼女なりの主義や原則があって、父親にはそれがなかなか理解できない。

        セクハラゆえの「恥辱」を罰として受けた父が、転がり込んでから、父娘のぎくしゃくした同居生活が始まるのだが、やがて、ある日、思いがけず恐ろしい事件が、二人の身に降りかかる。

        そして、悲劇の結果、意固地なほどの自尊心を抱え、それぞれ孤独のうちに生き方を模索する二人の姿が浮き彫りにされていく。

        主人公が文学の教授であるだけに、全編がさまざまな詩の引用に彩られているのも、この作品の大きな特徴なんですね。
        この小説は、南アフリカの現状に正面から取り組みながらも、同時に、ロマン派の詩人たちの世界に想像力を広げていく。

        きな臭い現代を直視しながらも、昔の文学の世界に遊び、精緻な純文学の文体で綴られながらも、一度読み始めたら止められないほど面白いプロットで、私を引き込んでしまうんですね。

        この小説は、そんな美点に恵まれた傑作だと思う。
        また、鴻巣友季子の訳もこなれていて、原作の香りをかなり忠実に伝えている名訳だと思いますね。

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        2018/12/27 by dreamer

      • コメント 1件
    • 5人が本棚登録しています
      昏き目の暗殺者
      カテゴリー:小説、物語
      5.0
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      • マーガレット・アトウッドのブッカー賞受賞作「昏き目の暗殺者」は、ミステリアスな物語だ。

        冒頭、一つの死亡報告から、物語は始まる。若くて美しく、才能のある女性の死。

        後に彼女は、没落したチェイス家の令嬢ローラだと紹介されるのだが、彼女が生前、書いていた姦通小説は、死後出版されるやいなや、絶大な反響を呼ぶ。

        どんな小説なのだろう? この作品の中で断片的に紹介されるそれは、いかにもインテリな男が、育ちのよい女に、ある王国の没落を描いたファンタジーを、寝物語として聞かせるという情事の光景を映し出す。

        ファンタジーは、明らかにチェイス家の戯画化された姿だろう。
        では、この情事の風景は?
        そもそも、ローラはなぜ、そんな物語を書いていたのか?

        ここで、この作品の中心的な語り手となる、ローラの姉アイリスが姿を現わす。
        彼女は、チェイス家の没落を救うべく、大富豪グリフェン家の当主リチャードと政略結婚し、家族の歴史を長きにわたって、見続けることになる。

        今や狷介な老女となったアイリスの口から、今世紀初頭の大恐慌時代から、二つの大戦、そして現代まで、彼女の身辺で起こった、家族の歴史とその裏側の世界が紹介されていく。

        私は、ローラの小説に隠蔽された、謎解きの魅力に翻弄されながら、驚愕の結末まで、一気に読んでしまいました。

        それにしても、この作品の基調となる、夢見るような筆致は、圧倒的だ。
        特に、アイリスが、ローラ、義姉ウィニフレッド、娘エミリー、そして、家政婦リーニーを語る時のなんとも言えない口調に魅せられた。

        女が女を語る時の微妙な口調の変化、その繊細な動き。
        そこには、名指し難い美しさと恐ろしさが滲む。

        この作品は、ひょっとすると、どんな家族にも沈殿しているかもしれない秘密のおぞましさを描きながら、その物語に神話的な光輝を纏わせ、私を普遍的な世界観へと導くのだ。

        マーガレット・アトウッドならではの、ファンタスティックな筆致が堪能できる、読み応えのある、見事な作品だ。

        >> 続きを読む

        2021/06/05 by dreamer

    • 1人が本棚登録しています

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