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酒見賢一

著者情報
著者名:酒見賢一
さけみけんいち
サケミケンイチ
生年~没年:1963~

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このランキングは1日1回更新されます。
      後宮小説
      カテゴリー:小説、物語
      4.0
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      • 【な、なんと! こ、これは史上最低の戦いだぁ…(゚д゚lll)】
         地上のどっかにある中国っぽい国。
         そこの皇帝が腹上死しました(だから後に諡して腹宗なんて名前をつけられたわけなんですが)。
         帝位は弱冠17歳の皇太子に継がれたわけなのですが、そうなると後宮も新たに作り直しになります。
         宦官たちは、それぞれ地方に散って後宮に入れる宮女候補を探しにかかります。

         緒陀(おだ)というド田舎にも宮女募集のお触れが立ち、その地方に住んでいた銀河(もうすぐ14歳)は「応募してみよっかな~」とか考えています。
         後宮の実情については部外秘で固く口留めされているため、その実態は庶民が知るところではないのですが、噂だけは色々流れてきます。
         銀河が聞いた噂は、宮女になると『三食昼寝付き、贅沢し放題』というものでした。
         父親が止めるのもきかず、銀河は宮女に応募し、まぁ、それなりに可愛らしいところもあったのでしょう、採用されて仮宮(宮女養成所みたいな所です)住まいを認められ、宮女としての修養を積むことになりました。

         で、この後、しばらく銀河の仮宮での生活が描かれるのですが、まぁ、本作はフィクションなんで結構いい加減でありまして、銀河はめでたく後宮入りを果たし、しかも、当面のポジションとして正妃という第一位に就いてしまうのです(何故田舎出の作法も何も分かっていない銀河がそんなことになったのかについては、実はちょっとした裏があるんですけれどね)。

         一方で後に史実に語られる『幻影達の乱』というものが起きます。
         これは、皇帝の治世に対する庶民の不満を代弁した乱とされていますが……実はそんなもんじゃありませんでした。
         ごろつきの幻と、その兄弟分の混沌らが何の大義名分も無いのに挙兵したというもので、何でそんなことをしたかというと、「ヒマだったから」。

         で、この乱が何だかんだ上手くいっちゃうんですよ。
         ほとんど運で勝ち進み、しかも本人たちもそんなに真面目に乱を起こしているつもりもないので、物見遊山気分で進軍コースを決めちゃったりするもんだから、逆に官軍の裏を突くことになったりしてどんどん勝ち進んでしまうのです。
         まぁ、実態は地方の役所を襲って金を奪い、近くの遊郭などで飲めや歌えの大騒ぎをしているという、ほとんど強盗団みたいなもんなんですけどね。

         最初は地方の小さな騒動程度に考えていた帝も本気になり、王斉美という軍才優れた男を軍師にして討伐軍を送り出したのです。
         通常ならこれで幻影達の乱もジ・エンドとなるはずなのですが、実は宮廷にも内紛があり、また、帝を弑逆して帝位を乗っ取ろうとする陰謀などもあって、有能な王は戦中に味方から殺されてしまい、軍師を失った討伐軍は潰走してしまったのです。
         あらら、また勝っちゃった。

         実は、混沌は王の人となりに惚れ込んでおり、敵ながらある種の敬意も抱いていたのですが、それがこんな形で殺されてしまったことに激怒します。
         ここから歯車がちょっとずつ狂い始めて行くのですが、混沌はもはや乱などどうでもよくなり(まぁ、最初からどうでも良かったんですけれど)、この後はただただ王の仇を討ってやるという一念で戦いに臨むことになります。

         幻影達らは、遂に王宮を取り囲むところまで攻め入り、幻は根が助平ですから、「皇帝を廃した後は後宮は自分のものにするかんね~。待っててね~(はーと)」なんて公言してしまうのです。
         これを聞いた銀河は、「何言ってんだこの助平オヤジ!」ってなわけでいきり立ち、何と、宮女たちだけで軍を組織してしまいます(ほとんどの宮女は嫌々なんですけれど、何せ正妃の命令ですからねぇ)。
         仮宮で同室だった、無口だけどなかなか鋭いところがある江葉に対して「あんた将軍をやりなさい」と言いつけ、言われた江葉も「無茶をいう」とは言いながら、武器庫を開けさせて銃やら大砲やらを後宮に運び入れさせ、にわか軍事訓練を始めます。

         江葉は、王宮を試射の的にして大砲を撃ち込んでしまうなどもう無茶苦茶やります(ま、籠城覚悟なので、侵入口になる部分を潰したと言えばそうなんですけれどね)。
         宮女たちも段々面白くなってきて、大砲撃ってはきゃっきゃと騒ぎまくります。
         これに対して、混沌はあくまでも王の仇討ちに専念していて全体的な戦力には貢献せず、後宮へは幻影達率いる反乱軍が攻め入ろうとするのですが、馬鹿な力押し一本なので江葉らの大砲の餌食になってしまい、結構な被害を被っています。
         あぁ、ここに史上最低の戦いが……。

         というわけで、タイトルからすると後宮に渦巻く女たちの陰湿な陰謀……なんていう内容を想像してしまうのですが、実際にはかな~りあっけらかんとした銀河を中心とするユーモラスで明るく楽しい小説になっています。
         なんでもアニメ化もされたのだそうですよ(『雲のように風のように』というタイトルだそうです……確かに可愛い女の子を沢山出せるアニメになりそうではありますが)。
         良い意味ですっかり予想を裏切られました。


        読了時間メーター
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        2020/11/04 by ef177

    • 他1人がレビュー登録、 5人が本棚登録しています
      周公旦
      カテゴリー:小説、物語
      3.0
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      • 【大変興味深い内容なのだけれど、もう少し小説的な要素が欲しかった】
         本作の主人公である周公旦は、周を興した武王の弟であり、武王をよく補佐した人物でした。
         本作は、周公旦の一代記ということになります。

         さて、周が勃興するに当たっては、殷を滅ぼさなければなりませんでした。
         武力の面では太公望呂尚の力が大きかったのですが、内政及び周が建国されて以後の国の形を作るに当たっては周公旦の力抜きにしては難しかったでしょう。
         また、周公旦は『礼』を確立した者としての功績もあり、これは後世、孔子によって高く評価されたものでした。

         本書では周公旦がどのように周の国に貢献したかを中心に描いていますが、そこには卜占など、当時の風習や文化も紹介されており、興味深い内容になっています。
         周公旦は、一種、シャーマン的な力も発揮したとされており、武王が病に斃れた時、従来の人間を生贄にして平癒祈願するような野蛮なやり方を改め、独自の祈祷によって病を平癒したということで、そのこともあって呪術的な面での権威とも目されていたようです。

         周公旦の力により、一時は回復した武王ですが、再度病に倒れ、絶命してしまいます。
         これは成立間もない周に取っては痛恨事でした。
         未だ国が安定していないのに、その要となる王を失ったのですから。
         王の子供(後の成王)はまだ幼く、当然のように周公旦が摂政となり周を実質的に治めていかざるを得ませんでした。

        周公旦は、幼い成王を甘やかすことはせず、礼に基づく政治を教え込んだのですが、物心ついたころから王としてちやほやされて育った成王は、周公旦を疎ましく思うようになり、自分を甘やかす者ばかりを重用していくのです。
         そして、成王が10歳を迎えた時、親政を取ることとなり、周公旦も摂政の職を辞することになります。

         それまで周を守り続けてきた周公旦も疲れ果てており、しばし休息を取るつもりではありましたが、成王の周りにはたちまち佞臣が群がり、目の上のたんこぶである周公旦の排除に乗り出したのです。
         さて、作者の酒見さんが本書を書きたかった一番の理由は、このような状態に陥った周公旦が、何と、楚に逃げたことに着目したからだと言います。

         当時、楚はいわゆる南蛮であり、文化も未発展の地域でした。
         周公旦としては、他にも身を寄せる場所はいくらでもあったというのに、何故よりにもよって未開で野蛮な楚に身を託したのかという謎があるというわけです。
         酒見さんは、その辺りを本書の後半で書いていますが、それは酒見さんの解釈なのか、歴史上の定説なのか、その辺りは私には判断できませんでした。

         こういう物語であり、なかなか興味深い内容なのですが、どうも歴史的な推移を淡々と語っている部分が多く、物語性をあまり感じることができなかったのです。
         歴史を題材にした小説は沢山ありますが、そこには良い意味でのフィクションがあり、それが歴史を小説たらしめている部分なのだろうと思うのですが、本書ではそういう部分をあまり感じられなかったのです。
         ともすれば歴史の教科書を読んでいるかのように感じてしまったところもあり、悪い言い方をすれば淡白で盛り上がりに欠けるようにも感じてしまいました。
         取り上げられている内容が興味深いものだっただけに、この点はやや残念でした。


        読了時間メーター
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        2020/12/07 by ef177

    • 1人が本棚登録しています
      聖母の部隊
      カテゴリー:小説、物語
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      • 後宮小説で有名な酒見賢一さんの短編集。
        4篇収録されています。

        持ってたイメージとは違う酒見さんが!

        地下街
        地下街が悪の巣窟となったという情報で二人が派遣されるが…
        この話はある意味ギャクですw

        ハルマゲドン・サマー
        一人の女性の言葉だけで進む話。
        彼氏と一緒にいるんでしょうね。
        タイトルどうりハルマゲドンのとき…

        聖母の部隊
        表題作で一番長い作品。
        ジャングルで怪物に家族を殺された男の子たちを助けた女性。
        その女性がおかあさんとなって男の子たちに戦闘訓練をしていくが…
        こういうのは実際に行われているかも〜と物語の流れは予想が。

        追跡した猫と家族の写真
        超常現象を研究している大学生が、引っ越した家族を追って
        4000キロ旅した猫のことを知りその家族と猫に会いに…
        結構なSFテイストある作品でこの本の中で一番好きかも?

        あとがきがいいです。
        SFのこと書いてたり(自分の出自だと)、
        各作品のこと書いてたり。

        大森望さんのツイートか何かで見て手にとった1冊でした。





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        2016/08/22 by 降りる人

    • 1人が本棚登録しています
      分解
      カテゴリー:小説、物語
      4.0
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      • 『墨攻』を最初に読んで、次に『後宮小説』を読んで、すっかり酒見賢一ワールドが好きになりました。しかしそのあとしばらくは読んでいなくて、久々の一冊です。しかし、私の知っている酒見賢一とは少しタイプの違う短編たちでした。

        「ピュタゴラスの旅」と「エピクテトス」はギリシャの哲学者の話で、これまで読んだことのある酒見賢一の雰囲気とは違ったのでほほぅと思って読んでいましたが、やっぱり面白かった。もともと私は哲学は好きで、しかもストア派なので、にやにやしながら読みました。エピクテトスいいなぁ。
        「分解」も、私の知っている酒見賢一とは少し違ったので、あれ?と思いながら読み進めていましたが、読み終わってから、拳銃を分解する最初のくだりは確かに必要だったと納得しました。
        他の作品も、やっぱり少し経路が違う感じで、でも面白いのでそれでいい。少し不思議で独特の雰囲気をもつ小説たちでした。
        酒見賢一は、これでまだ3冊目。他のも読んでみたいです。
        >> 続きを読む

        2015/10/15 by ワルツ

      • コメント 2件
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