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千石英世

著者情報
著者名:千石英世
せんごくひでよ
センゴクヒデヨ
生年~没年:1949~

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      白鯨 モービィ・ディック
      カテゴリー:小説、物語
      5.0
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      • ハーマン・メルヴィルの「白鯨」は、ジョン・ヒューストン監督によって映画化され、異常なまでのしつこさで、幻の白鯨"モービィ・ディック"を執念の塊となって追いかけるエイハブ船長を、グレゴリー・ペックが迫真の演技で演じていたのが、強烈な印象として残っています。

        そこで、新訳として出ている講談社文芸文庫版(上・下巻)の「白鯨 モービィ・ディック」を、じっくりと読んでみました。

        実際に、原作を読んでみて、私がそれまで抱いていた物語とは、まるで別の代物であることに驚いてしまいました。

        とにかく、本のページを開いた途端に目に飛び込んでくる、夥しい数の鯨という語を含む名文抄なんですね。
        「さて、エホバすでに大いなる魚をそなえておきてヨナを呑ましたまえり(旧約聖書・ヨナ書)」とか、「かの巨大なる怪物は人為的に作られたものであり、共同体国家と呼ばれたり国家と呼ばれたりする。だがこれは一個の人工人間にすぎない」といったように。

        これらが、ただの飾りではないことが、本文を読み進むにつれて、次第にわかってくるんですね。
        つまり、今まで海洋冒険小説だと思っていた「白鯨」は、鯨をめぐる稀有な博物学の書であり、旧約聖書と密接な関連性をもつ宗教的な書であり、アメリカ史の暗部に触れる政治的なテキストでもあったんですね。

        例えば、白い鯨とは何か? なぜこの鯨は「白」でなくてはいけなかったのか?
        白衣、白熊、白鮫、白馬、白子、白亜の塔、白雪、銀河-------。

        自然界と人間界にあふれる白のイメージから、白くて巨大で凶暴なものへと読み手である我々は、導かれるんですね。
        もしかして、これは白人が支配するアメリカ合衆国という国そのものではないのかと。

        一方、捕鯨船のほうはどうかというと、船の名前は、白人の急襲を受けて絶滅したアメリカ先住民の部族の名に因んだ「ピークオッド」なんですね。

        そこには、世界中のあらゆる辺境の土地から集まった水夫が、乗り込んでいる。
        また、語り手イシュメールが、「心の友」と呼ぶクイークェグは、異教徒の蛮族の出身なんですね。

        白鯨とエイハブ船長が率いる船の闘いは、こうして思いもよらなかった多重的な意味を次々と帯び始めていくことになる。

        このような、ワクワク、ドキドキの裏読み、深読みが無理なくできるのは、「白い鯨のなかへ」という有名なハーマン・メルヴィル論の著者である千石英世の新訳と解説によるところが大きいですね。

        岩波文庫や新潮文庫で読まれたという方がおられたら、是非、この講談社文芸文庫版で読み直して欲しいと思いますね。
        今までの認識が一変するはずですから。

        >> 続きを読む

        2018/08/04 by dreamer

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