こんにちはゲストさん(ログインはこちら) | 読書ログ - 読書ファンが集まる読書レビューサイト →会員登録(無料)


北村薫

著者情報
著者名:北村薫
きたむらかおる
キタムラカオル
生年~没年:1949~

この著者の本を読んでいる会員ランキング

このランキングは1日1回更新されます。
      月の砂漠をさばさばと
      カテゴリー:小説、物語
      3.8
      いいね!
      • 母と娘のささやかで優しい日常がつまった短編集。
        とにかく可愛いんだけど、ふとした瞬間にひんやりとしたさびしさとか切なさが見え隠れするあたり(そしてそのさびしさや切なささえあたたかい何かに包まれてるあたり)、さすが北村薫というか…

        とはいえ、たぶん言われなければ(というか作者名が記載されてなかったら)北村薫が書いたとは気づかなかったです。
        この人、男の人だと知ったときも驚いたんだけど、こういう話も書くんだとまた驚かされてしまった…(笑)

        個人的には表題作の月の砂漠をさばさばとが一番好きでした。

        >> 続きを読む

        2016/02/15 by kon

    • 他5人がレビュー登録、 13人が本棚登録しています
      空飛ぶ馬
      カテゴリー:小説、物語
      4.1
      いいね!

      • 北村薫の本格謎解きものの連作短編集である「空飛ぶ馬」は、郊外から東京の私立大学に通う女子大生の「私」と、人気落語家の春桜亭円紫のコンビの周辺で起きる"謎めいた出来事"の顛末を描いています。

        主人公の女子大生の「私」が語る、日常生活の中で出会ったちょっとした謎を、探偵役である噺家の円紫師匠が鮮やかな推理で解き明かすという、北村薫の小説世界に完全にはまってしまいました。

        この「空飛ぶ馬」が、例えようもないくらいに面白いのは、各編で見せる円紫師匠の論理的な推理ぶりもさることながら、人情小説の味わいを大切にしているからなのです。

        そして、この連作短編集は、優れた本格推理小説であるのと同時に、一人の少女の魅力あふれる成長の物語だと思うのです。

        そして、そうなり得たのは、まさに殺人事件という"非日常的"な題材ではなく、主人公の「私」の身の回りで起きる"日常的"な題材を扱っているためなのです。

        まだ、少女の名残りを留めている「私」は、その様々なドラマから人生の側面を垣間見て、大人へと成長していくのです。そして、その様子を温かな視線で見守るのが、円紫師匠を始め、大学の加茂先生、友人の正ちゃんといった「私」の取り巻きなのです。

        日常に潜む謎といえば、どうしても人間の営み、人間の心理といった問題に関わってきます。それゆえ「私」が、ある一つの謎の真相を知ることは、同時に人間に対する理解を一歩進めることになるのだと思います。

        この人間に対する"深い洞察と愛情"、これこそが他の誰にも真似できない「北村ワールド」の大きな魅力なのだと強く思います。

        これがあって初めて、「砂糖合戦」の「なぜ少女は紅茶に何杯も砂糖を入れるのか」、「赤頭巾」の「なぜ日曜日の夜になると公園に赤頭巾が現れるのか」、「空飛ぶ馬」の「幼稚園の木馬は、どうして一日だけ空を飛んだのか」などといった謎が、生き生きとした魅力を放つのだと思います。

        文学少女の「私」にとって、第一話の「織部の霊」から第四話の「赤頭巾」までのエピソードは、ある意味、人生の悲哀や生臭さといったものを感じさせるものでしたが、第五話の「空飛ぶ馬」に至って、そうした憂さは見事に払拭させられるのです。

        そして、最後に人生讃歌のクリスマス・ストーリーを用意した辺りの北村薫の配慮は、心憎いばかりです。

        この連作短編集には、本格ミステリ全般に対する溢れんばかりの愛情があり、第二話の「砂糖合戦」の中で、円紫師匠が、「私」に向かって「落語」に対する考えを語った言葉は、そのまま推理小説作家・北村薫のミステリに対する真摯な姿勢を言い表していると思います。

        「古い形の中にある命は残して、それを生き生きとしたものにしたい。子供の頃から聞いて、好きで好きでたまらなかった落語です。喜ばせてもらった恩返しをしなくちゃいけない。それには後ろを向いているだけでは駄目でしょうね。必要なのはやっぱり演出の工夫と芸の力です」。



        >> 続きを読む

        2017/05/13 by dreamer

    • 他2人がレビュー登録、 16人が本棚登録しています
      夜の蝉
      4.2
      いいね!

      • 北村薫の小説が大好きだ。

        今回読了したのは、前作「空飛ぶ馬」でミステリ好きの私の心を熱くした、北村薫が続いて発表した「夜の蟬」。

        ヒロインの女子学生「私」の身辺に起きた日常の不可解な出来事を、落語家の春桜亭円紫が解き明かすという基本設定は、前作同様。

        巻頭の「朧夜の底」では、「私」の友人の正ちゃんがアルバイトをしている書店で、国文のコーナーにある本の向きが逆になっていた。
        他愛もない悪戯に見えるその謎から、円紫は実行者の異様な心理状態を読み取ってみせる。

        「六月の花嫁」では、チェスの駒、卵、鏡が次々に消えるという落語の三題噺的な状況を、緻密な論理で解き明かす。

        「夜の蟬」では、姉が交際相手に歌舞伎座の券を送ったことが不可解な結果を生み、その解決は姉妹の間の微妙なわだかまりをも解消することになる。

        メルヘン的な色彩が濃厚だった前作の「空飛ぶ馬」に較べ、全体的にしっとりした印象なのは、このシリーズが「私」の成長物語としても書かれていることと関係があると思いますね。

        著者の北村薫という作家は、「日常的な謎を解く作風の名手」だと思いますが、日常とは単にほのぼのしたものなどではあり得ないことは言うまでもないと思う。

        この作品の三つの短編のうち、一つは"善意"を、一つは"悪意"を、一つは"病的な自己の合理化"を語る話だと言えると思う。

        人の心のあらゆる形を、円紫によって絵解きされていくことで、「私」はこの世のありようを少しずつ知っていくんですね。

        >> 続きを読む

        2018/05/01 by dreamer

    • 他2人がレビュー登録、 7人が本棚登録しています
      六の宮の姫君
      カテゴリー:小説、物語
      4.0
      いいね!
      • 芥川龍之介「六の宮の姫君」にまつわる書物探索。
        以前「太宰治の辞書」を読んで、このシリーズの魅力にハマってしまった。
        主人公はまだ大学生。
        だが、書物に関する謎解きは、主人公の年齢にかかわらず、面白い。
        芥川と菊池寛ら文豪との関係を、主人公とともに参考文献から読み進めていく面白さ。
        自宅に居ながら、手っ取り早く多くの文献をのぞき見できる気楽さ。
        たまらない!

        この1冊で、他の作品への興味も沸く。
        作品中に出てくる「近代日本文芸読本」。
        これは、凝り性の芥川が心血を注いで編集した、5冊148編からなる文芸作品アンソロジー。
        …読みたい!!
        いつも利用する図書館になかったので、県立図書館に予約。
        近いうちに手元に届く。
        私の力じゃ、難解なものも多いだろう。
        だけど、100人の読者がいれば100の物語が生まれる。
        「小説は人に、同じ解答を与えはしない。」
        この小説の受け売り文句だが、これからもこの気持ちをもって、本に向き合っていこうと思った。
        >> 続きを読む

        2016/05/30 by shizuka8

      • コメント 1件
    • 他2人がレビュー登録、 7人が本棚登録しています
      9の扉
      カテゴリー:小説、物語
      4.0
      いいね! ooitee
      • リレー形式の作品だけど、基本は独立した作品。
        そのなかで次の作家にお題を与えるという趣向。

        難しいと思うのだが、そこは力のある作家が揃っているの心配なし。
        表紙に載っている作家は皆代表作を持っている売れっ子だから。

        20~30ページほどなのですごく読みやすいし、その中で急激な変化が起こる作品もある。

        貫井さんから歌野さんへの連作というサプライズもあるし、ラストの辻村さんから冒頭の北村さんへと繋がるというのには納得。

        他にも法月さんの真田幸村だったり、麻耶さんの意表を突く趣味だったり。
        大きく外れがないというのは、選ばれた作家がいかに優秀かよく分かる。
        >> 続きを読む

        2018/03/30 by オーウェン

    • 他1人がレビュー登録、 5人が本棚登録しています
      スキップ
      カテゴリー:小説、物語
      3.8
      いいね!
      • ―まどろみから覚めたとき、17歳の<わたし>は、25年の時空を軽々飛んで42歳の<わたし>に着地した。

        高校・大学時代は恋にときめき、愛される喜びを得たり、友人との関係が上手くいかないことに真剣に悩んだり。
        社会人になってからは、慣れない仕事に失敗しながらも一つ一つスキルを身につけていきました。
        社会人1年目~2年目は、仕事、プライベート共上手くいかないことが多かったな。
        お局にもイジメられましたw
        仕事の経験値を積み、合コンで旦那と出会い結婚。
        いつの間にかアラサーで、人間関係のあしらい方を覚えたりなんかして、不満はあるも仕事に慣れた分余裕を持って会社に行く毎日となりました。

        これ、私の年表です。
        主人公の一ノ瀬真理子はこれよりもっと長い人生を"スキップ"してしまいました。
        この間の経験値が丸々ない状態です。

        目が覚めたら娘がいて、夫がいて。
        それだけでもパニックなのに、大好きな両親はすでに亡くなっていました。
        助けを求め大声を上げて泣きたい、そんなことができる存在がいないことの辛さに苦しくなりました。
        また、外見も大きく変わっています。
        眠る前まで見ていた、なんでも似合うきれいな顔や肌、体型が、目を覚ますと中年の体型に。
        目の前にいる娘は同じ17歳、素敵な服を着こなします。
        ツラい・・・ツラすぎる・・・・・・・・・
        時空を超えなくてもだんだん付いてくる脂肪はツラいというのに。

        ―誰か、教えて下さい。時は、取り返すことが出来るのですか。

        始めの衝撃こそあれど、真理子は今の状況を受け入れ、穏やかに学校生活が続いていきます。
        全体的に優しい雰囲気ありますよね。
        生徒たち一人ひとりへ真剣に向き合う真理子自身も、教師として成長していってるようでした。
        学級日誌のコメントがあたたかい。
        ただ、いくら夫が同じ職業とはいえ、教える側として無難にこなしていることに違和感を感じました(・_・;)
        中身17歳の高校生が、42歳のベテランと同じようにこなしてしまうのでは、立場ないなぁ。

        彼女を取り巻く環境が、学級崩壊や、DV夫のいる家族でなくて本当に良かったです。

        大きな展開はなく、いつか元の時間に戻れるんじゃない?と楽観視してしまうような穏やかな日々を送ります。
        いやいや、そんな上手くいくはずがない、そんな不安も抱えながら。

        エピローグは、真理子の気持ちの一つ一つが突き刺さり、苦しさで本を持つ手が震えました。
        こんな残酷なことってない。
        なのに読了後は、不思議なくらい爽快感もありました。

        おもしろい本に出会うことは多くても、この本のように記憶に残る本というのはあまりないように思います。
        いい本に出会えて嬉しい。

        この本をおすすめしてくださった課長代理さんに感謝x2です。
        私一人で読書をしていたら絶対に出会えていません!
        ありがとうございました(*^_^*)
        >> 続きを読む

        2015/03/16 by あすか

      • コメント 21件
    • 他1人がレビュー登録、 8人が本棚登録しています
      タ-ン
      カテゴリー:小説、物語
      4.5
      いいね!
      • おもしろかった。

        こちらとあちらのやりとりを通して少しづつ確認しあっていく過程がいい。

        設定もおもしろい。スキップにもある何か青春的な要素がある。とても前向きになれるような。

        ロマンチックでよかった。
        >> 続きを読む

        2017/06/24 by Matching

    • 他1人がレビュー登録、 4人が本棚登録しています
      鷺と雪
      カテゴリー:小説、物語
      3.5
      いいね!
      • ・第141回直木賞受賞作でベッキーさんシリーズ最終巻
        ・表題作他『不在の父』『獅子と地下鉄』
        ・「日常の謎」の謎の部分が弱い
        >> 続きを読む

        2017/05/10 by michi2011

    • 他1人がレビュー登録、 5人が本棚登録しています
      坂木司リクエスト!和菓子のアンソロジー
      カテゴリー:小説、物語
      4.0
      いいね!
      • 基本的に、和菓子が好き。
        年に、数回ではあるが、買って帰宅し、家族で食べることもある。
        知らないお菓子もたくさんでてきているが、どれも、美味しそうでたべてみたいと思う。
        やっはり、和菓子なので、ふんわり・やんわりとしたストーリーが合うように思う。
        上手いな~という作品も結構ある。

        やはり、あんこ、それもつぶあんが好みなので、そこにフォーカスしてもらったりすると、もっと楽しめるかも・・・などと、欲張ったことも考えてしまった。
        饅頭が食べたくなった。
        >> 続きを読む

        2015/07/16 by けんとまん

    • 他1人がレビュー登録、 8人が本棚登録しています
      秋の花
      カテゴリー:小説、物語
      3.3
      いいね!
      • シリーズ三作目で初めての長編、最大の謎を残して死ぬ人がでる。ミステリらしいミステリになっている。

        「私」は大学の三年になった。御馴染み正ちゃんが中性的な魅力で賑わしてくれる。

        「フロベールの鸚鵡」という本が出ましてね、その中に「紋切り型辞典」のパロディが入っています」
        「おやおや」
        「その紋切り型を引用するのは俗物の証明みたいなものだけど、ルイ・ブリエというフロベールの友達は胸のない子にこういったそうよ。《心のすぐそばまで近寄ることができていいじゃないか》」
        「そいつ、人がいいか、もの凄く嫌な奴かどっちかだね」(引用)

        《えぐれ》と私に言っておいて正ちゃんはあっさりと片付ける。


        近所に仲のよい二人組がいた。私は小さいときから知っていて、今では後輩に成長した。落語の「お神酒徳利」のようにいつも一緒でニコニコして入学の挨拶に来てくれた。津田真理子と和泉利恵。
        百舌の声がするようになった頃、利恵の蹌踉とした、魂が抜けたような姿を見る。
        夏休み前、恒例の大イベントだった文化祭の行事が中止になった、生徒会が主催する行事にこの二人も参加していたのだ。私も生徒会でその慌しさを経験していた。
        だが、津田麻里子が屋上から転落して死亡。文化祭は取りやめになった。
        そのショックからか利恵は不登校になり自分の中に閉じこもってしまった。

        利恵は幼い頃、秋海棠が咲く麻里子の家の垣根のところまで三輪車できて呼びかけて友達になった。揃って高校生になったとき、二人の軌跡は断ち切れてしまった、利恵の喪失感は絶望に届くほど深い。


        ポストに他殺を匂わせる教科書のコピーが投げ込まれた。麻里子の棺に入れたはずの教科書だった。

        私は円紫師匠の智恵を借りて謎を解いて利恵を救いたいと思う。

        犯人は誰か、どうして真理子は落ちたのか。


        私は思う

        ――「アヌイ名作集」のアンティゴーヌも「ひばり」の乙女ジャンヌも大人になる前にその生を終える。それでは生きながらえた時、少女の純粋はどうなるのか。しょせん、純粋は現実のあやうい影に過ぎないのか

        私の誕生以前に生まれた人の生は、見えようのない部分があるだけに無限に過去に広がっているように思える、しかし津田さんにはそれがない私は生の有限を突然目の前に提示され、それに戸惑ったのだ――

        卒論のテーマは私に決められた運命のように《芥川》と口に出す頃になった。作家論は誰を論じても自分を語ることだと言う意識がある。
        円紫さんに悩みと疑問をぶつけてみる。

        ――「ずっとこちらですか」ふと円紫さんがいった。
        人は生まれるところを選ぶことは出来ない。どのような人間として生まれるかも選べない。気が付いたときには否応なしに存在する《自分》というものを育てるのはあるときからは自分自身であろう。それは大きな不安な仕事である。だからこそこの世に仮に一時でも、自分を背景ぐるみ全肯定してくれる人がいるかもしれない、という想像は、泉を見るような安らぎを与えてくれる。それは円紫さんから若い私への贈り物だろう。
        ここは、未来を絶たれた、私よりもさらに若い子の町でもある。――

        珍しいことに扉に秋海棠の写真がある。文中の二人の少女が出逢った垣根の根元に咲いていた花である。淡いピンクの瑞々しい花で、薄紅色の細い茎が枝分かれして小さな花が下がり気味に咲く。
        昨年9月に三千院に満開の秋海棠を見に行った、私もなくなった友を偲ぶ花なので秋の初めになると落ち着かない。
        木陰や水辺を好み、ぎゅっと握り締めると 掌の中で水になって流れ出てしまいそうな花だが、文中では人を思って泣く涙が落ちてそこから生えた花だと書いている。
        北村さんは花の名前にも詳しい。

        この物語は、二人の少女に関わった私の後日談だが、二人の子供を持った母親の話でもある。悲嘆にくれながらも残った少女をいたわる、秋海棠は娘を亡くした母親の心を象徴する花でもある。
        >> 続きを読む

        2015/06/05 by 空耳よ

      • コメント 9件
    • 他1人がレビュー登録、 6人が本棚登録しています
      朝霧
      カテゴリー:小説、物語
      4.3
      いいね!
      • この本は、ページ数が少ない割りにデータ数が多くてなかなかレビューか書けなかった。引用して残しておきたい部分も多い、買ってきたので本棚に保存して、折にふれ取り出して読み返せばいいと思うが、書き残す作業で少しは残る記憶が鮮明であって欲しいと思う欲もある。

        これで「円紫師匠と私シリーズ」が終わる。たまたま読んだ本だったのに随分影響を受けた。読書の幅がすこし広がった気もする。
        子どもの頃から本好きできたが、なぜこんなに読むべき本を読み残していたのか、ここで気がついた。
        読書に向かう姿勢を見直すことが出来たということが、このシリーズを読んで一番感謝するところだ。
        博覧強記で知られる北村さんの文章が、温かく地味豊かだということが、読み続けるもとになっていてとても後味がいい。
        最近「太宰治の辞書」が出たが、図書館に予約した、随分先になるようだ。


        山眠る

        《私》は卒論を提出して、卒業後の研修プログラムも出来、就職先の人たちと付き合う時間が増えた。学生生活で限られていた行動半径も広がっている。
        たまたま小中で同級生だった本屋の子と出合った。今は本屋を継いでいると言う。そこで母が通っている「俳句の会」の先生の噂を聞いた。
        彼は「先生がいい年をしてエロ本をごっぞり買いこんで行った」という。
        顧客情報をそんなに安易に漏らしていいのだろうか《私》は気分がよくなかった。
        うちでは母は先生が俳句の指導をやめるのだと残念がっていた。母から最後に先生が披露した句をきいた。
         生涯に 十万の駄句 山眠る

        《私》は先生があちこちでエロ本を買っているわけを知る。偶然出会ったのでそれとなく話すシーンがいい。先生の最後の句の意味もいい。
        この章は、眼から鱗の俳句の話がメインになっている。

        「走り来るもの」

        《私》は卒業して勤め始めた。
        この章は二者択一の妙というものがテーマだ。「女か虎か」女王が愛した若者の前に檻が二つある、王族との禁じられた恋というので裁判にかけられている。檻にはそれぞれ「美女と虎」が入っている。王女はそれ知っていた、若者は教えてくれると期待している、サテどちらを開けたのか。そこから男と女の愛の話になり、源氏物語の「すこし」という言葉にうつっていく。
        円紫さんの落語も効果的にでる。
        短いが読むのが実に楽しい。

        さてあの美人のお姉さんが、しどろもどろで電話をかけてきた男性と結婚してはや女の子がうまれた。めでたい。

        「朝霧」

        三角関係の人たちの、コンサートのキップをめぐって起きる謎を解く。
        円紫さんから「仲蔵」の話を聞く。

        鎌倉に行ったついでに教師になった正ちゃんの家に泊まり江美ちゃんの赤ちゃんを見に行くことになる。

        二人で数字ばかりの和歌の謎、漢字ばかりの和歌の謎を読み解く。解が面白い。


        メモ

        《蚊柱のいしづゑとなる捨て子かな》池西言水
        「この言葉に芥川が敏感でない筈はありません。少なくとも実の親からはなされた子という題材に対して、敏感でない筈はないとおもうのです」
        わたしはそれを知った時、芥川が言水の句を読んだ時の心の揺れを、一瞬、共有したような気がした。
        これからも私は本を読んで行くだろう。そして本は、私の心を様々な形で揺らしていくだろう。

        無数の人が私の前を歩き、様々なことを教えてくれる。私は先を行く人を、敬し、愛したい。だが、人に知識を与える《時》は、同時に人を蝕むものでもあるのだろう
        <山眠るより>

        「たまたま 山本健吉の「新撰百人一首」というのを見ました。加藤楸邨は何が選ばれているのかと思ったら《日本語をはなれし蝶のハヒフヘホ》でした」
        「僕にはわからない。仲間に俳人がいますのでね《これはいいものですか》と聞いたら、じっと見て――《いい》」
        「《いい》といえるものがそれだけある。見えることは世界が豊かだということでしょう。羨ましいと思いますよ」
        <円紫さんのことばより>

        夢の世界は個人のものである。当人が言わない限り、誰にも覗けない。絶対の謎である。そこが見たくなったときに起こる奇妙なもどかしさ。
        《知りたい》という噺より


        いい本を読んだ。北村さんの本は後三冊買ってある。ついつい億劫になるが、読み終わったものは忘れないうちに書いておかないといけない。
        >> 続きを読む

        2015/08/06 by 空耳よ

      • コメント 6件
    • 他1人がレビュー登録、 5人が本棚登録しています
      紙魚家崩壊 九つの謎
      カテゴリー:小説、物語
      3.3
      いいね!
      • 最後のおとぎ話ちゃんと面白かった。
        遊び心満載!
        ファンタジーだけど所々リアルで、しかも引用が時代も国もバラバラだったり。著者の博識さとセンスの良さが光るなと思う。
        >> 続きを読む

        2017/02/13 by W_W

    • 3人が本棚登録しています
      タ-ン
      カテゴリー:小説、物語
      4.0
      いいね!
      • 読了日は適当。だけど当時のことははっきり覚えてる。中学一年生のとき、何故か買ってもらったこの本を、カバーもせずに学校でちょっとづつ読んでた。文体がけっこう独特で、読めるかな、と思ってた。で、ある男子が、その本良いよね、好きだよ。と話しかけてきた。そう、と適当に応えて、結末はどうなるのと聞いた。彼は、教えない、でも素敵だと思う、また本の話をしてもいい?と言った。それから家で読了し、赤面し、初恋と相成りました。
        今では彼と音信不通だけど、この本を読むたび甘酸っぱいあの空気を思い出す。
        >> 続きを読む

        2016/05/19 by kido

      • コメント 1件
    • 8人が本棚登録しています
      ひとがた流し
      カテゴリー:小説、物語
      4.0
      いいね!
      • これが「月の砂漠をさばさばと」の続編だと知らなかった。NHKでドラマになっていたのも知らなかった。
        読むに連れてあのほのぼのとした母と娘の暮らしを思い出した。あ~いい本だったな。
        この本は作者と題名が気になったので手に取った。流れると言う言葉に少し拘って、というより生きていくことは言葉にすればそういうことだと日ごろから思っているし。「ひとがた流し」いい題名だと思った。


        今度はお母さんの牧子さんと二人の親友の話になる。

        メインは、独身のままアラフォーを迎えている千波。二人からは「トムさん」と呼ばれている。
        駆け出しの報道時代を経て念願のメインキャスターの席を得た。そこで悪性の腫瘍が見つかる(胸の悪い病気と書いてある)


        もう一人美々は子連れで離婚、今は写真家と結婚している。結婚したときはまだ物心ついていなかった子供は実の父親だと思っている。この親子関係が実に温かく、高校生になった娘が父の写真を理解して同じ目で写真を写し始めている。このあたり、優しさとともに、実子でない親子にある現実が少し重荷であって、どう解決しようかというあたり、心温まる結末がジンとくる。

        サバの味噌煮を作りながら歌っていたお母さんの牧子さんと、大学受験前のさきちゃん、時間は流れ、それぞれ三組の家庭の話も、あたたかいふれあいの中で時が過ぎている。

        千波は局で知り合った後輩のイチョーヤさん(君)と最後の時間をすごすことになる、このあたりは出来すぎかもしれないが、事実は小説よりも危なり。そういうこともありかもしれず。大きな試練を越える千波に最後の贈り物は哀しくて美しい。


        そんな、目の前の厳しさも包み込むようないい本だった。
        >> 続きを読む

        2015/12/07 by 空耳よ

      • コメント 2件
    • 3人が本棚登録しています
      スキップ
      カテゴリー:小説、物語
      4.0
      いいね!
      • おもしろかった。

        17歳が42歳にスキップ!


        教師として教えれるのかなと思ったが、どうにか慣れてむしろフレッシュで周りにいい影響を与えてる。でも、仕事ってはそういうとこがあると思う。持ってる責任感・意欲・素質も?、があれば、時間・経験も大事だけれどそれを上回る。

        家族との関係では本人はもちろんだが、娘も夫もつらいかと。夫が垣間見せる妻への思いがせつなくていい。夫とはこれから時間をかけると、夫婦のように男女の関係に戻っていくのだろうか?

        三部作?のようなので、次も読みたい。
        >> 続きを読む

        2017/04/29 by Matching

    • 3人が本棚登録しています
      月の砂漠をさばさばと
      カテゴリー:小説、物語
      4.0
      いいね!
      • 母と子むの会話でお話が進む。

        さきちゃんはのいかけにお母さんがのんびり答えるけれど、内容は決して絵空事ではない。
        突然、どきりとさせられる。

         タイトルからてっきり一人ぐらしの女の人の少しさみしい話だと思っていたが、全然違った。

         二人ぐらしの女の人たちのちょっと寂しい、おかしみのある話だった。
        >> 続きを読む

        2014/09/19 by B612

      • コメント 4件
    • 4人が本棚登録しています
      リセット
      カテゴリー:小説、物語
      4.0
      いいね!
      • ほとんど一気読み

        輪廻、生まれ変わり・・・ あるのかな・・

        なかなか感動的なお話だった。



        読み終わってちょっと昼寝をした。

        店をしていた頃(だから25年以上前)の実家に帰った夢を見た。
        店の中の商品棚の並び方や、一つ一つの商品まで鮮明で
        (今はリフォームして居間になっている所)
        母も若くて、懐かしかった。

        これはちょっと違うけど・・・時を超えてきました。
        >> 続きを読む

        2013/01/25 by バカボン

      • コメント 3件
    • 3人が本棚登録しています
      読まずにはいられない 北村薫のエッセイ
      4.0
      いいね!
      • エッセイや後書きや解説なんかが纏められてる。
        東野圭吾や宮部みゆきなんかとの関係が語られたりしてるのが面白い。
        作家同士って横の繋がりよくわかんないからふーんって感じだった。
        >> 続きを読む

        2018/04/21 by W_W

    • 1人が本棚登録しています
      謎物語 あるいは物語の謎
      4.0
      いいね!
      • 裏表紙の紹介からj

        物語や謎を感じる力は、神が人間にだけ与えてくれた大切な宝物。名探偵も、しゃべるウサギも、実は同じものかもしれない、―― 博覧強記で知られる著者が、ミステリ、落語、手品など、読書とその周辺のことどもについて語り起こしたはじめてのエッセイ。宮部みゆき氏の応援メッセージ、謡口早苗氏のメゾチントも収録した待望の文庫化。




        ミステリについて語り解説を紐解く、興味深く面白く、ミステリの世界について改めて考えさせられた。
        共感、同意、新知識が頭の中をマッサージする、これが嬉しくて本を読むのかと思うような一冊だった。

        引用は文字の色が爽やかな青色で、読みどころ、作品のポイントがうまくまとめられ、超短編は全文引いてあるところもある。

        謡口早苗さんのメゾチント(版画)これも幻想的な図柄が青い色で押されて、一区切りを飾っている。表紙もそうだが初めて見てすっかり好きになった、美しい。(初めてのものに出会うととても嬉しい)

        引用したいところばかりだが、最近関心があるので、第7回、芥川の《昔》から

        いかなる現実の事件があろうとも、現代日本は、古今東西を通じて最も人の命の高い国であろう。そこに生きる書き手にとって、人を殺す、というのは難しいことである。
         ところで芥川龍之介は、自分が歴史物を多く書くことについて『澄江堂雑記』のなかで、こう語っている。

        テーマを芸術的に最も力強く表現するためには、ある異常な事件が必要になるとする。その場合、その異常な事件なるものは、異常なだけそれだけ、今日この日本に起こったものとしては書きこなしにくい。もし、しいて書けば、多くの場合不自然の感を読者に起こさせて、その結果せっかくのテーマまでも犬死にをさせうことになってしまう。



        わたしは芥川の作品の原点の一部に触れた気がする、続いて「現代世界文学全集」第一巻からルナールの「村の犯罪」を挙げている。さすが面白くて、納得して楽しんだ。

        これだけでもこの本を一読する価値がある。

        上げればきりがないが、最も心に残った作品があったので孫引きだが書き写して、忘れないようにしたい。




        中川正文氏の「口説の徒」 福武文庫「現代童話Ⅱ」で読んだ、まずお子さんの友君の詩。


        五足の上靴

        さんかん日に
        おかあちゃんがきて
        帰るとき
        ぼくのげたばこをあけたとたん
        「ひゃー、上くつ、いっぱいあるやん。すててしまい」
        と、いうたやろ。

        ぼくは、それいわれるのん ひやひやしてたんやで。
        なんでか、いうたら、
        二年からの、上くつ、げたばこに、ためててん。

        ぼくの思いでが、いっぱいある上くつやし、もったいない。
        奈良先生にも、いわれたんやけど
        すてへんかった上くつやねん。

        いちばんぼろぼろのは
        三ヵ所ほど、でかいあながあいてるけど
        およめにいった
        千賀先生とも、遊んだくつや。
        運動場も走ったし
        雪の上もふんだし
        勉強もしたし
        ぼくのシンボルや。

        今のくつも、もうあかんようになったけど、
        運動会の日まで、はいてやったし
        また
        ためとくねん。
        そやし、
        「すててしまい」と、いわんといてや。

        この詩が、三年生の教科書の採用された。ところが、友君はひどく浮かぬ顔をしている。聞いてみると《「アホらしくて、ものもいえんわ。おとないうたら、ゼンゼンわかっとらん」》教科書を見た中川氏は《唖然となった》こうなっていたという。

        古い運動靴

        おかあさん、
        じゅぎょうさんかん日に
        ぼくのげたばこをあけたとたんに、
        「まあ、古い運動靴がとってあるのね。すててしまいなさい。」
        と、いったでしょう。

        ぼくは、
        それをいわれるのを、ひやひやしてたんだよ、
        なぜかというと、ぼくの思い出がいっぱいあるくつなんだもの。
        二年のときのくつなんだよ。

        三ヵ所ほど、大きなあながあいているけど、
        よその学校へかわられた中野先生とも遊んだくつなんだ。
        暑い運動場もかけまわったし、
        雪の上もふんだし、野球のときもかつやくしたし、
        ぼくのたからものなんだ。

        今のくつも、もうだいぶんふるくなったけど、
        きょねんの運動会で、二とうをとったくつだし
        また、ためておくんだ。
        だから、
        「すててしまいなさい。」
        なんて、
        かんたんにいわれては、こまるんだよ


        《よくもこれだけ見事に言葉を殺せるものだ》と感嘆するしかない。

        端的に言えば――格調が違いすぎる。《およめにいった千賀先生》それがなんと《よその学校へかわられた》!


        というエピソードなども交えながら、ミステリの核になるトリックを、前例のない形で作り出す難しさなども語っている。

        すこし前に何冊か読んだ、コリン・デクスターの解説があったのもうれしかった 読んでいてわーいわーいと喜びたかった。


        最後に140ほどの書名索引がある、漏らさず読むには時間が足りないあぁ。

        >> 続きを読む

        2015/08/13 by 空耳よ

      • コメント 4件
    • 2人が本棚登録しています
      街の灯
      カテゴリー:小説、物語
      4.0
      いいね!

      • 日常の中に潜む謎を解明するというミステリを切り拓いた北村薫が、昭和初期を舞台に少女が謎を解き明かしていく奇妙な事件の数々を描いた新シリーズの1冊「街の灯」を読了しました。

        相変わらず、北村薫という作家は文章がよく練られていて、うまいし、本当に小説家らしい小説家だといつも思ってしまいます。

        この作品は昭和初年の東京を舞台にして、主人公は女子学習院に通う実業家の娘、花村英子。

        そして、彼女を学校まで送迎するために雇われた運転手は、女性だった。
        刀を持った暴漢をやすやすと追い払い、射撃にも並々ならぬ腕を持った彼女の名は別宮みつ子。

        英子は「男なら三軍を叱咤したろう」と書かれたサッカレイの小説中のヒロインを模して、彼女をベッキーさんと呼んでいる。

        そんな彼女にすっかり魅せられた多感な少女は、不思議な事件に挑んでいくんですね。

        江戸川乱歩が経営した下宿を想起させるような早稲田の地で起きた、下宿人の変死事件を推理する「虚栄の市」、英子の兄の友人が投げかけた暗号解読に挑む「銀座八丁」、避暑地の軽井沢の別荘で起きた死亡事件を描いた表題作「街の灯」の三篇が収録されていて、そのどれもがワクワクするような面白さに満ちている。

        喜劇王チャップリンが来日した翌日に、首相がテロで倒れる時代。
        あるいは、華族が開く豪華な祝宴の一方で、娘の身売りや餓死が日常である時代。

        大正デモクラシーが終焉を告げ、軍部の独走が始まっていく、きな臭い時代を点描しながら、現代に通じる昭和のひとつの時代を活写していくんですね。

        謎解きとともに、過去と現在を二重写しにする歴史ミステリの佳作だと思いますね。

        >> 続きを読む

        2018/05/23 by dreamer

    • 3人が本棚登録しています

【北村薫】(キタムラカオル) | 読書ログ - 読書ファンが集まる読書レビューサイト(著者,作家,作者)

会員登録(無料)

今月の課題図書
読書ログってこんなサービス
映画ログはこちら
読書ログさんの本棚

レビューのある本