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梨木香歩

著者情報
著者名:梨木香歩
なしきかほ
ナシキカホ
生年~没年:1959~

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このランキングは1日1回更新されます。
      西の魔女が死んだ
      カテゴリー:小説、物語
      4.1
      いいね! daya linarosa Moffy peace_1987
      • 【ラストの2行にノックアウト】
         主人公のまいは、中学生の女の子なのですが、喘息を患っていたこともあり、不登校気味です。
         実際には、喘息はほとんど治まってきているので登校できないことは無いのですが、学校を嫌っており登校拒否状態にあります。

         両親は、そんなまいを問い詰めたり強いて学校に通わせるようなことはせず、まいが大好きなおばあちゃんの家でしばらく生活させることにしました。
         おばあちゃんの家は、自然が豊かな田舎にあり、まいはそんな環境の中で、大好きなおばあちゃんと一緒に暮らし始めるのですね。

         そんな過程で、おばあちゃんから、自分たちの一族には魔女の血が流れているという話を聞きます。
         いえ、魔女と言っても、物語に出てくるような箒に乗って空を飛んだり強力な魔法を使うというようなことではなく、何て言うんでしょうね、大変感受性が鋭く、予知能力のような力があるということなのでしょうか。
         もちろん、まいにもその血は流れているけれど、その力を使いこなすためには修行が必要だと言われます。

         と、言っても何か特殊なことをするというわけでもなく、まずは基本としてしっかりした規則正しい生活をし、すべてを自分で決めていくことが大切だと教えられます。
         まいは、その様な生活を始めるのですが……。

         静かな雰囲気の中で非情に豊かな自然が描かれます。
         梨木さんは、植物に造詣が深いですが、本作にも様々な植物が描かれます。
         銀龍草なんて初めて知りました。

         まいは、ある時おばあちゃんに尋ねます。
         人は死んだらどうなるの?って。
         以前、父親に同じ質問をしたことがあるのですが、その時、父親は、死んだら何もなくなると答えたのですね。
         その答えはまだ幼いまいにとってはあまりにもおそろしい答えに思えたのでした。
         おばあちゃんは、そうではないのだと言います。
         人間には肉体と魂があるけれど、死ぬということは肉体から魂が離れていくことなのだと。

         だから、死んでも全てがなくなってしまうわけではないのだよと。
         おばあちゃんは、もし自分が死んだ時には、まいにはそれがわかるようにしてあげようと言ってくれました。

         それは物語のラストに描かれます。
         たった2行なのですが……。何と素晴らしい!

         まいが登校拒否になった理由も、彼女自身の口からおばあちゃんに語られます。
         その理由は、私なりに共感できる理由でした。

         様々な点において、いいなぁ、やさしいなぁと感じることができた良い作品でした。
        >> 続きを読む

        2019/11/01 by ef177

    • 他42人がレビュー登録、 164人が本棚登録しています
      家守綺譚
      カテゴリー:小説、物語
      4.8
      いいね! niwashi
      • 「西の魔女が死んだ」を確か、中学生か高校生の頃読んで、とても好きになった梨木香歩さん。ずっと後になって、読んだ「春になったら苺を摘みに」でますます好きになり、「ぐるりのこと」(その頃はまだ読書記録をつけていなかったので記憶が曖昧だけど、たぶんこの作品だったと思う)を読んで、その思慮深さに感服した記憶がある。

        何のきっかけか忘れたが、今回この作品を読む気になり、読み始めたらとても面白かった!時代は明治と推測され、文体がレトロだが、読みやすい。また、舞台が琵琶湖に近い京都府(滋賀かな?)と思われ、森見登美彦さんの作品にも似たものを感じた。
        ひとつひとつの章は短く、少し物足りなさを感じつつも、この短さが、この作品をすっと読める一因のような気がした。死んだ友人が現れ、人に化けた狸、河童、小鬼などが出てくるのに、主人公は言うまでもなく、隣のおばさんや後輩までもみんなすっとそれを受け入れる。主人公が「小鬼などは早晩絶えてしまうだろう」というようなことを考える。すんなり「あぁ、そうか、小鬼は絶えてしまったから私には見えないんだな」と思ってしまうほど、軽やかな綺譚ばかり。
        ネタバレだけど、最後の章で、「湖の底」に行った際、こちらの世界ではない世界に誘われ、断るが、撥ねつけたような断り方が気になって戻り、丁寧に説明するところが、作者の思慮深さを表していると思い、思わず唸ってしまった。解説にもあったが、「精神を養う」という表現に、何かこの不純物だらけの混沌とした世界を生きていく意味を教えられた気がした。

        「村田エフェンディ滞土録」はこの作品とつながりがあるようなので、すぐに読まないと!
        >> 続きを読む

        2020/01/10 by URIKO

    • 他6人がレビュー登録、 25人が本棚登録しています
      冬虫夏草
      カテゴリー:小説、物語
      4.4
      いいね! Moffy
      • 【ゴロー、出奔す!】
         梨木香歩さんのこのシリーズ、良いなぁ。本当に良いです。
         順番からすると、「家守奇譚」→「村田エフェンディ滞土録」→そして、本書「冬虫夏草」と読み進めるのが良いと思います。
         「村田エフェンディ滞土録」は、シリーズからは外れるのですが、そのラストでは「家守奇譚」を読んでいないと分からないエピソードが出てきますし、本書「冬虫夏草」にもトルコにいる村田クンのことが出てきますので、やっぱりこの順番で読むのが良さそうです。

         さて、例によって例の調子のお話なのですが、主人公の物書きである綿貫征四郎のもとには、いつも通り、亡くなった高堂が掛け軸を抜けてふらっとやってきますし(いや、別に掛け軸が無くても現れることもあるんですねぇ)、植物たちが大変瑞々しく描かれます。

         そして、本書では一大事が起きます。
         何と、綿貫が留守居をしている家にふらっと迷い込み、その後住み着いた雑種犬のゴローが帰ってこなくなってしまったのです。
         もう数ヶ月にもなります。
         ゴローは、大変人徳(犬徳?)のある奴で、方々に請われて出かけたりしていましたから、また何かの用事かもしれないとは思うのですが、それにしても長い。
         一体どこにいるのだろう?

         心配になった綿貫は、「イワナ」の夫婦が営む宿があるという話を聞き込んだこともあり、また、その辺りでゴローを見かけたという話もあったことから、ゴロー探しのために鈴鹿の山に入っていきます。

         物語の後半は鈴鹿行のお話になるのですが、梨木さんの使う言葉は本当に良いですねぇ。
         しかもとってもやさしい。
         淡々とした語り口も素晴らしく、何て言うことはないくだりでも涙が出てしまったじゃないですか。

         いつも通り、河童の少年に出会ったり、天狗を見かけたり、まだ17,18の若さだったのに、最初のお産でみまかってしまったお菊さんの葬儀に立ち会ったり、赤龍に出会ったりと、不思議な旅が続きます。
         様々な植物や素朴な食べ物、鄙な土地とそこに住んでいる純朴な人達、どれもが大変素晴らしい。

         行く先々でゴローの話を聞くと、さすがに有名犬。「あ、それはゴローさんだ!」なる目撃談がちらほら聞こえてきます。
         一説によると、ゴローは竜王様の所でなにかの仕事を手伝っているのではないかとも。

         綿貫は、ゴローに会えるのでしょうか?
        とても素晴らしい作品でした。
        >> 続きを読む

        2020/01/02 by ef177

    • 他4人がレビュー登録、 12人が本棚登録しています
      裏庭
      カテゴリー:小説、物語
      4.0
      いいね! niwashi
      • こんなに壮大なファンタジーとは知らずに読み始めた。読んだことないけど、「はてしない物語」とか「指輪物語」はこんな感じのファンタジーなのだろうか、と思った。一度読んだだけでは理解できない、想像できないところが多すぎた。またしばらくして再読したい。私の想像力をはるかに超えてしまって、全然イメージができないところも多かったけれど、先が気になって気になってどんどん読んでしまった。
        少女が「裏庭」という現実世界とは異なる世界に行き、その異世界で旅をして帰ってくるという話だけれど、その異世界に、作者がこれでもかというほど、意図というか表現したいことを詰め込んでいるようで、いっぱいいっぱいな感じはあったけれど、とにかく見事としか言いようがないファンタジー。
        親から愛されていないと感じている「傷」や、家族を亡くした「傷」に向き合えず、感情を押し込めた人たちが、この少女の「裏庭」への冒険によって、少し前に進めたのかな・・・「裏庭」での少女・テルミィの感情の動きはすごかった。
        私としては、妙子さんについて、こんなにも重要人物のわりに、描かれていることが少ない気がした。妙子さんについてもっと知りたかった。
        >> 続きを読む

        2020/06/02 by URIKO

    • 他3人がレビュー登録、 28人が本棚登録しています
      エンジェルエンジェルエンジェル
      カテゴリー:小説、物語
      4.2
      いいね!
      • 図書館で借りてきました。
        本を開いた瞬間、余白が多く字数が少ないと感じました。
        中身は濃いですね。
        人間にも、熱帯魚世界にも 悪魔はいる。
        おばあちゃんの覚醒は本当に、モーターの音と関係があるのか不思議でした。
        >> 続きを読む

        2016/06/07 by はなもも

      • コメント 2件
    • 他3人がレビュー登録、 10人が本棚登録しています
      家守綺譚
      カテゴリー:小説、物語
      3.9
      いいね! Moffy

      • 梨木香歩の「家守綺譚」は、気軽に読み始めて、思わず座り直して読んだ一冊です。

        エブリデイ・マジック型の掌編連作ユーモア・ファンタジーですが、小説全体を包み込む雰囲気が、実に素晴らしい。

        舞台は、明治時代の京都。山裾の疎水べりで、吉田山も近いというから、恐らく、山科あたりか。

        主人公の"私"は、たぶん京都帝国大学文学部英文科卒の、駆け出し文士。
        学生時代に亡くなった親友の実家から、空き家になる古い一軒家の家守を頼まれ、渡りに船と越して来たところから、この物語が始まります。

        新居は縁側、電灯付きの二階家で、和風の庭には、棕櫚、金木犀、山茶花、槇、楠などが、でたらめに生い茂っていて、床の間には、葦に白鷺を描いた掛け軸。

        ある雨の夜、その掛け軸から、死んだ旧友の高堂が、ボートに乗ってやってくる。
        なんの用かと思えば、庭のサルスベリが、お前に懸想しているぞとの忠告。

        「木に惚れられたのは初めてだ」と答えると、「木には、は余計だろう。惚れられたのは初めてだ、だけで十分だろう」とからかわれる。

        この逸話から、幕を開けた小説は、いずれも植物の名を冠した掌編二十八編が連なる形で、四季の移り変わりを描いていく。

        飼い犬のゴローは、鷺と河童の喧嘩を仲裁し、白木蓮はタツノオトシゴを孕み、狸は和尚に化け、小鬼はふきのとうの採集にやってくるが、隣のおかみさんは、少しも動じず、毎日、ふかし芋や天ぷらのお裾分けを持ってくる-------。

        とにかく、ゆったりとした時間の流れに、心地よく浸れる秀作だ。

        >> 続きを読む

        2019/06/16 by dreamer

    • 他3人がレビュー登録、 18人が本棚登録しています
      f植物園の巣穴
      カテゴリー:小説、物語
      4.0
      いいね! Moffy
      • 先日読んだ『椿宿の辺りに』にこの物語が関わってくるので、改めて読み直してみた。夢か現か、なんとも不思議な物語。

        時代設定は『家守奇譚』と同じくらいかなと思う(百年くらい前?)。主人公の一人語りで物語は進むのだが、少し古めかしい文体が、時代の雰囲気を醸し出していて物語にぴったりだと思った。

        主人公は植物園の園丁として働いている。何年か前に妻を亡くしている男やもめだ。ほったらかしておいた歯の痛みがひどくなってきて、歯医者に行くところから物語ははじまる・・・のだが、どうも様子がおかしい。大家さんが雌鶏に見えたり、歯科医の家内が犬になったり、次々に不思議なことばかり起こる。そのうちに主人公は、植物園にある椋の木の巣穴に自分が落っこちたことを思い出すのだが、その穴から出た記憶がない。じゃあ、ここはいったいどこなんだろう・・・。

        穴に落ち、川に流され、降り積もった時間の地層を下へ下へと降りていく。この物語は、主人公の記憶を巡る旅だ。途中から不思議な小僧が現れ、一緒に旅をする。この主人公は、死んだ妻の顔も思い出せないという薄情な男なのだが、この小僧と一緒に旅をするうちに、主人公にも小僧にも、少しずつ変化が生じる。終盤でこの小僧の正体が明かされたとき、胸にじわりと温かいものが広がった。

        人の記憶は消えてしまうことはなく、自身の内に、地層のように何層にも重なっていくものなのだ。それらはすべて、今の自分を支える土台となっている。そしてその記憶が、未来へと受け継がれていくこともあるのかもしれない。

        こうして『f植物園の巣穴』の物語は、世代を超えて(現実では10年の時を経て)『椿宿の辺りに』へと繋がっていくのだ。
        >> 続きを読む

        2019/06/22 by asaki

    • 他2人がレビュー登録、 8人が本棚登録しています
      村田エフェンディ滞土録
      カテゴリー:小説、物語
      4.5
      いいね! niwashi
      • かすかな記憶をたどると、その昔、途中で読むのをやめてしまって、それ以来苦手意識があり、読了していなかった。それが、「家守綺譚」を読み、気に入り、これに関連する物語と知ったため、読んでみると、なんと、梨木香歩作品の中のお気に入り一番手に躍り出るかの勢いで気に入ってしまった(実際には、順位がつけられないけれど)。

        第一次世界大戦前のトルコに、考古学のために留学した村田のまさに青春の記録。イギリス人、ドイツ人、ギリシャ人、そしてもちろんトルコ人との交流。梨木香歩さんらしい、重すぎず、それでいてきちんとした宗教観もあり、学問を志す登場人物たちの議論、思考・・・
        私自身、トルコ旅行がいい思い出で、もう一度訪れたい好きな国であるということもあり、留学に憧れるというのもあり、わくわくしながら読んだ。物語が進むにつれ、世界情勢がきな臭くなってくる。トルコにも革命前の熱が帯びてくる。最後は胸がつかえる思いで読んだ。

        まさに「永遠の名作青春文学」だった。
        >> 続きを読む

        2020/04/20 by URIKO

    • 他2人がレビュー登録、 8人が本棚登録しています
      りかさん
      カテゴリー:小説、物語
      3.8
      いいね! niwashi
      •  『りかさん』は、「りかさん~養子冠の巻、アビゲイルの巻~」と「ミケルの庭」の2つの話から成っていますが、『からくりからくさ』の前後譚ともいうべきもので、時代順としては「りかさん」『からくりからくさ』「ミケルの庭」となります。

         ようこは、リカちゃん人形が欲しかったのですが、人形に詳しいおばあさんから、プレゼントされたのは、市松人形の「りかさん」でした。

         最初は、がっかりするようこですが、だんだん、りかさんの不思議な魅力というか、力によって色々な人形たちの声が聞こえ、スクリーンのようにその人形の歴史を見ることになります。

         おばあさんは、女の子は人形遊びをしないと疳が強くなるからね・・・と言います。
        最初は、りかちゃん、と呼んでいるのを、「話しはじめた」りかさんが

        「すこし言いにくそうに、私のこと、りかさん、と呼んでくださらない?」

        と申し出ます。(この言葉で、りかさん、というのがただの「少女」でないことがわかります)

          しかし、ただ飾ってあるだけだったような雛人形は、りかさんの登場によって、ようこの目には話しが聞こえ、動きが見えるようになります。
        なんと、ひな壇の人形たちの「人形関係」は大変、悪いのでした。

        ―悔しやのう、悔しやのう。
        ―うるわしのせのきみ、うるわしのせのきみ。
        ―おのれ、悪党め、おのれ、悪党め。

         あの雛人形一式って、考えてみれば、男雛と女雛の2人を頂点としたピラミッド人間関係そのもので、ようこの家の雛人形たちは、ばらばらに大騒ぎしていることに、ようこも驚きますが、私も驚きました。

          人形になぐさめられる話はあっても、ようこは、りかさん(そして困ったときのおばあさん)という助けのもと、人形たちの遺恨をひとつずつ晴らしていく、という物語。

         ようこは、人形たちを一生懸命なぐさめようとしています。
        おばあさんもりかさんもとても寛容です。そして、大変、物事を冷静に見ています。

         いつも寛容であること。
        それは、「かわいい」と心の底から感じることだ・・・と言いますが「かわいい」という言葉の、その向こうには、きちんと検証されていないで放っておかれた膨大な闇が屈んでいる、ともあります。

         不思議なものを不思議なままに、追い詰めることなくすらり、と書ききる梨木さんの文章は相変わらず、読みやすく、気持よいものでした。
        >> 続きを読む

        2018/07/07 by 夕暮れ

    • 他2人がレビュー登録、 13人が本棚登録しています
      春になったら莓を摘みに
      4.0
      いいね! niwashi
      • ウエスト婦人との交友を綴ったエッセイ。イギリス留学に端を発した彼女との関わりは、K..の人生に大きな影響を与えてるのだろうけど、K..が強い人なので、影響があまり感じられない。感動したこともあるのだろうけど、そういったのも伝わってこなかった。
        気になったのはP158の文章。個人同士の関わりについての考え方なのだが、とてもまっとうな意見であるにも関わらず、その意見が受けられられない世の中になっていることを痛感させられる。
        しかし、なぜ自分のことを名前で記さないのか、謎のママ。
        >> 続きを読む

        2019/09/14 by 兼好坊主

    • 他2人がレビュー登録、 13人が本棚登録しています
      ピスタチオ
      カテゴリー:小説、物語
      3.4
      いいね!
      • 難しい漢字、カタカナ英語、それに分かりづらい表現、物事や人との関係性などに苦しみながらも何とか完読した。著者はいったいこの小説を通じて何を描きたかったのか疑問に思う。アフリカのウガンダに残る特異な精神世界をことのほか掘り下げようとしているが。 >> 続きを読む

        2017/04/27 by konil

    • 他2人がレビュー登録、 10人が本棚登録しています
      僕は、そして僕たちはどう生きるか
      カテゴリー:小説、物語
      4.2
      いいね! Moffy
      •  「そう、人が生きるために、群れは必要だ。強制や糾弾のない、許し合える、ゆるやかで温かい絆の群れが。人が一人になることも了解してくれる、離れていくことも認めてくれる、けど、いつでも迎えてくれる、そんな「いい加減」の群れ。」
         終盤のこの言葉にぐっときました。

         人の心は、口の狭い花瓶のようで、手を入れて探っても、分かるようで分からなくて、しまいには手がつっかえて、とうとう中まで入れなくなって...それで悲しんだり、友達なのになんで教えてくれなかった、またなんで理解できなかったんだろうと嘆く。
         でも、それはそれで、「しょうがない」と割り切らなきゃ。
         それが、相手に対しての優しさでもあると、今思えるようになった。
         「いい加減」で良い。
         そして、自分を捨てず、自分らしく生きていき、ほんのりとした優しさがあれば、いい。
         
         コメントを読みながら、この一冊でそれぞれが捉える観点が違って本当に面白いと思う。
         しばらく経って読み返せば、私もまた新しく得るものが出てくるかもしれない。
        >> 続きを読む

        2017/10/23 by Moffy

    • 他2人がレビュー登録、 7人が本棚登録しています
      りかさん
      カテゴリー:小説、物語
      4.7
      いいね!
      • 【日本のファンタジーだなぁ】
         ようこは、おばあちゃんから「今度の雛祭りに欲しい物はあるかい?」と聞かれ、「リカちゃん人形が欲しい」と頼みました。
         だって、友達はみんなリカちゃん人形を持っていたから。
         でも、ようこの両親は、友達がみんな持っているからなんていう理由では買ってはくれない親でしたから、両親にはおねだりできなかったんですね。
         おばあちゃんは了解してくれました。

         ところが、雛祭りの日に届いたのは、何と、市松人形だったのです。
         確かに、半紙に「りかさん」と名前は書かれていましたが。
         ようこはもうがっかりしてしまいます。

         こうしておばあちゃんからようこに託されたのが市松人形のりかさんだったのです。
         りかさんは長い間正しく可愛がられてきた人形でしたので、とても気だての良い人形になっていたのですね。
         いつしか、ようこもりかさんのことが大好きになっていました。

         りかさんは、話すことができます。
         でも、ようこやおばあちゃんにしか聞こえないようですが。
         そして、人形達の思いをスクリーンに映して見せてくれることもできました。

         季節はちょうど雛祭りの頃。
         沢山の雛人形たちや、そのほかの人形が飾られています。
         そんな人形たちの様々な思いを、ようこはりかさんと一緒に汲み取っていくのでした。

         という、これは大変素敵なお話です。
         あぁ、まったく和風ファンタジーですね。
         この物語は、読んでいると気持ちがきれいになるように感じます。

         ようこは、ずっとりかさんを大切にして育っていったのでしょう。
         そうして、おばあちゃんから教えてもらった染色の道に進んでいく。
         そうやって書かれた続編が、「からくりからくさ」というわけだったのですね。

         とても良い作品でした。
         おすすめです。
        >> 続きを読む

        2019/05/21 by ef177

    • 他1人がレビュー登録、 4人が本棚登録しています
      村田エフェンディ滞土録
      カテゴリー:小説、物語
      5.0
      いいね! Moffy
      • 【この鸚鵡、ぜつみょー!】
         いやぁ、良い本だぁ。
         この物語は、エルトゥールル号の事件で大変感動したトルコの王様が、是非にということで日本人の学術研究者をお招きされて、それに応えてトルコに渡った村田のトルコ滞在記です(だから「滞土録」なのですね。……ほら、トルコって、土耳古じゃないですか)。

         で、「エフェンディ」というのは、学問を修めた人に対する敬称なのですね。
         村田は、トルコで考古学を学んでいるのです。
         そして、村田が寄宿する家には、ドイツ人やギリシャ人の考古学研究者も同居していて、さらには、イギリス人のディクソン夫人が取り仕切っており、トルコ人のムハンマドが家のことを任されていて料理なども作ってくれたりするという、極めて国際色豊かな「下宿」でした。

         村田は、日本では当時まだその学術大系すら確立されていなかった考古学を学ぶのはもとより、異国の様々な文化に触れて目を白黒させながらも楽しく仲間達と暮らしているわけですね。
         その何とも良い味の滞在記が本書というわけです。

         国による文化や考え方の違いなども描かれており、それがまた良いのです。
         さらには、この家にいる鸚鵡が絶妙なんですよね。
         あまり多くの言葉はしゃべらないのですが、何だか意味が分かってしゃべっているように、まさしく!というタイミングですごいことをしゃべったりするのでもう抱腹絶倒。
         また、この鸚鵡が終盤で泣かせるんだわ。

         ラストは書きませんが、しみじみともさせられます。
         梨木さんの作品はどれもあったかい。
         淡々としていながら、でも、本当によくできた素敵な作品です。

         そして、もう一つ書いておかなければ。
         この物語、梨木さんの(これも良い本)「家守奇譚」につながるお話でもあるんですね。
         「家守奇譚」に描かれている時よりももっと後のことになるのでしょう。
         ですから、本書よりも先に「家守奇譚」を読んでおくことを強くオススメします。
         そうじゃないと、せっかく本書のラストでつながっているところが分からないから。

         梨木さんは、これで3作目の読書ですが、すっかりファンになってしまいました。
         さて、次は何を読もうかな?
        >> 続きを読む

        2019/09/26 by ef177

    • 他1人がレビュー登録、 3人が本棚登録しています
      からくりからくさ
      カテゴリー:小説、物語
      4.8
      いいね! niwashi Tukiwami
      • 【非常にレビューし辛い作品です】
         祖母が住んでいた古い日本家屋、今は、孫娘の蓉子が管理人を務めて、学生向けの下宿を営んでいます。
         その下宿に同居している蓉子も含めた4人の女性。
         彼女たちは、染色をし、機を織り、レースを編むなどしています。
         染色のために、様々な植物を採ってきては糸を染めて。

         本作は、そのようにして共同生活をしている4人の女性と、その家に代々伝わっている「りかさん」と名付けられた市松人形のお話です。
         彼女たちの日常の生活と、その中で起きる様々な出来事が静かな調子で語られていきます。

         この家には網戸が無く、冷房もありません。
         夏には窓を開け放しておくと蚊が入ってくるので、何とか網戸を入れたいと思うものの、お金が足りません。
         そこで、食費を削ることにして、みんなで庭に生えている草を食べてみたり。
         そうこうしているうちに秋になり、結局網戸は入れず仕舞い。

         「りかさん」の由来についても少しずつ明らかになっていきます。
         偶然というにはあまりにもできすぎた「つながり」があったり。

         何か、一つの事件に向かって物語が進んでいくというタイプの作品ではありません。
         なので、非常にレビューが難しい。

         時に淡々と、時に苦しくなるような描写が続いていきます。
         こればっかりは粗筋を書いても伝わらないと思いますし、この作品に関しては粗筋をご紹介することはあまり意味がないように思われます。

         この静かな物語は、その過程をじっくり味わうのが良いのではないでしょうか。
         それも、サマリーで確かめるのではなく、ご自身の手でゆっくりとページをめくっていただくのが良いと思います。

         梨木さんらしい、とても良い雰囲気の漂う佳作だと思います。
        >> 続きを読む

        2019/08/14 by ef177

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      沼地のある森を抜けて
      カテゴリー:小説、物語
      4.6
      いいね!
      • 【ぬか漬けは大好きです】
         何とも不思議な物語でした。
         主人公久美の家には代々伝わるぬか床がありました。
         最初はぬか漬けなんてつけるつもりは無かったのですが、半ば押しつけられるようにぬか床の世話をさせられるハメに。

         このぬか床、変なんです。
         相性の悪い人がかき混ぜたりすると、「ぐぇっ」とうめいたりするのだとか。

         久美はどうやらぬか床に認められた様です。
         ぬか漬けも、やり始めてみるとそれほど嫌なものでもなく。
         毎日、ぬか床をかき混ぜてはせっせとぬか漬けを作るようになりました。

         ところがある日……。
         ぬか床の中に卵が出来ているではないですか。
         何だこりゃ?
         どうやら60年に一度位、ぬか床が卵を産むことがあるらしいというのです。

         何だか薄気味悪いのですが、その卵を割ってみる勇気もなく、ぬか床に入れっぱなしにしておいたのです。
         そうしたところ、数日後、卵が割れているではないですか。
         そして、おそらくその卵から生まれたらしい男の子が台所に座っているのです。
         何だこりゃ!

         最初、その男の子は影が薄かったのですが、食べ物を食べさせている内にどんどん実体化していくというか、しっかりしたカタチになってきました。

         ぬか床にはまだ割れていない卵も入っています。
         まさか、さらに誰かが生まれてくるの?
         はい。そうです、また一人生まれてきたのです。

         何とも不思議でしょう?
         どうやら、このぬか床には、久美の祖先が住んでいた沼のある島が関係しているらしいのですね。
         久美は、ぬか床を島の沼に帰すことを決意するのですが……。

         微生物、粘菌、発酵、そんな概念が飛び交い、何とも摩訶不思議な世界が繰り広げられます。
         難解と言えば難解。
         しかし、こんな作品書けるの梨木さんだけだろうなぁ。
        >> 続きを読む

        2019/11/08 by ef177

    • 他1人がレビュー登録、 11人が本棚登録しています
      鳥と雲と薬草袋
      3.3
      いいね!
      • 常々「地名」には、その土地の生い立ちや意味を表していて、言霊のような力を帯びているものと感じていた。
        読み方も難しく、教えてもらって「こんな読ませ方をするんだ。」と驚いたり、また逆に、他所の人に地元の地名を教えるときは、ちょっと得意になったりもする。

        この本は、作者が縁のあった土地の名前を重ねていったエッセイ。
        地名はもちろん、山・旧街道など自然に造詣が深い作者が書いたこのエッセイは、とても味わい深い。

        文中で作者は、平成の大合併で、乱暴な都市名が増えてしまったとぼやいている。
        確かに、昔から使われていた、意味があり愛着もある地名が地図上から消えた。
        私も、これは悲しい。
        >> 続きを読む

        2016/01/16 by shizuka8

    • 他1人がレビュー登録、 4人が本棚登録しています
      不思議な羅針盤
      4.7
      いいね! Moffy
      •  梨木さんの「羅針盤」となった考えや経験がつまった一冊。
         この思想はあの作品の中でも強調してたな~とか思いながら読んでいました。:)

         梨木さんの表現はいつ読んでも分かりやすく、この一冊もすごく読みやすかったです。
         他の作品を読んだ後にこれを読むと、まとまりがあって梨木さんが作品を通して伝えたいことがもっと分かりやすくなるかもしれません。
        >> 続きを読む

        2018/01/27 by Moffy

    • 他1人がレビュー登録、 4人が本棚登録しています
      f植物園の巣穴
      カテゴリー:小説、物語
      4.2
      いいね!
      • 【本当に記憶の奥底に押しやってしまっていた事】
         主人公は、まだ若い妻を亡くした、植物園に勤めている男性です。
         彼は、転勤に伴い、新たな任地の植物園近くに、単身で間借りをするようになりました。
         いつものように新しい勤務先の植物園に通い始めるわけですが、段々様子がおかしくなります。

         歯の痛みがひどくなったために、近所の歯科医に行ったのですが、そこで医師の助手をしていた奥さんがふとした拍子に犬に変貌しているのを目撃してしまいます。
         驚いて医師に言っても、「いや、あいつの前世は犬だったので、仕事に熱中するとつい犬の姿になってしまうんだよ。」なんていうことを言うばかり。

         また、大家さんに指摘されて初めて気が付いたのですが、これまで履いていた靴がいつの間にか無くなっており、玄関には見知らぬ女物の草履があるばかり。
         自分はこれまでこの女物の草履を履いて歩き回っていたのだろうか?

         どうやら歯ばかりではなく、頭の方もおかしくなってきたのだろうか?などといぶかんでいる内に、歯科医でもらってきた痛み止めの薬が効いていつの間にか眠ってしまいます。

         そうだ! 自分は木のうろに墜ちたんだった。あのうろからどうやって出てきたんだろう? 誰かが助けてくれたに違いないが……。

         このように、主人公は、現実の中で忘れていたことを少しずつ思い出していくようになるわけですが、それと共に現実がどんどん奇妙に変容していき、遂には全く訳の分からない世界に入り込んでしまうのです。
         そして、その世界で一人の子供と出会います。
         ここが良いんだなぁ。

         ネタばれになるので詳しくは書けませんが、不思議な世界で名も無い少年と巡り会うところ辺りから、物語は一気に濃密になっていき、最後は、「はぁ……」とため息が出てしまうような締めくくり方になっています。

         私は、幻想的な作品が大好きですので、この作品も最初のうちはそのような作品の一つなのかな? 植物と、動物が入り混じり、人間が動物化する不思議なお話なのかなと思いながらページをめくっていたのですが、いや、もっと深いお話でした。

         人間の記憶というものは、不思議なもので、沢山の事を忘れているようです。
         もちろん、忘れることができるからこそ、何とかやっていけるという部分も沢山あるわけですが、それにしても、本当に忘却の彼方へ押しやってしまっていることもあるのかもしれません。
         ええ、それは、私にも、あなたにも。

         本作は、そのようにして完全に忘れ去っていたと思われたことが、とあるきっかけから蘇ってくるという物語でもあります。
         そうすることによって、ようやく、自分のこれまで生きてきた人生の本当の姿を理解することができるのだというメッセージが込められているようにも思えます。
         そのことに気付いた時、あぁ、自分が生きているこの人生、この世界は、本当はこういうものだったのだと、真の理解に達するのだよと、そう言っているのかもしれません。

         物語の中で、主人公が、「歯が痛い」と言った時、「それは心が痛いということですね」と言われる場面がありました。
         あぁ……。心が、痛かったのか……。
        >> 続きを読む

        2019/09/16 by ef177

    • 7人が本棚登録しています
      雪と珊瑚と
      カテゴリー:小説、物語
      3.8
      いいね!
      • 珊瑚、21歳。
        雪と名付けた女の子の赤ちゃんを育てるシングルマザー。
        親にも頼れずたった一人で生きていかなければならない珊瑚は、
        私からすれば、ふと気がつけば、ほぼ娘の年齢だ。(そこにびっくりする自分)

        梨木香歩さんはいつも母との関係に問題がある女性が主人公になっているが
        この珊瑚も、そんな女性だった。

        ネグレクト。それは母による虐待といえる。
        そうして育った少女は年若くして妊娠し、結婚し、離婚し、今子育てをしている。

        誇り高く一人で生きる術と決意を身に付けたかに見える珊瑚だが、
        実は、周囲の人からの好意や愛情や優しさに助けられて生きている。
        クールな態度ながらも、彼女はそういう人間関係をそっと大切にしながら生きている。
        それがわかる人が、きっといる。
        現実の世の中でも、自分を真剣に生きている人の姿はきっと人にも伝わると思う。

        梨木さんの他の作品で主人公に寄り添うおばあちゃんの姿があるが、
        この作品では、くららさんという年配の女性が雪の子守役として登場する。
        そしてここにも、キリスト教の信仰が出てくる。
        くららさんは外国のボランティアをし修道院暮らしをしたことがあるらしい。

        もちろん今回も、身近な自然がたっぷり。おいしいお料理のお話がたくさん。

        くららさんのお料理に影響を受けた珊瑚はよい素材をシンプルに料理した「惣菜カフェ」を
        保護樹林の脇の一軒家を借りてオープンさせるのだ。

        暮らしの豊かさは、確かに、金では買えないものなのだと、
        そう思わせてくれる。

        よそよそしいまでに律儀な珊瑚の気持ちによりそい、「頑張って」と応援しているその時に、
        梨木さんはやはり平手を食らわしてくれた。

        悪意に満ちた中傷や、どうしても、人を傷つけずにはいられない
        「自分なりの正義感」を振りかざす人というのは、どこにでも現れるものだ。

        優しくあったかいだけのお話しを書く人じゃあ、ないものね。

        母に否定された子供はどんなだ?

        どう思って生きていく?

        とうやって自分を支え、どうやって、立ち直る?

        自分が母と同じ過ちを犯すのではないかという不安にどう耐えていけばいい?


        子供を持ったことがある人ならば、誰もが知っている恐怖、焦燥、不安、
        大きなプレッシャー、逃げ出したくなる夜、凶暴な怒り、そして負い目。

        「子どもを産むということが、ときに生死に関わるほどのダメージを
        母体に与えるのと同じように、
        子どもを育てるということも、長いスパンで、
        ときに母親自身の存在を揺るがすほどのすさまじい影響力を持つものなのだろう」

        まさしく、その通り。
        こんな風にすっぱりと書かれると気持ちが良いほど真実ですね。

        子どもを愛してダメにする人も、子どもを愛せず、産む資格のない人も。
        それぞれ、人生を、自分自身を根底から変えてしまうものです。子どもって。


        けれど梨木さんはいうのだ。
        自分を再生することはできる。
        諦めるな、絶望するな。
        人と違ってもいい。自分を受け入れ愛しなさい。
        愛する人(対象)を見つけさえすればそれが可能になる。
        そうすれば、自分の周りに愛が満ちていることに気づくことでしょう。
        自分が一人でないことがわかるでしょう。
        >> 続きを読む

        2013/03/23 by 月うさぎ

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【梨木香歩】(ナシキカホ) | 読書ログ - 読書ファンが集まる読書レビューサイト(著者,作家,作者)

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