読書ログ - 読書ファンが集まる読書レビューサイト
こんにちはゲストさん(ログインはこちら) | 読書ログ - 読書ファンが集まる読書レビューサイト →会員登録(無料)
1クリック登録
発表から22年過ぎた今、文庫版第64刷を読む。令和になっても、タイトル書体と絵のバランスがステキ過ぎる装丁と、新潮の天アンカットで製本された紙の厚みに傑作の風格を味わいながら、ページをめくるめくサスペンス世界へ。気軽で便利なカードローン、消費者金融から始まる多重債務の構造と、貸す側、借りる側で成り立つ社会の悲壮な現実を題材にした、リアルサスペンスの金字塔は、今も胸にグサリと刺さる。借金、失踪、死という金融との関係性と、そこに存在するさまざまな人生の悲しい連鎖を描いたこの小説から22年。借金はさらにポップにオンライン決済に進化。未曾有のキャッシュレス時代に突入した今、現金を見ない数字の裏に新たなミステリーが蠢いている気がする、素晴らしいラストシーン。 >> 続きを読む
2020/10/25 by まきたろう
宮部みゆきワールドの重量感のある主流をなす社会派ミステリの傾向は、平成のバブル崩壊後の不安と頽廃とに訴えていると思う。経済低成長時代に入った社会の証言なんですね。社会的な不公正への抗議の質そのものが変容しているのだ。そして、彼女が取り上げる題材としてあがってくるのは、イメージ商法、チャネリング、催眠術、自分捜しゲーム、新薬開発、カード破産と人間蒸発、ローン破産と債権詐欺なんですね。今回読了した「レベル7」は、これらの中の自分捜しゲームについての物語だ。自分という殻をいったん解除して、そのあとに自分のところに戻ってきて、七段階のレベルで数値化されている。 -----以下、ネタバレあり-----四日間の出来事で、二層のストーリーが並行して語られる。一層は、見知らぬ部屋に見知らぬ相手と一緒に目を覚ました若い男女の話。二人とも記憶を失っている。力を合わせれば、光明が見えるわけではない。混乱が助長されるだけだ。電話線は不通。部屋から出て来たのは、札束の入ったスーツケース、何かのキー、拳銃、血を吸ったタオルといったように、パズルのピースはバラバラのまま、ストーリーはもう一つの層に切り換わる。元小学校教師、34歳の真行寺悦子が、17歳の失踪した高校生のみさおを捜す話だ。この悦子は、宮部みゆきの小説に特有の、不徹底な傍観者と不徹底な探偵役とを兼ね備えたキャラクターで、ヒロイン自身のあまり幸運でなかった人生の範型を、たっぷりと与えられているんですね。ファザコンで、年の離れた男と結ばれるみたいな予想を持っていたけれど、適齢期に4歳だけ年上の男と平凡な結婚をして、一人娘のゆかりが生まれます。夫が10年後に過労死で逝ってしまってから、彼女は単身で自分の人生に向き合わされるのです。友達のような夫婦だったし、もしかして、本当の愛が生まれる前に夫は死んでしまったのかもしれないと思うのです。再生のために、求めた職場は、電話相談室のカウンセラー。生命保険会社が市場調査を兼ねて開いている一部署なので、専門職ではないし、また、それほど深刻な相談を持ちかけられるわけではない。みさおとは、そこの電話相談を通して知り合うことになったのです。失踪したみさお。「レベル7まで行ってみる 戻れない?」「真行寺さん♡」など、残された謎の言葉。職場では相談者と深い関係を結ぶことは禁じられているのです。電話サービスを利用する顧客の身勝手さに特別の感情を持っても、何の益もないからです。味方は、10歳の娘のゆかりと、新聞社の自動車部員を勤めていた父親だけです。悦子の行動は、ハードボイルド小説の主人公の選択する典型的な形であると理解できます。そして、彼女が父親や娘に励まされるという構図は、アメリカ型の女性私立探偵ものに共通する絵柄なんですね。失踪した少女が、特別の存在だったということではないのです。彼女を捜すことが、ヒロイン・ストーリーの主人公としての当然の選択だからです。記憶喪失の男女の文字通りの自分捜しは、女の目が見えなくなったりして、すんなりと前進するわけではないが、少しずつ進展していく。隣の部屋の三枝と名乗るフリーライターの手助けを得て、軌道に乗り始める。一つの中継点が見えてくる。榊クリニックという病院に鍵がある。そして、遠く離れた土地で、去年のクリスマスに起こった「幸山荘事件」のこと。それから数カ月が経過している。村下猛蔵を中心とした複雑な利害関係を持つ人物圏があって、そのうち四人が撃ち殺され、犯人は逃亡中に死んだ。二人は、自分たちが誰かを知る。家族を殺された事件の生き残り、そして第一発見者だった。悲しみは一度で済むはずなのに、記憶を失くしたことによって、同じ悲しみを同じ苦しさでプレイバックしなければならない。それが片方の二日目の終わりだった。もう一層のストーリーは、次の章で、みさおの居場所を明らかにしている。悦子が探し当てたのではなく、悦子の外の視点から、監禁されている様子が語られるのだ。場所は榊クリニックの一室らしい。榊医師は親切だが、村下先生と呼ばれる老人は、鎮静剤をみさおに撃ち続ける。二つのした並行したストーリーは、ここで接点を持ってくるのだった。自分捜しの断片が、ぐろりとひと回りしてリンクする。どちらにもまたがる共通の敵が見えたところで、オーソドックスな社会派ミステリの骨格が、前面に出て来るのだ。けれども、この小説においても、探偵役の捜査は不徹底な結果に終わります。簡単に言えば、「レベル7」という社会派ミステリの構造が、二重底になっているせいで、悦子の役割が外側に振り飛ばされてしまうからなんですね。振り飛ばされて、もう一度、内側に入りこもうとした時、彼女は、自分の母親の秘められた恋について初めて聞かされるのです。母がずっと年下の男と関係を持っていたことを娘に告げるのは、悦子の父親です。こうして、ヒロインの人生は新たな陰影のもとに描き直され、また事件の進行とも絡まり合ってくるわけです。「母親の年下の恋人」は、並行される話の一方に登場していて、みさおが「真行寺さん♡」というメモに残した人物だと明らかになります。しかも「恋人」とは、みさおによる符牒であり、もっと別の意味で使われていると知れた時、事件のミッシング・リングがぴったりとはまってくるんですね。 >> 続きを読む
2019/02/05 by dreamer
引っ越してきた花菱一家が仮住まいとして住むことになったのは、前に小暮写眞館という店だった空き家。そこに1枚の写真が持ち込まれるが、そこには写ってはいけないものが。何となくホラーな出だしだけど、あくまで心霊写真はきっかけ。基本英一の視点だが、テンコやピカ。ミス垣本などの脇キャラが非常に温かい味を出している。1章と2章は心霊写真の話であり、3章と4章は家族に帰結していく流れ。改めて宮部さん上手いと唸らされる出来。 >> 続きを読む
2019/08/02 by オーウェン
これだけの厚さなのにもう何度読み返したか分からない。犯人が鞠子のおじいさんをいたぶる様子に何度も胸を痛めた。情緒に欠陥を持って生まれる人間っていると思う。理解も治療も何の役にも立たないのだ。心ってなんて不確かなんだろう。 >> 続きを読む
2018/10/07 by aki
杉村三郎シリーズ第1弾。まだ探偵になる前であり、今多コンツェルン広報室に勤めていた時代。会長のお抱え運転手が事故で死んだ後、娘たちが事件の犯人を見つけるため、自伝を書く手伝いを三郎がすることに。後を予感させる三郎の幸せな夫婦生活。そして会長の婿に迎え入れてもらったやり方を自覚しながらも、それを探索に使うしたたかさ。そして経過の中で明かされる真実に加えて、ラストで分かる意外な事実。ある意味イヤミスではあるが、この苦い後味は特別な余韻。悪気はないのに三郎が揶揄される始末なのも後の姿を示唆している。2作目も楽しみだ。 >> 続きを読む
2020/10/13 by オーウェン
模倣犯の登場人物、前畑滋子の出てくる物語。彼女は連続誘拐殺人事件に負け、本も出していなかったが、そこにある悔恨の影響もあり、不思議な能力を持っていた等の真実を解明すべく、次第にのめり込んでいく。別荘の絵を見つけた瞬間の描写で私も鳥肌が立ってしまった。彼女がこの事件にどう向かっていくのか、続きが楽しみ。 >> 続きを読む
2018/10/21 by aki
アニメ未視聴。前々から気にはなっていた作品。実際読んでみたが、宮部さんらしいといえばらしい作品。(本題に入るまでの導入部分の描写にも文章を割いて記述している点で)ただ、今回の作品ではこれは必要なのかなと読んでいて疑問を感じた。冒険をする動機が離婚した両親を元に戻すという理由でも、そこまでに至る過程の描写は果たして必要なのかなと読んでいて思った。冒険に入ってからは、ファンタジーらしくなってきたなと思う。一応「ファンタジー」小説なので、これからのワタルがどうなるか読んでいきたいと思う。 >> 続きを読む
2017/12/07 by おにけん
何度目かの再読です。初めて読んだのは高校生の時。15年近く前…と思うと、時の経つのは早いものです。同級生の友達に教えてもらい、初めて読んだ宮部作品でした。その頃は漫画でもたまに読むかなー?ぐらいの読書量で、これなら短編集だから読みやすいよーと教えてもらったんだと思います(^^*そこから宮部さんの作品を読み漁るきっかけになった本でもあります。図書館でふいに手に取って読み始めたら止まらなくなって、懐かしくって久しぶりに読んでみるかーと借りて帰ってからの一気読みです。まぁ懐かしかったと同時にやっぱり面白いし、読みやすい。昔の作品と比べると、最近の作品って冗長になっているのかなーと。(あくまで連作短編集だからサクサク読みやすいっていうのもあるかもしれませんが…。)あと文庫版の表紙絵が荒川弘さんだったことにもびっくり。荒川さんが有名になった今だから言えることでもあるけど、そう考えると…やっぱり時の流れを感じずにはいられませんね(^^*高校生当時読んだ時は"中学生"なんてもっと子供だなーって感じてたけど、年代が変わると感じ方も違うようです。この子たちだいぶ大人だよー。しっかりしてる。私が中学生の時なんてもっと子供だった記憶しかありません(笑)改めて読んでみて手元に残しておきたいなーと思えた作品でした。 >> 続きを読む
2016/10/06 by starryeyed
過去に一度読んだはずなのに、どんな話だったかほとんど覚えていなかった。南町奉行所の同心で臨時廻りの井筒平四郎が関わりを深めた鉄瓶長屋で起こる事件を中心とした物語。長屋で起きた殺人をきっかけにして差配が若い佐吉にかわってから、なぜか店子が次々に減っていく。謎が深まったところで下巻へ。茂七親分の名が出てきてうれしかった。米寿を迎えた茂七の事件簿のようなものをすべて記憶している、おでこというあだ名の少年がかわいい。このシリーズはつまり、『初ものがたり』の次の世代の話ということかな? >> 続きを読む
2017/08/30 by Kira
この宮部みゆきの「R.P.G.」は、著者の初の文庫オリジナル長編。表題の意味は、ロール・プレーイング・ゲームの略。建売住宅の工事現場で発見された男は、ネット上で疑似家族の「お父さん」を演じていた。その数日前、男の「友人」である女子大生が、何者かに殺されており、二つの事件は同一犯人によるものと判断した警察は、父親が不審人物と接触していたことを目撃したという娘の証言を基に、疑似家族のメンバーを呼んで、面通しをすることになったのだが-------。昔ながらの、お互いを気遣いあう関係や、現代に特有といえそうな、荒廃した関係など、「理由」でさまざまな家族の形を描いた宮部みゆきは、この作品で、二つの関係のありようを拮抗させ、我々読み手を意外な結末へと導いていく。「模倣犯」に登場した武上悦郎と、「クロスファイア」に登場した石津ちえ子が共演し、ほぼ取調室でのみ展開する物語は、まるで舞台劇のような印象で、アガサ・クリスティー的世界を連想させる。この作品は、現代の語り部たる宮部みゆきの語りの技巧が、素晴らしい冴えを見せる秀作だと思いますね。 >> 続きを読む
2018/10/06 by dreamer
杉村三郎シリーズ第3弾。三郎がバスジャック事件に巻き込まれるとこから始まり、そこから事件後の経緯が三郎をはじめとした周りの人間に波紋を呼びかける。結局のところ自分からしたら善行なのに、他人にとってはた迷惑でしかない行為。そういった小さな悪意が取り返しのつかないほど肥大していく様が恐ろしい。起きた事件やその後。そして三郎のおせっかい焼きな性格が、ほとんど救いのない結末へと繋がっていくのは驚く。続編では噂されている通りに探偵という職業へと鞍替えしていくのだろうか。 >> 続きを読む
2020/11/02 by オーウェン
再読。伯父が起こした交通事故を調べ始めた主人公。そこから不可解な死亡事件が重なっていることを知り、次に狙われる女性を助けるべく駆け回る。犯人から接触があり、終盤には行方不明である主人公の父親について判明する。最初から最後まで盛り沢山で、途中からは一気に読めてしまう本。トリックは強引というか、なんでもありみたいなものだが、楽しく読めた。本書でサブリミナル効果というものを知った。初めて読んだ時からだいぶ経つが、けっこう覚えているもんだ。それほど濃縮された内容だったんだと改めて思った。 >> 続きを読む
2018/10/06 by 豚の確認
第五部は、被害者家族、警察、マスコミ、犯人(網川)の視点を通して、事件を見つめる様子とそれぞれの人生に落す影を描いていました。犯罪が一度起こると、事件が解決しても、被害者の生活はもう元には戻らない。哀しみは、変わらず残る…やるせなさを全面に感じる中、有馬義男の正義感、勇気と優しさには救われました。「本当のことはどんなに遠くまで捨てに行っても必ず帰り道を見つけて帰ってくる」そして、塚田真一の成長にも救われました。「世の中には、悪い人間がいっぱいいる。俺やおまえみたいに、辛いことがあって、一人じゃどうすることもできなくて、迷って苦しんでるような人からも、何かをしぼりとろうとしたり、騙そうとしたり、利用しようとする人間が、いっぱいいる。 だけど、そうじゃない人だって、やっぱりいっぱいいるはずなんだ。だから、おまえはそういう人を探せ。本当におまえを助けてくれる人を。」読み終わったら、すぐ映画を観ようと思っていましたが、内容が重すぎて、すぐに観る気にはなりません…。しばらくしてから、観ようと思います。 >> 続きを読む
2018/10/28 by うらら
まず、これはとてつもなく長い話です。ついでにこのレビューもとてつもなく長いですが、ともかく、通常の小説のページ数×3冊分にも及ぶ大長編です。ところが、その長い長い話の根幹はただこれのみです。不登校の中学生が1人、学校敷地内で死んでいた。フィクションの話とはいえ、人の死をただこれのみ、と言ってしまう当方の感性ももう狂っているかもしれませんが、この大長編の入口はこの1文で十分なものです。しかし、昨今のニュースやネットで報じられる他人の死などというものは、この程度のものではないでしょうか?この大長編は、この他人には1文にしかならない事件の真実を関係者、この物語では中学生たち、が追求し、最終的に学校内裁判を行う過程と結果を描いたものです。杉村三郎シリーズにも共通しますが、こちらも宮部先生の作品【らしさ】が十二分に堪能できる物語です。宮部作品の大きな特徴は、きっかけとなる事象は我々のような他人にとっては「よくある」事故や事件に過ぎない点だと個人的には思っています。「誰か」では自転車による接触死亡事故から事が始まりました。今回は既に述べた1人の中学生の死です。どこかで見たことのあるニュースです。猟奇的であったり、センセーショナルな連続殺人というわけでもありません。この件を覚えているのはせいぜい2分程度でしょう。しかし、その死が身近で起こったとしたら?身近な人の死という事象によって引き起こされる周囲の人間の心の動き、行動、そこから引き起こされる別の悲劇…。将棋倒しのように巻き起こる様々な心の動きと行動を、これでもかと丁寧に丁寧に書いてくれるのが宮部先生の作品の醍醐味であると思います。そこには無駄な端役は一切存在せず、どんなに作中でクラス内で地味で存在感のない人間だと描写されていても、その人間にも個人の思考があり、その人物が行動することによって別の人物の行動や新たな事件に結びついていく…、非常にリアルです。全ての事象は幾人もの人間の心による行動の集合体だと、宮部作品を読むといつもしみじみと感じる事ですが、今作もまさにその事を十分に感じさせてくれるものでした。さらに凄いのは、死んだ当人自身が謎として最後まで土台として生きていることです。推理小説で言ったらトリックの部分がこの死んだ当人という事になるでしょうか、話の最初から死者なのですから、本人が一体どのような理由で死んだのか、そもそも彼とはどういう人間だったのか?何を考えていたのか?これが最後まで気になって気になって仕方ありませんでした。世の中でいえばよくある事、かもれませんが、当事者たちにとっては唯一無二な事件であり、自分は孤独だと思っていたとしても、周囲にはその死で動く人間達がいるのだと、そしてそれは片手で数えられる程度の人数ではなく、各人の心情の波は周りをどんどん浸食していくと、そういう話だと当方は感じました。だからこそのこのページ数だと、そう言えるのではないでしょうか。読むのに時間はかかりますが、読んで損は無い小説だと思います。 >> 続きを読む
2015/08/08 by 伯方塩
ミステリーの短編集は切れ味がいいのが好み。この本は私の好みにぴったりだ。決して暗くなくドロドロしていない。ちょっと軽めのタッチだが、ミステリの仕掛けはバッチリだ。短編集はいろいろ楽しめるからいい。どれもよく考えられてるなあと思う。著者の違う一面を知った。 >> 続きを読む
2019/12/25 by KameiKoji
【怖い絵本だよぉ。子供が「これ買って!」と言ったらお母さんはどうするのだろうか?】 絵本なんですけれど、じわっと怖いです。 大人向けの絵本ということなんでしょうかね。 本文は大変短く、ここで全文引用することも軽くできそうです。 とは言え、それは読んでいただくことにしましょう。 この本、書店ではやっぱり絵本コーナーに置いているんでしょうか? そうすると、子供さんが絵本コーナーでこの本に目を留めて、「お母さん、これがいい」なんて言うこともあるのでしょうか? お母さんは、「どれどれ?」とこの本を手に取ってパラパラと内容を見てみると思うのですが、そこで絶句することでしょう。 「〇〇ちゃん、これは恐い本だから他のにしましょうね」なんて言いそうです。 でも、この絵本、ぬいぐるみの絵が描いてあったりします。 まぁ、中の絵はちょっとおどろおどろしいところもあるんですが、それでも、そんなに怖い絵というわけでもないかもしれません(特に、ちょっと見では)。 だから、字がまだ読めない小さい子供さんだったら、もしかしたら絵に惹かれて、「やだー。これがいいの~。」なんて言うかもしれません。 お母さんどうする? 内容がまた内容なので、「教育的に良くないわ……」などとも考え眉間に皺を寄せてしまうかもしれません。 強引にあきらめさせるか、仕方なく買って帰るか。 買って帰ったお母さんは、その夜、当然のことながらこの本を読んで聞かせなければなりません。 「はやく読んでー」と催促されることでしょう。 読むのか? これを読むのか? 読み聞かせはあっという間に終わるかもしれませんね。 でも、この本で子供は寝付かないように思います。 それどころか、その夜、うなされてしまうかも……。 そんな怖い絵本なのでした。 書店の皆様、この絵本の置き場所にはどうぞ工夫をされてくださいませ。読了時間メーター□ 瞬殺 >> 続きを読む
2020/11/19 by ef177
主人公は、22歳の古橋笙之介。上総国搗根藩で小納戸役を仰せつかる古橋家の次男坊。大好きだった父が賄賂を受け取った疑いをかけられて自刃。兄が蟄居の身となったため、江戸へやって来た笙之介は、父の汚名をそそぎたい、という思いを胸に秘め、深川の富勘長屋に住み、写本の仕事で生計をたてながら事件の真相究明にあたる。父の自刃には搗根藩の御家騒動がからんでいた。ひと言でいえば、宮部みゆき時代物上級者向け。いきなりでは冗長とも捉えかねない物語の結末までの伏線が、読む側を選ばせる本。宮部が何を語りたかったのか。他の時代物と同様にクライマックスに近づくに従い、登場人物たちは躍進し、物語は一気に真実へ走り始める。その“徐走”を楽しめるか、楽しめないかが、読む側を選ぶと思った所以。無駄は何もないのだが、映像化して短絡的に楽しむ人情話の類ではない。宮部は時代物で登場人物を甘やかさない。弱者は敗者として、善者はお人好しとして。『どれほど人としての正道を歩もうと、志そうと、所詮力なき者は滅ぶしかない。世を統べるのは力であって、善ではない。忠義でも、誠意でもない、無残な物語』宮部は作中、人生についてこう述べる。また、残酷にも主人公笙之介に、敬愛する父が自刃しなければならなくなった要因をつくった贋作師にこう述べさせる。『太平楽に己を恃むところだけを信じている、お前に、真実とやらを教えてやろう』澄み切った心だけでは、世間は渡れないのだ。だからこそ、笙之介を囲む長屋の住民や、和田屋和香らの人情味に心が洗われるようだった。この感覚を味わわせたいがために、著者は長い長い物語を紡いだのだと思うと、脱線気味のそれぞれのエピソードにも愛嬌が感じられ、ふむふむと感じさせられた。『未だ人の残酷さを、裏切りの醜さを、嘘の悲しみの神髄を知らず、心底打ち据えられることもなかった』笙之介には、酷な結末になってしまったが、だからといってなんであろう。笙之介は居場所を己が力で見つけた。門閥や、係累に依ることなく、ただ己が力で。著者は、何にも勝る精神の尊さよりも、力や財やそういった現実的な力が人々の心を邪なものに変えていくという現象を、そしてそれを受け入れて尚、峻烈な心を持つものに幸福はやってくるという、寓話じみた結句を読者に投げかける。それを右にするか左にするか、上にするか下にするか、それは読んだ人次第だ。 >> 続きを読む
2014/08/05 by 課長代理
2018/1 14冊目(通算14冊目)。冒険の旅の完結編。ワタルの願い事は「やっぱりね」という感じ。これだけ仲間ができて、自分の個人的な理由を押し通すことはできないなと考えていたからそれは予想通りの結果で良かったと思う。中・下巻が冒険ものとしてぐいぐい読ませる文章だったのでやっぱり上巻の第一部の現実パートは必要なのかなと思ったり。この作者の方の作品は「ソロモンの偽証」といい、本題に入る前の前フリが長いような気がします。それも良さと言えばそれまでですけど。機会があればアニメ版も鑑賞したいと思います。 >> 続きを読む
2018/01/24 by おにけん
藤子不二雄の夢カメラ(違)
2018/07/21 by motti
嵐の夜に偶然出会った記者の高坂と16歳の慎司。そして慎司は打ち明ける。自分は超能力者であり、周りの人間の過去が読めると。宮部さんの初期作品によくみられる超能力者の物語の一つ。ただ強調させるのはその能力ではなく、異端児という部類に分けられる。むしろ苦悩を浮き立たせることにある。慎司と共にもう一人の能力者も現れ、高坂に送られれる脅迫状と共に事件が起きる。ラストになると、不思議なタイトルである意味もより強く響いてくる。 >> 続きを読む
2018/11/15 by オーウェン
【宮部みゆき】(ミヤベミユキ) | 読書ログ - 読書ファンが集まる読書レビューサイト(著者,作家,作者)
ページの先頭に戻る
会員登録(無料)
レビューのある本