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梨木香歩

著者情報
著者名:梨木香歩
なしきかほ
ナシキカホ
生年~没年:1959~

この著者の本を読んでいる会員ランキング

このランキングは1日1回更新されます。
      西の魔女が死んだ
      カテゴリー:小説、物語
      4.1
      いいね! daya linarosa Moffy peace_1987
      • ちょっと不思議ですごく愛情にあふれた素敵な話。
        読み終わって心地の良い余韻が残った本だった。
        文章のテンポも良くすごく読みやすい。

        中学生の少女まいは、学校での人間関係に嫌気がさし、登校拒否になってしまう。
        気分転換の為、彼女は田舎の祖母の家で過ごすことになる。
        彼女の祖母は、イギリス人で日本で結婚し日本の田舎に住んでいる。
        祖父は既に亡くなり、祖母は一人で暮らしている。
        祖母はちょっと不思議な感じのする人だが、彼女と共に生活する事でまいの心は健やかさを取り戻していく。
        そして彼女の家系の秘密も知ることになる。

        まいのおばあちゃんの人物造形がとても秀逸で、ちょっとミステリアスでユーモアを漂わせたイギリス人女性が目に浮かぶようです。
        このキャラクター無しに本書は成立しないと思う。
        著者の才能にただ脱帽するばかりである。

        だけどおばあちゃんのモデルってベニシア・スタンリー・スミスさんだったりするんですかね?

        >> 続きを読む

        2017/12/27 by くにやん

    • 他38人がレビュー登録、 152人が本棚登録しています
      家守綺譚
      カテゴリー:小説、物語
      4.8
      いいね! niwashi
      •  時代は明治時代でしょうか。
        湖でボートに乗っていておぼれて死んでしまったらしい友人、高堂の家に家守として住むことになった私こと作家、綿貫。

         床の間の川の絵の掛け軸から、死んだはずの高堂が船に乗って、部屋に入ってきて
        「庭のサルスベリのやつが、おまえに懸想している」・・・だからどうしろと言われましても。
         
         庭の池のヒツジグサは未の刻になると、花をひらく・・・「けけけっ」と声がする。それは河童の声。

         河童の抜け殻をもらってしまい、干していたら、高堂と一緒に女の子河童がきて「かえしてください」というので、返してあげる。

         白木蓮のつぼみはタツノオトシゴなので薬として売ってくれませんか、と長虫屋がやってくる。

         いつの間にかいついた犬のゴローは、仲裁犬であり、鷹と河童の仲裁をして名をあげた名犬。

         梨木果歩さんのこの明治の物語は、うすぼんやり、としていて、どこか間抜けで、花、木、人間も鬼も竜田姫も同じ風景の中に描いた水墨画がずらりと並んでいるよう。

         本を読む、文章を読むというより、水墨画を眺めている、というのが正直な心もち。

         だから、理由理屈はなく、ただ、そこにあるものが、花だから花で、河童だから河童で、長虫屋の父親がカワウソだというのも「どの時代にも掟やぶりの恋というものがあるから」でオスマシ顔。

         すべての章(絵)に花の名前がつけられていて、水墨画の中の人びとはゆったりとしている。

         妙に小心者で素直な綿貫は、いつも、「そんなものか?」と思うと「そんなものさ」と高堂に言われる。不思議なことが起きても、びっくりはするが受け入れる綿貫。

         犬のゴローはどうも「鼻歌を歌いながら歩いているようだ」実はこの犬のゴローさんがすごい犬で、各方面の争いごとを納めている。

         文章から墨の匂いがするような水墨画の雰囲気、そして題名となった花たちが、ぽち、とおかれている風情がたまらなく粋な四季の物語。

         だから、読む方もせっかちにならず、一緒になって、「そういうものか・・・」と受け入れるのがいいと思います。
        >> 続きを読む

        2018/06/15 by 夕暮れ

    • 他5人がレビュー登録、 21人が本棚登録しています
      エンジェルエンジェルエンジェル
      カテゴリー:小説、物語
      4.2
      いいね!
      • 図書館で借りてきました。
        本を開いた瞬間、余白が多く字数が少ないと感じました。
        中身は濃いですね。
        人間にも、熱帯魚世界にも 悪魔はいる。
        おばあちゃんの覚醒は本当に、モーターの音と関係があるのか不思議でした。
        >> 続きを読む

        2016/06/07 by はなもも

      • コメント 2件
    • 他3人がレビュー登録、 10人が本棚登録しています
      冬虫夏草
      カテゴリー:小説、物語
      4.3
      いいね! Moffy
      •  著者は、自分の考えを多冊の作品に分けて読者に伝えると聞いたことがある。
         梨木さんの作品を読みながら、多く感じられるのは人と人との、また自然との「緩やかな繋がり」。

         『僕は、そして僕たちはどう生きるか』で、気に入った言葉の一つに:
         「そう、人が生きるために、群れは必要だ。強制や糾弾のない、許し合える、ゆるやかで温かい絆の群れが。人が一人になることも了解してくれる、離れていくことも認めてくれる、けど、いつでも迎えてくれる、そんな「いい加減」の群れ。」  がある。
         この作品にも、いくらかこの考えが含まれており、登場人物一人一人の間の距離はとても「いい加減」であり、決して濃いとはいえない。
         会話も簡潔で、余分な部分がない。
         けど、濃いのである。いや、濃密と言えるぐらいに。

         最近はよくよくこういった人間関係を素敵と思えるようになってきた。
         愛し合っていれば、遠回りでもどこかできっと繋がっている。
         綿貫さんとゴローのように。
        >> 続きを読む

        2017/12/28 by deco

    • 他3人がレビュー登録、 11人が本棚登録しています
      りかさん
      カテゴリー:小説、物語
      3.8
      いいね! niwashi
      •  『りかさん』は、「りかさん~養子冠の巻、アビゲイルの巻~」と「ミケルの庭」の2つの話から成っていますが、『からくりからくさ』の前後譚ともいうべきもので、時代順としては「りかさん」『からくりからくさ』「ミケルの庭」となります。

         ようこは、リカちゃん人形が欲しかったのですが、人形に詳しいおばあさんから、プレゼントされたのは、市松人形の「りかさん」でした。

         最初は、がっかりするようこですが、だんだん、りかさんの不思議な魅力というか、力によって色々な人形たちの声が聞こえ、スクリーンのようにその人形の歴史を見ることになります。

         おばあさんは、女の子は人形遊びをしないと疳が強くなるからね・・・と言います。
        最初は、りかちゃん、と呼んでいるのを、「話しはじめた」りかさんが

        「すこし言いにくそうに、私のこと、りかさん、と呼んでくださらない?」

        と申し出ます。(この言葉で、りかさん、というのがただの「少女」でないことがわかります)

          しかし、ただ飾ってあるだけだったような雛人形は、りかさんの登場によって、ようこの目には話しが聞こえ、動きが見えるようになります。
        なんと、ひな壇の人形たちの「人形関係」は大変、悪いのでした。

        ―悔しやのう、悔しやのう。
        ―うるわしのせのきみ、うるわしのせのきみ。
        ―おのれ、悪党め、おのれ、悪党め。

         あの雛人形一式って、考えてみれば、男雛と女雛の2人を頂点としたピラミッド人間関係そのもので、ようこの家の雛人形たちは、ばらばらに大騒ぎしていることに、ようこも驚きますが、私も驚きました。

          人形になぐさめられる話はあっても、ようこは、りかさん(そして困ったときのおばあさん)という助けのもと、人形たちの遺恨をひとつずつ晴らしていく、という物語。

         ようこは、人形たちを一生懸命なぐさめようとしています。
        おばあさんもりかさんもとても寛容です。そして、大変、物事を冷静に見ています。

         いつも寛容であること。
        それは、「かわいい」と心の底から感じることだ・・・と言いますが「かわいい」という言葉の、その向こうには、きちんと検証されていないで放っておかれた膨大な闇が屈んでいる、ともあります。

         不思議なものを不思議なままに、追い詰めることなくすらり、と書ききる梨木さんの文章は相変わらず、読みやすく、気持よいものでした。
        >> 続きを読む

        2018/07/07 by 夕暮れ

    • 他2人がレビュー登録、 12人が本棚登録しています
      家守綺譚
      カテゴリー:小説、物語
      3.9
      いいね! Moffy
      • 機嫌が荒れたりする時にめくると、不思議と心が落ち着く:)。
        この本は「読む」よりも、「眺める」方が向いているかもしれない。

        あやかしをこんなに日常的に描くとは……:D

        この作品で好きな言葉:
        「私は与えられる理想より、刻苦して自力で掴む理想を求めているのだ。こういう生活は……私の精神を養わない。」
        >> 続きを読む

        2017/12/29 by deco

    • 他2人がレビュー登録、 17人が本棚登録しています
      ピスタチオ
      カテゴリー:小説、物語
      3.4
      いいね!
      • 難しい漢字、カタカナ英語、それに分かりづらい表現、物事や人との関係性などに苦しみながらも何とか完読した。著者はいったいこの小説を通じて何を描きたかったのか疑問に思う。アフリカのウガンダに残る特異な精神世界をことのほか掘り下げようとしているが。 >> 続きを読む

        2017/04/27 by konil

    • 他2人がレビュー登録、 10人が本棚登録しています
      僕は、そして僕たちはどう生きるか
      カテゴリー:小説、物語
      4.2
      いいね! Moffy
      •  「そう、人が生きるために、群れは必要だ。強制や糾弾のない、許し合える、ゆるやかで温かい絆の群れが。人が一人になることも了解してくれる、離れていくことも認めてくれる、けど、いつでも迎えてくれる、そんな「いい加減」の群れ。」
         終盤のこの言葉にぐっときました。

         人の心は、口の狭い花瓶のようで、手を入れて探っても、分かるようで分からなくて、しまいには手がつっかえて、とうとう中まで入れなくなって...それで悲しんだり、友達なのになんで教えてくれなかった、またなんで理解できなかったんだろうと嘆く。
         でも、それはそれで、「しょうがない」と割り切らなきゃ。
         それが、相手に対しての優しさでもあると、今思えるようになった。
         「いい加減」で良い。
         そして、自分を捨てず、自分らしく生きていき、ほんのりとした優しさがあれば、いい。
         
         コメントを読みながら、この一冊でそれぞれが捉える観点が違って本当に面白いと思う。
         しばらく経って読み返せば、私もまた新しく得るものが出てくるかもしれない。
        >> 続きを読む

        2017/10/23 by deco

    • 他2人がレビュー登録、 6人が本棚登録しています
      f植物園の巣穴
      カテゴリー:小説、物語
      4.0
      いいね! Moffy
      • 心の病を解決する為には、遠い昔、幼い頃の記憶までも思い出す必要があると聞いたことがある。
        主人公は痛みを心の奥にひそみ、辛さと戦いながら生きてきたのだろう。
        「今」の問題のように見えるものも、過去の延長線だったりする。

        主人公は見事巣穴でその全てを思い出し、向き合ったのだろう。
        「現在」と「過去」が混ざった、一つ一つのカケラを見分け、集め、集まるに連れて、「過去」も「現在」も完結した。
        これでやっと、今までの人生も完結する。

        辛い時、目の前のモヤモヤにばかりとらわれずに、一旦「迂回」してみたほうが、案外近道だったりする。
        >> 続きを読む

        2017/12/13 by deco

    • 他1人がレビュー登録、 6人が本棚登録しています
      村田エフェンディ滞土録
      カテゴリー:小説、物語
      4.5
      いいね! niwashi
      •  梨木香歩さんの『家守綺譚』は明治の日本の不思議を不思議としない物語でした。

         この本は、それと対になるような、同じ時代の土耳古(トルコ)での日本人留学生、村田の遠い異国での不思議といえる体験で、『家守綺譚』の中でも、作家、綿貫のところへ時々、友人で土耳古に留学している村田からの手紙が来ていました。

         1899年。
        土耳古と日本の親善大使として、考古学研究のために彼方の国、土耳古に留学した村田。

         村田は、ディクソン夫人というイギリス人女性の下宿にいますが、ドイツ人のオットー、ギリシャ人のディミィトリス、トルコ人のムハマンド・・・そして村田。

         国も宗教もバラバラなのですが、なんとなく、ディクソン夫人のもと、時々仲たがいもあるもののおだやかにお互いを尊重し合って暮らしています。

         留学記、というと「海外の違いにうちのめされる」とか「西洋文化に驚く」という大変さ、というものが強調されるものが多いなか、この物語は、まるでのんびり。
        のんびり、というよりおっとり、呑気です。そして奥ゆかしい。

         それは村田が、なんとしても海外の知識を日本に!とがつがつせずに、朴訥なお人柄で、あるものはあるがままに、ほお、そうなのか、、、と受け入れられるからです。

         むしろ、完全西洋ではない、土耳古という国のミステリアスさが、まるで、絵を見ているように額縁の中の絵が、さわさわ、と静かに動いているように、ひそひそとしているのです。

         しかし、日本に戻って、忙しくなると、土耳古への想いは強くなる。
        もう二度と行くことのかなわない異国。
        土耳古の風、空、海、馬、人びと、市場・・・・なんとも満ち足りていた土耳古での生活。

         村田が想いを馳せれば馳せるほど、平和で、たくさんの人種や宗教が共存できていた共同体のような土耳古は遠くなり、額縁の中の絵になってしまい、その絵はもう二度と動き出すことはないのです。

         そんな一抹の哀愁の余韻を残します。そして村田だけでなく、ディクソン夫人、オットー、ムハマンド、ディミィトリス・・・友人たちの日本の村田への想いも、叶わぬものなのです。

         なんとも、あたたかく、そして、エキゾチックで、ゆったりとして、不思議で、切ない物語です。
        >> 続きを読む

        2018/07/10 by 夕暮れ

    • 他1人がレビュー登録、 7人が本棚登録しています
      裏庭
      カテゴリー:小説、物語
      3.9
      いいね! niwashi
      • 【少女のための物語】
         中学生の頃、夢中で読んだ。テルミィと年齢が近い間に読んでいて良かったと思う。
         テルミィが冒険した裏庭はおそらく象徴的な世界なのだろうけれど、その意味などを深く探索せずに読むのが吉。
         テルミィに寄り添って裏庭を巡るうちに、満たされなかった心がいつの間にかふっくらと満ちているのに気づく。
         たまに読み返したくなる作品。
        >> 続きを読む

        2015/04/05 by かやっこ

    • 他1人がレビュー登録、 24人が本棚登録しています
      鳥と雲と薬草袋
      3.3
      いいね!
      • 常々「地名」には、その土地の生い立ちや意味を表していて、言霊のような力を帯びているものと感じていた。
        読み方も難しく、教えてもらって「こんな読ませ方をするんだ。」と驚いたり、また逆に、他所の人に地元の地名を教えるときは、ちょっと得意になったりもする。

        この本は、作者が縁のあった土地の名前を重ねていったエッセイ。
        地名はもちろん、山・旧街道など自然に造詣が深い作者が書いたこのエッセイは、とても味わい深い。

        文中で作者は、平成の大合併で、乱暴な都市名が増えてしまったとぼやいている。
        確かに、昔から使われていた、意味があり愛着もある地名が地図上から消えた。
        私も、これは悲しい。
        >> 続きを読む

        2016/01/16 by shizuka8

    • 他1人がレビュー登録、 4人が本棚登録しています
      不思議な羅針盤
      5.0
      いいね! Moffy
      •  梨木さんの「羅針盤」となった考えや経験がつまった一冊。
         この思想はあの作品の中でも強調してたな~とか思いながら読んでいました。:)

         梨木さんの表現はいつ読んでも分かりやすく、この一冊もすごく読みやすかったです。
         他の作品を読んだ後にこれを読むと、まとまりがあって梨木さんが作品を通して伝えたいことがもっと分かりやすくなるかもしれません。
        >> 続きを読む

        2018/01/27 by deco

    • 他1人がレビュー登録、 3人が本棚登録しています
      りかさん
      カテゴリー:小説、物語
      5.0
      いいね!
      • りかさん、全体を通して素晴しいお話だったけれど、最初のりかさんのお世話するところがすごく好き。うまく言えないけれどその世界のルールを登場人物がこなしていくのが好き。引き込まれる。 >> 続きを読む

        2013/01/30 by seri

      • コメント 5件
    • 2人が本棚登録しています
      雪と珊瑚と
      カテゴリー:小説、物語
      3.8
      いいね!
      • 珊瑚、21歳。
        雪と名付けた女の子の赤ちゃんを育てるシングルマザー。
        親にも頼れずたった一人で生きていかなければならない珊瑚は、
        私からすれば、ふと気がつけば、ほぼ娘の年齢だ。(そこにびっくりする自分)

        梨木香歩さんはいつも母との関係に問題がある女性が主人公になっているが
        この珊瑚も、そんな女性だった。

        ネグレクト。それは母による虐待といえる。
        そうして育った少女は年若くして妊娠し、結婚し、離婚し、今子育てをしている。

        誇り高く一人で生きる術と決意を身に付けたかに見える珊瑚だが、
        実は、周囲の人からの好意や愛情や優しさに助けられて生きている。
        クールな態度ながらも、彼女はそういう人間関係をそっと大切にしながら生きている。
        それがわかる人が、きっといる。
        現実の世の中でも、自分を真剣に生きている人の姿はきっと人にも伝わると思う。

        梨木さんの他の作品で主人公に寄り添うおばあちゃんの姿があるが、
        この作品では、くららさんという年配の女性が雪の子守役として登場する。
        そしてここにも、キリスト教の信仰が出てくる。
        くららさんは外国のボランティアをし修道院暮らしをしたことがあるらしい。

        もちろん今回も、身近な自然がたっぷり。おいしいお料理のお話がたくさん。

        くららさんのお料理に影響を受けた珊瑚はよい素材をシンプルに料理した「惣菜カフェ」を
        保護樹林の脇の一軒家を借りてオープンさせるのだ。

        暮らしの豊かさは、確かに、金では買えないものなのだと、
        そう思わせてくれる。

        よそよそしいまでに律儀な珊瑚の気持ちによりそい、「頑張って」と応援しているその時に、
        梨木さんはやはり平手を食らわしてくれた。

        悪意に満ちた中傷や、どうしても、人を傷つけずにはいられない
        「自分なりの正義感」を振りかざす人というのは、どこにでも現れるものだ。

        優しくあったかいだけのお話しを書く人じゃあ、ないものね。

        母に否定された子供はどんなだ?

        どう思って生きていく?

        とうやって自分を支え、どうやって、立ち直る?

        自分が母と同じ過ちを犯すのではないかという不安にどう耐えていけばいい?


        子供を持ったことがある人ならば、誰もが知っている恐怖、焦燥、不安、
        大きなプレッシャー、逃げ出したくなる夜、凶暴な怒り、そして負い目。

        「子どもを産むということが、ときに生死に関わるほどのダメージを
        母体に与えるのと同じように、
        子どもを育てるということも、長いスパンで、
        ときに母親自身の存在を揺るがすほどのすさまじい影響力を持つものなのだろう」

        まさしく、その通り。
        こんな風にすっぱりと書かれると気持ちが良いほど真実ですね。

        子どもを愛してダメにする人も、子どもを愛せず、産む資格のない人も。
        それぞれ、人生を、自分自身を根底から変えてしまうものです。子どもって。


        けれど梨木さんはいうのだ。
        自分を再生することはできる。
        諦めるな、絶望するな。
        人と違ってもいい。自分を受け入れ愛しなさい。
        愛する人(対象)を見つけさえすればそれが可能になる。
        そうすれば、自分の周りに愛が満ちていることに気づくことでしょう。
        自分が一人でないことがわかるでしょう。
        >> 続きを読む

        2013/03/23 by 月うさぎ

      • コメント 8件
    • 5人が本棚登録しています
      村田エフェンディ滞土録
      カテゴリー:小説、物語
      5.0
      いいね! Moffy
      •  な...なんと!
         終盤『冬虫夏草』とつながりが出てくるとは思わなかった。
         そうかあのサラマンダーは村田氏が持って帰ったものだったのか;;;;;;;

         『家守綺譚』や『冬虫夏草』と似た雰囲気があり、あやかしな内容も出てくるが、歴史だの政治だの、『春になったら莓を摘みに』のような重々しさもある。
         やんちゃな脇役だった鸚鵡も、最後には亡くなっていった多くの友人の「面影」となり、主人公の傍に残る大事な存在となった。

         梨木さんの作品にはよく「いい加減な繋がり」といったものが出てくる。『僕は、そして僕たちはどう生きるか』でもあったような、緩くとも暖かい繋がり。
         それは『不思議な羅針盤』でも強調されていて、『家守綺譚』や『冬虫夏草』、『海うそ』での人間関係にもそのような雰囲気がある。

         つながってはいるが離れても良し。
         離れてはいるが心の片隅にはいつも住み着いている。

         まるで本書の鸚鵡だ。
         そうだ鸚鵡はもしかしたら村田の心ではないのか。
         ふと聞いた仲間たちの言葉、その雰囲気、口調をたまにありありと思い出しては懐かしみ、また思い出すほどに彼らが自分にとってどれほど大事だったのかを感じている。
        >> 続きを読む

        2018/01/24 by deco

    • 2人が本棚登録しています
      からくりからくさ
      カテゴリー:小説、物語
      5.0
      いいね! niwashi
      •  この物語は亡くなった祖母の家を、孫の蓉子が管理人として住み、下宿人として、紀久と与希子とアメリカ人のマーガレット、4人の女性の共同生活をすることになる風景を語ります。

         そしてもうひとり、重要な人がいます。祖母の形見ともいえる、市松人形のりかさん。

         マーガレットは、日本に針鍼灸師の資格をとるために来ていすが、他の3人は、自然のものから色を作る、染色の仕事をしています。

         何も起こらないわけではなく、特に、アメリカ人で日本にやってきたマーガレットは日本語はできるけれど、根本的な日本の慣習などは、どうして、そんなことするのか?感情を理性で押さえつけようとする傾向があります。

         だから、どうしても、わからないことがでてきてしまいますし、それを上手く、言葉できっちり説明できないことも出てきます。一番、悩み多いのはマーガレットかもしれません。

         マーガレットは、日本が好きで、アメリカだとユダヤ系とか色々細かく先祖がいつまでもついてくるアメリカに帰る気はなく、「外人」のひとことで、わかってもらえる日本がいい、という。

         詳しくは書かれていませんが、マーガレットは家庭的には、寂しい思いをして育ってきたらしいのです。

         蓉子は、逆に慈しまれて、自由に育ってきました。かといっていい家のお譲さん、というわけでもないのですが、マーガレットが言うように、「自然を慈しむように、人間を慈しむ」ことができる女性です。

         はっきりと自分の意見を言う・・・というマーガレットに比べたら、蓉子さんや他の下宿人は、あまりはっきり言わず、なんとなく、以心伝心で物事を決めるということがたくさんあります。

         梨木さんの物語の世界はとても自然にあふれていて、誰もヒステリックになることなく、急ぐことなく、色々、困ったことが起きても、人間関係にさざ波は立ちません。

         それは、家の描写、自然の描写の中で、人間が生きている・・・という緑や草や花の匂いがいつも漂っているような穏やかな文章が、大げさにいえば魂浄化効果をあげているからだと思います。
        >> 続きを読む

        2018/07/06 by 夕暮れ

    • 13人が本棚登録しています
      春になったら莓を摘みに
      4.2
      いいね! niwashi
      • 著者が学生時代、英国で過ごした頃、下宿した家の女主人ウェスト夫人と、そこに下宿した人々との交流記。

        ウェスト夫人は全くのボランティアで下宿人を受け入れている。
        様々な人種、考え方の下宿人たち。

        本書で登場する人達は、クセの強い人たちばかりだが、取り上げたのがそんな人達だけなのか、本当にそんな人達ばかりなのかは不明。

        「筋金入りの博愛精神」とでも言うべきだろうか。「使命感」のようなものさえ感じる。
        下宿人のために嫌な思いをしても、決してボランティアは止めようとしない。
        例え小切手の不正使用未遂事件を起こした住人(の知り合い)がいたとしても。

        本書の裏表紙にもあるが「理解はできないが、受け容れる」というのがウェスト夫人の生き方。
        見習うべき、とは思うが、自分なら嫌な事が2つ、3つあれば、もうコリゴリと思ってしまうのが関の山だろう。

        この考え方を貫ける方が理解できない、とさえ思ってしまった。

        ところで、今の日本では「理解できないものは、排除する」という風潮が強い気がする。
        昔からそうだったかもしれないが、少なくとも「排除」しようとする人の声が簡単に拡散するようになってしまった。
        (逆の事も言えるが・・・)

        「受け容れる」というレベルは遥か彼方だが、少なくとも積極的に「排除しない」ようにしたい。
        「八つ当たり」まがいの行為では、そこで思考停止してしまい、どツボに嵌っていくだけで、何も解決しないから。
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        2013/05/25 by Tucker

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      ぐるりのこと
      4.0
      いいね! niwashi
      • 梨木さんの本は2冊目だが、話題になっていたのに読んでなかった。
        ミステリの世界をちょっと歩いてみようと思ってから、文学作品から少し遠ざかっていた。
        仕事を辞めた途端に、後を引かない話がいいと思うようになったのが原因かもしれない。仕事に逃げられなくなると、身軽な日常の方が健康上よろしいのではと思いついた。ストレスの源は仕事だと思っていたが、今になって思うとちょっとした逃げ場だったかもしれない。
        あまりに本が溢れているので、退職後の時間の使い道に迷ったついでに、あまり知らないジャンルに踏み込んでみたらこれが面白過ぎた。

        そして最近、何か足りない、情緒にいささか偏りがあると思い始めた。それが全部ミステリにどっぷり漬かり過ぎたので、幼い頃から馴染んできたものを手放しからではないかとふと思った。文学書のような区別の難しいミステリも多くてまだまだ卒業できそうになけれど。最近そんな気がしていた。

        梨木さんの本を手にして、こういう文章が心を落ち着かせるのか、帰るところはこういう世界なのかもしれないと気がついた。
        身の回りの話題から、世界を大く広げるようなエッセイ集だった。「ぐるり」と言う言葉は、「周り」ということに使われる。母の田舎では「田んぼのグルリの草刈りをしよう」「家のグルリをひと回り」などと普通に使う。

        「グルリのこと」という題名の「グルリ」とは、「グリとグラ」に近い何かの名前なのかとぼんやり思っていた。わたしは何でも予備知識なしで取り掛かる欠点がある。

        境界を行き来する
        ドーバー海峡の崖からフランスの方に身を乗り出して見た時気づいた、「自分を開く」と言うことからつぎつぎに連想される事がらについて考える。

        隠れていたい場所
         生垣の中と外、内と外からの眺めや中に住んで見たい思いがイスラムの女性の服装について考える。

        ---イスラームの女性の被りものは、覆う部位や大きさ、また国によって様々な呼び名があるが、総称してヘジャーブという(略)イスラームに対する批判の中には、唯々諾々とヘジャーブを「纏わされている」女性たち自身に対するものもある。「隠れている」状態は、それを強制させられていることに対する同情とともに抑圧に対する自覚がなく、自覚があるなら卑怯であり、個として認められなくても当たり前、というような---

        それから、そういう印象を受けるイスラームの問題や、われわれの受け取り方や、わかろうとする無理について考える。面白い。

        風の巡る場所
        観光客が向けるカメラの先にいる現地の人たちに対する思いや、旅人の自分や大地を見つめて、考えたことなど。

        大地へ
        少年犯罪について、教育者の態度、子を亡くした親の悲痛な心について。逆縁の不孝、冠婚葬祭の風習などについても。

        目的に向かう
        この分は実に「ぐるりのこと」なので面白い。車で信楽に出掛けたところ、回り道をしてしまって伊賀上野についたり、昔ながらの田舎の庭が、イングリッシュガーデンの始まりに似ていると思ったり、私も野草や花が好きなので、近代的な花もいいが、昔ながらの黄色いダリアや千日紅、ホウセンカなどが咲いている庭を見ると懐かしい。共感を覚えて嬉しくなった。

        群れの境界から
        映画「ラストサムライ」を見て思ったこと。葉隠れの思想、西郷隆盛の実像などの考察。

        ---群れで生きることの精神的な(だからこそ人が命をかけるほどに重要な)意義は、それが与えてくれる安定感、所属感にあり、そしてそれは、儒教精神のよってさらに強固なものになる(その「強固」もうすでに崩壊に向かっている訳だけれど)この儒教精神も絶妙な遣りかたで(結果的に見れば。その時々で都合のいいように使われてきたことの堆積が宋見えるだけかも知れないけれど)為政者側に役立ってきた---

        こういう物語や、現実につながる過去の歴史が思い当たる。

        物語を
        風切羽が事故でだめになったカラスに出会う、あんたは死ぬ、と言って聞かせた後、帰り道でカラスが民家の庭にいるのを見る。迷子のカラスがペットになった話があったなと思う。カラスと目が合って「そうだとりあえず、それでいこう、それしかない」と思い、そうだ、可能性がある限り生物は生きる努力をする。生き抜く算段をしなければ。
        アイヌのおばあさんの処世術について。
        ムラサキツユクサの白花を見つけたが、そこが住宅地になってしまって胸が痛んだこと。
        本当にしたい仕事について、

        物語を語りたい。

        ---そこに人が存在する、その大地の由来を---


        ますます好きになった梨木さんという作家の物語を楽しみに読みたい。
        >> 続きを読む

        2014/10/02 by 空耳よ

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      渡りの足跡
      5.0
      いいね!
      • 渡り鳥をテーマにしたエッセイ。
        北からやってくる冬鳥を訪ねる旅行記でもある。

        各章の最後にその章で登場した鳥の説明が載っているが、名前から姿が思い浮かばないと十分に楽しめない部分も一部あるので、図鑑があればそれで、なければネットで鳥の姿を確認しながら読んだ方がいいかもしれない。

        例えば、ツメメドリとエトピリカを紹介している部分。
        ツノメドリ:
        「どうにもこうにも困り果てた、というようなその表情」
        「ただひたすら困惑している。まいった、という風によめる」

        エトピリカ:
        「はっきり迷惑しています、と断言しているようである。だが、積極的に怒っている、というほどではない。」
        「こちらでできることがあるなら何かいたしますが、と思わず手を差し伸べたくなるような」

        表現だけでも面白いが、写真で姿を確認すると、笑い出してしまいそうになるくらい、この通りだった。

        本書は渡り鳥の話が中心であるが、渡り鳥が縁で知り合った人の話もいくつか登場する。
        その人との触れ合いを単純に楽しめるものもあるし、重い話も。
        このあたり一筋縄ではいかなかった。

        話は変わるが、本書を読んでいて、2001年のフランスのドキュメンタリー映画「WATARIDORI」を思い出した。
        その中で空を飛んでいる鳥たちは、
        「優雅に飛んでいる」
        というより
        「羽ばたいていないと落ちてしまう」
        という感じで飛んでいた。

        読んでいる時は、そんな鳥たちの姿が思い浮かんだ。
        もう一度、「WATARIDORI」を見てみよう、と思う。

        ところで、毎年、渡り鳥を見る度に思うことがある。

        白鳥などの大型の鳥ならまだしも、ツグミやツバメのように比較的小さな鳥は、一体、どこに長距離を移動する力を持っているのだろう?
        休みなしで一気に飛んでくる訳ではないにせよ、あんな体のどこにそんな力が?
        それに、渡りを始める時と、帰る時は何がきっかけになるのだろう?
        「ここが目的地」というのは、明確に認識しているのだろうか?

        一度でいいから聞いてみたい。

        この本の紹介文には
        「この鳥たちが話してくれたら、それはきっと人間に負けないくらいの冒険譚になるに違いない」
        とあるが、「人間に負けないくらい」どころの話ではないだろう。

        今の時期、冬鳥の大半は北へ帰っている。
        のんびり組のコガモなら、まだ日本にいるだろう。そして、もう少ししたら、今度はツバメがやってくる。

        彼らを見かけたら、肩でも揉んであげようか。
        >> 続きを読む

        2013/04/06 by Tucker

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【梨木香歩】(ナシキカホ) | 読書ログ - 読書ファンが集まる読書レビューサイト(著者,作家,作者)

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