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梨木香歩

著者情報
著者名:梨木香歩
なしきかほ
ナシキカホ
生年~没年:1959~

この著者の本を読んでいる会員ランキング

このランキングは1日1回更新されます。
      西の魔女が死んだ
      カテゴリー:小説、物語
      4.1
      いいね! daya linarosa Moffy peace_1987
      • 第三者視点で個々人の行動、感情が描写され、読みやすい内容だった。
        物語の内容に起伏はあったものの、その語られ方から終始平坦な印象を受けた。

        西の魔女が死んだ。タイトル通り急報を知らせるその言葉で物語は始まった。
        作品の大半は二年前、祖母の家でマイが過ごした日々を中心に第三者視点で回想される。クラスで浮いた存在になったマイが、不登校になり、田舎の祖母(外人。悪い意味でなく、親子二人で魔女と呼んだ)の家でしばらく過ごさせるのだという。

        祖母の家でマイは毎日「魔女の修行」に従事する。それは①自分の意思で決めること②毎日規則正しい生活を送ること③外的要因に心を大きく乱されないこと の三つで、またそれを中心にマイの成長が描かれる。
        では何故祖母は『魔女』なのか。 本当に魔女の家系だったから。確かにそうとも考えられる。事実祖母の話す内容をもとにすれば不思議な能力を持つ家系であるようだ。しかしそれは母とマイが祖母を『魔女』と呼ぶ理由にはならない。祖母が何故魔女か、それは魔女修行に裏付けられた彼女の生き方(魔法)に由来する。実際に祖母は魔法を二つ使ってみせた。一つ目に考えられるのは魔女修行。祖母にとって悪魔とは人間の持つ負の感情で、魔法とはそれに対処する方法なのだ。怒り、憎しみに任せた行動は人をダメにする。祖母はそういった人を何人も見てきたのだという。そんな祖母はゲンジに向けたマイの疑心暗鬼の目、根拠のない憎しみを目の当たりにし、初めてマイを叱る。魔女修行を通してマイには悪魔に負けない心を培って欲しかった。
        二つ目に考えられるのは祖母が幾度となく発するマイへの肯定の言葉。マイを認める言葉の数々は学校という共同体で存在を許されなかったマイを否応なく虜にし、癒していった。もちろんこの魔法はマイもすぐに使えていた。祖母の心を虜にし、癒したその魔法はしかし祖母との最期の別れの際、マイには使えなかった。魔女の死を知り、駆けつけたマイに、約束通り祖母は魂の脱出を知らせるメッセージを残す。「ニシノマジョ カラ ヒガシノマジョヘ」娘にも与えなかった魔女の称号を孫のマイに授けた。もうマイが悪魔に打ち勝つ心ととっておきの魔法を身につけたのだと確信を持って。
        >> 続きを読む

        2017/06/30 by popoi323

    • 他35人がレビュー登録、 138人が本棚登録しています
      エンジェルエンジェルエンジェル
      カテゴリー:小説、物語
      4.2
      いいね!
      • 図書館で借りてきました。
        本を開いた瞬間、余白が多く字数が少ないと感じました。
        中身は濃いですね。
        人間にも、熱帯魚世界にも 悪魔はいる。
        おばあちゃんの覚醒は本当に、モーターの音と関係があるのか不思議でした。
        >> 続きを読む

        2016/06/07 by はなもも

      • コメント 2件
    • 他3人がレビュー登録、 10人が本棚登録しています
      家守綺譚
      カテゴリー:小説、物語
      4.8
      いいね! niwashi
      • 又吉直樹さん御推薦のコーナーで見つけました。
        自分の家の管理は嫌だなぁと思うこともありますが、こういいう親友の家の管理ならやっても良いかなって思わされました。 >> 続きを読む

        2016/08/07 by 閃光花火

    • 他3人がレビュー登録、 17人が本棚登録しています
      冬虫夏草
      カテゴリー:小説、物語
      4.0
      いいね!
      • 前作に続き、不思議な世界観。売れない物書き綿貫は、行方不明の愛犬ゴローを探す旅の中で、
        様々なモノに出会う。
        当たり前のように河童やイワナ夫婦と交わり、何事にも寛容な登場人物たち。虫迎えの祠がいかにも日本らしい考え方。
        >> 続きを読む

        2015/12/10 by 花 梨.

    • 他2人がレビュー登録、 8人が本棚登録しています
      ピスタチオ
      カテゴリー:小説、物語
      3.5
      いいね!
      • 難しい漢字、カタカナ英語、それに分かりづらい表現、物事や人との関係性などに苦しみながらも何とか完読した。著者はいったいこの小説を通じて何を描きたかったのか疑問に思う。アフリカのウガンダに残る特異な精神世界をことのほか掘り下げようとしているが。 >> 続きを読む

        2017/04/27 by konil

    • 他2人がレビュー登録、 9人が本棚登録しています
      裏庭
      カテゴリー:小説、物語
      3.9
      いいね! niwashi
      • 【少女のための物語】
         中学生の頃、夢中で読んだ。テルミィと年齢が近い間に読んでいて良かったと思う。
         テルミィが冒険した裏庭はおそらく象徴的な世界なのだろうけれど、その意味などを深く探索せずに読むのが吉。
         テルミィに寄り添って裏庭を巡るうちに、満たされなかった心がいつの間にかふっくらと満ちているのに気づく。
         たまに読み返したくなる作品。
        >> 続きを読む

        2015/04/05 by かやっこ

    • 他1人がレビュー登録、 23人が本棚登録しています
      りかさん
      カテゴリー:小説、物語
      3.8
      いいね! niwashi
      • 【清潔で丁寧で、細やかな世界】
         丁寧な時間を過ごせたような気持ちになれる本。
         古い人形たちが抱く、かつての持ち主たちの人生や、想い、歴史。それらにまっすぐに向き合う幼い少女が、強い共感力を身につけ、思いやりの心を育てていく様子に心がほっこりとなった。
         少女がおばあちゃんと一緒に、古い桜の木で染物をするシーンが好きだ。色の変化を飽かずに眺め、それを喜ぶ心を、私も持ちたいと願う。
        >> 続きを読む

        2015/04/05 by かやっこ

    • 他1人がレビュー登録、 10人が本棚登録しています
      鳥と雲と薬草袋
      3.3
      いいね!
      • 常々「地名」には、その土地の生い立ちや意味を表していて、言霊のような力を帯びているものと感じていた。
        読み方も難しく、教えてもらって「こんな読ませ方をするんだ。」と驚いたり、また逆に、他所の人に地元の地名を教えるときは、ちょっと得意になったりもする。

        この本は、作者が縁のあった土地の名前を重ねていったエッセイ。
        地名はもちろん、山・旧街道など自然に造詣が深い作者が書いたこのエッセイは、とても味わい深い。

        文中で作者は、平成の大合併で、乱暴な都市名が増えてしまったとぼやいている。
        確かに、昔から使われていた、意味があり愛着もある地名が地図上から消えた。
        私も、これは悲しい。
        >> 続きを読む

        2016/01/16 by shizuka8

    • 他1人がレビュー登録、 4人が本棚登録しています
      僕は、そして僕たちはどう生きるか
      カテゴリー:小説、物語
      4.0
      いいね!
      • 主人公14歳・・・まさに、息子が14歳。(読んだ当時。今は18歳)
        あまりにぴったりの設定にちょっと驚いた。
        さて、全編を通しての雰囲気が、まさにその年代のもやっとしたところが滲み出ていて、俗に言う青春小説とは全然違うものだ。
        お互いの距離感というか、言っていいのか悪いのか、聞くべきなのかどうなのか・・・そのあたりのやりとりが、何とも生々しいようにも思う。
        そうでありながら、少しずつ、お互いのことがわかっていくところもまた、実際のところだろう。
        ただ、近づいては離れ、また・・・の繰り返し。
        成長するが故だと思う。
        >> 続きを読む

        2015/02/14 by けんとまん

      • コメント 1件
    • 他1人がレビュー登録、 5人が本棚登録しています
      f植物園の巣穴
      カテゴリー:小説、物語
      3.8
      いいね!
      • 身辺がバタバタと忙しい事を言い訳に歯の痛みをほったらかしにしたまま、新しい任地、f植物園に赴任した主人公。
        その任地で歯医者に行くが、どうもその歯医者が少しおかしい。

        そもそも自分以外患者がいない。
        また、助手も兼ねている歯科医の妻は、前世がイヌだったため、忙しくて、なりふり構っていられなくなるとイヌの姿になってしまうという。
        その事を「髪が乱れてる」くらいの感覚で受け止めているし、他人にもそのような感じで説明する。

        さらに、下宿先の大家は時折、頭だけ雌鶏になる。

        時間の進み方もなにかおかしい。

        いつもと同じ日常のようで、どこか違う世界。
        記憶を辿ってみると、巣穴に落ちた以降の記憶が途切れ途切れで、しかも巣穴から出た記憶がない。

        出た記憶がない以上、まだ自分は巣穴の中にいるはず。それなのに日常のような世界にいる、という事は、ここは異界。
        ここを出るにはどうしたらよいのか。そのためにさまよい歩く。

        読み進むうちに主人公がさまよい歩く「異界」は、主人公の「記憶」の中だという事が分かってくる。
        出てくるものは主人公の記憶の中の何かを象徴するものだが、分かりやすいものもあれば、一体、何の関係があるのか、よく分からないものも出てくる。
        よく分からないからこそ、記憶の中の世界なのかもしれない。

        最初は、わけも分からずさまようが、次第に、この「異界」で「探すべきもの」が見えてくる。
        ただし、いずれも現実の世界では会う事ができなくなった者たち。つまり死者。

        彼ら、彼女らとキチンと向き合うために記憶の中の世界をさまようことになったのか、と思うが、そもそもその記憶を抑え込んでしまった理由が今ひとつ分からない。
        想像すれば、さもありなん、という気もするが、果たして、そこまで記憶を改変してしまうものか、という点が腑に落ちない。

        ただ、そのために読むのが進まない、といった事もない。
        手に汗握る展開はなく、どちらかというと緩やかに物語が進むのが自分のペースに合っている感じがする。

        ところで、自分の記憶の中の世界をさまよう事になったら、どんなモノが登場するだろう。
        本当は、あまり見たくないのだが、少しだけ興味がある。
        >> 続きを読む

        2012/08/26 by Tucker

      • コメント 7件
    • 5人が本棚登録しています
      りかさん
      カテゴリー:小説、物語
      5.0
      いいね!
      • りかさん、全体を通して素晴しいお話だったけれど、最初のりかさんのお世話するところがすごく好き。うまく言えないけれどその世界のルールを登場人物がこなしていくのが好き。引き込まれる。 >> 続きを読む

        2013/01/30 by seri

      • コメント 5件
    • 2人が本棚登録しています
      雪と珊瑚と
      カテゴリー:小説、物語
      3.7
      いいね!
      • 珊瑚、21歳。
        雪と名付けた女の子の赤ちゃんを育てるシングルマザー。
        親にも頼れずたった一人で生きていかなければならない珊瑚は、
        私からすれば、ふと気がつけば、ほぼ娘の年齢だ。(そこにびっくりする自分)

        梨木香歩さんはいつも母との関係に問題がある女性が主人公になっているが
        この珊瑚も、そんな女性だった。

        ネグレクト。それは母による虐待といえる。
        そうして育った少女は年若くして妊娠し、結婚し、離婚し、今子育てをしている。

        誇り高く一人で生きる術と決意を身に付けたかに見える珊瑚だが、
        実は、周囲の人からの好意や愛情や優しさに助けられて生きている。
        クールな態度ながらも、彼女はそういう人間関係をそっと大切にしながら生きている。
        それがわかる人が、きっといる。
        現実の世の中でも、自分を真剣に生きている人の姿はきっと人にも伝わると思う。

        梨木さんの他の作品で主人公に寄り添うおばあちゃんの姿があるが、
        この作品では、くららさんという年配の女性が雪の子守役として登場する。
        そしてここにも、キリスト教の信仰が出てくる。
        くららさんは外国のボランティアをし修道院暮らしをしたことがあるらしい。

        もちろん今回も、身近な自然がたっぷり。おいしいお料理のお話がたくさん。

        くららさんのお料理に影響を受けた珊瑚はよい素材をシンプルに料理した「惣菜カフェ」を
        保護樹林の脇の一軒家を借りてオープンさせるのだ。

        暮らしの豊かさは、確かに、金では買えないものなのだと、
        そう思わせてくれる。

        よそよそしいまでに律儀な珊瑚の気持ちによりそい、「頑張って」と応援しているその時に、
        梨木さんはやはり平手を食らわしてくれた。

        悪意に満ちた中傷や、どうしても、人を傷つけずにはいられない
        「自分なりの正義感」を振りかざす人というのは、どこにでも現れるものだ。

        優しくあったかいだけのお話しを書く人じゃあ、ないものね。

        母に否定された子供はどんなだ?

        どう思って生きていく?

        とうやって自分を支え、どうやって、立ち直る?

        自分が母と同じ過ちを犯すのではないかという不安にどう耐えていけばいい?


        子供を持ったことがある人ならば、誰もが知っている恐怖、焦燥、不安、
        大きなプレッシャー、逃げ出したくなる夜、凶暴な怒り、そして負い目。

        「子どもを産むということが、ときに生死に関わるほどのダメージを
        母体に与えるのと同じように、
        子どもを育てるということも、長いスパンで、
        ときに母親自身の存在を揺るがすほどのすさまじい影響力を持つものなのだろう」

        まさしく、その通り。
        こんな風にすっぱりと書かれると気持ちが良いほど真実ですね。

        子どもを愛してダメにする人も、子どもを愛せず、産む資格のない人も。
        それぞれ、人生を、自分自身を根底から変えてしまうものです。子どもって。


        けれど梨木さんはいうのだ。
        自分を再生することはできる。
        諦めるな、絶望するな。
        人と違ってもいい。自分を受け入れ愛しなさい。
        愛する人(対象)を見つけさえすればそれが可能になる。
        そうすれば、自分の周りに愛が満ちていることに気づくことでしょう。
        自分が一人でないことがわかるでしょう。
        >> 続きを読む

        2013/03/23 by 月うさぎ

      • コメント 8件
    • 4人が本棚登録しています
      村田エフェンディ滞土録
      カテゴリー:小説、物語
      4.5
      いいね! niwashi
      • 鸚鵡は身じろぎし、首を私に寄せたかと思うと、突然夢から覚めたように、
        ーー友よ。
        甲高く叫んだ。

        、、、(泣)物語として非常に好きです。海外留学した人間にとっては、琴線に触れるところ多々あり。人間が非常に魅力的に書かれてますね。
        >> 続きを読む

        2012/04/30 by mercy

      • コメント 1件
    • 5人が本棚登録しています
      春になったら莓を摘みに
      4.2
      いいね! niwashi
      • 著者が学生時代、英国で過ごした頃、下宿した家の女主人ウェスト夫人と、そこに下宿した人々との交流記。

        ウェスト夫人は全くのボランティアで下宿人を受け入れている。
        様々な人種、考え方の下宿人たち。

        本書で登場する人達は、クセの強い人たちばかりだが、取り上げたのがそんな人達だけなのか、本当にそんな人達ばかりなのかは不明。

        「筋金入りの博愛精神」とでも言うべきだろうか。「使命感」のようなものさえ感じる。
        下宿人のために嫌な思いをしても、決してボランティアは止めようとしない。
        例え小切手の不正使用未遂事件を起こした住人(の知り合い)がいたとしても。

        本書の裏表紙にもあるが「理解はできないが、受け容れる」というのがウェスト夫人の生き方。
        見習うべき、とは思うが、自分なら嫌な事が2つ、3つあれば、もうコリゴリと思ってしまうのが関の山だろう。

        この考え方を貫ける方が理解できない、とさえ思ってしまった。

        ところで、今の日本では「理解できないものは、排除する」という風潮が強い気がする。
        昔からそうだったかもしれないが、少なくとも「排除」しようとする人の声が簡単に拡散するようになってしまった。
        (逆の事も言えるが・・・)

        「受け容れる」というレベルは遥か彼方だが、少なくとも積極的に「排除しない」ようにしたい。
        「八つ当たり」まがいの行為では、そこで思考停止してしまい、どツボに嵌っていくだけで、何も解決しないから。
        >> 続きを読む

        2013/05/25 by Tucker

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      ぐるりのこと
      4.0
      いいね! niwashi
      • 梨木さんの本は2冊目だが、話題になっていたのに読んでなかった。
        ミステリの世界をちょっと歩いてみようと思ってから、文学作品から少し遠ざかっていた。
        仕事を辞めた途端に、後を引かない話がいいと思うようになったのが原因かもしれない。仕事に逃げられなくなると、身軽な日常の方が健康上よろしいのではと思いついた。ストレスの源は仕事だと思っていたが、今になって思うとちょっとした逃げ場だったかもしれない。
        あまりに本が溢れているので、退職後の時間の使い道に迷ったついでに、あまり知らないジャンルに踏み込んでみたらこれが面白過ぎた。

        そして最近、何か足りない、情緒にいささか偏りがあると思い始めた。それが全部ミステリにどっぷり漬かり過ぎたので、幼い頃から馴染んできたものを手放しからではないかとふと思った。文学書のような区別の難しいミステリも多くてまだまだ卒業できそうになけれど。最近そんな気がしていた。

        梨木さんの本を手にして、こういう文章が心を落ち着かせるのか、帰るところはこういう世界なのかもしれないと気がついた。
        身の回りの話題から、世界を大く広げるようなエッセイ集だった。「ぐるり」と言う言葉は、「周り」ということに使われる。母の田舎では「田んぼのグルリの草刈りをしよう」「家のグルリをひと回り」などと普通に使う。

        「グルリのこと」という題名の「グルリ」とは、「グリとグラ」に近い何かの名前なのかとぼんやり思っていた。わたしは何でも予備知識なしで取り掛かる欠点がある。

        境界を行き来する
        ドーバー海峡の崖からフランスの方に身を乗り出して見た時気づいた、「自分を開く」と言うことからつぎつぎに連想される事がらについて考える。

        隠れていたい場所
         生垣の中と外、内と外からの眺めや中に住んで見たい思いがイスラムの女性の服装について考える。

        ---イスラームの女性の被りものは、覆う部位や大きさ、また国によって様々な呼び名があるが、総称してヘジャーブという(略)イスラームに対する批判の中には、唯々諾々とヘジャーブを「纏わされている」女性たち自身に対するものもある。「隠れている」状態は、それを強制させられていることに対する同情とともに抑圧に対する自覚がなく、自覚があるなら卑怯であり、個として認められなくても当たり前、というような---

        それから、そういう印象を受けるイスラームの問題や、われわれの受け取り方や、わかろうとする無理について考える。面白い。

        風の巡る場所
        観光客が向けるカメラの先にいる現地の人たちに対する思いや、旅人の自分や大地を見つめて、考えたことなど。

        大地へ
        少年犯罪について、教育者の態度、子を亡くした親の悲痛な心について。逆縁の不孝、冠婚葬祭の風習などについても。

        目的に向かう
        この分は実に「ぐるりのこと」なので面白い。車で信楽に出掛けたところ、回り道をしてしまって伊賀上野についたり、昔ながらの田舎の庭が、イングリッシュガーデンの始まりに似ていると思ったり、私も野草や花が好きなので、近代的な花もいいが、昔ながらの黄色いダリアや千日紅、ホウセンカなどが咲いている庭を見ると懐かしい。共感を覚えて嬉しくなった。

        群れの境界から
        映画「ラストサムライ」を見て思ったこと。葉隠れの思想、西郷隆盛の実像などの考察。

        ---群れで生きることの精神的な(だからこそ人が命をかけるほどに重要な)意義は、それが与えてくれる安定感、所属感にあり、そしてそれは、儒教精神のよってさらに強固なものになる(その「強固」もうすでに崩壊に向かっている訳だけれど)この儒教精神も絶妙な遣りかたで(結果的に見れば。その時々で都合のいいように使われてきたことの堆積が宋見えるだけかも知れないけれど)為政者側に役立ってきた---

        こういう物語や、現実につながる過去の歴史が思い当たる。

        物語を
        風切羽が事故でだめになったカラスに出会う、あんたは死ぬ、と言って聞かせた後、帰り道でカラスが民家の庭にいるのを見る。迷子のカラスがペットになった話があったなと思う。カラスと目が合って「そうだとりあえず、それでいこう、それしかない」と思い、そうだ、可能性がある限り生物は生きる努力をする。生き抜く算段をしなければ。
        アイヌのおばあさんの処世術について。
        ムラサキツユクサの白花を見つけたが、そこが住宅地になってしまって胸が痛んだこと。
        本当にしたい仕事について、

        物語を語りたい。

        ---そこに人が存在する、その大地の由来を---


        ますます好きになった梨木さんという作家の物語を楽しみに読みたい。
        >> 続きを読む

        2014/10/02 by 空耳よ

    • 3人が本棚登録しています
      渡りの足跡
      5.0
      いいね!
      • 渡り鳥をテーマにしたエッセイ。
        北からやってくる冬鳥を訪ねる旅行記でもある。

        各章の最後にその章で登場した鳥の説明が載っているが、名前から姿が思い浮かばないと十分に楽しめない部分も一部あるので、図鑑があればそれで、なければネットで鳥の姿を確認しながら読んだ方がいいかもしれない。

        例えば、ツメメドリとエトピリカを紹介している部分。
        ツノメドリ:
        「どうにもこうにも困り果てた、というようなその表情」
        「ただひたすら困惑している。まいった、という風によめる」

        エトピリカ:
        「はっきり迷惑しています、と断言しているようである。だが、積極的に怒っている、というほどではない。」
        「こちらでできることがあるなら何かいたしますが、と思わず手を差し伸べたくなるような」

        表現だけでも面白いが、写真で姿を確認すると、笑い出してしまいそうになるくらい、この通りだった。

        本書は渡り鳥の話が中心であるが、渡り鳥が縁で知り合った人の話もいくつか登場する。
        その人との触れ合いを単純に楽しめるものもあるし、重い話も。
        このあたり一筋縄ではいかなかった。

        話は変わるが、本書を読んでいて、2001年のフランスのドキュメンタリー映画「WATARIDORI」を思い出した。
        その中で空を飛んでいる鳥たちは、
        「優雅に飛んでいる」
        というより
        「羽ばたいていないと落ちてしまう」
        という感じで飛んでいた。

        読んでいる時は、そんな鳥たちの姿が思い浮かんだ。
        もう一度、「WATARIDORI」を見てみよう、と思う。

        ところで、毎年、渡り鳥を見る度に思うことがある。

        白鳥などの大型の鳥ならまだしも、ツグミやツバメのように比較的小さな鳥は、一体、どこに長距離を移動する力を持っているのだろう?
        休みなしで一気に飛んでくる訳ではないにせよ、あんな体のどこにそんな力が?
        それに、渡りを始める時と、帰る時は何がきっかけになるのだろう?
        「ここが目的地」というのは、明確に認識しているのだろうか?

        一度でいいから聞いてみたい。

        この本の紹介文には
        「この鳥たちが話してくれたら、それはきっと人間に負けないくらいの冒険譚になるに違いない」
        とあるが、「人間に負けないくらい」どころの話ではないだろう。

        今の時期、冬鳥の大半は北へ帰っている。
        のんびり組のコガモなら、まだ日本にいるだろう。そして、もう少ししたら、今度はツバメがやってくる。

        彼らを見かけたら、肩でも揉んであげようか。
        >> 続きを読む

        2013/04/06 by Tucker

      • コメント 5件
    • 1人が本棚登録しています
      家守綺譚
      カテゴリー:小説、物語
      3.8
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      • 読了日は適当。この作品を推す人は多いだろう。私も買ってすぐ読んでしまった。私の出身県が舞台(とははっきり書いてないが、そうだろう)なので、余計に愛着が沸いた。さらに、驚くべきことに、弟もそれを読んでいたことだ。弟は漫画以外は眠くなるような男子だった。私の部屋からその週のジャンプを借りる時に、何故かひょいと持って行ってしまった。なにか間違えたか、読書感想文に行き詰まったか、と思ったが、弟は純粋に興味からその本を持ち去った。そして、これ、思ってたのと違うけど、面白い。とメモ付で返してきた。
        あとで詳しく聞くと、弟は題名の家守を「やもり」だと勘違いし、やもりに関する面白話だと想像したのだ(弟は爬虫類が好きだ)。でも一向にやもりは出てこないし、なんだか知らない国に迷いこんだみたい、だと。
        まあ、面白かったんだろ?と聞くとうん。と答えた。
        今や弟の蔵書量は私より多いほどだ。
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        2016/05/20 by kido

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      ぐるりのこと
      3.5
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      • 仕事でのお客さんから梨木香歩さんを教えてもらい、早速『西の魔女が死んだ』を読んだ
        『西の・・・』話を宮園さんにしたら『家守奇譚』と『裏庭』を貸してくれた。

        と言う様な事情で自分で買って読んだ梨木香歩さんの本はこれが最初。
        3冊読んでいたので中身も見ずに買った。
        『ぐるり』ってペットかなんかの話しかなぁと思って読み始めたら
        『ぐるり』は自分の身の回りのぐるりのこと。

        身のまわりにある小さなこと。身のまわりで起こる大きなこと。
        香歩さんはどの『ぐるりのこと』も粗末に扱わない。
        どんな些細な『ぐるりのこと』も身悶えしながら総て受け容れようとする。
        人間としての誠実さが優しい言葉の端々から熱気を持って伝わってくる。

        せめて『わかってないと言う事くらいはわかっていたい』

        わかってはいるが・・・・つい・・・自分の考えに溺れてしまうんです・・・。
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        2012/11/10 by <しおつ>

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      渡りの足跡
      3.0
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      • 梨木香歩さんの新しいエッセイが出ていたのこと、知りませんでした。「考える人」に連載(2006年夏から)していた文章をまとめた一冊です。出版は2010年でした▼梨木さんは花鳥風月を愛でる落ち着いた目と時間感覚をお持ちの人だ。少々不気味で可笑しさも漂う不思議な作品「家守奇譚」には、季節の変化に人間よりずっと敏感に生きている動物や植物たちの生命力が溢れていたし。だから、ここにまとめられたエッセイを読んで、著者が渡り鳥に逢いに精力的に動き回っていることを知っても少しも驚かない。アウトドアというカタカナ言葉の舶来ものともまた違う、和風な、野風な向き合い方。そういえば前に読んだエッセイでは、カヌーに乗って旅している話も紹介されていたハズです。私が著者の作品から想像して知った気になっていた梨木香歩像を、この一冊でも裏切らないものになっています▼過度な消費社会の反省から、自然保護や環境快復の運動を人間は少々ヒステリックに仕掛け続けているけれども(しかもそれがまたビジネス化)、そんなことにも頓着なく自然はまさにその字の如く、自ずから然るべき姿へと、時間をかけてゆっくり変化を遂げてゆくのです。その大きな時間サイクルに追いつけない人間どもが、迷ったり戸惑ったりしながら勝手に反省し、慌てふためいているのが今というトキなのではないでしょうか。そうゆう人間の右往左往を渡りの鳥たちは文字通り鳥瞰している。空から目線で大地の緑の減少を知覚し、去年巣作りをした森の形が変わっていることを知る。一昨年に求愛を実らせた湖が消失していることを認める。そこに、嘆きや落胆、悲嘆の感情があるのかどうかはわからない。ただ、鳥たちは人間が勝手に手を加えてしまった自然の変化に、対応する手立てを模索してゆく。渡り鳥の生態の年毎の微妙なちがい、変化は、私たち人間が壊して永遠に失ってしまったものの写し鏡なのです▼梨木香歩という作家の書くものは信頼してよい。読む度にその思いが強くなります。私も、こちら側のヒトでありたいと思っています。 >> 続きを読む

        2013/08/02 by inamako

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      不思議な羅針盤
      5.0
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      • 続けて梨木さんの未読エッセイがもう一冊。女性誌「ミセス」に連載(2007年から2009年までの三年間)されていた文章をまとめたものです。女性誌を購読する習慣がないので、こんな素敵な文章を定期的に読むチャンスがあったことを、全く知りませんでした。そして、これらの文章が連載されていた「ミセス」という雑誌の内容を想像してみて、なかなか豊かじゃないかと思っているのです▼ミセス=おばちゃんで面白おかしくイメージされる像は、バブルを引きずる消費信奉で韓流追っかけ。下腹はたるみ群れれば旦那の文句を垂れ流し、更年期のイライラを周囲に撒き散らす…。そんなミセスばかりじゃないとは思うのですが、私が想像してしまうのはそんな醜悪な妖怪ばかり。だとすると、これは世のミセスの問題ではなく、私の環境が恵まれていない、自業自得の劣悪という証しでしょうか。閑話休題▼過ぎてゆく時間に敬意を払い、慌てずうろたえず、けれどもきちんと戸惑う時間も手放さない。時代の先をゆくことに専心するのではなく、時代の半歩後ろを誠実に追い続けることで、自らを見失わないように心がける。自らを失わない者はきっと、他者に寛容になれるはずだということを信じて。一番身近くにいる他者が、「自然」なのです▼羅針盤は方位を示す。アナタや私が進むべき方向を指示してくれる訳ではない。「お前がいるのはココだ」とは教えてくれるが、ではどこを目指すのかは、自分で決めるしかない▼本の最初と二つ目。エッセイのタイトルには、対極するイメージの二つの言葉が並べられている。「堅実で、美しい」。「おだやかで、へこたれない」。この二つを両極に据えて世界を感知する「私」という惑星。私の感覚は常に不安定で迷ってもいるから、指針とされるべきはずの羅針盤もまた、不思議な揺らぎのなかにある。梨木さんの羅針盤は、不思議で、美しい▼28のエッセイのタイトルは、こんな感じです。

        1.堅実で、美しい
        2.たおやかで、へこたれない
        3.近づき過ぎず、取り込まれない
        4.足元で味わう
        5.ゆるやかにつながる
        6.みんな本物
        7.近づき過ぎず遠ざからない
        8.世界は生きている
        9.「スケール」を小さくする
        10.金銭と共にやり取りするもの
        11.見知らぬ人に声をかける
        12.ご隠居さんのお茶と昼酒
        13.「野性」と付き合う
        14.五感の閉じ方・開き方
        15.「魔女」はきっと、直感を正しく使う
        16.目が合う
        17.夢と付き合う
        18.小学生の頃
        19.プラスチック膜を破って
        20.やわらかく、いとけなきもの
        21.個性的なリーダーに付き合う
        22.「アク」のこと
        23.百パーセント、ここにいる
        24.「いいもの」と「悪いもの」
        25.動物らしさ
        26.生まれたての気分で発見する
        27.変えていく、変わっていく
        28.どんぐりとカラスと暗闇
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        2013/07/08 by inamako

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【梨木香歩】(ナシキカホ) | 読書ログ - 読書ファンが集まる読書レビューサイト(著者,作家,作者)

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