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栩木伸明

著者情報
著者名:栩木伸明
とちぎのぶあき
トチギノブアキ
生年~没年:1958~

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      アイルランド・ストーリーズ
      カテゴリー:小説、物語
      3.0
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      • 【本書を深く理解するためにはアイルランドのことを勉強してからの方がよかった】
         タイトルの通り、著者のアイルランドを舞台にした短編を集めたアンソロジーです。
         全部が全部というわけでもないのですが、多くはアイルランドが置かれた複雑な状況、心情を背景にした作品なので、不勉強な私としては、「こういうことなんじゃないかな~」と想像しながら読んだのですが、やはり、本書をより良く読むためにはもう少し勉強してからの方が良かったと強く思いました。

         一応、本書の末尾にはアイルランドの歴史や置かれている状況が簡単にまとめられていますので、これから本書を読まれる方は、まず最初にそこを読んでからの方が少しは良いかもしれません。
         それでは収録作品から何作かご紹介します。

        〇 女洋裁師の子供
         自動車修理工場で働いているカハルは、外国人カップルの頼みに応じて、近くの聖母像まで車に乗せて行ってやることを引き受けました。
         その帰り道、突然道に飛び出してきた少女をはねてしまったのです。
         咄嗟の事でよけきれなかったのですが、カハルは車を停めることもせず、そのまま走り続けてしまいました。
         後部座席に座っていたカップルはキスをするのに忙しそうで気付いていない様子でもありましたし。
         以前から、この道には子供が飛び出してきて車に体当たりするという話は聞いていたのです。
         でも、いつも子供は怪我一つしないのだとか。
         きっと、今回も大丈夫だ。
         カハルは自分にそう言い聞かせるのですが、実のところ心配でなりません。
         数日は何事もなく過ぎ去っていったのですが、しばらく後、あの子供が行方不明になっており警察が捜索しているという話が聞こえてきました。
         あの子供はどうも精神を病んでいるようだということで、また、母親と二人暮らしなのだけれど、母親は身持ちの悪い女で、いつも子供を一人家に残して酒場に行き、酒を飲んでは男の相手をして金を得ているというのです。
         その後、女の子の死体が採石場から発見され、どうやら家に一人で残されている時に採石場に行き、転落して死んだらしいということになりました。
         バレなかった……。
         周囲の人々は、これもすべて母親が悪いと噂しました。
         しかし、その後、子供の母親は酒場に現れなくなり、黒っぽい服ばかりを着て、これまで全く構わなかった家の手入れをするようになったのです。
         そして、カハルに出会ったとき、「家に来なさいよ」と誘うのです。

        〇 ミス・スミス
         ミス・スミスは小学校の教師でしたが、生徒のジェイムズにいつも辛く当たっていました。
         その後、ミス・スミスは結婚して学校を辞めたのです。
         彼女は、夫にジェイムズという気持ちの悪い生徒がいるなどと話していたのですが、ジェイムズの方は彼女に好かれたいと思っていたのです。
         どうすればいいんだろう?
         ジェイムズは、花を摘んでは彼女の家の前に置くようになりました。
         家の花を摘み尽くしてしまったので、村中のあちこちの家の花を勝手に摘んでは彼女の家に届けたのです。
         ある時、それがジェイムズの仕業だということがバレてしまいました。
         彼女は、何て酷いいやがらせをするの!とジェイムズを叱責したのです。
         ジェイムズは、知人の大人に、誰かに仕返しをするにはどうしたら良いんだろう?と相談しました。
         その後、彼女には赤ちゃんが生まれました。
         可愛くて仕方が無いのですが、彼女はどうも子育てに疲れているのか、時々ぼんやりしているようで、子供に怪我をさせかねないようなミスを繰り返すようになるのです。
         ある時など、子供を寝かせている部屋のガス栓を開けっぱなしにしてしまったことがあり、危うく子供が死ぬところでした。
         もう我慢できなくなった夫は、子守を雇うと言い出したのです。
         それだけは勘弁してほしいと彼女は哀願するのですが、その必要もなくなってしまったのです。
         というのは、赤ちゃんがいなくなってしまったから。

        〇 哀悼
         リアムは、アイルランドを出てロンドンに働きに行きました。
         紹介された働き口で一生懸命働くのですが、上司はリアムを目の敵にしていびり続けます。
         また、ロンドンは冷たい街で、アイルランド人だからなのでしょうか、商店などでも冷たい対応しかしてもらえないのです。
         そんな時、リアムに親切にしてくれた男から爆弾テロの手伝いをしてくれと頼まれたのです。
         そうすればお前も英雄になれるんだと言われて。
         何、簡単なことさ、爆弾が入っているバッグを置いてくればいいだけなんだから。
         初めは断っていたリアムですが、遂にこれを引き受けてしまったのです。

         作品によってはサキ風の趣があるものもありました(『ミス・スミス』なんてそんな感じです)。
         それぞれに味わい深い作品が揃っていると感じましたよ。


        読了時間メーター
        □□□     普通(1~2日あれば読める)
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        2021/01/31 by ef177

    • 2人が本棚登録しています
      シャムロック・ティー
      カテゴリー:小説、物語
      4.0
      いいね!
      • 【ラベンダーの香りをかぐとタイムトラベルする……っていう話があったっけ】
         キアラン・カーソンと言えば『琥珀捕り』が思い浮かびます。
         あれは不思議な作品でしたが、本作も『琥珀捕り』同様の作品になります(どうやら姉妹編ということのようです)。
         ですから、『琥珀捕り』にハマった方は大喜び間違いなしの作品になっていますよ。
         『琥珀捕り』読んでないよ~という方でも大丈夫。
         物語(大体、『琥珀捕り』に物語らしい物語なんてあっただろうか?)的にはまったく関係はありませんから。

         本書は、色(色にちなんだもの)を短い章のタイトルにしています。
         章は本当に短くて、101章もあるんです。
         そして、本作では全体を通じて一つの物語が語られます(ここは『琥珀捕り』とは違うところ)。
         でも、筋立てをくっきり浮かび上がらせるような書き方はしておらず、筋はあるんだけれど、お話はあっちへ行き、こっちへ行きで、色んな所を漂いながら最終的には一つの筋を追っているという感じなんですね。
         非常にゆる~い書き方になっています。

         そのお話とは、主人公のぼくが、いとこのベレニスらと共に、ファン・エイク作の『アルノルフィニー夫妻の結婚(肖像)』という有名な絵画の中に入ってしまい、別の世界に行ってしまうという物語なんです。
         この絵画、とっても有名な絵画ですから、きっと一度くらいは見たことがあると思います(本書にも口絵にカラーで掲載されています)。

         どうやって絵の中に入れるんだ?というと、そのために使うのがタイトルにもなっているシャムロック・ティーなんです。
         これは様々な薬草(毒草?)をブレンドした葉のことで、パイプに詰めて喫煙したり、抽出してお茶として飲んだりすることによって幻覚を見ることができ、また、絵の中にも入り込めるという効能があるとされています。
         なんだか、ラベンダーの香りをかぐとタイムトラベルしてしまうみたいな感じですね。

         で、コアとなるストーリーはそういうことなのですが、この作品はそこに至るまでの寄り道にこそ味がある作品なんです(その辺りはまさに『琥珀捕り』同様なんです)。
         そして、本作には実在、架空の有名人が色々登場してくるのも楽しいところ。
         コナン・ドイルとシャーロック・ホームズ。
         オスカー・ワイルド。
         ウィトゲンシュタイン。
         ブラウン神父(作中ではあんまりそれらしくないんですが、やっぱりチェスタトン作のあの人だよねぇ)。
        いとこのベレニスだって、もしかしたらポオの作品から採っている?

         そしてまた、さまざまな蘊蓄話がちりばめられてもいます。
         例えば、パッション・フルーツ。
         私、あれは『情熱の果物』ということだとばかり思い込んでいたのですが、違うんですって。
         あれは『受難(パッション)』の果物なんですって。
         はたまた、『セレンディピティ』という言葉は、『オトランド城奇譚』を書いたホレス・ウォルポールが作った造語だとか。
         『セレンディップの三人の王子』という童話にちなんでいるんだそうですよ(そう言われるとそんな話を聞いたことがあるような……)。

         そんな話をあちこちで拾いながらページをめくっていく物語なんですね。
         捕まえどころがない話と言われればその通りなんですが、そういうの好きだという方には好適の作品です。


        読了時間メーター
        □□□     普通(1~2日あれば読める)
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        2021/04/21 by ef177

    • 2人が本棚登録しています

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