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北村薫

著者情報
著者名:北村薫
きたむらかおる
キタムラカオル
生年~没年:1949~

この著者の本を読んでいる会員ランキング

このランキングは1日1回更新されます。
      月の砂漠をさばさばと
      カテゴリー:小説、物語
      3.8
      いいね!
      • 母と娘のささやかで優しい日常がつまった短編集。
        とにかく可愛いんだけど、ふとした瞬間にひんやりとしたさびしさとか切なさが見え隠れするあたり(そしてそのさびしさや切なささえあたたかい何かに包まれてるあたり)、さすが北村薫というか…

        とはいえ、たぶん言われなければ(というか作者名が記載されてなかったら)北村薫が書いたとは気づかなかったです。
        この人、男の人だと知ったときも驚いたんだけど、こういう話も書くんだとまた驚かされてしまった…(笑)

        個人的には表題作の月の砂漠をさばさばとが一番好きでした。

        >> 続きを読む

        2016/02/15 by kon

    • 他5人がレビュー登録、 13人が本棚登録しています
      鷺と雪
      カテゴリー:小説、物語
      3.3
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      • 第141回直木賞受賞作品。
        シリーズものらしい。
        知らずに読み始めたので説明不足な雰囲気満載w
        時代背景も実際の資料をもとに作者が書いているのがミソみたい。
        で、ベッキーさんシリーズらしいんですがあまりカリスマ性も魅力もないのでズッコケたw
        順当にきていて順番的に直木賞をとらせてもらったような気のどくな印象を持ってしまいましたが...。
        違いますかね?そういう感想っていうのは...。
        ラストに含みをもたせてシリーズはつづく...。
        なんか次のほうがおもしろそうじゃね?
        >> 続きを読む

        2018/07/07 by motti

    • 他3人がレビュー登録、 7人が本棚登録しています
      六の宮の姫君
      カテゴリー:小説、物語
      4.0
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      • 芥川龍之介「六の宮の姫君」にまつわる書物探索。
        以前「太宰治の辞書」を読んで、このシリーズの魅力にハマってしまった。
        主人公はまだ大学生。
        だが、書物に関する謎解きは、主人公の年齢にかかわらず、面白い。
        芥川と菊池寛ら文豪との関係を、主人公とともに参考文献から読み進めていく面白さ。
        自宅に居ながら、手っ取り早く多くの文献をのぞき見できる気楽さ。
        たまらない!

        この1冊で、他の作品への興味も沸く。
        作品中に出てくる「近代日本文芸読本」。
        これは、凝り性の芥川が心血を注いで編集した、5冊148編からなる文芸作品アンソロジー。
        …読みたい!!
        いつも利用する図書館になかったので、県立図書館に予約。
        近いうちに手元に届く。
        私の力じゃ、難解なものも多いだろう。
        だけど、100人の読者がいれば100の物語が生まれる。
        「小説は人に、同じ解答を与えはしない。」
        この小説の受け売り文句だが、これからもこの気持ちをもって、本に向き合っていこうと思った。
        >> 続きを読む

        2016/05/30 by shizuka8

      • コメント 1件
    • 他2人がレビュー登録、 7人が本棚登録しています
      9の扉
      カテゴリー:小説、物語
      4.0
      いいね! ooitee
      • リレー形式の作品だけど、基本は独立した作品。
        そのなかで次の作家にお題を与えるという趣向。

        難しいと思うのだが、そこは力のある作家が揃っているの心配なし。
        表紙に載っている作家は皆代表作を持っている売れっ子だから。

        20~30ページほどなのですごく読みやすいし、その中で急激な変化が起こる作品もある。

        貫井さんから歌野さんへの連作というサプライズもあるし、ラストの辻村さんから冒頭の北村さんへと繋がるというのには納得。

        他にも法月さんの真田幸村だったり、麻耶さんの意表を突く趣味だったり。
        大きく外れがないというのは、選ばれた作家がいかに優秀かよく分かる。
        >> 続きを読む

        2018/03/30 by オーウェン

    • 他1人がレビュー登録、 5人が本棚登録しています
      盤上の敵
      カテゴリー:小説、物語
      4.2
      いいね!
      • 再読。
        「日常の謎」派の代表的存在である北村薫が手がけた、殺人事件が発生する本格ミステリ。
        「あの北村さんが、こんな邪悪な物語を書くなんて!」という驚きとともに迎えられた作品であるが、北村は「覆面作家」シリーズでもエグい作品を刊行しており、個人的にはそんなにびっくりしなかった。
        北村がエラリー・クイーンの大ファンであることはつとに知られているが、本書ではクイーンやカーが発想したかのような大トリックが仕組まれており、北村がその本来の持ち味を発揮した作品であると認識している(「円紫さん」シリーズは仮の姿であると邪推している)。
        本書の中盤以降に登場する「兵頭三季」という女性は、古処誠二「少年たちの密室」の「城戸くん」と双璧をなす鬼畜キャラである。
        さて、現実社会でも兵頭のようなサイコパスに遭遇することがあるが、このような人物に会った時、決して攻撃してはならない。
        身を敬して遠ざけ、ひたすら無視するに限るのである。
        >> 続きを読む

        2019/06/08 by tygkun

    • 他1人がレビュー登録、 6人が本棚登録しています
      スキップ
      カテゴリー:小説、物語
      3.8
      いいね!
      • ―まどろみから覚めたとき、17歳の<わたし>は、25年の時空を軽々飛んで42歳の<わたし>に着地した。

        高校・大学時代は恋にときめき、愛される喜びを得たり、友人との関係が上手くいかないことに真剣に悩んだり。
        社会人になってからは、慣れない仕事に失敗しながらも一つ一つスキルを身につけていきました。
        社会人1年目~2年目は、仕事、プライベート共上手くいかないことが多かったな。
        お局にもイジメられましたw
        仕事の経験値を積み、合コンで旦那と出会い結婚。
        いつの間にかアラサーで、人間関係のあしらい方を覚えたりなんかして、不満はあるも仕事に慣れた分余裕を持って会社に行く毎日となりました。

        これ、私の年表です。
        主人公の一ノ瀬真理子はこれよりもっと長い人生を"スキップ"してしまいました。
        この間の経験値が丸々ない状態です。

        目が覚めたら娘がいて、夫がいて。
        それだけでもパニックなのに、大好きな両親はすでに亡くなっていました。
        助けを求め大声を上げて泣きたい、そんなことができる存在がいないことの辛さに苦しくなりました。
        また、外見も大きく変わっています。
        眠る前まで見ていた、なんでも似合うきれいな顔や肌、体型が、目を覚ますと中年の体型に。
        目の前にいる娘は同じ17歳、素敵な服を着こなします。
        ツラい・・・ツラすぎる・・・・・・・・・
        時空を超えなくてもだんだん付いてくる脂肪はツラいというのに。

        ―誰か、教えて下さい。時は、取り返すことが出来るのですか。

        始めの衝撃こそあれど、真理子は今の状況を受け入れ、穏やかに学校生活が続いていきます。
        全体的に優しい雰囲気ありますよね。
        生徒たち一人ひとりへ真剣に向き合う真理子自身も、教師として成長していってるようでした。
        学級日誌のコメントがあたたかい。
        ただ、いくら夫が同じ職業とはいえ、教える側として無難にこなしていることに違和感を感じました(・_・;)
        中身17歳の高校生が、42歳のベテランと同じようにこなしてしまうのでは、立場ないなぁ。

        彼女を取り巻く環境が、学級崩壊や、DV夫のいる家族でなくて本当に良かったです。

        大きな展開はなく、いつか元の時間に戻れるんじゃない?と楽観視してしまうような穏やかな日々を送ります。
        いやいや、そんな上手くいくはずがない、そんな不安も抱えながら。

        エピローグは、真理子の気持ちの一つ一つが突き刺さり、苦しさで本を持つ手が震えました。
        こんな残酷なことってない。
        なのに読了後は、不思議なくらい爽快感もありました。

        おもしろい本に出会うことは多くても、この本のように記憶に残る本というのはあまりないように思います。
        いい本に出会えて嬉しい。

        この本をおすすめしてくださった課長代理さんに感謝x2です。
        私一人で読書をしていたら絶対に出会えていません!
        ありがとうございました(*^_^*)
        >> 続きを読む

        2015/03/16 by あすか

      • コメント 21件
    • 他1人がレビュー登録、 8人が本棚登録しています
      タ-ン
      カテゴリー:小説、物語
      4.5
      いいね!
      • おもしろかった。

        こちらとあちらのやりとりを通して少しづつ確認しあっていく過程がいい。

        設定もおもしろい。スキップにもある何か青春的な要素がある。とても前向きになれるような。

        ロマンチックでよかった。
        >> 続きを読む

        2017/06/24 by Matching

    • 他1人がレビュー登録、 4人が本棚登録しています
      鷺と雪
      カテゴリー:小説、物語
      4.0
      いいね!

      • 北村薫の第141回直木賞受賞作「鷺と雪」を読み終えました。

        エドガー・アラン・ポーの「モルグ街の殺人」の昔から、ミステリの歴史は名探偵の歴史でもあったと思う。
        そして、ミステリの名作には必ず名探偵が登場し、名探偵の登場するところには必ず名作があった。
        私が好んでミステリを読むのは、実は魅力的な名探偵にめぐり逢うためだと言ってもいいかも知れません。

        この「鷺と雪」の著者・北村薫は、名探偵づくりの名手だと思う。
        「空飛ぶ馬」で初登場した落語家の春桜亭円紫、「覆面作家は二人いる」の美貌の令嬢・新妻千秋、「冬のオペラ」の巫弓彦など、いずれもシャーロック・ホームズやエルキュール・ポアロに負けない個性的な名探偵だ。

        そして、もう一人忘れてならないのが「ベッキーさん」こと別宮みつ子。
        学者の家に生まれ、アメリカの大学を卒業したが、帰国して花村家のお抱え運転手になった。
        「才色兼備という言葉が制服を着たような」女性で、文武両道の達人なんですね。

        花村家の当主は、財閥系商事会社の社長。娘の英子は、ベッキーさんの運転するフォードで女子学習院とおぼしき学校に通うという、絵に描いたような上流階級のお嬢様。
        そして、この物語は、英子の一人称で進行する。

        この本は、著者の「街の灯」「玻璃の天」に続くシリーズ三作目で、昭和十年前後の華族社会を背景にした三つの話が収められています。

        多くの人でごった返す伯爵邸から、弟の子爵が忽然と姿を消し、浅草でルンペンになっていた「不在の父」。

        中学受験を控えた和菓子屋の息子が、深夜の上野公園で補導されたが、本人はその理由を明かそうとしなかった「獅子と地下鉄」。

        子爵令嬢が、服部時計店でカメラを買って試し撮りしたところ、外国にいる許婚者の姿が写っていた「鷺と雪」。

        日常的でしかも奥深い事件の謎が、ベッキーさんの推理によって鮮やかに解明されていく過程の面白さもさることながら、背景となる上流社会の描写に精彩があって、読んでいるこちらまで、ちょっとセレブな気分になれるんですね。

        なんとも贅沢なミステリですね。

        >> 続きを読む

        2018/10/23 by dreamer

      • コメント 1件
    • 他1人がレビュー登録、 6人が本棚登録しています
      坂木司リクエスト!和菓子のアンソロジー
      カテゴリー:小説、物語
      4.0
      いいね!
      • 基本的に、和菓子が好き。
        年に、数回ではあるが、買って帰宅し、家族で食べることもある。
        知らないお菓子もたくさんでてきているが、どれも、美味しそうでたべてみたいと思う。
        やっはり、和菓子なので、ふんわり・やんわりとしたストーリーが合うように思う。
        上手いな~という作品も結構ある。

        やはり、あんこ、それもつぶあんが好みなので、そこにフォーカスしてもらったりすると、もっと楽しめるかも・・・などと、欲張ったことも考えてしまった。
        饅頭が食べたくなった。
        >> 続きを読む

        2015/07/16 by けんとまん

    • 他1人がレビュー登録、 8人が本棚登録しています
      空飛ぶ馬
      カテゴリー:小説、物語
      4.0
      いいね!
      • 探偵役が真打の落語家円紫、主人公は女子大生の私。北村薫さんのデビュー作だそうだが、もう面白くて止まらなくなった。
        何気ない日常の謎、ありふれた中に混じって気が付く不思議な出来事が、胸がすくように論理的に、説明しながら絵解きをしてくれる。「私」をとりまく家庭も学校もいたって平和で、三人の友達も個性は違っても雰囲気が暖かい。
        ほのぼのとした江美ちゃん、落語好きの私。ズバリと飾り気のない会話をするが、心根の優しい正ちゃん。
        落語の演題がいろいろ出てきて、少し噺の中身も紹介してくれるのが嬉しい。



        短編が5つ

        織部の霊
        最近古田織部のエピソードを読んでいたので、最初に出てきた名前でビックリした。
        大学の先生がまるで覚えのない織部の夢を見ると言う。

        砂糖合戦
        円紫さんと喫茶店に入ったら、女の子の三人組が砂糖壷を何度もまわしていた

        胡桃の中の鳥
        円紫さんが蔵王で研究会を開くので誘われた、友人と三人で旅先を蔵王にした。そこの宿で可愛い女の子を見かけた。

        赤頭巾
        絵本作家の女性と知り合いになった、その家の前の公園の麒麟の前に、時々赤頭巾が立っているという。

        空飛ぶ馬
        働き者の青年が、店先に飾っていた木馬を幼稚園に寄付をした。だが、一日その木馬が消えてしまった夜があるという。


        どれも些細な謎かもしれない、私なんか?が頭の上に出るようなことがあってもまぁいいかと流してしまっている。そのくらいちょっとしたことを、円紫さんが解き明かす。ほのぼのとして筆が暖かい。「空飛ぶ馬」はなんだかほろっとしてしまった。

        勢いに乗って、シリーズの4作「夜の蝉」「秋の花」「六の宮の姫君」まで買ってそろえてしまった。

        北村さんは博識で、文章も味わい深い。引用されてい本まで読みたくなる。それもいつかと思っている。






        比喩や抽象は現実に近づく中断であると同時に、それから最も遠ざかる方法であろう。現実に苦しみに思いを致すときにそう考えないわけにいかない。

        「元気?」
        声を上げながら近づく私たちに、江美ちゃんは二人分――両手を胸の前に広げて、夜を迎える前に現れた気の早い星の輝きのように振ってみせた。

        「そういえば――」
        「何よ」
        「稲花餅、食べるぞ」「あら、忘れてた。感心するわね、凄い執着」
        「執着のないところに達成はない」
        笑ってしまう正ちゃんのせりふより


        知で情を抑えることはできるのに、その逆は出来ないのです。そこが知で動く人間の悲しさではありませんか。そういう意味で知は永遠に情を嫉妬せざるを得ないのでしょうね
        「赤頭巾」解決後の円紫師匠の言葉


        ごまめさんのレビューでこの本に出会えました。田舎の家にいた頃学校から帰ると誰もいませんでした。ラジオをつけて宿題をしながら聞いていたのが丁度落語の時間で、あれはこういう噺だったのかと気がついたものもありました。、そのうち繁盛亭に行ってみようかと思いましたが、こうして片足突っ込み抜き差しできないくらい深入りするのかな、用心しなければと思っています。
        >> 続きを読む

        2015/05/29 by 空耳よ

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      夜の蝉
      4.0
      いいね!
      • 「円紫師匠と私」シリーズの第二作目「夜の蝉」「、最初に読んだのが一作目の「空飛ぶ馬」
        二番目にに読んだのが三作目の「秋の花」、次に読んだのが五作目の「朝霧」、
        そして今回が二作目の「夜の蝉」、最後は既に手元にある四作目の「六の宮の姫君」、
        こんな飛び飛びの読み方する人も稀では・・・エヘン。

        でも、主人公の「私」が、学生だったり、社会人だったり、読んでいて違和感がないのは
        仲のいい存在の春桜亭円紫さんが、案内係のごとく常に傍にいてくれるからか・・・・。

        この「円紫師匠と私」シリーズの好きなところは、ミステリーと言われながら
        死んだり殺したりが無くて、日常のちょっとした不思議な出来事に疑問を持ちながら、
        師匠と一緒に謎解きにあたるところ・・・そこには伏線として落語の演目がでてくる。

        今回は「山崎屋」、「鰍沢」、「つるつる」ですが、でもすべて上方では馴染みの少ない
        江戸落語ばかりで、師匠の言葉で説明されるまでまったく検討もつかず、
        ちょいと遠い存在になった「夜の蝉」でおました。


        追伸、表紙の絵の主人公、結構好きなタイプでおます。
        >> 続きを読む

        2015/08/31 by ごまめ

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      秋の花
      カテゴリー:小説、物語
      3.3
      いいね!
      • シリーズ三作目で初めての長編、最大の謎を残して死ぬ人がでる。ミステリらしいミステリになっている。

        「私」は大学の三年になった。御馴染み正ちゃんが中性的な魅力で賑わしてくれる。

        「フロベールの鸚鵡」という本が出ましてね、その中に「紋切り型辞典」のパロディが入っています」
        「おやおや」
        「その紋切り型を引用するのは俗物の証明みたいなものだけど、ルイ・ブリエというフロベールの友達は胸のない子にこういったそうよ。《心のすぐそばまで近寄ることができていいじゃないか》」
        「そいつ、人がいいか、もの凄く嫌な奴かどっちかだね」(引用)

        《えぐれ》と私に言っておいて正ちゃんはあっさりと片付ける。


        近所に仲のよい二人組がいた。私は小さいときから知っていて、今では後輩に成長した。落語の「お神酒徳利」のようにいつも一緒でニコニコして入学の挨拶に来てくれた。津田真理子と和泉利恵。
        百舌の声がするようになった頃、利恵の蹌踉とした、魂が抜けたような姿を見る。
        夏休み前、恒例の大イベントだった文化祭の行事が中止になった、生徒会が主催する行事にこの二人も参加していたのだ。私も生徒会でその慌しさを経験していた。
        だが、津田麻里子が屋上から転落して死亡。文化祭は取りやめになった。
        そのショックからか利恵は不登校になり自分の中に閉じこもってしまった。

        利恵は幼い頃、秋海棠が咲く麻里子の家の垣根のところまで三輪車できて呼びかけて友達になった。揃って高校生になったとき、二人の軌跡は断ち切れてしまった、利恵の喪失感は絶望に届くほど深い。


        ポストに他殺を匂わせる教科書のコピーが投げ込まれた。麻里子の棺に入れたはずの教科書だった。

        私は円紫師匠の智恵を借りて謎を解いて利恵を救いたいと思う。

        犯人は誰か、どうして真理子は落ちたのか。


        私は思う

        ――「アヌイ名作集」のアンティゴーヌも「ひばり」の乙女ジャンヌも大人になる前にその生を終える。それでは生きながらえた時、少女の純粋はどうなるのか。しょせん、純粋は現実のあやうい影に過ぎないのか

        私の誕生以前に生まれた人の生は、見えようのない部分があるだけに無限に過去に広がっているように思える、しかし津田さんにはそれがない私は生の有限を突然目の前に提示され、それに戸惑ったのだ――

        卒論のテーマは私に決められた運命のように《芥川》と口に出す頃になった。作家論は誰を論じても自分を語ることだと言う意識がある。
        円紫さんに悩みと疑問をぶつけてみる。

        ――「ずっとこちらですか」ふと円紫さんがいった。
        人は生まれるところを選ぶことは出来ない。どのような人間として生まれるかも選べない。気が付いたときには否応なしに存在する《自分》というものを育てるのはあるときからは自分自身であろう。それは大きな不安な仕事である。だからこそこの世に仮に一時でも、自分を背景ぐるみ全肯定してくれる人がいるかもしれない、という想像は、泉を見るような安らぎを与えてくれる。それは円紫さんから若い私への贈り物だろう。
        ここは、未来を絶たれた、私よりもさらに若い子の町でもある。――

        珍しいことに扉に秋海棠の写真がある。文中の二人の少女が出逢った垣根の根元に咲いていた花である。淡いピンクの瑞々しい花で、薄紅色の細い茎が枝分かれして小さな花が下がり気味に咲く。
        昨年9月に三千院に満開の秋海棠を見に行った、私もなくなった友を偲ぶ花なので秋の初めになると落ち着かない。
        木陰や水辺を好み、ぎゅっと握り締めると 掌の中で水になって流れ出てしまいそうな花だが、文中では人を思って泣く涙が落ちてそこから生えた花だと書いている。
        北村さんは花の名前にも詳しい。

        この物語は、二人の少女に関わった私の後日談だが、二人の子供を持った母親の話でもある。悲嘆にくれながらも残った少女をいたわる、秋海棠は娘を亡くした母親の心を象徴する花でもある。
        >> 続きを読む

        2015/06/05 by 空耳よ

      • コメント 9件
    • 他1人がレビュー登録、 6人が本棚登録しています
      朝霧
      カテゴリー:小説、物語
      4.3
      いいね!
      • この本は、ページ数が少ない割りにデータ数が多くてなかなかレビューか書けなかった。引用して残しておきたい部分も多い、買ってきたので本棚に保存して、折にふれ取り出して読み返せばいいと思うが、書き残す作業で少しは残る記憶が鮮明であって欲しいと思う欲もある。

        これで「円紫師匠と私シリーズ」が終わる。たまたま読んだ本だったのに随分影響を受けた。読書の幅がすこし広がった気もする。
        子どもの頃から本好きできたが、なぜこんなに読むべき本を読み残していたのか、ここで気がついた。
        読書に向かう姿勢を見直すことが出来たということが、このシリーズを読んで一番感謝するところだ。
        博覧強記で知られる北村さんの文章が、温かく地味豊かだということが、読み続けるもとになっていてとても後味がいい。
        最近「太宰治の辞書」が出たが、図書館に予約した、随分先になるようだ。


        山眠る

        《私》は卒論を提出して、卒業後の研修プログラムも出来、就職先の人たちと付き合う時間が増えた。学生生活で限られていた行動半径も広がっている。
        たまたま小中で同級生だった本屋の子と出合った。今は本屋を継いでいると言う。そこで母が通っている「俳句の会」の先生の噂を聞いた。
        彼は「先生がいい年をしてエロ本をごっぞり買いこんで行った」という。
        顧客情報をそんなに安易に漏らしていいのだろうか《私》は気分がよくなかった。
        うちでは母は先生が俳句の指導をやめるのだと残念がっていた。母から最後に先生が披露した句をきいた。
         生涯に 十万の駄句 山眠る

        《私》は先生があちこちでエロ本を買っているわけを知る。偶然出会ったのでそれとなく話すシーンがいい。先生の最後の句の意味もいい。
        この章は、眼から鱗の俳句の話がメインになっている。

        「走り来るもの」

        《私》は卒業して勤め始めた。
        この章は二者択一の妙というものがテーマだ。「女か虎か」女王が愛した若者の前に檻が二つある、王族との禁じられた恋というので裁判にかけられている。檻にはそれぞれ「美女と虎」が入っている。王女はそれ知っていた、若者は教えてくれると期待している、サテどちらを開けたのか。そこから男と女の愛の話になり、源氏物語の「すこし」という言葉にうつっていく。
        円紫さんの落語も効果的にでる。
        短いが読むのが実に楽しい。

        さてあの美人のお姉さんが、しどろもどろで電話をかけてきた男性と結婚してはや女の子がうまれた。めでたい。

        「朝霧」

        三角関係の人たちの、コンサートのキップをめぐって起きる謎を解く。
        円紫さんから「仲蔵」の話を聞く。

        鎌倉に行ったついでに教師になった正ちゃんの家に泊まり江美ちゃんの赤ちゃんを見に行くことになる。

        二人で数字ばかりの和歌の謎、漢字ばかりの和歌の謎を読み解く。解が面白い。


        メモ

        《蚊柱のいしづゑとなる捨て子かな》池西言水
        「この言葉に芥川が敏感でない筈はありません。少なくとも実の親からはなされた子という題材に対して、敏感でない筈はないとおもうのです」
        わたしはそれを知った時、芥川が言水の句を読んだ時の心の揺れを、一瞬、共有したような気がした。
        これからも私は本を読んで行くだろう。そして本は、私の心を様々な形で揺らしていくだろう。

        無数の人が私の前を歩き、様々なことを教えてくれる。私は先を行く人を、敬し、愛したい。だが、人に知識を与える《時》は、同時に人を蝕むものでもあるのだろう
        <山眠るより>

        「たまたま 山本健吉の「新撰百人一首」というのを見ました。加藤楸邨は何が選ばれているのかと思ったら《日本語をはなれし蝶のハヒフヘホ》でした」
        「僕にはわからない。仲間に俳人がいますのでね《これはいいものですか》と聞いたら、じっと見て――《いい》」
        「《いい》といえるものがそれだけある。見えることは世界が豊かだということでしょう。羨ましいと思いますよ」
        <円紫さんのことばより>

        夢の世界は個人のものである。当人が言わない限り、誰にも覗けない。絶対の謎である。そこが見たくなったときに起こる奇妙なもどかしさ。
        《知りたい》という噺より


        いい本を読んだ。北村さんの本は後三冊買ってある。ついつい億劫になるが、読み終わったものは忘れないうちに書いておかないといけない。
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        2015/08/06 by 空耳よ

      • コメント 6件
    • 他1人がレビュー登録、 5人が本棚登録しています
      冬のオペラ
      カテゴリー:小説、物語
      1.0
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      • 名探偵 巫(かんなぎ)弓彦
        人知を超えた難事件を即解決
        身元調査など、一般の探偵業は行いません

        不動産に勤める姫宮あゆみの2階に上記の看板を携えた男が店?を構えた。
        気になるのはやはり看板の「名探偵」の部分だろう。只の探偵ではない・・・
        あゆみはある事件を境に接点を持つ。
        それから巫のワトソンとして記録係をしていく事になる。。。


        この事件簿が名探偵に相応しいかはさておき、巫さんの人間性とキャラはとてもユニークで面白かった。
        事件を解決し実績を積み、名探偵になるのではなく、名探偵とは存在として在るものなのだと自分で断言できるのはカッコ良いの馬鹿なのか・・・(笑)
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        2020/05/09 by ヒデト

    • 3人が本棚登録しています
      盤上の敵
      カテゴリー:小説、物語
      3.0
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      • 北村さんが意識しているのは明らかにエラリー・クィーン。
        チェスのように見立てて、計画を実行していく事件の顛末とは。

        妻が待つ自宅に殺人犯が籠城。
        夫は困惑するが、そこにワイドショーのカメラの中継が。

        このパートと同時に別の話が語られていく。
        当然これには意味があると思うのだが、それに気づくのはこの事件に裏があるから。

        途中で気づく可能性もあるけど、それがどういう結末をもたらすのか。
        この手の作品としては意外な落し処かも。
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        2018/07/09 by オーウェン

    • 1人が本棚登録しています
      紙魚家崩壊 九つの謎
      カテゴリー:小説、物語
      3.3
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      • 最後のおとぎ話ちゃんと面白かった。
        遊び心満載!
        ファンタジーだけど所々リアルで、しかも引用が時代も国もバラバラだったり。著者の博識さとセンスの良さが光るなと思う。
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        2017/02/13 by W_W

    • 4人が本棚登録しています
      タ-ン
      カテゴリー:小説、物語
      4.0
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      • 読了日は適当。だけど当時のことははっきり覚えてる。中学一年生のとき、何故か買ってもらったこの本を、カバーもせずに学校でちょっとづつ読んでた。文体がけっこう独特で、読めるかな、と思ってた。で、ある男子が、その本良いよね、好きだよ。と話しかけてきた。そう、と適当に応えて、結末はどうなるのと聞いた。彼は、教えない、でも素敵だと思う、また本の話をしてもいい?と言った。それから家で読了し、赤面し、初恋と相成りました。
        今では彼と音信不通だけど、この本を読むたび甘酸っぱいあの空気を思い出す。
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        2016/05/19 by kido

      • コメント 1件
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      ひとがた流し
      カテゴリー:小説、物語
      4.0
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      • これが「月の砂漠をさばさばと」の続編だと知らなかった。NHKでドラマになっていたのも知らなかった。
        読むに連れてあのほのぼのとした母と娘の暮らしを思い出した。あ~いい本だったな。
        この本は作者と題名が気になったので手に取った。流れると言う言葉に少し拘って、というより生きていくことは言葉にすればそういうことだと日ごろから思っているし。「ひとがた流し」いい題名だと思った。


        今度はお母さんの牧子さんと二人の親友の話になる。

        メインは、独身のままアラフォーを迎えている千波。二人からは「トムさん」と呼ばれている。
        駆け出しの報道時代を経て念願のメインキャスターの席を得た。そこで悪性の腫瘍が見つかる(胸の悪い病気と書いてある)


        もう一人美々は子連れで離婚、今は写真家と結婚している。結婚したときはまだ物心ついていなかった子供は実の父親だと思っている。この親子関係が実に温かく、高校生になった娘が父の写真を理解して同じ目で写真を写し始めている。このあたり、優しさとともに、実子でない親子にある現実が少し重荷であって、どう解決しようかというあたり、心温まる結末がジンとくる。

        サバの味噌煮を作りながら歌っていたお母さんの牧子さんと、大学受験前のさきちゃん、時間は流れ、それぞれ三組の家庭の話も、あたたかいふれあいの中で時が過ぎている。

        千波は局で知り合った後輩のイチョーヤさん(君)と最後の時間をすごすことになる、このあたりは出来すぎかもしれないが、事実は小説よりも危なり。そういうこともありかもしれず。大きな試練を越える千波に最後の贈り物は哀しくて美しい。


        そんな、目の前の厳しさも包み込むようないい本だった。
        >> 続きを読む

        2015/12/07 by 空耳よ

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      カテゴリー:小説、物語
      4.0
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      • おもしろかった。

        17歳が42歳にスキップ!


        教師として教えれるのかなと思ったが、どうにか慣れてむしろフレッシュで周りにいい影響を与えてる。でも、仕事ってはそういうとこがあると思う。持ってる責任感・意欲・素質も?、があれば、時間・経験も大事だけれどそれを上回る。

        家族との関係では本人はもちろんだが、娘も夫もつらいかと。夫が垣間見せる妻への思いがせつなくていい。夫とはこれから時間をかけると、夫婦のように男女の関係に戻っていくのだろうか?

        三部作?のようなので、次も読みたい。
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        2017/04/29 by Matching

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      月の砂漠をさばさばと
      カテゴリー:小説、物語
      4.5
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      • 母と子むの会話でお話が進む。

        さきちゃんはのいかけにお母さんがのんびり答えるけれど、内容は決して絵空事ではない。
        突然、どきりとさせられる。

         タイトルからてっきり一人ぐらしの女の人の少しさみしい話だと思っていたが、全然違った。

         二人ぐらしの女の人たちのちょっと寂しい、おかしみのある話だった。
        >> 続きを読む

        2014/09/19 by B612

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【北村薫】(キタムラカオル) | 読書ログ - 読書ファンが集まる読書レビューサイト(著者,作家,作者)

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