こんにちはゲストさん(ログインはこちら) | 読書ログ - 読書ファンが集まる読書レビューサイト →会員登録(無料)


小川洋子

著者情報
著者名:小川洋子
おがわようこ
オガワヨウコ
生年~没年:1962~

この著者の本を読んでいる会員ランキング

このランキングは1日1回更新されます。
      博士の愛した数式
      カテゴリー:小説、物語
      4.1
      いいね! tadahiko masa920 mahalo caramel sunflower syuna Dies_irae
      • 世界観がすごく心地よかった。若さと老の対比も感じられ、今の時間をすごく大切にしようと思えた。また、人の優しさが心にしみる本だと思う。 >> 続きを読む

        2017/06/21 by よしりよ

      • コメント 1件
    • 他27人がレビュー登録、 132人が本棚登録しています
      博士の愛した数式
      カテゴリー:小説、物語
      4.3
      いいね!
      • 博士
        ルート
        数式
        記憶


        心温まる物語だった。
        博士が数式を愛していること。私自身学校の教育を受けたが、博士が物語でいっている数式は難しかったが、数式を知らずとも、数字に対して考え方が変わった。ただの数字、数、計算。そう思ってきたが、数字一つ一つに歴史があるということに気付いたこと。
        読書をすることで学ぶ言葉の一つ一つの大切さを学んできたが、
        数字もまた、大切な言葉だということを気付かせてくれた本でした。
        >> 続きを読む

        2016/04/10 by -water-

    • 他9人がレビュー登録、 36人が本棚登録しています
      薬指の標本
      カテゴリー:小説、物語
      3.9
      いいね!
      • こんなに穏やかで、それでいて本来はドキドキするのに、「早く私も」と思わせてしまう
        独特な空気感。非日常の空間。安部公房を思い出した。

        この本が私を小川ワールドに引き込んだ最初の本なのだ。
        >> 続きを読む

        2016/07/18 by ゆのき

      • コメント 4件
    • 他7人がレビュー登録、 26人が本棚登録しています
      猫を抱いて象と泳ぐ
      カテゴリー:小説、物語
      4.4
      いいね! 825 hinataboko
      • 小川さんの作品は「博士の愛した数式」に続き2冊目。


        産まれた時に唇がくっついたままで、
        産声を上げることのできなかった男の子のお話。

        すぐに手術が施されて唇には脛の皮膚が移植されたが、
        このことが、少年が無口であったことと関係するかは分からない。

        ある日、廃車になったバスの中で生活していたマスターに出会い、
        チェスを教わったことで少年の人生は大きく変わっていくのだが…。


        この物語にはまずチェスの素晴らしさとか奥深さが描かれている。
        初心者?何も知らない私には分からないけど、
        ルール知ってる人ならもう少し楽しめるのかなぁ?

        将棋や囲碁の方がイメージはしやすいけど、
        盤上に広がる無数の物語と、無言で交わす相手とのやりとりなど、
        神秘的で静かな世界が広がっている。

        それから様々なところで対面する死の様子。

        デパートの屋上で大きくなりすぎて、出られなくなった象のインディラ。
        家の壁と壁との間の隙間から出られなくなった少女のミイラなど。

        それぞれに対面する少年は大きくなることに恐怖を感じるようになる。
        一種のトラウマのようなものかな?
        その様子を見ているとこちらまで息苦しくなるような気分になる。

        チェスをしている場面は穏やかで優しい雰囲気なだけに、
        死の描写が際立って感じるのかもしれない。
        >> 続きを読む

        2016/09/05 by starryeyed

    • 他7人がレビュー登録、 23人が本棚登録しています
      人質の朗読会
      カテゴリー:小説、物語
      3.6
      いいね!
      • 旅先でゲリラに拉致され人質のとなった8人の日本人が、それぞれ忘れられない人生の記憶を紙に物語として書き起こす。僕ら読者は監禁された山小屋の中で粛々と開かれた彼らの朗読会を一話ずつ活字で追体験する。

        物語は、脈略に沿った感動ドラマではなく、どれもありふれた日常で起きた不可解、理不尽な出来事や出会い。それなのにどの作品も深遠な詩情のように心を揺さぶる。生と死が表裏一体の人生を讃える祈りのように厳かで静かな読後感。

        全ての人生に書くべき物語があることを見つめた著者のたわやかな眼ざしに小説家の領域を超えた光明を感じた。本の装丁にもその厳かな光が射し込んでいるように見えてきた。
        >> 続きを読む

        2017/05/13 by まきたろう

    • 他4人がレビュー登録、 17人が本棚登録しています
      ことり
      カテゴリー:小説、物語
      4.0
      いいね!
      • 他人と少し違った暮らしをしていると、周囲の人たちは勝手に
        「あの人はきっと不幸に違いない」「変人」と余計な想像を巡らす。
        軽い思い込みは怖い、知らず知らず簡単に人を傷つける。
        主人公の「小鳥の小父さん」は、ある意味“聖人”と呼ぶに近い。
        欲も無駄もなく、規則正しい生活を送り、小鳥と兄をこよなく愛し、
        独り静かに穏やかな暮らしを続けてきた。それも素敵な一生だ。
        最後は孤独死のようなカタチで一生を終えるけど
        だからと言ってそれが不幸だとは限らない。
        数少ない理解者もいたし、彼の死が発見されるまでそばにはずっと・・・。

        読書中、静かに時が過ぎていくような感覚を覚える不思議な作品。
        幸せは人それぞれだと考えさせられる。
        >> 続きを読む

        2015/06/20 by achiko

      • コメント 3件
    • 他2人がレビュー登録、 10人が本棚登録しています
      いつも彼らはどこかに
      カテゴリー:小説、物語
      3.5
      いいね!
      • 小川洋子さんは表現力が豊かだと改めて感じました。食べものも生きものも、文章を読んでいて実際に存在を感じられます。文が綺麗なだけでなく、丁寧さを感じます。個人的には帯同馬と竜の子幼稚園が好きです。帯同馬は、そういう存在を知らなかったので単純に面白いと思いました。早速ピカレスクコートをネット検索しました。竜の子はとても暖かい。この物語が短編集の最後で良かった、と思いました。 >> 続きを読む

        2015/02/13 by pechaca

    • 他2人がレビュー登録、 5人が本棚登録しています
      猫を抱いて象と泳ぐ
      カテゴリー:小説、物語
      3.2
      いいね! asa_chann
      • 今、読み終わったとこです。。。
        くぅぅ;;

        単行本に文庫とレビューがたくさんあるので
        ただ自分の今、読み終わった気持ちを・・・
        なんという作品なんだ。
        静かに語られながら。
        あぁあの最後は・・・もう。


        小川さんのを読むのは「ことり」に続いて2冊目。
        いろいろ読んでいこう。

        他の本、読めない。
        今夜は余韻に浸る。


        >> 続きを読む

        2016/10/03 by 降りる人

      • コメント 4件
    • 他2人がレビュー登録、 12人が本棚登録しています
      世にも美しい数学入門
      カテゴリー:数学
      4.0
      いいね!
      • *第一部 美しくなければ数学ではない
        *第二部 神様が隠している美しい秩序

        本書の第一部は資生堂のトークショー「ワードフライデイ」を元にした構成。
        第二部は小川さんが改めて藤原先生に伺ったお話をまとめたもの。

        数学が大の苦手で、一度も好きになったことがありません(^^;)
        ではなぜ手に取ったかというと、数学アレルギーの私でも興味の惹かれることがたくさん書いてあったからです。
        藤原先生と小川洋子さんのやりとりもおもしろく読ませてもらいました。

        ―三角形の内角の和は平べったい三角形を書いても、顕微鏡で見るような小さいのを書いても、校庭に馬鹿でかいのを書いても、どうやってもぴったり180度になる。

        ただ「こういうものだから!」と覚えるよりは、少し見方を変えるだけで興味がいろんな方向へ変化していく。数学に対してそんな印象を持ったのは初めてです。
        天才数学者のお話もそれぞれ良いのです。

        ―天才数学者の生まれる条件は
        1.何かにひざまずく心を持っている
        2.美の存在
        3.精神性を尊ぶ

        美しい定理をたくさん生み出したラマヌジャンのことが書かれていました。
        彼の育ったインド タミルナドゥ川の最南部には美しい寺院がたくさんある。
        ヒンズー教の深い地域でひざまずく心がある。
        そして彼の家はカーストの一番上の位で、精神性を尊ぶ。

        ・・・なんて。
        すごく興味をひかれませんか?
        頭の中に自然と入ってくる感覚を、数学で持てたことにびっくりしています。
        それぞれの定理を理解したかと言えばほぼ出来ていない・・・のですが、この美しさは自分の人生において、大きな発見です。
        >> 続きを読む

        2016/09/12 by あすか

      • コメント 18件
    • 他2人がレビュー登録、 3人が本棚登録しています
      物語の役割
      4.0
      いいね!
      • 物語は特別なものではなく、誰もが日々作り出しているもの。作家の仕事は、それらの物語を自らの感性でキャッチし、「言葉」によって形作ることである。つまり、「言葉は常に遅れてやってくる」。
        第二部の、小川洋子さんが一つの小説を生み出すまでの過程は興味深い。小説を書いてみたくなる。柳田邦男氏の息子さんのエピソードが印象的だった。人間は、物語を必要とする生き物なのだ。
        >> 続きを読む

        2014/07/25 by seimiya

    • 他2人がレビュー登録、 4人が本棚登録しています
      最果てアーケード
      カテゴリー:小説、物語
      4.3
      いいね!
      • 連作短編集。アーケードに並ぶ不可思議なお店たちが面白くて愛おしい。
        それだけに最後は読むのがつらかったですが、引き込まれるように読み進めてしまいました。
        主人公の少女を含めて、それぞれの登場人物が本当に愛くるしいです。漫画にもなってるようですが、確かに絵になるお話だと思いました。
        >> 続きを読む

        2015/02/13 by pechaca

      • コメント 1件
    • 他1人がレビュー登録、 6人が本棚登録しています
      まぶた
      カテゴリー:小説、物語
      3.5
      いいね!
      • 15歳のわたしは、高級レストランの裏手で出会った中年男と、不釣合いな逢瀬を重ねている。
        男の部屋でいつも感じる奇妙な視線の持ち主は?「まぶた」。
        母のお気に入りの弟は背泳ぎの強化選手だったが、ある日突然左腕が耳に沿って伸ばした格好で固まってしまった「バックストローク」、など、現実と悪夢の間を揺れ動く不思議なリアリティで、読者の心をつかんで離さない8編を収録。

        初めての作家さんです。
        『博士の愛した数式』が有名なので、その長編を読む前に…と思い、短編集から試してみることにしました。

        短編8本。

        正直なところ、まったく面白くありませんでした。
        というか、僕が小川さんについていけていないんだと思いました。
        この世界観は理解できない。
        村上春樹さんと同じ感じで、寓話然とした不思議な物語が続きます。

        『詩人の卵巣』
        眠りにおちたらまぶたの裏に森が現われて、眠っている実感はある(枕におちた自分の匂いや、外を走る車の音は聞こえる)のに、森の中の一本道をあるくと、昼間出会った乞食の少年と博物館の老婆が待っていて、残り少ない死者の銀髪で機を織っている…。

        『バックストローク』
        母親の異常な愛情に包まれて育った弟は背泳ぎの選手。
        ある日、突然左腕が背泳ぎのバックストロークをかいたように高く掲げたまま動かなくなり、右腕だけで生活するようになります。
        何年かしたのち、姉が背泳ぎを見せて欲しいと弟に頼むと、背泳ぎを披露しているうちに動かなかった左腕がポロリと落ちる…。

        きっと、お好きな人にはたまらない世界観なのだと思います。
        でも僕には無理です。
        理解を越えています。
        村上春樹さんに続いて、もう読まないリストに入った作家さんになってしまいました。
        >> 続きを読む

        2015/03/30 by 課長代理

      • コメント 27件
    • 他1人がレビュー登録、 8人が本棚登録しています
      生きるとは、自分の物語をつくること
      4.5
      いいね! oka-azu
      • 河合隼雄さんと小川洋子さんの2回の対談と、河合先生の死後、小川さんによって綴られた「少し長すぎるあとがき」をまとめたもの。
        あとがきが「長すぎる」のは、予定されていた3回目の対談が果たされなかったため。

        河合先生の著書を読んだ経験がないため、先生の言葉に触れたのは今回が初めてでした。小川洋子さんの独特な世界観にも目を見張るものがありますが、河合先生の考え方の深さにはさらに驚いてしまいました。

        対談という形であり、お二方とも堅苦しい言葉を使わずお話されているので、とても読みやすい。しかし、心に突き刺さった文にラインを引いていけばあっという間に真っ赤になってしまうくらいに、内容には考えさせられるものがあります。

        対談で最初に語られていたのは、映画「博士の愛した数式」について。私は小説を読んでから映画版を観て、かなり批判的な印象をもってました。しかし、河合先生の鋭い着眼点と、作者である小川さんも驚かれるような考察を読んで、感服しました。自分の浅はかな観方が恥ずかしくなります。


        このところなかなか読書が進まず、なんとなく手に取った一冊だったのですが、本の方から寄り添ってきてくれました。ありがたいことです。
        >> 続きを読む

        2015/12/15 by pechaca

      • コメント 2件
    • 他1人がレビュー登録、 6人が本棚登録しています
      シュガータイム
      カテゴリー:小説、物語
      2.5
      いいね!
      • >sunflowerさん
        コメントありがとうございます。
        評価を低くつけたのは私がこの手のもやもや恋愛話が苦手だからです。
        だからこそ、食べ物の描写に目がいってしまったのかも(笑
        雰囲気は好きなのですが、ウジウジするなー!と叫びたくなるところもありました。
        >> 続きを読む

        2012/05/09 by sky

      • コメント 2件
    • 他1人がレビュー登録、 9人が本棚登録しています
      ミーナの行進
      カテゴリー:小説、物語
      4.2
      いいね! hinataboko
      • 小川洋子さんの話の中で知ってる限りはハッピーエンドに近いんじゃないだろか。
        私は何故か読む前から、「ミーナは死ぬな」と思っていた。
        だって、小川洋子さんなのだから。
        喘息だかの発作を起こす度にそう思ったが

        成人になってる。
        もう、これだけでハッピーエンド!
        不思議テイストもある、辛いこともある
        でも、主人公もミーナも生きて交流がある!
        もう、これハッピーエンドだよね。
        >> 続きを読む

        2016/07/25 by ゆのき

    • 他1人がレビュー登録、 6人が本棚登録しています
      妊娠カレンダ-
      カテゴリー:小説、物語
      3.2
      いいね!
      • 妊娠した姉を見守る妹の淡々とした叙述の中に、きわめて周到な悪意を仕込んでみせている。 >> 続きを読む

        2015/10/15 by aaa

    • 他1人がレビュー登録、 11人が本棚登録しています
      沈黙博物館
      カテゴリー:小説、物語
      3.3
      いいね!
      • 博物館を作ることも面白いが
        私は沈黙の伝道師が好きだ

        快活な少年が、ある日突然、沈黙の伝道師になる

        博物館技師の主人公は、もうこの村から抜け出せない

        私も抜け出せない
        >> 続きを読む

        2016/07/24 by ゆのき

      • コメント 2件
    • 他1人がレビュー登録、 4人が本棚登録しています
      アンネ・フランクの記憶
      カテゴリー:日記、書簡、紀行
      4.0
      いいね!
      • アンネ・フランクと関わりのある人物や建物を訪ねる旅。残忍なやり方でユダヤ人を追いつめる文章は、心がいたむ。歴史の教科書に出てくる人物というよりも、1人の少女は現代の世界にしっかりと生きた証を残している。 >> 続きを読む

        2015/04/08 by おれんじ

      • コメント 2件
    • 1人が本棚登録しています
      刺繍する少女
      カテゴリー:小説、物語
      4.0
      いいね!
      • 表題作を含む10編からなる短編集。

        著者の作品には、少女と紳士の恋であったり、妄想と現実の区別がなくなった老女であったり、一風変わった行商であったり、何度も使われるモチーフがいくつかあります。それなのに、似たようなモチーフを使いながら、こうも別の作品が出来上がるのかと、改めて感心しました。
        少し前に著者の短編集『まぶた』を読んだところだったので、なおさらそう思ったのかもしれませんが、それはまるで、著者の使うモチーフのひとつ<刺繍>のようで、突き詰めれば単純な図柄を複雑に組み合わせることで、さまざまな模様が生み出される、そんな印象を受けました。

        そして、著者は長編もさることながら、短編も素晴らしい。
        私は、難しい言葉を並べ立て、うん蓄をふんだんに織り交ぜ、屁理屈をこねくり回したような作品が大好物です。一方、著者の場合、言葉は簡単、出てくる事柄は常識の範囲内、語り手の感性はおおむね凡人。それなのに、どこか惹かれてしまうのです。

        本作を読んで、ようやく理由がわかった気がしました。
        リアルなのだけれど、どこかに齟齬がある。どこかに齟齬があるのはわかっているのに、そこに疑問を抱かない。はっきり見えているようでふわふわと定まらず、読後は夢から覚めたような気分なのです。
        <リアルな夢>と言ったら座りの悪い言葉ですが、「そうそう、こんな夢見たことある気がする」と感じるような・・・
        そんなところに惹かれてしまう気がします。

        ちなみに、本作中では「森の奥で燃えるもの」が好きです。
        <ぜんまい腺>を取り出して収容所に入ることは、はたして本当に幸せなことなのか―――、<ぜんまい腺>は取り出してしまってもいいものなのか―――?
        青い炎と赤い炎、その色が意味するものを考えさせられました。
        >> 続きを読む

        2014/11/21 by ぶっちょ

      • コメント 1件
    • 8人が本棚登録しています
      偶然の祝福
      カテゴリー:小説、物語
      5.0
      いいね!
      • 以前は、女性作家と日記、手記などは読まなかった。読書は空いた時間に、それも出来るだけ現実から遠いものを選んでいた。海外の小説が多いのも当時の気持ちや環境から距離があったからかもしれない。
        時間に少し余裕が出来てベストセラーなども読むようになり、時間があまって来ると、本来の好奇心からかさまざまなジャンルのものを読み、手に取ったことがなかった女性作家のものが心に響くことに気がついた。

        小川さんは長い間記憶の中で「博士の愛した数式」を書いた人だった。それがほかの作品も読んでみたい、と読んだ途端好きな作家に入ってしまった。
        どの作品も独特の味があって、ちょっと変わっている。

        余りたくさん読んでいないので、この作品に限って思うことは、たとえでも身近な描写でも大胆で奇妙な現実の雰囲気が纏わりついている。
        なにかが消え、なきかがあらわれる。消滅していく流れがあり、そこには深い悲しみが沈んでいる。そして再生は全く違った形でありながら、稀にその悲しみを埋めるような現象が起きたりする。
        別れていくことが当然の人の営みのように、消えて行く。奇妙な現象が手を繋いで輪を作り、その中に作者の現実や、生身の姿を髣髴とさせる、低いベース音のように、そんな姿が奥底に流れ続けているような、短編集だった。


        「失踪者たちの王国」
        これは何かで読んだことがあった。それ以後ニュースや、ドキュメンタリー番組は気になってよく観ていた。年間8万人前後の失踪者(または行方不明者)がいると言う。私の身近なところでも昨年一人が、家を出たまま行方が知れない。事業に失敗していなくなったのだがその後見つかったという話を聞かない。
        ミステリなども家出の後行方が知れないという書き出しや、事件の始まりになっているものも多い。
        ここでは、知っている人がふっといなくなったという。帰って来ない友達の叔父さん、歯医者さんに行って入れ歯を置いたままいなくなったおじいさん、先生の婚約者は「ちょっと行ってくるよ」と言ったままいなくなった。
        叔母さんは一人になっても働かないで、家財を売って暮らしているようだったが、嘔吐袋を集めていた。そして何も言わず綺麗に失踪した。

        失踪した人は、垢を落として生まれ変わったように楽になるのだろうか、反対に現実の重みが降りかかってくるのだろうか。
        一度踏み込んでみたい気もするが、こちら側にいるとあちらは陰の中にいるようで薄ら寒い。

        不思議にも彼らは私を慰めてくれる。王国ははるか遠いはずなのに、彼らは洞穴に舞い降りてきて、いつまでも辛抱強く、そばに寄り添ってくれる。その吐息を私は頬のあたりに感じることができる



        「盗作」
        聞いた話を書いて賞を貰った。将来を嘱望された水泳選手が片腕が上がったまま動かなくなってしまったという。その後病棟の談話室に英語版の「BACKSTROKE」と書いてある古い本を見た。

        背泳ぎの選手だった弟が、左腕から徐々に死に近づいていく話だった。私が書いたのと、彼女が語ったのと同じ話がそこにあった



        「キリコさんの失敗」
        なくしたものを見つける名人のキリコさんの話。リコーダーをなくしたら木で作ったのを持ってきてくれた。海外旅行の土産の万年筆で毎日いろいろなことを書いた。インクがなくなってうろたえているとキリコさんが町の文房具屋さんで補充のインクを買ってきてくれた。
        ある日キリコさんの自転車にパンが置かれていた。毎日それを分けて食べていたが、パン職人が自殺した。そこにキリコさん宛ての手紙があったという。キリコさんはすっかり元気をなくしてしまった。
        無くした万年筆は、むいた栗の皮に紛れて捨てられ焼却炉で溶けた。
        キリコさんは、骨董の壷を頼まれて渡しに行って人違いをした。サインをしているのを見るとなくなった万年筆と同じものだった。買い取ると言うとキリコさんの手に乗せてくれた。だがその万年筆を持っていた買い主は偽者だった。
        キリコさんはパン屋さんのことや、だまされて盗られた骨董品が気にかかったのか去っていった。



        「エーデルワイズ」
        私の本のファンで、衣服にポケットを作り体中に本を入れて歩いている男に出会った。手紙をもらったが、本の一部を寄せ集めた意味不明の奇妙な文章がぎっしり詰まっていた。男は私の困惑にも構わず「エーデルワイズ」の歌を歌ってくれた。付きまとわれていたが、雨の日に転んで本を全部だめにした。そしていなくなった。



        「涙腺水晶結石症」
        飼い犬が病気になったので、医者に見せようと雨の中を歩いていた。
        車で通りかかった男が犬と一緒に乗せてくれたが、獣医だといった。
        犬を見て涙腺水晶結石症だと言ってまぶたをしぼって石を取り出してくれた。

        「さあ・・・・・」
        よく見えるように彼は掌を私に近づけた。それは白く半透明な結晶だた。ちいさな金平糖状の粒がいくつもくっつき合って、一つの精密な形を成していた



        「時計工場」
        旅行記の取材で行った島で、籠に一杯の果物を背負った老人に合う。首に黄色い蝶のあざがあった。ホテルの図書室で識者の男に出会う。彼の首にも黄色い蝶のあざがあった。
        小説を書くという苦しみが象徴的に語られている。



        「蘇生」
        息子の睾丸がはれていた。そこには水の入った袋があるという。
        手術のために入院したが、同室になったおばあさんは、「アナスタシア」という名前だといって、家系や歴史や親族についてとうとうと語る。どう見ても彼女は日本人だった。周りにはAの文字を飾った刺繍が溢れていた。退院のとき刺繍糸のセットをあげるととても喜んで写真を撮ってくれた。切り取った袋は貰って帰った。
        今度は私の背中に腫れ物が出来た。水が溜まっていると言う。簡単に袋を取って手術が終わった。その袋も貰って帰った。
        ある朝突然言葉が出なくなった。言語療法士にも見てもらったがよくならない。
        原稿用紙の前に座ると、言葉の壁が見えた。積みあがっているのは私が書いた言葉のようだ。
        言語療法室に行ったらアナスタシがいた、喋り続けるので、言葉の繭にくるまれているように見えた。「アナスタシア」は「蘇生」と言う意味だという。
        干からびた二つの袋を飲み込んだ「蘇生よ、蘇ること」アナスタシアの言葉が聞こえてきた。
        「アポロ」と呼んだら犬の耳がぴくっと動いて言葉が戻ってきた。



        なにかもの悲しい、人の営みとささやかな願いと、不思議な出来事が溶けあった作品。やはり好きだなぁと思う。
        >> 続きを読む

        2014/10/02 by 空耳よ

    • 5人が本棚登録しています

【小川洋子】(オガワヨウコ) | 読書ログ - 読書ファンが集まる読書レビューサイト(著者,作家,作者)

会員登録(無料)

読書ログってこんなサービス
映画ログはこちら
読書ログさんの本棚

レビューのある本

愛は炎のように (ハーレクイン文庫)