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ケラリーノ・サンドロヴィッチ

著者情報
著者名:ケラリーノ・サンドロヴィッチ
けらりーの さんどろう゛ぃっち
ケラリーノ サンドロヴィッチ
生年~没年:1963~

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      犬は鎖につなぐべからず 岸田國士一幕劇コレクション
      カテゴリー:戯曲
      5.0
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      •  先週の出来事です。今日も今日のうちに帰れないと嘆きながら、ペットボトルのペプシコーラを一口、そして思わず
        「モスバーガーの味だ」
        と漏らしたのはいいものの、やはり帰宅する目途はたたない。ふわっと意識が宙を浮き、左手をスラックスの後ろのほう、要するに臀部に伸ばすと昼休憩での惨事、あの事件の痕跡と逢着した。あのバカ犬め、バカ犬め……。
         お昼ごはんを食べたあとの、オフィスへもどる抜け道がちょっとした住宅街に近いせいか、犬の散歩に精をだす婦人がやたら多い。ここにも犬を連れた奥さんはいるのだ。しかもこの辺りの奥さんには(にも?)不文律に縛られない人もいて、つなぎをしないでゆうゆう散歩しておられる。はじめて見たときはそれは目を疑いましたが、郷に入っては郷に従えとあるように、もしくは、じぶんも犬を連れた気分で平然とやり過ごしていました。ところが、じゃなくて案の定、うしろからガブッとやられましてね、いいえ体はまったくの無傷で、うまい具合に布地のみ痕が残りました。なにか知りませんけれど弁償するとか言ってくるもんですから、
        「それがこれは安物ではないんです」と返せば、ほのかに申し訳なさそうな表情を浮かべたので、「いえいえ、19,800円です」とその場をあとにしました。
         それでも私は声高らかに訴えたい。犬は鎖につなぐべからず。そういえば、このごろ駅から歩いて帰路に着くあいだに必ず吠えてくるあの犬を見かけていない。私が通り過ぎる手前、一目散に駆けつけてくるのだが、鎖のせいでどうしても飛びつけず、透明な壁にぶつかるように頓挫してしまう。それを見るたびに可哀想になったり、嬉しくなったり、家に帰った心地がしたりするのだ。こんなに私の帰りを待ってくれる人はついにいなかったのではないか? だからもう一度訴えたい、犬は鎖につなぐべからず。
         それでは本のご紹介。表紙に目をやると、なんだかクラリーノ・サンドロヴィッチさんの戯曲を岸田國士が訳した古い本の復刻版に見えるが、その反対で、岸田國士の原作の戯曲を、日本生まれのクラリーノ・サンドロヴィッチが読みやすく編纂した本なんですね。この劇作家の奥さんは緒川たまきさんらしいですぞ。羨ましいですね。わりとぼくのタイプです(最近の一押しはNHKの桑子アナ)。いろいろな短篇の芝居がコラージュされており、これを読めばおよそ名前しか聞く機会のない岸田國士の世界を垣間見ることができるのです。もちろん岩波書店や新潮社から全集も刊行されています。しかし、あたらしい岩波の全集は旧かな表記なので、それに慣れていない人は取っつきにくくて仕方がない。そこで奥さん、じゃなくて皆さんに岸田國士のおもしろさに触れてほしくてレヴューしました。さり気ない人間の機微がつまった澱みなく交わされる会話文には、それでいて余白もあって、読者各々のイメージがうまくテキストに投影される。たとえば「驟雨」に出てくる、新婚旅行早々に愛想を尽かされる男なんて定めし身近にいるだろう。そうやって手繰り寄せたあとに遠目からも眺められるのが岸田國士のほんとうの魅力であり、頭のなかに特設された劇場まで読者を手びきするテキストのみが本として読まれる。シェイクスピアにしてもブレヒトにしても。言うまでもなく、この劇場はペット持ち込み可。シェイクスピアの戯曲でなくても、鎖なしの犬が、何食わぬ顔して見知らぬものを拾ってくる。
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        2016/11/13 by 素頓狂

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