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【良い子なの? 悪い子なの?】 以前から読みたかった本をようやく読みました。 戦時中、「大きな町」に母親と一緒に住んでいた2人の兄弟が、戦火を逃れるため祖母が住んでいる「小さな町」にやってくるところから物語は始まります。 祖母は、野卑で不潔で吝嗇家で、以前、自分の夫を毒殺した疑いがかけられており、近所の住民からは「魔女」呼ばわりされているような人でした。 母親は、「お金は定期的に送りますからよろしくお願いします。」と頭を下げ、兄弟を残して「大きな町」に帰って行きました。 さて、この2人の兄弟が風変わりで、この年頃の子供達のように遊んだり泣いたりなどしません。 自分たちで計画を立て、「勉強」をし、様々な「訓練」をします(例えば、飢えに耐える訓練、暴行に耐える訓練、動かない訓練などなど)。 聡い子供達であることは間違いありませんが、やることすべてがどうにも子供らしくないのです。 他人の話をこっそり立ち聞きするまでは、まぁ、子供らしいと言えばそうも言えるのですが、2人は、立ち聞きした話をネタにして上品な口調で強請を働いたり、なかば強要のようにして商店から欲しい商品をせしめたり(勉強に使うためのノートや鉛筆なんですけれどね)、「訓練」の一環として身につけた曲芸などを披露して酒場で小銭を稼いだり……。 2人の行動は徐々にエスカレートしていきます。 戦争により、「大きな町」が陥落し、間もなく敵軍が「小さな町」までやってきそうな気配の時、ようやく母親が2人を迎えに来るのですが、母親は男連れで、赤ん坊まで抱いていました。 2人の兄弟は、母親と一緒に行かない、ここに残ると言い出します。 母親は必死に2人を連れて行こうとするのですが……その結果……。 そして、最後には……。 この2人の兄弟が戦争の犠牲であることは間違いないし、こういう子供らしくない、ある意味では歪んだ人間になっていくのもその影響があることはそのとおりなのですが、「だから戦争はダメでしょ?」って言う単純な反戦文学ではないのです。 それはそうかもしれないけれど、それにしたって……ということです。 この兄弟は、良い子なのか悪い子なのか段々分からなくなっていきます。 本作には、「ふたりの証拠」、「第三の嘘」という続編があり、全体で「悪童日記」三部作と呼ばれているそうです。 これは続編も読まなければ。 >> 続きを読む
2019/05/28 by ef177
【誰もが悲しみを抱えている】 「悪童日記」の続編です。 読もう、読もうと思いながら先延ばしになっていたのですが、ようやく読めました。 大変衝撃的な内容でした。 一つひとつのエピソードもさることながら、全体の構成に打ちのめされました。 本作は、「悪童日記」の主人公であった、「ぼくら」と表記されていた二人の幼い兄弟のうちの一人の「その後」を描いたものです。 「悪童日記」をまだお読みになっていない方のために、詳しいことははしょりますが、兄弟のうち一人は外国に行ってしまい、もう一人はそれまで住み続けた家に残りました。 その残った方の名前は「リュカ」。 本作は、基本的に「リュカ」のその後を描いています。 「リュカ」は周囲の人々から「白痴」と呼ばれていましたが、実は大変聡く、やさしい男性なのです。 彼のまわりには様々な人々が現れ、彼と関わりをもっていきます。 本作は、第二次世界大戦終結間もない、混沌とした世界を舞台にしていますが、戦争の傷跡は深く、様々な形で、すべての人が傷を負い、悲しみを抱えているのでした。 それはもちろん、「リュカ」だって同じ事なのですが。 「リュカ」は、しばらくはこれまで兄弟、そしてその前は祖母とも一緒に暮らしていた国境近くの小屋のような家で一人で生活していました。 自給自足の生活で、夜になると酒場に出かけ、ハーモニカを演奏し、酒をおごってもらい(12歳の頃から酒を覚えたと言っています)、いくばくかのお金を稼いでいました。 「リュカ」は、いつか帰ってくると信じている兄弟に宛てて、日記のような文章をノートに書いては削りを繰り返し、書きためていました。 そんな「リュカ」は、ある日、川に赤ん坊を投げ捨てようとしているヤスミーヌという女性を見かけます。 「リュカ」は、ヤスミーヌと赤ん坊を家に連れて帰り、以後、二人の面倒を見ることにしました。 ヤスミーヌは、赤ん坊を川に投げ捨てた後、国境を越えてどこかへ行ってしまおうと考えていたというのですが、国境付近は地雷原であり、そんなことをすれば確実に爆死したことでしょう。 それでも構わないのだと言うのです。 何故そうなのかは……ご自身でお読み下さい。 その他にも、「悪童日記」にも登場した、「ぼくら」がノートや鉛筆を手に入れていた書店兼文具店の店主、この店の向かいの家に住む不眠症の男、一時は「ぼくら」に強請られていた神父、終戦後この町を支配することになった共産党の幹部などの登場人物が「リュカ」との関わりの中で描かれていくのですが、あぁ、何てみんな悲しいのでしょう。 「悪童日記」のシリーズは三部作です。 最終巻の「第三の嘘」も近いうちに読んでレビューしたいと思います。 >> 続きを読む
【これは一体どう解釈すればいいのだろうか……】 「悪童日記」三部作の最終巻です。 第一部「悪童日記」では、「ぼくら」と表記されている双子の兄弟の物語だったのですが、弟二部「ふたりの証拠」では、主としてその兄弟の片方、「リュカ」のその後の生活が描かれました。 ですが……。もしかしたらもう一人の兄弟の「クラウス」などという者は存在せず、ただ一人の頭の中だけで生み出されたものではないのかという強烈な疑いが色濃く描かれていました。 ところが、第三部の本作に入り、またもや大きくひっくり返されてしまうのです。 これまで語られてきた「リュカ」と「クラウス」の物語は一体何だったのでしょう? 双子の兄弟は、それぞれがノートに日記風(?)の文章を大量に綴っていたわけですが、それは事実なのか虚構なのかと問われると、「事実を書いているのだけれど、ある程度のところまで行くと、事実を書いているだけに書き続けられなくなり、話に変更を加えざるを得ないのだ」と答えます。 では、どこまでが事実でどこからが虚構なのでしょうか? いやいや、そんなレベルの話ではないのです。 弟二部までは、辻褄が合わない点が多々見られ、あるいは「リュカ」と「クラウス」は結局同一人物(というかそもそも一人しかいない)のではないかという「虚構」だったわけですが、それでも根本的なところではそれほど大きくは食い違っていなかったのです。 ところが、本作に入り、根底からこれまでとは全く違う話になっているではありませんか。 しかも、ところどころ、「リュカ」と「クラウス」が入れ替わっているのではないのか?と思わせるようなところもあったりします。 これは一体どう解釈すれば良いのでしょうか? いずれにしても、この作品は三部作全てを順番に読む必要があります。 そして、その混沌の中から何をくみ出すかは、それはおそらく読者それぞれに委ねられていることではないだろうかと感じました。 おそらく、「正解」というものは無いのではないでしょうか? 読む前にはこんな作品だとは思ってもみませんでした。 意表を突かれただけに、大変強いインパクトを受けました。 恐れ入りました。 >> 続きを読む
久しぶりの小説は読書ログの課題図書(1月)。映画化もされたらしいですね。これは、、、おそろしい、、、。たしかに、衝撃でしょうね。でも、やっぱり、人間には本来慈悲の心というのは備わってない(育てるしかない)、ということかな、と思いました。生存欲だけで生きれば、こうなるということでしょうね。したたかに生き抜く、とはそういうことなのでしょう。戦時下、無慈悲な?祖母、偏見、などの環境で双子だけで生きる術を見つけていけば、こうなることはありうるでしょう。いくら”知能”が優れていようが、聖書を暗記していようが、双子の目に映る現実と生存欲の前ではどうしようもない。慈悲の心は育てられず、・・・それが自分に悪果となって返ってくるなどとは知らない。自分たちだけの世界に心を閉ざす二人には信じられるものはなにもない。現実の世界を見れば神様など信じられないし(何もしてくれない)、大人たちは汚いし。生き抜くには、自分たちの目と頭だけが頼りなんだから、この世の真理はいつまでも見えないし、慈悲の心も生まれない。幼い子どもがテロリストに洗脳されて、テロ要員として使われているらしいけど、この双子の場合は自分たちだけで学んだ結果、、、慈悲の心が学べなかったということかな。これは二人が書いた日記(作文)という形になっています。彼らは、>作文の内容は真実でなければならない。感情を定義する言葉は非常に漠然としている。その種の言葉の使用は避け、物象や人間や自分自身の描写、つまり事実の忠実な描写だけにとどめたほうがよい。と、感情(主観)はあてにならないのだから、事実だけしか書いてはいけない、というきまりで書いているのです(知能の高さが伺えるね)。それはそのとおりかも知れないけど、ありのままの人間の世界には慈悲の心はないとも言える(彼らの場合は慈悲の心の存在価値がわからない?)。だからこそ、どうにかして慈悲の心は育てなければいけないのだけど・・・。まだ二人の人生は終わっていないんだから、これからどうなるかはわかりません。「ふたりの証拠」「第三の嘘」と三部作になってるみたいなので、続きも読んでみたいと思います。ドキドキしながら、1日で読めます。 >> 続きを読む
2017/02/21 by バカボン
前作「悪童日記」を読み終えてから、1週間ほど。手元に作品はあるのに、読む事のできない状況で、鼻先ににんじんをぶら下げられている気分でしたが、先日やっと読めました。読み始めれば、一瞬。すぐに読み終えてしまいましたが、レビューを書くまでに、すこし時間がかかってしまいました。今作も、重い内容を淡々と綴っている印象は変わらないが、登場人物の名前が出てきたり、章の作りから、前作の日記を盗み見ているという感覚より、小説を読んでいる感覚に変わっている。健全な者であっても状況等により、証言に変化があり、病気で記憶が曖昧になることがあり、人為的に記録の削除・改ざんが行われ、作中の時代でいえば、戦時中という特殊な環境の中において、正確性を求められる記録・文書であっても、そうでないことがある。と読み取れる。そのため、常に疑心を抱えてすすみ、最後読み終わるころには、D大使館宛の調書に関してもその作成の際に使用した記録の正確性を疑い、今まで出てきた登場人物の存在を疑い、〝作品の内容は真実でなければならない″というルールの上で書かれていた「悪童日記」さえも事実が書かれているのかという疑心を抱いて本編終了。3作目を読み終われば、事実にたどり着けるのだろうか。取り合えず、早々に読める時間を作りたい。一言メモ「事実とは、真実とは、どこにあるのか」(※同レビュー他サイトでも投稿してます) >> 続きを読む
2017/02/12 by -凌-
「悪童日記」アゴタ・クリストフによる、26の掌篇集。180頁に短編、ショート・ショート、エッセイ(というより独白のよう)が収録されています。そぎ落とされた文章は、とても素っ気ないけれど嫌いじゃない。むしろ、親しみを感じ始めています。夢や期待、希望はほとんど描かれていません。誰かに読んでもらうという意志も感じられません。まるでモノクロ写真のよう。普通の短編集を期待したら、彼女の意図を探しながらの少ししんどい読書となりそうです。あとがきにも書いていますが、このうちのいくつかは修正を加えた上、長編作品に組み込まれています。「悪童日記」はもちろん、「昨日」など他の作品を読んでからの方が無難です。*家<小さな町>から<大きな町>へ、十五歳の時、少年は転居します。「悪童日記」を思い出します。*作家「ふたりの証拠」で作家の場面がやたらと長い理由がわかりました。*マティアス、きみは何処にいるのか?このタイトルに反応しない「悪童」ファンはいないでしょう。シリーズをぎゅっと凝縮したような印象を抱きました。*わが妹リーヌ、わが兄ラノエこちらを読み、「昨日」の購入を決意しました。とても楽しみ。 >> 続きを読む
2017/01/18 by あすか
昨日、心当たりのある風が吹いていた。以前にも出会ったことのある風だった。心に残る書き出しから物語は始まる本書は、「悪童日記」「ふたりの証拠」「第三の噓」に続くアゴタ・クリストフ4番目の作品となります。訳者の堀さんが仰る通り、先行する三作の雰囲気を受け継いでいます。一番近いのは、「第三の噓」かな。空虚な日々を描き、空白の多い文章を書いているのに、底の方から哀しみが伝わってくるようです。時にそれが重く、生々しく感じます。本書でも彼女のスタイルは変わりません。主人公のトビアス・オルヴァ(後にサンドール・レステル)は工場労働者。父と母を殺し、戦争孤児を装って国境を越えた過去を持つ彼には、ほとんど希望が残っていない。人生に期待もしていない。そんなとき、かつて小学校で一緒だった異母兄妹のリーヌと再会をします。読んでいて、何度か虚構と現実を行き来していると感じます。「第三の噓」よりは境界線がわかりやすい。トビアスとリーヌの関係は、リュカとクラウスに似ています。日々を耐えるには、誰かの存在が必要なのかもしれません。それが夢想の中の人だとしても。トビアスの愛するリーヌのいる世界は、モノクロの現実から離れた時、ぱっと色鮮やかな世界へと変化します。現実のリーヌに重ねて愛そうとしたけれども、夢想の世界に比べれば輝きは弱かったように感じました。彼女は醜くて意地悪でした。でも、昔からそうでした。彼が世界を手放してしまったことがわかるラストは、重い余韻を残しました。 >> 続きを読む
2017/02/16 by あすか
どう表現すればいいのか・・・贅肉を削ぎ落とした文章、そして、予想しない展開。行間が深すぎて、ついていけなくなりそうなところも多い。この著者の本は何冊か読んだが、この独特の世界は、なんとも痛いと思うことがある。祖国とは何か、母語とは何か、拠り所となるものは??? >> 続きを読む
2014/08/16 by けんとまん
「嫉妬」も「事件」も、同じ事をずっと考えている女性が浮かぶ。人間なんて、こんなもんでしょ。同じ事、独りで考え続けている事って、あるあるネタ。 >> 続きを読む
2014/01/25 by 紫指導官
淡々と綴られているようであって、その奥にあるものは濃い。自伝。自分の経験に根ざしているからこそなのだと思う。著者独特の言い回しというのか、ちょっと違うところに視点をおいて見ているというのか、そのあたりが特徴的でもある。今の自分の置かれた環境が、ある意味において、とても恵まれているとも思うし、違う点で言うと、果たしてそうなのか?と思うこともある。そう思えること自体が、恵まれているのだろう。文盲・・・いろいろな意味に捉えられるな。 >> 続きを読む
2014/08/17 by けんとまん
【堀茂樹】(ホリシゲキ) | 読書ログ - 読書ファンが集まる読書レビューサイト(著者,作家,作者)
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