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「指輪物語」(「ロード・オブ・ザ・リング」のタイトルで三部作からなる映画にもなっている)の前日譚。本作自体も「ホビット」というタイトルで三部作からなる映画になる。(2013年4月時点では、その第一部のみ公開されている)「指輪物語」の知識は特に必要ないが、本作品と「指輪物語」に共通する設定があるので、それを知っておくと、さらに楽しめる。(勿論、知らなくても十分、楽しめる。)ちなみに「指輪物語」の中でも、本書で描かれた冒険のさわりだけは語られるので、両作品とも独立した作品として読む事ができる。主人公はホビット族のビルボ・バギンズ(ちなみに「指輪物語」の主人公、フロド・バギンズは彼の養子)ある日、ホビット庄に魔法使いガンダルフがやってくる。ガンダルフは、ビルボの母親のことはよく知っていたが、ビルボとは、少し話したことがある、という程度の知り合い。そのガンダルフと話をしていると、キナ臭い冒険の匂いに気が付く。そこで、ビルボは急いで話を切り上げて、ガンダルフと別れるが、翌日、ビルボの家に13人のドワーフが押しかけてくる。最後にはガンダルフまで登場。訳も分からずガンダルフやドワーフ達をもてなすことになってしまったビルボ。ドワーフ達は、なんと「邪竜スモーグに奪われた故郷と、そこにある財宝を取り戻す計画」を話しているではないか!ガンダルフはビルボの意向を全く聞かず、勝手にドワーフ達の冒険の同行者に指名してしまったのだ。しかも、ビルボは冒険とは全く縁のない生活をしていたのに、ドワーフ達には「その道のスペシャリスト」などと吹き込んでいる。これ以上ないほどの「ムチャ振り」ビルボの母親の家系には、時折、冒険に出て行ってしまう者もいた、という話はあるが、ガンダルフがビルボの何を見込んだのかは謎。強いて言えば、魔法使い独特の「勘」だろうか。当然と言うべきか、序盤はビルボには全くいい所がない。「指輪物語」で中心となるアイテム、冥王サウロンの「一つの指輪」を手に入れるくだりが唯一の見せ場と言ってもよい。(本作の中では「一つの指輪」は単に「つけると姿を消すことのできる魔法の指輪」としか扱われない)「ムチャ振り」をしたガンダルフは、通行するのに一番、危険な場所を目の前にして、「他に大事な用事がある」と言って、一行と別れてしまう。ビルボの活躍が始まるのは、ここから。魔法の指輪、という切り札を持っていたというのもあるが、「開き直り」もあったのかもしれない。「指輪物語」がシリアスな感じであったが、本作は、どこかのんびりした印象を受ける。本書の中には、様々な国で出版された際の挿絵が数多く掲載されているが、その絵柄が妙に明るい感じ(子供向けのためか?)になっているせいかもしれない。だが、全編「幼稚」という訳ではなく、現実社会でも起こりそうなシーンもいくつかあった。例えば、邪竜スモーグが死んだ後、途端に、その「遺産」をめぐる争いがおきたり、そんな状態で、にらみ合っていたのに「共通の敵」が現れた瞬間、団結したり・・・。これだけではないが、所々でオブラートに包んではいるが、「人間の醜さ」を風刺していたのかもしれない。一番、印象的だったのは、ビルボが冒険を終えて、故郷ホビット庄の自宅に帰ってきた後のこと。結局、ビルボは「元の生活」には戻れなくなってしまっていたのだ。表面上は「元の生活」に戻れたように見えるが、冒険がビルボの中の「何か」を決定的に変えてしまったらしい。そして、それは周囲のホビット族の者もなんとなく感じているようで、以前と同じように付き合っているように見えて、どこか疎遠。冒険のおかげで、ドワーフやエルフ、魔法使いに自分の名が知れ渡るほどの「名誉」を得たが、その代わり、身近だった者たちとの「溝」ができてしまったのだ。果たしてビルボにとって、「冒険」に出た事は、良かった事なのだろうか・・・。ちなみに「指輪物語」でも、ラスト、主人公フロドは比類ない「名誉」を得るが、その代償として、旅の途中で受けた傷は「癒えることのない傷」となって、フロドをじわじわと苦しめる。両作品の最後が似たような感じなのは、狙ってのことだろうか。おそらく、意図的に、そうしているのだと思う。 >> 続きを読む
2013/04/27 by Tucker
【私は色々と誤解しておりました (・・;)】 本作は、サトクリフのオリジナルによるアーサー王物語です。 アーサー王伝説は、相当昔に『中世騎士物語』/トマス・ブルフィンチで読んだことがあるのですが、あれは確か物語という感じではなく、伝説にまつわる色々なエピソードを紹介するというものだったと記憶しています。 本作は、どこまでがサトクリフのオリジナルなのかはよく分からないところもあるのですが、私、色々な点で記憶違いをしていたところがあったようです。 読みながら、「えー!! そうだったっけ?」という点がいくつもありました。 アーサー王伝説自体は非常に有名で、皆さんもご存知だと思いますので、詳しい粗筋をご紹介することに代えて、私が誤解していた点をいくつか挙げてみたいと思います。〇 アーサー王が岩から引き抜いた剣はエクスカリバーではなかった アーサー王伝説の有名なシーンの一つに、若きアーサーが岩に突き刺さった剣を抜き、これによって王たる地位を得るというエピソードがあります。 本件では、剣が突き刺さっているのは岩ではなく、大理石の台座とその上に乗っている金床であり、剣はその両方を貫いているということになっています(何だかそういうのも読んだか何かの挿絵で見たような記憶もあるので、そうだったのかもしれません)。 私、この引き抜いた剣こそがエクスカリバーだとばかり思い込んでいたのですが、そうではなかったんですね。〇 エクスカリバーは湖で与えられる では、聖剣エクスカリバーはどうやってアーサーに与えられたかというと、魔法使いのニムエの導きにより、湖から突き出した腕から与えられるのでした。 そう言えば、何だか湖から剣を握った腕が突き出しているシーンっておぼろげな記憶もあるのですが……(ビアズリーかラッカムか、その辺りの絵に無かったっけ?)。〇 エクスカリバーは鞘に魔力がある そうだったのか! もちろん剣も聖剣なのですけれど、鞘にも魔力があり、この鞘を身につけていると斬られても一滴の血も流れないのだそうですよ。 でも、本作では妖姫モルガンの奸計により、アーサーは鞘を失ってしまうのです。 その後、アーサーがエクスカリバーを入れている鞘はオリジナルのものではなく、魔力の無い作り直した鞘ということになっています。〇 円卓は150人の騎士が座れるものだった そんなにでっかかったのかい! 私のイメージでは、アーサー王の枢要な騎士数名のみが座れる程度の普通サイズだと思っていたのですが、何と150人もの騎士が座れるとは! それにしてもどんだけでっかい円卓なんだ!〇 湖の騎士ランスロットは醜男だった え゛~!! 私のイメージでは眉目秀麗な華麗なイケメン騎士という感じだったのですが、本作では醜男だと描かれています。 なんかイメージ崩れちゃうなぁ。〇 ランスロットは、以前の名前をガラハッドといった あれ? そうだったっけ? ガラハッドというのは別の円卓の騎士だとばかり思っていたのだけれど……。 ランスロットの旧名だったの? ……分かりました。 その後のエピソードに出てくるのですが、魔法にかけられたランスロットとエレイン姫の間にもうけられた子供にガラハッドの名前が与えられるのですね。 本書は、ブリテン王となったアーサーと円卓の騎士たちの様々な冒険物語が語られます。 そして、最後は、パーシヴァルが円卓の騎士となるところで終わります。 いえ、ご存知の通り、アーサー王伝説はこれで終わりではありません。 本書の最後でもほのめかされている通り、この後、あの聖杯サーガが始まるのですよ(サトクリフも三部作で最後の戦いまで書いています)。読了時間メーター□□□ 普通(1~2日あれば読める) >> 続きを読む
2020/12/12 by ef177
「指輪物語」のトールキンによる古語で著わされた伝承物語の現代英語訳の日本語訳です。源氏物語を谷崎訳で読むようなもの?でしょうかね。アーサー王にまつわるエピソードはいろいろな文学や映画に当たり前に登場してきますね。いわゆる教養系のものでは全然なくても。「ミニオンズ」の「キング・ボォォォォブ!!」のネタも、「ナイト・ミュージアム3」のヒュー・ジャックマンのアーサー王のカメオ出演も、あげればきりがないでしょう。カズオ・イシグロの「忘れられた巨人」に登場する「サー・ガウェイン」という騎士についてあまりにも無知であったため、読むのを中断し、これをまず読んでみることにしました。本作一作だけ読んでも大したことはわかりませんが、いろいろな意味で意義がありました。でも私が抱いた「忘れられた巨人」のサー・ガウェインへの違和感がますます大きくなってしまったことも確かです。┐(´-`)┌ さて、それはさておき、本書は日本語訳なので、トールキンが訳した古語の翻訳の見事さはうかがい知れませんが、中世(14世紀ごろ)の英国の文化や慣習や価値観を想像するに大いに参考になる貴重な書物かと思います。日本に出ている一般書でそんな書籍はほとんどないと思うので。しかもこの本はすごく簡単に読めちゃいます。トールキンの考えではチョーサーが中世英国の騎士道の世界を知る唯一の手掛かりというのではあまりに貧弱だということのようです。どうやら英国では「作者」が誰かということに伝統的に重きを置かない傾向があったようです。物語の国では物語ること、つまり多くの人々による「伝承」を大切にしてきたのでしょう。シェイクスピア作品が英文学研究の分野において必須なのは、それ以前の文学が作者不詳になってしまっていてそもそも研究できないという事情もあったのかもしれません。(ストーリー)アーサー王と円卓の騎士やその家族と家臣たちが集うクリスマスの祝いの席に、全身が緑色の巨漢の騎士が乱入した。争いではなく友好を求めに来たと言いながらも、緑の騎士は宴席の騎士に向かって恐ろしい挑戦を突きつける。「勇気がある者は、わが首をこの斧で一撃のもとに打ち落としてみるがよい。ただし、王様が、その者へのお返しの一撃を拙者にお与えくださるならばの話だが……」大斧でまず自分へ渾身の一撃を加えよ。そして1年と1日後、同じ一撃を自分がその者にお返ししよう。受けて立つ勇者はいないのか?という訳です。アーサー王に対するこの挑戦に受けて立ったのは甥である若き騎士、サー・ガウェインでした緑の騎士の差し出す首に一太刀浴びせるとその首は胴体を離れながらもなお死せず、ガウェインに言い渡します。お前が恥知らずの卑怯者でないというのなら、1年後に必ず自分を探し出し、自分の反撃の一太刀を受けに来るのだぞ。と。やがて時が満ち、その約束を守るために、自分の死を覚悟しつつ、ガウィエンは緑の騎士を求めて旅に出るのでした。おぉぉ。なんだかわからないけれど、ロマンですねぇ~。この後に高潔な彼への大いなる試練が待ち受けているのですが…おいおい。これって図書館ではYAだったんですけどもぉ~~。な色仕掛けで誘惑シーンなんかも出てきますので、お楽しみに…じゃなくご用心を。(笑)確かにこのエピソードには英国人気質っていうのが現れているように思えますね。それと、この表紙絵の緑の騎士はちょっと野獣みたいですがこれはちょっと違います。猛々しくも巨大で全身(顔も髪も)緑色にも拘わらず「美しい男」とされています。着衣も豪華で長い髪も肩を覆う長さで切り揃えられているとありました。サー・ガウェインも若く美しくて謙虚で誠実で勇敢で愛情深く正直で礼儀正しい青年紳士ときています。円卓の騎士の中でも人気があるということですが、こういう人だったのですね。これぞ騎士道の鏡!私はランスロットしか知らなかったわ~(^^;)本作にはほか3篇の詩と物語と歌が収められています。真珠(パール) キリスト教の世界観を幼い愛娘を亡くした父の悲しみの姿を通して描く長編詩サー・オルフェオ ギリシア神話のオルフェウスの英国版リメイク作品 英国人がギリシア、ローマの文化の末裔であったことを信じ、誇りにしたいのかな?ガウェインの別れの歌 愛のこもった美しい惜別の歌 元々ガウェインの歌ではなく、トールキンが仕上げたものらしいです真珠(パール)にもいろいろ思うことはありますが、超長くなるので諦めます。どなたかお読みになってレビューしてください。<(_ _)> >> 続きを読む
2017/11/16 by 月うさぎ
J.R.R.トールキンのホビット。指輪物語のちょっと前の話を描いたファンタジーの元祖にしてロールプレイングゲームの先祖です(トールキン->(広まる)ファンタジー小説->(なりきって遊ぶ・ゲーム化)テーブルトークRPG->(コンピュータ化)ローグ->(広まる)ドラクエ等のRPG)->(なりきって遊ぶ)MMO RPGの流れ)。原著も読みましたが、ホビットは指輪物語やシルマリルの物語より童話に近く、英語も他の2つに比べれば読みやすいです。難易度で言うとホビット<指輪物語<シルマリルの物語ですね(シルマリルの物語は巻末に上のエルフ語辞典も付いているので、エルフ語でエスプリを効かせたい人はチャレンジしてみても良いかも)。指輪物語に出てくる一つの指輪の因果の元はシルマリルの物語の第3紀の始まり辺りを読まないとわからないのですが、なぜホビットが指輪を捨てに行かなければならなくなったのかの因果はこの本でわかります。ミッションをこなす責務の重さが圧し掛かってくる指輪物語に比べて、こちらはユーモアもあり、気楽に読めると思います。子供への読み聞かせにもお勧めです。ファンタジー好きにお勧め。 >> 続きを読む
2012/11/18 by Shimada
【山本史郎】(ヤマモトシロウ) | 読書ログ - 読書ファンが集まる読書レビューサイト(著者,作家,作者)
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