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香西秀信

著者情報
著者名:香西秀信
こうざいひでのぶ
コウザイヒデノブ
生年~没年:1958~

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      論理病をなおす! 処方箋としての詭弁
      カテゴリー:言語生活
      5.0
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      • ・どんな本?
         この本を読めば詭弁に騙されなくなる、なんてことはない。私は本書を読む以前には、詭弁について誤りである論理を用いた、ただの屁理屈だと誤解していた。そんなものに騙されるのは知性が足りない証拠であると。あるいは知識さえあれば詭弁に騙されることはなくなるだろうと。しかし詭弁はそんなに優しいものではないし、看破するのが易しいのならばそもそも私達は騙されていない。
         著者は『詭弁に騙される人は、単に馬鹿だから騙されるのではなく、人間の思考が、そのようなものを受け入れてしまう癖をもっているから騙されるのである』(p.20)と、主張している。詭弁にはどういった型のものがあり、なぜわれわれはそれらの詭弁にだまされるのかを考えることで、人間の思考の癖について学ぶことのできる本だ。
         
         ・人間の性質
         人間は2つの対立した意見があると、どちらかの味方をしてしまう。また、人間は自分が正しいと思いこみ、対立意見があった時に自分の意見を見直すことはせず、間違っているのは対立意見のほうだと決めてかかる。人間には自分を正義だと思いこみ、自分の正しさを信じ、正しくあり続けようとする性質がある。(つまり客観的に、実際になにが正しいかなど、どうでもいいのだ)

        ・言葉の曖昧さ、多義性を利用した詭弁
         詭弁の型の一つに言葉の曖昧さ、多義性を利用した詭弁がある。例えば、キリスト教について知っているか?という問いを投げたとする。この問いにはA「キリスト教の存在を認知しているか?」の意味でも解釈できるが、B「キリスト教がどういった宗教であるか知っているか?」の意味でも解釈することは可能だ。我々は日常生活において前後の会話や、問いを投げた人間との関係性などを考慮して、Aという意味なのかBという意味なのかを推察する。
         しかし、議論の場などでは対立側がAの意味で質問、あるいは発言していても自分の側に有利にするために、意図的にBの意味で解釈するということが起こり得る。これが客観的に私達が明らかにAの意味であると断言できる場合ならいい。その場合いくらBの意味であると叫んでいる人間がいたって私たちは騙されない。それほど人間は愚かではない。問題はAであるともとれるしBであると解釈しても必ずしも間違いでない、という場合に起こる。言葉の曖昧さ、多義性を利用した詭弁は、言葉のもつ不完全性とそれを許容している人間の本質によって引き起こされるものといえるだろう。ここで例をあげることは文章量と私の能力不足の都合でしない。本書で述べられていることだが、説得力をもった詭弁、つまり私達が騙される詭弁については説明するのが難しいのだ。
         しかし私達が詭弁にだまされる時は、その詭弁が正しさを含んでおり、一概に間違いであると切り捨てることができない時であると言えるだろう。そして、そういった詭弁は人間の性質によって生み出され、人間の本質によって受け入れられるのだともいえる。
          

        ・感想
          『要するに疑わない、信じるというより、人は「疑いたくない」のだ――自分の過ごしている世界が、周囲が、信用するに足る、安心するに足るものだと信じたい。安心したい。だから疑心暗鬼に陥らずに、信じる』(西尾維新、恋物語より)
         このセリフは、恋物語の登場人物である詐欺師の貝木のものである。貝木は人間の本質は疑うことを嫌い、信じることを好むという。だから騙しやすい、と。これと同じことで人間は人間の本質によって、詭弁に騙されるのだと本書で考えさせられた。人が人である限り、人は人に騙されることから逃れることは不可能なのだと。
         私達が詭弁に、詐欺に、あるいは嘘にだまされない為には、まずそれらについて学ぶことが大切なのではないだろうか。また、人間の本質について知ることも同様に大切なことだと思う。そしてどれだけ学び、知識を得て、深い思索にふけったとしても「自分は騙されることはない(なぜならば自分は賢いから)」などといった幻想を抱かず疑い続けることこそが、騙されることから身を守ることに繋がるだろう。
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        2015/10/14 by けやきー

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