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木城ゆきと

著者情報
著者名:木城ゆきと
きしろゆきと
キシロユキト
生年~没年:1967~

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      銃夢(Gunnm) hyper future version
      カテゴリー:漫画、挿絵、童画
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      • 天から下がった支柱の末端にぶらさがった空中都市「ザレム」
        そのザレムの真下には、ザレムから吐き出された廃棄物の山。
        それを囲う形でゴミを再利用して生きる人々が「クズ鉄町」を形成していた。

        クズ鉄町は映画「ブレードランナー」のロサンゼルスのようなイメージ。
        また、サイボーグ技術が発達し、体の一部、または全身を機械にしている者の方が多い。

        そのクズ鉄町のサイボーグ専門医イド・ダイスケはスクラップの山から少女型サイボーグの上半身を発見する。
        奇跡的に脳が良好な状態で保存されている事を知ったイドは、彼女を連れ帰り、目覚めさせるものの、あまりに長い間、休眠状態にあったためか、過去の記憶をすっかり失っていた。

        サイボーグ少女は「ガリィ」と名づけられ、イドと暮らし始める。
        そのイドにはサイボーグ専門医の顔とは別に、犯罪者を狩るハンターウォリアーという顔を持っていた。
        (クズ鉄町には警察組織はなく、ハンターウォリアーという賞金稼ぎのシステムが存在する、という設定)

        その姿を見たガリィは、周囲の反対を押し切って、自分もハンターウォリアーとして生きる事を決意する。
        与えられた幸せの中では生きている実感がない、という気持ちと、イドを助けようとした時、無意識のうちに使った「機甲術(パンツァークンスト)」と呼ばれる火星発祥の格闘技術が自分が何者か知る手がかりになると信じて。

        が、ハンターウォリアーとして最初の相手は、これまで10人以上のハンターウォリアーを返り討ちにしてきた「マカク(魔角)」という極めて危険な相手。

        最初の対決の時にガリィに右目を潰されて以来、マカクはガリィを執拗に痛めつけるが、その態度の裏にイドは「怨恨」以外の感情があることに気が付く。
        ・・・それは「恋」

        マカクが生身の体を持っていた時は、死にかけても、その叫びに応えた者はいなかった。
        そして、「怪物」のボディを手に入れた後、破壊を繰り返すが、誰も応えようとはしなかった点では同じ。

        ガリィを除いて・・・。
        (返り討ちにあったハンターウォーリアー達は、最初から賞金目当てなので「応える」事はしていない)

        イドはマカクがガリィに「恋」をしていると考えたが、個人的にはマカクは「人間として対話」して欲しかっただけのような気がする。

        生身の体を失った後、機械の体を与えられる時、どんな姿か選べたのだが、マカクは「怪物」のボディを選んだ。
        それは、おそらく人に自分の存在を認めて欲しかったから。
        例え、「恐怖」や「嫌悪」「さげすみ」の対象という形でも。

        「怪物」となった後、破壊を繰り返したのは自分の生きた証を残したかったから(これはマカク談)
        ただ、マカク自身、そんな行いが長く続かない事は理解していた。

        「願い」がかなった後、マカクが最後に望んだのは自らの「滅び」
        それも「願い」をかなえてくれた者の手にかかって・・・。
        >> 続きを読む

        2013/11/04 by Tucker

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      銃夢(Gunnm) hyper future vision
      カテゴリー:漫画、挿絵、童画
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      • サイバーパンクSFマンガ。1巻ではアクションが中心だったが、今回はガリィの悲恋物語。

        クズ鉄町に住む少年、ユーゴ。
        彼はクズ鉄町の上空に浮かぶ都市ザレムに憧れ、懸命に働き続ける。
        闇ブローカーの大物ヘクターから「1000万チップ(クズ鉄町の通貨)持ってくれば、ザレムに連れて行ってやる」と言われた話を信じて。

        そんな中、ガリィはユーゴに出会う。
        そして、いつも空を見上げているような目をしているユーゴに惹かれていく。

        が、ガリィの体は機械製。
        それも戦闘用の強力な力を持っているもの。
        ユーゴは生身の人間。

        その違いだけでも、素直に気持ちを伝えられない「壁」となっていた。

        さらに、ユーゴには秘密の顔もあった。

        クズ鉄町では機械製の体の部品は安く手に入るが、高度な技術が必要な脊椎パーツは常に品薄。
        そのため、高価なのだが、そこに目をつけて、脊椎パーツを無理矢理、奪い取る「脊椎強盗」も存在する。

        ユーゴは、その脊椎強盗でもあったのだ。

        かたや脊椎強盗という犯罪者、かたや犯罪者を狩るハンターウォリアー。
        ガリィに恨みを持つハンターウォリアー、ザパンは、ガリィにユーゴを仕留めさせようと暗躍する・・・。


        ユーゴがザレムに行きたい、と思うようになったのは、死んだ兄の影響によるものも大きいが、クズ鉄町に対する憎しみの裏返しという面も大きい。
        「ザレムに行きたい」とは思っているが、ザレムに行ってどうするかまでは考えていない。

        ユーゴのビジネスの才能を見抜いたヘクターが大きな仕事を任せる話をもちかけた際、
        「ザレムで乞食でもするのか?」
        という言葉に、何も答える事ができなかった事が証明している。

        ユーゴの将来を一番、現実的に気にかけていたのは、ヘクターではないか、とさえ思ってしまった。


        かつて、ユーゴの兄もザレムに憧れ、禁を破ってザレムに近づこうとしたが、その夢についていけなくなった妻によって、ハンターウォリアーに売られ、命を落としていた。
        まるで、三角関係のもつれから殺人事件に発展してしまった話のように。

        ザレムに行くための資金を稼ぐユーゴは、まるで、せっせと都市ザレムに貢いでいるようにも感じられる。
        そして、ガリィはユーゴを取り戻そうとする恋人という役どころか。
        ザレムは文字通り「高嶺の花」
        結局、このエピソードは、ある意味、ユーゴとガリィと都市ザレムの「三角関係」なのかもしれない。
        >> 続きを読む

        2013/11/09 by Tucker

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      銃夢(Gunnm) hyper future vision
      カテゴリー:漫画、挿絵、童画
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      • 今回はモーターボール編。
        2巻の最後の方から4巻の冒頭にかけて掲載されている。

        モーターボールとはクズ鉄町で人気の競技で、コース上でトリッキーな動きをするボールを奪い合うレース。

        ただし、ボールの奪い合いでは激しい格闘になる事も多いので、レースそっちのけで、格闘に夢中になる選手も多いほど非常に荒っぽいもの。
        観客は競馬のように順位を予想し、賭けをしたり、選手目線のカメラの映像を見て、レースを疑似体験して楽しむ。
        トップリーグ、セカンドリーグ、サードリーグから構成され、トップリーグの選手ともなると「英雄」扱い。
        (ザレムの下部組織ファクトリーがクズ鉄町の住人のフラストレーションのはけ口として利用している節もある。)

        ユーゴを失ったガリィは、すべてを忘れるためにモーターボールの世界に飛び込む。
        何も考えない、感じることのない、ただ一振りの刃になるために・・・。

        自暴自棄になったとも思えるガリィ。
        だが、そのガリィの前に「壁」が現れる。
        それはトップリーグの無敵のチャンピオン、ジャシュガン。
        「帝王」の異名を持ち、ハンデなしでは賭けが成立しないほど。

        偶然から、そのジャシュガンに挑戦する権利を得たガリィは急に生き生きとしてくる。
        本人曰く「自分は、常に何かに挑戦していなくては、たちまちダメになってしまうタイプの人間だということが分かった」
        目標や目指すべきものが無かったら、だらけてしまうのは同じだろう。

        それまでガリィはモーターボールの選手の中では、一匹狼的な存在だったが、ジャシュガンに挑戦する事になってから、急に人が集まり始まる。
        (モーターボールのルール上、トップリーグの選手とガリィの所属するセカンドリーグの選手の1対1の試合はできず、仲間を集まる必要もあったが)
        そして、ガリィ自身もモーターボールの魅力に気付き始める。

        ガリィに夢を託す者、ガリィに心酔する者、ジャシュガンと戦いたい者、理由はそれぞれ。
        だが、集まってくる者達はモーターボールに人生を賭けた者であるのに対し、ガリィだけは、モーターボールを通して、何かを得ようとしていたのは皮肉ではある。

        ところで、ジャシュガンの強さの秘密は、駆け出しの新人選手の頃に受けた脳改造手術により、常人とはかけ離れた心の速度を生み出す集中力である「機」を極めたため。
        (脳改造は一種のドーピングではないか、というツッコミは無しで・・・。
        クズ鉄町では体を機械化することは一般的なことなので・・・)
        ただし、その手術の代償として、突然、脳波が停止する「脳死の発作」というリスクも抱え込むことに。

        これまでは、その発作が起きても、すぐに回復していたが、だんだん、脳波が停止する時間が長くなってきていた。
        おそらく、あとわずかの命。
        ガリィとの試合が最後になるだろう・・・。


        個人的にジャシュガンは、本作の中で最も好きな登場人物。
        「主人公が目標としながらも、結局、勝てないまま、手の届かない所へ行ってしまうキャラ」
        言い換えるなら、
        「"明日のジョー"の力石」的なキャラ
        には無条件で反応してしまう。

        ジャシュガンは後にガリィの夢の中にも登場するが、その際、ガリィは
        「なんで死んじゃったんだよ!
         あんたには、もっと教えてもらいたいことがいっぱいあったのに!」
        と思いをぶつける。

        ガリィにとっての、ジャシュガンの存在の大きさが垣間見える。
        ジャシュガンは鏡に映った自分自身の姿であり、常に一歩先を行く理想の姿だったのだろう。
        >> 続きを読む

        2013/11/10 by Tucker

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      銃夢(Gunnm) hyper future vision
      カテゴリー:漫画、挿絵、童画
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      • かつて、ガリィがユーゴに想いを寄せている事を知った上で、ガリィにユーゴを犯罪者として狩る立場に追い込もうとした、ハンターウォリア、ザパン。
        その企みは失敗し、ガリィの反撃を受けて、ザパンはビルの谷間に落ちていった。

        が、そのザパンは生きていた。
        全ての記憶を失って・・・。

        ザパンはホームレスに炊き出しを行うボランティアの女性サラの手伝いをしていた。

        ある日、ふと目にしたテレビにジャシュガンに挑戦するガリィの顔が映る。
        その瞬間、ガリィに対する恐怖の記憶が戻り、錯乱状態で暴れ始めるザパン。

        そして、制止しようとしたサラを誤って殺害してしまう、という悲劇が起きる。
        事故とはいえ、ザパンは自分の行ったことに呆然とし、何処かへ去っていく・・・。

        一方、ガリィはモーターボール引退後、昼はハンターウォリア達へのトレーナー、夜はバーで演奏する生活をしていた。
        穏やかな日常。

        が、そこに復讐の念に凝り固まったザパンの影が迫る・・・。

        ただ、ザパンの復讐は意外にあっけなく終わる。
        ・・・というかガリィは、ほとんど関わっていない。
        ザパンが殺したボランティア女性サラの父親であるハンターウォリア、「犬使い」マードックに仕留められるのだった。

        割とあっけない。
        ・・・と思われたが、さすがに話は、ここで終わらなかった。

        ザパンは、ディスティ・ノヴァと名乗る教授に拾われて、脳だけの状態となって、生きていたのだ。
        ノヴァ教授に死者の国から無理矢理、引き戻された、という方が正確ではあるが・・・。

        ノヴァ教授は、イドと同じくザレム出身。
        マカクを改造し、ジャシュガンに脳改造をほどこしたと思われる人物で、専門は分子機械工学。
        自宅で怪しげな人体実験を行っているマッド・サイエンティストである。

        ノヴァ教授の究極の研究目的は「業(カルマ)の克服」
        本人曰く
        「果たして、人間は自分自身の"業(カルマ)"を克服する事ができるのか!?
         "業(カルマ)"を征服する方法を見つけださねば、人類に未来はない!」

        ザパン(の脳)を生き返らせたのは、ザパンが自分の「業(カルマ)」とどう戦うか実験するため。
        そして、ザパンが望んだのは・・・「復讐」

        ノヴァ教授は望みを叶えさせるため、「バーサーカー(狂戦士)ボディ」を与える。
        この「バーサーカー(狂戦士)ボディ」は、以前、ガリィがマカクと戦う時に使用したものだが、訳あって売却されてしまい、ノヴァ教授の手に渡っていた。

        「バーサーカー(狂戦士)ボディ」には強力なパワーがあるが、同時に「バーサーカー(狂戦士)モード」という危険な機能も組み込まれている。
        このモードが発動すると、使用者の意思とは無関係に無差別破壊と増殖を行うように作られている。
        (大昔の戦争の際、兵士の体にこのボディを使用し、兵士が戦死した場合、外部から「バーサーカー(狂戦士)モード」を発動させ、敵地の撹乱を狙ったものらしい。)

        ガリィが使用していた時は、この機能は封印していたが、ノヴァ教授は、この封印を解除してしまう。
        (何のための封印なのかも調べずに解除するあたりは、マッド・サイエンティストの面目躍如)

        この危険なボディとザパンが一つになってしまったのだった。
        その力は、ノヴァ教授の想像をはるかに超え、ファクトリー(空中都市ザレムの下部組織)のテロ鎮圧部隊の武力をも凌駕するものであった。

        ガリィはノヴァ教授から渡された「バーサーカーボディ細胞破壊体」入りの銃を武器にザパンに立ち向かう。


        ザパンは人生は「勝ち」「負け」の二者択一しかない、と思っているタイプの人物。
        加えて「負け」の人には手を差し伸べる必要なし、とまで考えているフシがある

        数年前、「勝ち組」「負け組」という言葉が流行ったが、いつの時点の何をもって「勝ち」「負け」とするのか、人によってバラバラなので、意味無いだろうと思っていた。
        このエピソードは、「勝ち組」「負け組」が流行るより前に発表されたので先取りしていたのだろうか。

        弱い立場の人達に優しく接するサラ、それができない(苦手な)ザパンはサラに「愛情」以外に「妬み」「劣等感」も感じていた。
        サラを殺してしまった時、深い後悔の念と共に、心の奥底に「満足感」を感じたのでは?

        その「満足感」を感じた事を「罪悪」に思い、それを消すために、ガリィをスケープゴートにした、とザパンは言う。
        クズ鉄町の住人も暴れまわるザパンにガリィを生贄に捧げようとしていた。

        自分の弱さと戦うよりも、目に見える自分以外のモノのせいにしてしまう方がラクなのだろう。

        激しい戦いの後、ザパンが最後の最後に見たのは「サラとの夢」
        不安に怯えるザパンにサラは、どんな事も素直に受け入れるようにと、やさしく言う夢を見る。

        ザパンに半分、取り込まれていたガリィは、その夢を垣間見て、思わず叫ぶ。
        「強さも、弱さも、善も、悪も!同じように受け入れろというのか!?」

        そして、こう呟く。
        「無理だよ・・・。
         ちっぽけな私の心では・・・。」
        全く同感・・・。

        ラスト、ボロボロになったガリィの目に入ったのは、スイートピーの芽。
        花言葉は「優しい思い出」

        銃夢のエピソードの中で、最も印象に残るラストシーンだった。
        >> 続きを読む

        2013/11/16 by Tucker

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      銃夢(Gunnm) hyper future vision
      カテゴリー:漫画、挿絵、童画
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      • ザパンとの戦い(4巻)でボロボロになったガリィを待っていたのは過酷な現実だった。

        ガリィを拘束したファクトリー(空中都市ザレムの下部組織)は
        「クズ鉄町を救った事」
        には一言も触れず、
        「銃器の使用」(クズ鉄町では銃器の使用は最も重い"A級犯罪"に分類される)
        のみを問題視し、死刑(廃棄処理)を言い渡す。

        問答無用で廃棄処理されようとしていたガリィを救ったのは、ビゴットと名乗るザレム人。

        ビゴットはガリィに「取引」を持ちかける。
        「自分達の"道具"になるならば、命は助けてやる」

        "No"="死"なので、まともな「取引」でないことは明らか。
        だが、ガリィは、その申し出を受け入れる。

        なぜなら、ザレムの"道具"としての最初の任務は、狂気の科学者ディスティ・ノヴァ教授を追うことだったから。
        ノヴァ教授は暴走したザパンに殺されたイドを生き返らせる事ができる、と言っていたから。

        その言葉の真意は不明だが、ガリィはイドに会いたい、という一心で、ザレムの"道具"、TUNED(チューンド)になる。

        一方、ノヴァ教授はクズ鉄町を去り、ザレムへの反乱組織「馬借(バージャック)」の参謀に納まっている事が判明。
        ガリィはノヴァ教授を追って、荒野を目指す・・・。

        この巻では、主に「バージャック」の前線部隊との戦いが描かれる。
        ただ、裏テーマとしては「自由」があるような気がする。

        図らずもガリィと共に戦うことになったのはフォギア・フォアとヨルグ。
        そして、敵ではあるがナックルヘッドの3人の「自由」が交錯している。

        泣き言ばかり言うヨルグに対して、ガリィは
        「臆病者!」
        と罵るが、フォギアの
        「ヨルグには帰りを待っとる妻と子供がいるんじゃ!
         勘弁してやらんかい!
         失うものが何もない、お前とは違うんじゃ!」
        という言葉に何も反論できなくなる。

        ただし、ガリィは一見、自由に見えるが、その実「TUNED」として常にザレムに監視されている。
        そのためだろうか、ガリィが最も生き生きとするのは戦いの中で、何も考えず、頭の中が真っ白になる瞬間に生きがいを感じる。
        ただ、それは現実から逃避しているだけ。

        バージャックの一部隊の隊長ナックルヘッドは、本能的にそんなガリィと自分が似ていると感じ、執拗につけねらう。
        ラストの方で、ガリィは、ただ暴れる事ができればそれでいい、と言うナックルヘッドと対峙した時、相手の中に自分自身の姿を見て、愕然とする。

        この巻でのガリィは人間らしさをかなり失っている(ザレムの"道具"にされた事でそうなっているのだが)ので、あまり共感できない。
        むしろ、人情派フォギアの方が主人公のような存在感を出している。

        印象に残ったのはヨルグのセリフ。
        我が身可愛さにガリィとフォギアを裏切ってしまうのだが、その時のセリフがグサリとくる。
        「『自由』なんて強い奴だけの特権なんだ!
         オ 俺は『自由』より『犬の首輪』が欲しいんだよォ~!」

        ただ、これはヨルグの本音だったのだろうか?
        自分の弱さに対しての「言い訳」に聞こえてしまう。

        なぜなら裏切った後、ヨルグの頭をよぎっていたのはフォギアの次の言葉だったから。
        「『自由』とは自分で自分の舵をとることじゃ!」

        本当に「自由」は強い者だけの特権なのだろうか?
        弱い者は「犬の首輪」につながれていた方が幸せなのだろうか?
        そんな事を考えてしまった。

        ちなみに、ラストでフォギアはヨルグを許す。
        ガリィは許したかどうか、よく分からないが・・・。

        やはり、この巻の主人公はフォギアなのだろう。
        >> 続きを読む

        2013/12/01 by Tucker

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      • 空中都市ザレムへの反乱軍、バージャックのリーダー、電(デン)との戦いが、いよいよ本格的となる中、ガリィにとって、様々な出会いと別れが描かれる。

        一番大きいのは、コヨミ、ケイオスと電との出会い。

        コヨミはガリィがクズ鉄町に住んでいた頃、なじみのバーのマスターの養女(マスターが拾った捨て子)
        当時は赤ん坊だったが、12歳の少女に成長したコヨミと荒野で再会する。
        バーのマスターの育て方によるものか、元々の性格であったのか、大人相手に博打で持ち物全て巻き上げたりなど、かなり豪快な性格になっていた。

        ケイオスは荒野をさすらいながら、ラジオで「ラジオ・ケイオス」を放送する人物で、ガリィが追うディスティ・ノヴァ教授の息子。
        そして、バージャックのリーダー、電(デン)
        電はザレムを憎み、破壊した上で、新しい国を作ろうとしている人物。
        ザレムを憎む理由は「ザレムのために地上には荒廃と停滞が蔓延しているため」と言っているが、それは「公式」な理由にすぎない。

        ザレムは地上から物資を持っていくだけ、持っていって、地上に住んでいる人がどうなろうとお構いなし、というスタンスなので、特に圧制を敷いているわけではない。
        (ザレムさえ良ければ、という発想ではあるが)

        電がザレムを憎む本当の理由は「自分の怒り」をぶつける対象として、満足(?)できるほどの大きさであったからなのだと思う。
        (地上から見える人工の建造物で最大のものがザレム)

        ただ、本当の理由はどうあれ、電の言葉は多くの人を動かす「力」を持っていた。

        ガリィはザレムの「奴隷」の立場にあるとはいえ、行動の基になっているのは、あくまで「私怨」
        それに対し、電は「義憤」

        どちらの言葉が人を動かすかは、目に見えている。
        そして、その言葉はコヨミを動かす。

        コヨミの
        「ザレムにいるのが神サマじゃなくて、タダの人間なら!
         こんな世界は変えなきゃいけないんだ!!」
        という言葉に、ガリィは一瞬、言葉を失ってしまう。

        実際、「ザレムを撃ち落す」という部分以外は、電やコヨミの言う事の方が正しいと思える。

        そして、ケイオス。
        当初、「中立」という立場をとっていたが、ガリィとの出会いにより、大きく変わる。
        ザレムの存在を否定する点では電と同じだが、ザレムとの「和解」を目指す事になる。
        ただ、今の時点では、その決意を述べただけ、という状態。
        果たして、どのように「和解」を目指すのか・・・。

        ちなみに個人的にはジャシュガンに次いで、好きなキャラが電。(ちなみにその次がザパン)
        電は、ただ単に過激なだけでなく、冷静な情勢分析もできるし、仲間のために自分を犠牲にすることもためらわない。

        一体、どちらが主人公なのか、とふと思ってしまう。
        >> 続きを読む

        2013/12/14 by Tucker

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      銃夢(Gunnm) hyper future vision
      カテゴリー:漫画、挿絵、童画
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      • ガリィとノヴァ教授、ザレムとバージャックの対決もいよいよクライマックスを迎える。
        ただ、ザレムとバージャックの対決の最後は描かれるが、ガリィとノヴァ教授の対決にはストーリーとは関係ない問題が残る。

        連載時、ストーリーとは関係ない所で作者が問題を抱えてしまい、一応の決着をつけるためのエピソードで最終回を迎える。
        が、作者自身、そのラストに不満だったため、「銃夢 Last Order」として続編の連載が決まり、現在も連載は続いている。

        この巻では、その「一応の決着」のためのエピソードは、ざっくりと削除され、「銃夢 Last Order」にスムーズに繋がるようにされている。
        ただ、そのため、何も知らない人は「これでラスト!?」という終わり方になってしまっているので、要注意。

        閑話休題。

        ノヴァ教授は「対自核夢(ウロボロス)」でガリィに対抗する。
        「対自核夢(ウロボロス)」とは、ガリィとザレムをつなぐ回線をハッキングして、ガリィに「夢」を見るように誘導するもの。
        これを用いて、ノヴァ教授は2度にわたり、ガリィに挑戦する。

        一度目に見せた夢は「最強の敵」と戦う夢。
        ガリィが勝てなかった唯一人の相手、モーターボールの無敵の「帝王」ジャシュガンが夢の中に現れる。

        夢だと分かっていながら
        「なんで死んじゃったんだ!
         あんたには、もっと教えてほしいことがたくさんあったのにッ・・・!!」
        というセリフが泣かせる。

        二度目は、ガリィを安息の夢の中にどっぷり浸からせ、戻ってこられないようにしようとする。
        そのためにノヴァ教授自身もガリィの夢の中に入り込む。

        まずツライ夢をさんざん見させ、ガリィを精神的に弱らせておいてから、穏やかな日々の夢を見せる、という手の込みよう。

        ただ、予想外だったのは、穏やかな日々(の夢)はノヴァ教授にとっても、心のどこかで望んでいた日々であった、という点。
        自分で作った「夢」に自分がハマってしまうのだから、世話は無い、と言ってしまえば、そうだが、ノヴァ教授の
        「私は今まで、何に駆り立てられていたのだろう・・・。
         この胸のわきあがる思いは、何だ・・・。

         ああ、この世に悲惨も、死も存在せず、
         ただ喜びだけを心から信じられるならば・・・
         祈らずにはいられない。
         この刻が永遠に続けと・・・」
        という言葉には、ドキリとする。

        ノヴァ教授は、いつも変なメガネをかけて素顔は分からないのだが、この時だけ、そのメガネをはずす。
        その素顔は、意外なほどまともな印象。
        ノヴァ教授の「狂気」は、そのメガネに宿っているのではないか、とさえ思ってしまう。

        ケイオスはガリィを助けるため、無理矢理、「対自核夢(ウロボロス)」に侵入するが、その事により、「夢」はほころびを見せ始める。
        その時、ノヴァ教授は異常とも思えるほどの態度で「夢」を守ろうとする。(もともと、マッドサイエンティストだが)
        「現在は一瞬のうちに過去となり! 誰もがいつしか死に!
         運命は人智を超えて荒れ狂う!  それが当然だといわんばかりに!!

         私は、そんなこの世の全てを憎む! 熱力学第二法則を憎む!!」

        ノヴァ教授の研究の本当の目的は「業(カルマ)の克服」ではなく、「(生きていながら)永遠の安らぎを得る」事だったのでは?

        一方、ガリィは、一見、為すがままになっていたようだが、実際は「安息の日々」が「夢」だという事をはっきり分かっていた。
        分かっていた上で、しばし「安息の日々」に甘えていたのだ。
        充分、甘えた事に満足したガリィは自らの意志で、「対自核夢(ウロボロス)」から脱出する。

        そして、現実世界で、ノヴァ教授と対峙するガリィ

        「・・・これが夢の続きだったなら・・・
         私は君を守るために、どんな事でもしただろうに・・・
         あの永遠の刻を守るためだったら・・・」
        と、力なくガリィに銃を向けるノヴァ教授。

        引き金をひくが、あっさりかわされ、首を切り落とされる。

        「私だって・・・そうさ」
        とつぶやくガリィ。

        二人に安息の日々は、訪れたのだろうか・・・。


        ところで、この巻でのもうひとつのクライマックスは、電(デン)率いるバージャックとザレムとの戦い。
        が、結果はバージャックの大惨敗。

        列車砲「ヘング」でザレムを撃ち落そうとした電だが、その列車砲はザレムにかすり傷ひとつ負わせる事はできなかった。
        それどころか、ザレムの反撃により「ヘング」は一瞬にして破壊されてしまう。

        この事態を見て、電は「ヘング」を失った今、大部隊を率いての戦闘は無益、と判断し、「バージャックの解散」を宣言し、今後は各自ゲリラ化し、ザレム=ファクトリー破壊に移るように命じる。
        こういう決断をあっという間に行ってしまう辺り、電が只者でない事がうかがえる。

        そして、自らは仲間を逃がすため、ザレム=ファクトリーの目を集めようと、死を覚悟した突撃を行う。
        後に電は「英雄」として、ほとんど「信仰」の対象になるが、それもうなずける。

        集中砲火を浴びながらも、突撃するシーンには「カルミナ・ブラーナ」の詞が重なり、名シーン中の名シーン。
        この辺りだけを見ると、電が主人公では、と思ってしまう。

        ボロボロの体で、最後の力を振り絞り
        「・・・体なき者として生まれ・・・
         命知らぬ者として奔り・・・
         怒りのみ喰らう者の剣・・・

         受けよッ!!」
        と剣を振り下ろす姿は「英雄」そのもの。
        ただし「悲運の英雄」だが・・・。

        やはり、この作品は主人公より脇役、敵役の方が、ずっと魅力的だと、つくづく思う。
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        2013/12/15 by Tucker

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      銃夢外伝
      カテゴリー:漫画、挿絵、童画
      5.0
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      • 1990年から1995年にかけて連載されたSFマンガ。
        現在も続編「銃夢 Last Order」が連載中。
        個人的には、このマンガ、主人公よりも、その敵役や、脇役の方に魅力を感じていた。

        本編の方はサイバーパンクに分類されるマンガであったが、「銃夢 Last Oeder」は途中からSF味付けの格闘アクション(お笑い要素も多い)とでも言うべきものになり、個人的な好みからずれてしまった。
        が、本書は本編「銃夢」の外伝。

        「聖夜曲」
        「音速の指」
        「故郷」
        「馬借音頭(ばしゃくおんど)」
        の4作品から成る。

        「馬借音頭」のみ「銃夢」の関連するストーリーの知識があった方がよいが、それ以外は単独のSF作品として楽しめる。

        「音速の指」は達人対達人の息詰まる戦いが描かれる。
        一方の達人は本編での主人公ガリィ。「機甲術」(パンツァークンスト)と呼ばれる格闘術を使う。
        もう一方は「音速の指」と呼ばれる犯罪者(姓名不詳)

        「音速の指」がガリィに挑む事を決めた時に読んでいた本は「白鯨」(ハーマン・メルヴィル)
        そして、ガリィが「音速の指」への「招待状」を挟んでいた本は「悪について」(エーリッヒ・フロム)

        「音速の指」にとって、ガリィは「白鯨」だったのだろうか?
        ガリィが「悪について」を「音速の指」に渡したのは、「音速の指」が「衰退の症候群」(=人間を破壊のための破壊へかりたてるもの、そして憎悪のための憎悪へかりたてるもの)の典型、と言いたかったのだろうか?
        (付け焼刃の知識なので、的外れかもしれないが)


        印象に残ったのは「聖夜曲」と「馬借音頭」

        「聖夜曲」はイド(本作の主人公)と無垢というか白痴に近い少女との物語。

        腕のいい医者であるイド(ただし、本作では訳あって、自分の診療所どころか、ほとんどその日暮らしの生活を送っている)は、体の一部や臓器を失った患者へ、クローン技術を使って患者の細胞から作った腕や臓器を移植する医療を施す医者デデキントと出会い、スカウトされる。
        自分の理想とする医者の姿とは異なるが、患者が喜ぶ姿は一緒、という事で無理矢理、自分を納得させるイド。
        だが、デデキント医師が目指していたものは・・・。そして、イドが出会った少女の正体とは?

        遠い未来が舞台の話だが、今も医療だけでなく、様々な事で、「やれる事か」と「やるべき事か」が考慮されているのか、と疑問に思った。

        ちなみに本作が発表された時期は、ちょうど「クローン羊ドリー」が話題になった時期と重なっている。
        作中、デデキント医師が行っていた医療は、iPS細胞の研究で目指しているものであるだけに、今、読んだ方がゾクッとする。


        「馬借音頭」は、タイトルからするとコメディ作品のように思えるがそうではない。

        「銃夢」本編では「荒野の魔王」の異名を取る"電(デン)"と、彼が率いる反乱軍"馬借(バージャック)"との戦いが描かれたが、本作は、この後日譚。
        本作の主人公であるコヨミは馬借のマスコット的な存在であった少女。

        本編で馬借の反乱は失敗、電は死亡している。
        その後、コヨミはカメラマンのタマゴとして逞しく暮らしていた。

        そんな中、「死んだはずの"電"が甦った」というウワサを聞く。
        電の最後を目にしていたコヨミは「そんな事はありえない」と思いつつ、「スクープのため」と称して取材へ。

        ただ、実のところ、コヨミにとって、スクープはどうでもよい話だった。
        ひたすら"電"に会いたかっただけ。

        周囲にはタフなように見せていたが、それは表面上の話。
        電という、信じられるものを失い、どうやって生きていけばいいか分からなくなっているのだ。
        そして、「"電"復活」の真相に「人の醜さ」を見せつけられる。

        コヨミを救えるのは電だけだが、その電は、もういない。
        半ば自暴自棄になるコヨミだが、その前に現れたのは、コヨミを救える唯一の人物・・・。

        本作では、コヨミが取材の中で出会ったゲリペリ老人が、いい味を出している。
        一見、とらえどころが無いというか、むしろアヤシゲな老人だが、それは仮の姿。

        背中で語る、という言葉がピッタリはまる。
        こういう大人、今どれくらいいるだろうか。

        ちなみに「銃夢」本編の馬借(バージャック)の反乱終結後、為すべき事を見失った人物がもう一人。
        その人物については「銃夢 Last Order」の"夢の罪の重さを"というエピソードで描かれる。
        (こちらも印象に残るエピソードだった)

        電は、なかなか罪作りな人物!?
        >> 続きを読む

        2013/10/14 by Tucker

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【木城ゆきと】(キシロユキト) | 読書ログ - 読書ファンが集まる読書レビューサイト(著者,作家,作者)

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