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松井今朝子

著者情報
著者名:松井今朝子
まついけさこ
マツイケサコ
生年~没年:1953~

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このランキングは1日1回更新されます。
      吉原手引草
      カテゴリー:小説、物語
      3.7
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      •  この物語は江戸時代の一文化ともいえる吉原で、一番ともいわれた葛城花魁をめぐる16人の証言を集めたものです。

         まず、誰が何のために葛城の起こした事の真相を知りたいと思うのか、いわば探偵である人物の姿は見えません。
        あくまでも、話を聞かれたものの喋り言葉のみで構成されています。
        誰もが「若くてちょっといい男」と言う。それしか聞き手の姿は見えません。

         作者は、吉原で働く者、吉原に通い熟知している者に語らせ、その吉原とはどんな仕組みになっていたのか、どういう人々が集い、どんなしきたりがあったのか・・・まるで映像を見ているかのように再現させています。

         手引茶屋内儀、見世番、番頭、遣手、女衒・・・といった、今で言う店の主人、女将、用心棒、花魁や女郎たちの見張り、吉原の中にある古着屋、そして客となった金のある商人たちの話。
        誰もが葛城の事をあまり語りたがらない。何があったのか。それをひっぱる力がまずあります。

         花魁ともなると着物に凝り、下で使う者、見習い少女の教育などをすべて自腹でやり、ごひいきの力を借りなければならない。
        そのすさまじいまでの厳しい世界を花魁という一番の高さまで登りつめた、葛城。

         不思議と葛城を悪く言う人がいない。容姿も美しかったけれど、客人に媚びをあまり売らず、おのずと人好きがするような人物である、と口ぐちに言います。

         聞き手の姿をひたすら隠すように、葛城花魁の姿もなかなか見えない。結局、誰が話す葛城が本当の葛城だったのか、どの人も葛城のある一面だけを見て判断していたのでしょう。

         そんな中、ひとり沈黙を守って筋を通した葛城の姿は夏の逃げ水のようにきらりと光るかと思うとさっと消えてしまう。

         葛城本人しか本人の気持などわからないのでしょうが、16人の弁から見える葛城は、ひとことで言うととても切ないけれど、凛としています。

         どんなに花魁という地位になっても、結局、身請けされなければ外に出られず、一生、吉原という刺青を背負って生きていかなければならない身なのです。

         誰からも好かれるは、今の時代でも無理があり、無理があるからこそ、人は悩み、自分を客観する事が出来る人は何かしらの成長があり、自分の道をすすんでいくしかないのです。

         自分の今いる立場に溺れず、周囲をきちんと見極める事の難しさをつくづく感じます。作者はどんな立場、身分の者であっても、その誇りを捨てない姿、誇りに上下も善悪も大小もないことを垣間見える葛城の姿でもって見事に描き出しています。
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        2018/06/05 by 夕暮れ

    • 他2人がレビュー登録、 6人が本棚登録しています
      円朝の女
      カテゴリー:小説、物語
      3.0
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      • 松井今朝子が描く、円朝の女、五人が登場する。

        出入りしている武家のお嬢様の「千尋様」は「惜身の女」
        大楼で出会った「長門太夫」は、「玄人の女」
        円朝の倅のお母さんの「お里さん」は、「すれ違う女」
        祝言上げてのお内儀といわれる「お幸さん」は、「時をつくる女」
        晩年、円朝の面倒をみた「せつちゃん」は、「円朝の娘」と、
        各章、円朝を中心に時代の変化で強く生きる五人の女で噺がすすむ。

        各人各様に、もてもての、噺家、円朝に惚れ、男として芸人として支える
        そこには、芸人の甘えを受けるだけの、母親のごとく慈愛にみちた愛とともに、
        すべて、真の名人としての凛と卓越した円朝の芸が存在する。

        時は、徳川崩壊から始まり明治へ、歴史の中で翻弄さる庶民。
        特に、女性の立場はかわり、同時に四民平等で役者や芸人の地位も変わる。

        いつの時代も、遊び人の代表であるような芸人さんは、
        ある意味、男の弱味をみせ、おおいに母性本能をくすぐる存在。
        そういう意味では「惜身の女」として紹介されている
        「千尋さん」に、私は一番憧れますな。

        小説として読み応えある「円朝の女」に、
        小説家としての松井今朝子さんの技量を感じますな。
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        2013/06/07 by ごまめ

      • コメント 3件
    • 1人が本棚登録しています
      円朝の女
      カテゴリー:小説、物語
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      •  私は落語の事はあまり詳しくないけれど、三遊亭円朝の名前は知っていました。
        幕末から明治の時代、天才と言われ、様々な創作落語をつくり、特に怪談話を得意とした円朝。

         松井今朝子さんは、元々歌舞伎の仕事をされていたから、時代考証が実にしっかりとしていて、説明が視覚的でどんな着物を着て、どんな表情でというのが手に取るようにわかります。

         弟子の円八が、姿の見えない若い聞き手に亡き師匠、円朝に関わった女、5人の話をします。
        円朝は30歳の時、明治維新だったので、人生の前半を江戸時代、後半を明治時代に生きた人です。

         語りからわかるのは、まだ若かった頃(江戸時代)と中年になってから(明治時代)の違いですね。
        円朝と女達を語りながら、明治維新でどんな風に日本が変わっていったか、を上手く説明しています。

         円朝は人気落語家でしたから、周りに人は絶えなかったのですが、弟子をたくさん抱えるようになると金は入っても、それ以上の金が出て行ってしまう。故にそんなに金持にはなりませんでした。

         たくさんの女と関わりますし、今でいう追っかけのような熱心なファンもいたわけですが、もてるからいい伴侶と巡り合う訳ではない、という事がわかります。

         5人の女達は、武家の娘、花魁、円朝の子供を産んだ女、妻となった芸者、そして養女ですが、どの女性も時代に翻弄され、円朝に翻弄され、決して「幸せに暮らしました」にはならない。
        それだけ世の中厳しいし、芸の世界も独特で特殊な世界です。

         日本は急速にかわっていき、最後は「戦争の時代」に突入します。
        語り手である、円八はぼやきます。

        「あたしら江戸の昔を知る身としては、黒船が来て以来、日本人はなんだか西洋人に焚きつけられて戦ばっかりするようで、そら恐ろしい気がいたしますよ」
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        2018/07/05 by 夕暮れ

    • 1人が本棚登録しています
      今朝子の晩ごはん
      2.0
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      • 晩ごはん」というので、グルメ、いや料理本と思いきや、
        料理については、毎日、数行で終わる。

        パラパラと読みだして、QPのレシピと、所々に出てくるので、
        ホームページか何かの略と思っていたが、ある日、キューピーの略と気づく。
        「タラッタ、タッタッ、タ、タラッタ、タッタッタ、タ」の昼間の料理クッキングか。

        でも、東横のれん街(デパ地下か)で買って食べる日も多く。
        他のグルメ本とは、根本的に違う。

        私も、二年前から、ダイエットというか、体重を気にかけているので、
        三度三度の食事のメニューだけ、記しているが、食事の内容と一緒に
        食べた人を思いだすと、その時の話しの内容まで、はっきりと浮かんでくる。

        この本は、作者、松井今朝子さんの日々の日記であり、
        その時の小さな思いが綴られている。

        でも、最初、料理本と思って買った私、意地でも、つくりましたな。
        鶏肉のソテートマトソース、レタスとしらすのサラダ、エンド豆の甘煮など、
        でも、調味料の分量の記載がないので、あくまで自分の舌が頼り。
        どれも、最高に旨いと思えたものはなく、実は、失敗作だったかも知れない。

        松井今朝子さんの、「今朝子の晩ごはん」は決して、一日の終わりではなく、
        一日での感じた事を書く、ブログの書き出しである。
        >> 続きを読む

        2013/05/24 by ごまめ

      • コメント 3件
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