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奥泉光

著者情報
著者名:奥泉光
おくいずみひかる
オクイズミヒカル
生年~没年:1956~

この著者の本を読んでいる会員ランキング

このランキングは1日1回更新されます。
      シューマンの指
      カテゴリー:小説、物語
      3.0
      いいね!

      • シューマンに魅惑された、ピアニストの卵たちを描いた、奥泉光の青春ミステリー「シューマンの指」を読了。

        怪我のため、姿を消した永嶺修人の演奏をドイツで聴いた。
        里崎優は、そう伝える鹿内堅一郎からの手紙を読み、三十年前の高校時代を回想する。

        音大受験を目指す里崎と、音楽マニアの鹿内の前に、少年時代から天才ピアニストとして嘱望されていた永嶺修人が、新入生として現われる。

        そして、卒業式の夜に学校内で起きた殺人事件-------。

        音楽家、批評家、そして人間としてのシューマンの全人格が、三人のキャラクターとプロットに投影され、彼らをそして物語を支配していく。

        驚くべき企みと仕掛けに満ちた作品だ。
        青春小説であり、芸術小説であり、探偵小説でありながら、最後は大奇想を孕んだ幻想小説として着地する。

        >> 続きを読む

        2019/10/30 by dreamer

    • 他3人がレビュー登録、 6人が本棚登録しています
      モーダルな事象 桑潟幸一助教授のスタイリッシュな生活
      カテゴリー:小説、物語
      4.0
      いいね!
      • 三流女子短大の助教授・桑潟幸一は、文学事典に無名の童話作家・溝口俊平の項目を書いたことで、溝口の遺稿が引き金となった、奇怪な殺人事件に巻き込まれていく。

        と言っても、右往左往するだけの桑潟は、あまり役に立たないので、代わりに登場するジャズシンガーの北川アキと、離婚した元夫の諸橋倫敦のコンビが探偵役となって、謎を追うことになる。

        著者の奥泉光には、不可能犯罪を描いても、後半になると伝奇、SF風な展開になり、犯人やトリックが解明されないまま終わる作品も多いが、この作品は少なくとも冒頭に出てくる、首無し死体の謎だけは論理的に解明されるので、直球の本格ミステリとなっている。

        ただ、経営難に苦しむ地方の底辺大学の実像や、そこにコネで入った桑潟の無能ぶりを描く、大学暴露ネタがあるかと思えば、泣ける小説ブームへの皮肉といった文芸界の裏話もあり、こうした謎解きに関係あるのか無いのか微妙なエピソードが、とにかく面白いのだ。

        お馴染みのオカルトも満載で、謎解きの伏線とは別のレベルで計算された衒学趣味を堪能する余裕があれば、よりこの作品を愉しめると思う。

        >> 続きを読む

        2020/06/08 by dreamer

    • 他2人がレビュー登録、 3人が本棚登録しています
      シューマンの指
      カテゴリー:小説、物語
      3.4
      いいね!
      • 「シューマンの指」は、奥泉光がそれまで書いたミステリ系統の作品としては、最も単純な作りであり、普通のミステリとして読んで十分に面白い。

        かつての新本格ミステリを思わせるような青春小説の要素と、謎風味とが見事に融合された箇所もあり、読者を選ばない作風だ。

        それでも作者の主眼は、ミステリの部分ではなく、"シューマンの音楽理論"を書く方にあったはずで、読み終えると、シューマンに対して、誰よりも詳しくなったような気分にしてくれる。

        そして、この音楽理論の中には、例えば「シューマンは切り取ってみせる。だから実際に聴こえてくる音楽は、全体の一部分にすぎないんだ」の箇所のように、文学論として転用可能な部分も多く、無限に引用を繰り返したいという、気持ちにさせられる。

        外面は易しく、内部に深度を持つ、理想的な小説であると思う。

        >> 続きを読む

        2021/02/04 by dreamer

    • 他1人がレビュー登録、 7人が本棚登録しています
      世界文学は面白い。 文芸漫談で地球一周
      カテゴリー:文学史、文学思想史
      4.0
      いいね!
      • 日本の中にいてばかりいてはつまらない。読書で世界へと旅立とう。
        海外文学を身近にすべく「文学漫談」を繰り広げる奥泉光&いとうせいこう。
        対談本ですが、お膳立てされた対談を文字起こししたのではなくて、お客の目の前で舞台に立ってライブ形式で掛け合い漫才のごとく展開される文学談義をまとめたものだったのですね。
        これはその第2弾でありました。(こんな事実全然知らなかった)

        最初「面白おかしく読み解く」ってとっても危険、と思っていました。
        部分をデフォルメしてコミカルに強調したり、わざとヘンな角度から眺めてみたりして笑いをとるつもりじゃないでしょうね~と。
        すみません。杞憂でした。
        さすが、人前でしゃべる決意があるだけのことはある。
        「小説を面白く読むにはていねいに読まなければならない」とおっしゃるように、きちんと読み込んできていて、共感できる部分もとても多くて勉強になります。

        これはパッケージツアー。ガイドの案内に従ってまだ観ぬ世界を発見する旅。
        読んでいない人には面白さのエッセンスを伝え、いつかはあなたも「一人旅」に出てもらいたい。
        (つまり原本を読むこと)
        再訪(既読)の方にも、一読では見逃していた細部や秘められた背景を新発見してほしい。
        そんな二人の思いに納得です。

        読書案内の書なので未読の方でも楽しめるでしょう。
        しかし中には先に原作を読んでいないと作品のすごさがわかりにくい小説もあると思われます。

        「異邦人」「予告された殺人の記録」「愛人」など。
        論理的分析、作家の手法の検証などについて語られ、客観性があり、話している意味はわかるのですが、
        実際の感覚や手触りという最も文学な部分が未読の方には伝わらないのではないかと感じました。
        また、斬新な着眼点、分析の意外性に驚くためには、
        自分がまず印象や考えを持っていないと、どこも「意外」ではなくなってしまうものです。
        もし驚きたかったら、先に原作を読んだ方がいいのではないかと私は思いました。
        ここに取り上げれれている小説は、いずれも読む価値のある名作ばかりなんですから。

        ところで、二人の掛け合いは漫才そのものです。
        なかなか奥泉さんの自分ネタ。面白いです!
        本の話と離れていても充分楽しいです。
        作家の人柄や日常の姿も察することができ、親近感も湧きました。
        でも肝心の「小説の笑いどころ」の方は爆笑というタイプの笑いではありません。
        お二人はイロニー(アイロニー)と、盛んに言っていますが、このイロニーの掘り起しが楽しいんです。
        親切にも小説に対するツッコミどころを教えてくれるという感じ。
        小説がボケ役なので、読みながら自分でツッコミ入れてみろと。そういうことですね。
        おかげで無意識に本に合いの手を入れる癖がつきそうです(^^ゞ

        既読の方も、この本を読んで面白いと思ったら再読しましょう。
        名作文学は何度も読まないといけないんです。
        特に短篇は簡単に読んでしまって面白さ素通りしている危険性が高いです。
        そして文学はあらすじ要約に価値はなし。
        奥泉氏も「本筋だけに意味があるわけではない」というのが小説的な精神だとおっしゃってました。
        それを教えてくれる価値ある漫談。いいですね。これ。

        【内容】 コンセプトは「翻訳小説の名作を薄い文庫で読む!」
        ①カフカ『変身』 既読 レビュー済
          カフカって語りたくなる作家ですよね。特に「変身」はなんでも語れそうです。
          こんなに短いのに、クローズアップすると面白くなるポイントがありすぎるほどある作品。
          全編キーワードみたいな濃厚な小説ですね。

        ②ゴーゴリ『外套・鼻』 多分未読(話は知っているし部分は読んでいる)
          ゴーゴリーってアバンギャルドだったのかもしれません。
          ゴーゴリ=古典だと思わずに読んでみようかなと思いました。

        ③カミュ『異邦人』 既読 レビュー済
          これは好きすぎて読み込んでいるので、目からウロコの新説と思える指摘はなかったです。
          そうなのよね。とうなずきっぱなしな感じ。

        ④ポー『モルグ街の殺人事件』 既読 レビュー済
          いきなりネタバレですか!だからミステリーは未読でレビューを読んじゃだめなんだってば(^^;)
          ホームズもそうだけど、創世記のミステリーはほとんどバカミスに近いものが多いんですよ。
          でも、トリックのおバカさを補って余りある異様な雰囲気や恐怖感、想像力を刺激するストーリー展開など、現代小説には持ちえない効果があるんですよね。

        ⑤ガルシア=マルケス『予告された殺人の記録』 既読 レビュー済
          短篇の傑作といえば、この小説を取り上げない訳に行かないでしょう。
          作家の目線が入ると過去の記憶も一層鮮やかによみがえってくる気がしました。
          ああ。再読できちゃった気分♪
          あらすじを読んだのでは決してこうは行きません!

        ⑥夏目漱石『坊っちゃん』 既読 レビュー済
          奥泉さんといえば漱石なんでしょう。なぜかこれだけ日本の旅(松山&東京)。
          力の入り方が異様です(^^)
          坊ちゃんは童貞!と断言しています。そうかもね。
          ディープでディテールまで追求した斬新な解釈。これには負けました。

        ⑦デュラス『愛人』  未読
          これは完全に知らない状態でした。デュラスが女性だってことも知らなかったです。
          小説技法の話題にはやはり未読だとついていけない部分があります。
          アナコンダに登場願って笑えるという感じでした。

        ⑧ドストエフスキー『地下室の手記』 既読 レビュー済
          話は覚えていますが、こんなに面白かったかなあ?
          確かにとってもヘンな主人公で、「白痴」の前哨となった小説かもしれないと思いました。
          ドストエフスキーって意外に重厚・緻密じゃないんじゃないかという私の印象が
          結構筆が早かったとか天才的という言葉で裏付けられたようで嬉しかったりして。

        ⑨魯迅『阿Q正伝』  これも部分のみ既読 
          吉本新喜劇のギャグなのか?そんな目線もありなのか?
          阿Qってこんなにろくでもない人間だったっけ?
          この作品が名作っていうのが全く分からなかった私だったのですが、
          確かに、こう追及されると、とても不思議な小説に見えてきました。
          ホントはとってもアイロニカルな社会風刺小説だというのが正しいと思いますけれど。
          そう読まなくても面白さを「発掘」できるのか。ここまでくると、感心するしかないです。

        奥泉光×いとうせいこう の文学漫談ライブは今も下北沢で続いているのでした。
        <次回公演>
        2015年8月20日(木)
        ゲーテ 『若きウェルテルの悩み』

        次回のライブに行ってみようかな♪と強く思っているところです。
        どなたかご一緒します?
        >> 続きを読む

        2015/05/28 by 月うさぎ

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      虫樹音楽集
      カテゴリー:小説、物語
      4.0
      いいね!
      • カフカの「変身」のように「孵化」~「幼虫」~「変態」をなぞりながら狂気をはらんだジャズ演奏家(テナーサックス・バスクラリネット)の「イモナベ」と呼ばれる音楽家の奇妙な人生。それに巻き込まれるメンバーの一人で畝木(ピアノ)。70年代のジャズメンの奇妙な「ザムザ」との関わりを9つの短編にしている。

        最初の語り手、そのころ高校生だった私は「川辺のザムザ」という小説を書いていた。
        偶然イモナベの「孵化」という、全裸のパフォーマンスを見たとき、書割の、後ろの窓の前に、椅子を置いて、観客に背中を見せて、ザムザのように窓から外を見る形でくねりながら演奏していた。その後ふっと消えてしまったが、偶然古書店で「変態コンサート」のビラを見る。多摩川河川敷に行って見ると、そこには窓に向かって置かれたソファー座って本人もまた窓に向かって演奏するイモナベがいた。

        アフリカで発見されたザムザの名を持つ虫、アメリカで活躍した「窓辺のザムザ」と言うセッショングループ、リーダーはこれも全裸で体中に世界の言語を彫っていたという話もある。

        またザムザという名を持つダンサーは「変身」を振りつけて踊った。
        そして彼は「虫樹」伝説について語った。
        それはアフリカにあって、発見したゾロフ博士の話で彼はその後消息を絶ったが。
        ーー<宇宙樹>あるいは<虫樹>とは地球上の虫たちが天空から降り来たれる<宇宙語>を聴き取るいわばアンテナである。虫たちは<虫樹>を通じて<宇宙語>を聴き、また<虫樹>を通して自分らの言葉を天空に響かせる。(略)<虫樹>は人跡未踏の地、滝水のせいで毎日虹のかかる深い谷の底にあるーーー 
        と言うがこれは確証のない伝説になっている。

        消えたダンサーのザムザはあちこちで目撃されたが、ついにテムズ川で溺死体で発見された。

        この「王虫伝」は面白い。

        大学生のアルバイト先での話。父は脳の老廃物を食べる生き物を注射している。世界的に流行して、それで能力が格段に上がるということで息子に勧めていたが、措置を受ける段になって突然死する、その治療のせいらしい。彼は父の死で生活に不自由はしなくなったが、中古車の洗車のアルバイトを続けている。そしてタイヤの山に人間がびっしりと貼りついて溶けたタイヤの汁を吸っているのを見る。そこに一本の木があって、表皮には世界の言語が隙間なく彫ってあった。「スゲー、まさにゲージュツだ」寄せ書きに参加した。

        この「虫樹譚」はなかでも出色の面白さ。

        そして作家はまた昔のDVDを手にいれる。そこには傷つけられる畝木が写っていた。それはアルバム「Metamorphosisー変態」の儀式のように。

        虚構であるのかないのか、虚構に違いないけれど実在の人物やグループ、演奏家が出て来る興味深いストーリー。今回はジャズを絡めた奥泉風の奇妙な世界を形作っている。面白かった。
        >> 続きを読む

        2015/01/19 by 空耳よ

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      桑潟幸一准教授のスタイリッシュな生活
      カテゴリー:小説、物語
      3.5
      いいね! ooitee
      • クワコー教授のシリーズ第2弾からは中編構成になるが、やはりこの形の方がユーモア部分が生かされてると感じる。

        「呪われた研究室」
        新たにたらちね大学へと移ったクワコーだが、与えられた研究室が前任者の飛び降り事故があった部屋。

        文芸部の面々とともに謎を解き明かしていく。

        「盗まれた手紙」
        2代目襲名のための手紙を探すため、報酬50万に釣られたクワコー。
        しかしその手紙が紛失してしまい、文芸部の助けを借りて裏にある真相を探す。

        「森娘の秘密」
        金庫の中にある名簿が盗まれ、その鍵をもっていたのがクワコーともう1人の教授。

        3篇とも笑えるのだが、タイトルは節約生活でいい気が(笑)
        >> 続きを読む

        2020/06/18 by オーウェン

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      黄色い水着の謎 桑潟幸一准教授のスタイリッシュな生活 2
      カテゴリー:小説、物語
      3.0
      いいね!
      • クワコーシリーズ第3弾は、中編2つの中身。

        「期末テストの怪」
        テストの解答用紙が盗まれて、クワコーはアタフタする。
        そこを文芸部がいつものように推理する。

        真相はいたって単純だが、クワコーの節約生活は相変わらずで、ザリガニで食費を浮かそうとするせせこましさはいつもの通りで笑える。

        表題作は、文芸部で千葉の海岸へといったが、部員の水着が盗まれる事件が発生。

        ソクシン先生の意外な姿だったり、クワコーも完全に千葉になれてきた1作。
        4作目も楽しみです。
        >> 続きを読む

        2020/06/25 by オーウェン

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      グランド・ミステリー
      カテゴリー:小説、物語
      4.0
      いいね!

      • 奥泉光の壮大な歴史ミステリー・ロマン大作「グランド・ミステリー」(上・下巻)を読了。

        昭和16年、真珠湾攻撃に向かう空母「蒼龍」で、顔振整備曹長の部下が行方不明となる。
        次いで、真珠湾攻撃を成功させて帰還した爆撃機の操縦席で、榊原大尉が服毒死するという事件までが起きてしまう。

        榊原大尉の友人・加多瀬大尉は、独自の調査を開始し、海軍出資の秘密機関「国際問題研究所」が事件に関わっていることを突き止める。

        やがて、加多瀬大尉は、研究所で意外な人物と再会し、驚くべき真相を聞かされることになる。

        著者の奥泉光は、これまで虚構と現実を錯綜させることで、ミステリーの根幹に当たる「謎」を、有る、無しの間で宙吊りにしてきたと思う。

        だが、この作品では、少なくとも榊原大尉の服毒事件は、合理的に解明される。
        それなのに、ミステリー的なカタルシスは、あまり感じられない。

        これは、謎から解明へという目的自体を無化し、別の「謎」を浮かび上がらせるトリックが、仕掛けられているからなのだ。

        別の「謎」の一つは「歴史とは何か」ということだ。
        歴史学の方法をパロディ化したような展開は、歴史修正主義が跋扈する現在の状況の中、まさに書かれるべくして書かれたと思いますね。

        >> 続きを読む

        2018/09/21 by dreamer

    • 1人が本棚登録しています
      コレクション戦争と文学 = Nova Bibliotheca de bello litterarum-Saeculi21
      カテゴリー:作品集
      4.0
      いいね!
      • 第1巻である朝鮮戦争を読んだのはいつだったかを調べたら、
        なんと2015年だった。第2巻を手にするまで約4年。

        書棚には第4巻まであるのだが、全20巻+別館1のこのシリーズ、
        私は一体いつになったら読破出来るのか不安になって来た。

        さて、本書である。私が拘りをもつヴェトナム戦争なので本当は
        第1巻より先に読みたかった。

        ヴェトナム戦争と言えばアメリカ軍の戦争犯罪を暴露したノンフィ
        クションが多数世に出ているが、本シリーズは「日本語で書かれた」
        との括りがあるので海外メディア掲載の文章は皆無。

        それでも日本人作家の手になる小説・ルポルタージュで、多岐に渡る
        テーマでヴェトナム戦争を再考させられる。

        特に惹きつけられたのがアメリカの北爆停止表明が出た時に取材の
        為にハノイに滞在していた松本清張のルポ「ハノイからの報告」、
        取材中に行方不明になった前任者の足跡を追う現地特派員を主人公
        とした日野啓三の小説「向こう側」、終戦後30年のヴェトナムの
        老婆の話を主題にした吉岡忍の小説「綿の木の嘘」の三編。

        松本清張作品は多く読んで来たが、このルポは初見。なんという
        タイミングの良さでハノイにいたのだろうと感じた。

        他にも村上龍、一ノ瀬泰造、開高健などの作品も収録。一ノ瀬泰造の
        作品についてはヴェトナム戦争から飛び火したカンボジアが舞台なの
        で本書も「ベトナム戦争」ではなく「インドシナ」で括ればよかった
        のではないかな。

        本書解説でも触れられているが、朝鮮戦争同様、ヴェトナム戦争にも
        日本は深く関わっている。一時休暇で戦場を離れたアメリカ兵が心と
        体を休めたのは日本だし、日本の米軍基地からは爆撃機が飛び立って
        いる。

        そうして、日本国内では反戦運動が起こり、アメリカ兵の脱走に手を
        貸した人たちもいた。そのと当事者である小田実の作品も収録。

        普段、ノンフィクションばかり読んでいる身にとっては、小説で戦争
        を読む体験は新鮮でもあった。

        巻末にはヴェトナム戦争関連の年表もあるので、その時、何があった
        のかを知るのにも便利。

        ただ、難点を言えばアメリカとの前にフランスとの戦争があったのだ
        が、その部分の作品が皆無なところか。やっぱり「インドシナ」で
        括って欲しかったな。
        >> 続きを読む

        2019/06/02 by sasha

    • 1人が本棚登録しています
      文芸漫談 笑うブンガク入門
      4.0
      いいね!
      • この2人の『世界文学は面白い』は、この本の続編だったと知って
        すぐに購入。

        『世界文学~』とは違い、文学全般について語っており
        文学の現在であったり、創作の苦しみなどについての話もあって
        全体的にトーンは真面目で重いです。

        でも、2人の掛け合いの妙技はここでももちろん楽しめるし
        やはり、公共の場では読みにくい程笑えるし
        渡辺直己の脚注もピリっと効いていて
        何回も読み直せる一冊に出会えたかな…といった感じです。

        私は、奥泉光の小説をアンソロジーの中に入っていた短編一つしか
        読んだことがなかったのだけれど、
        その小説の持つ雰囲気からは想像も出来なかった…。
        こんな人だったとはねー!!

        小説家って、やっぱりすごいです。
        >> 続きを読む

        2012/07/01 by oka-azu

      • コメント 2件
    • 3人が本棚登録しています
      『吾輩は猫である』殺人事件
      カテゴリー:小説、物語
      5.0
      いいね! Tukiwami
      •  伯爵、虎君、将軍と、当たらずとも遠からずの推理により、様々なことが明らかになっていく!
         そして最後にホームズがまとめてくれる、と思ったら……???
         色々な事件が発生し、慌ただしく駆け足でラストに突入。
          
         告白しますが、私は理解力・読解力は良くありません。
         泡坂妻夫『しあわせの書』の仕掛けも、アマゾンカスタマーレビューを読んでようやく気付いたし、
          
        ■[日々の冒険]しあわせの書 読者に挑戦!の本(ネタばらし注意!)
          http://d.hatena.ne.jp/nazegaku/20140110/p1
          
         乾くるみ『イニシエーション・ラブ』も、一体何がすごいのかと仕掛けに気付かず、ネットで検索してネタバレサイトを発見し、ようやく理解できたのでした。
          
        ■[日々の冒険]イニシエーション・ラブ 分からなかった
          http://d.hatena.ne.jp/nazegaku/20140224/p1
            
         だから本書でも、誰かネタバレ解説を書かれてるかと検索したのですが、現時点で発見できず。
         本書の単行本発行時・文庫化の時点ではツイッターはおろかブログも普及していなかったので、出版時の感想ラッシュ現象がないのは分かりますが、現代日本を代表する作家なのに、意外と言及が少ないように思います。
         アマゾンカスタマーレビューですら、奥泉光さんのレビュー数は全体的に少ないように思います。
        (現時点で『シューマンの指』のみ、突出して多い)
            
         そういえば本書も、よく分からないので突っ込んだ感想が書きにくい気がします。
         まず分厚さと文字数の多さで2割が脱落、途中で半数が脱落、読了した8割程度がようやく有耶無耶に敬して遠ざけたような感想を書いてるような。
         SF的にもミステリー的にも素晴らしい作品なので、細部にこだわって徹底的に論じるに値すると思うのですが。
           

        OLDIES 三丁目のブログ
        ■[名作文学]灰猫ホームズの推理競争 「吾輩は猫である」殺人事件
          http://d.hatena.ne.jp/nazegaku/20150617/p1
           ↑ネタバレなしの感想です
        少年少女・ネタバレ談話室(ネタばらし注意!)
        『「吾輩は猫である」殺人事件』(奥泉光)ネタバレ検討会
          http://sfclub.sblo.jp/article/142598831.html
           ↑ネタバレ全開で、疑問点を挙げてみました。ご意見ご感想お待ちしております。
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        2015/06/20 by 荒馬紹介

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      坊ちゃん忍者幕末見聞録
      カテゴリー:小説、物語
      3.0
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      • 『吾輩は猫である殺人事件』の奥泉光さんが描いた作品ということで、いつ坊ちゃんやその登場キャラが登場するか、いつ舞台がつながるか、と待ち構えていましたが、『坊ちゃん』とは直接関係ないようです。
         終盤、幕末に居るはずの語り手が何度か現代の京都にタイムスリップする場面があるので、どうせなら一度くらい、明治時代の愛媛の坊ちゃんの世界にタイムスリップすれば良かったのに。
             
         語り手の横川松吉は口下手で、切れの良い啖呵を切る場面はありませんが、冷徹な観察者であり、人物描写は辛辣です。
             
         メインとなる事件は、姉小路卿暗殺事件。
         語り手の横川松吉は偶然、下手人側のやり取りらしきものを目撃して事件に巻き込まれていく。
         この姉小路卿暗殺事件というのは、本当にあったようです。
              
         もちろんその他にも主人公やその仲間にまつわる小さな事件が発生し、日々は過ぎていくのですが、なにぶんメインの大事件に行きつくまでが長い長い。
         物語は主人公が子ども時代に霞流忍術の修行をしたことや、悪友・鈴木寅太郎との京へ向かう道中、その道中に二人の仲間と知り合うことなど、様々な普通の日常が語られる。メインの事件が起こるのは、ようやく本の半分に辿り着いた頃。
         最初からバンバン事件が起こるサービス満点のエンタメ系小説とは違います。
         そういう点で、本作品は、純文学寄りなのです。
               
         京都では開国・攘夷・佐幕・討幕派入り乱れてごちゃごちゃと権力闘争やっています。
         中には悪どい連中もいて、純真な田舎者はカモにされたりします。
         そんな時代に生まれてなくて良かった。
         というか、今またそんな時代になりつつあるとか、今後そのような時代になりそうだとか。
             
         横川松吉が姉小路卿暗殺の犯人を知っているらしい、ということで、宇都宮の国士・遠山大膳なる役者侍が乗り込んで来て談判します。
         口達者な遠山大膳は見事な反対尋問によって松吉の自信を喪失させ、なかったことにしようと企みます。
         いつの世にも橋下徹のような黒を白と言いくるめるような連中はいるもんですね。
         多分、人類の歴史始まって以来、多くの勇気ある告発者がこのような屁理屈によって葬られてきたことでしょう。
         やはり告発する時は、確実な証拠と人的手回しが必要。
             
         そして物語のクライマックス、奇しくも同じ『坊ちゃん』をテーマとした
        『贋作『坊っちゃん』殺人事件』(柳広司)のラストのような見開きモブシーンを思わせるごちゃごちゃ慌ただしい展開に。
             
         ところで、苺田幸左衛門という侍が登場して仲間のようになるのですが、苺田という姓或いは地名は現実にあるのでしょうか。
         検索すると、『苺田さんの話』(小沢真理)というマンガばかり出て来てよく分かりません。
           http://d.hatena.ne.jp/nazegaku/20150819/p1
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        2015/08/20 by 荒馬紹介

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