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西村健

著者情報
著者名:西村健
にしむらけん
ニシムラケン
生年~没年:1965~

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このランキングは1日1回更新されます。
      残火
      カテゴリー:小説、物語
      3.0
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      • よう見とけ、これが日本人への遺言じゃ!
        白昼堂々、衆議院議員会館から裏金1億円が強奪された!
        若手衛視・富士見は、その男の鋭い殺気に度肝を抜かれる。
        元マル暴のベテラン・久能は、監視カメラに映った男に驚愕する。
        現役ヤクザ・矢村は、かつての兄貴分を追撃する指示を飛ばす。
        犯人は、仁義をなくしたヤクザを見切り、引退した伝説の極道。
        北の大地で明かされる驚愕の真実とは。

        2010年に講談社から出版された書き下ろし作品です。
        震災前の東北三陸地方が舞台になっていて、往時の津波に対する備えと、人々の暮らしが偲ばれます。
        また、出版当時には、本作で描かれている類の職業の方々も、僅かながら生き残っていて、太く短い人生をリアルに送っていた人もいたのでしょうが、時世柄、2015年の現在では絶滅危惧種とも思われる職業です。
        現代では見られなくなった世界と、人々に(また違うかたちでおなじようなことは続いているのでしょうが)郷愁を覚えながら読みました。

        政権交代により与党の座から陥落したものの、民自党の大物議員・戸川の権勢は過去と変わらず、各地の公共事業や大規模な利権に、その発言権を揮い“戸川詣で”が引きも切らない野党の重鎮でした。
        いつもと変わらぬ平日の多忙な事務所内に、突然現れた老人。
        瞬く間に事務所にいた秘書はじめ関係者を縛り上げると、その日、次の選挙戦で各地にばら撒く予定で事務所に保管してあった“実弾”1億円を無造作に紙袋に突っ込み、悠然と出てゆきます。
        議員事務所を後にする老人が発する気に、尋常ならざるものを感じた警吏は、老人が立ち寄ったとみられる戸川事務所へ急ぎました。
        彼は床に転がされた数人の事務所職員の姿にたじろぎますが、そこに居るはずの戸川第一秘書・友津野の姿は無いことに不審を抱きます。
        赤坂にある表向きには探偵事務所の看板を掲げている「SKリサーチ」事務所には、急遽、3人の男が集まっていました。
        戸川第一秘書・友津野、大手不動産デベロッパー会長・越、そしてSKリサーチ代表・矢村。
        盗まれたのは越から戸川へ流れた裏金1億、決して表に出してはならない金でした。
        もとは浅草の侠客集団・関組に籍を置き、今では立派な経済ヤクザとして大金を動かし、戸川や越の代わりに裏稼業を数多く手掛けていた矢村は、1億を奪った老人がかつての兄貴分であった伝説のヤクザ・花田秀次だったと聞き、耳を疑います。
        花田のアニキは、とっくの昔に金まみれになってしまった渡世に愛想をつかして、足を洗っているはずではなかったか。
        しかし友津野の言葉に嘘は無いと判断した矢村は、花田の行方を追うべく、すぐに行動を開始します。
        一方、議員会館では戸川事務所襲撃後の監視カメラの映像を凝視する男がひとり。
        元・マル暴刑事の久能は、映像に残った後ろ姿を花田秀次と確信します。
        戸川事務所の人間に話を聞こうとすると、たった今まで監禁されていたというのにも関わらず、のらりくらりを繰り返すばかり。
        表沙汰になるのを嫌っているな、と直感的に感じた久能は、戸川事務所から花田が持ち出したものは裏金、好くなくとも戸川陣営にとって表に出ては困るシロモノだと見当をつけます。
        しかし、そこで久能の思考は違和感を覚えざるを得ませんでした。
        最後の侠客とまでいわれ畏怖された伝説の男と、現金強奪という行為がまったく噛みあわないのです。
        とまれ、久能の足は都内でも古い風情が残る一画へ。
        とうの昔に足を洗った花田が古女房とふたり、細々と営っているはずの豆腐屋に向かうのでした。
        矢村、久能、ふたりの男が、ある種、畏敬の念を感じつつ、眼前の出来事から、その姿を追い求めることになってしまった花田秀次とはいったいどんな男だったのか。
        そして、花田秀次のほんとうの狙いはどこにあるのか。
        舞台は魑魅魍魎の跋扈する東京・永田町から、冬の東北・仙台へ。
        花田秀次の命がけの逃避行の行方にある決意とは。

        西村健さんの作品を読むのは『ヤマの疾風』以来2作目ですが、一貫してヤクザ世界を好意的な視線で描く作家さんです。
        いちいち仁義だ、作法だと、古臭い昔かたぎのヤクザを美化しつつ、損得勘定ばかりに堕ちてしまった今どき極道を完膚ないほど貶める作風は痛快です。

        暴対法施行以来、極道渡世を歩んでいらっしゃる方々は、どの業界にも入り込みにくくなりました。
        次から次へと生み出してきたシノギも、不況の煽りを受けて左前。
        今や、名刺を出した時点でアウト、住まいを借りるのも、車を買うのにも他人の名義を借りねばならないほど、当局の締め付けが厳しくなっています。
        太く短くが魅力の極道の世界も、そんな体たらくでは後進が育たない、入ってこない。
        私見ですが、“ヤクザ”の存在自体が風前の灯にあると思います。
        本作で描かれている様な男たちに現実感がないのは、この数年間の現実社会での激しい変化がある為だと思われます。
        それだけ短期間に裏社会をとりまく環境が変わりました。
        古き良き時代を思い、今では死語にもなりかねない任侠道を貫いた昔かたぎのヤクザの物語は、現代社会を生きる僕らにはもう寓話然としていて寂しい限りですが。
        そんな、現実味がない仁義を重んじた侠気に満ちた男の物語だからこそ、こんなにも面白く、こんなにも胸を打つのだと思いました。
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        2015/05/10 by 課長代理

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      地の底のヤマ
      カテゴリー:小説、物語
      5.0
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      • この本は、読むのが本当~に大変でした。

        何てったって、860頁2段組。
        しかもセリフのほとんどが濃密な九州弁で難儀。
        読み終えたときには、本当に・・・本当にひとつの山を越えた気がして涙が出ました。

        これは、50年前に実際に起きた福岡県・三井三池炭鉱爆発事故を題材としたミステリー小説なのですが、その一つの事故に社会の縮図が垣間見えます。

        強い者はいつまでも強く、弱い者・・・事故で一家の大黒柱を失った家族、後遺症に苦しみ雑巾のように社会に捨てられる労働者・・・はいつまでも苦しみ、まず覆ることのないという現実が、真摯な姿勢で色濃く描かれています。

        とはいえ、しっかりとエンタテインメント性もあり、殺人事件をめぐる犯人像やその動機は非常に読み応えあり!
        地元に根付く警察官の成長とともに、その謎解きを楽しむことができます。

        でも、ミステリーというよりも、やっぱり社会派人間ドラマかな?

        汗と涙を流しながら読書を楽しみたいという方に、全力でオススメです!
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        2013/06/14 by アコチム

      • コメント 4件
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      脱出
      カテゴリー:小説、物語
      3.0
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      • 恋人の復讐のため悪徳警官を射殺した志波銀次の命を自衛隊の特殊部隊、伝説の傭兵達がつけ狙う。
        チンピラごときに政府が策謀を巡らす? なぜだ!!?
        戦車・ヘリから降り注ぐ砲撃、銃弾、紅連の炎を駆け抜けて、銀次の爆走は続く。
        次第に明らかになる巨悪の陰謀。
        魂を揺さぶる痛快無比の超絶アクション大作。

        じつに835ページという大作でした。
        持ち運びながらや、寝ころびながらの読書には不向きな分厚さ。
        文庫なのに1,114円(税別)というのも頷ける分量です。
        量だけでなく、中身も充実。
        全編を貫くハードボイルド・アクションの快作です。
        詳細すぎる銃火器の説明や、著者の軍事マニアぶりが介間みられる細かすぎる描写が、時折、邪魔くさいと感じますが、主人公の志波銀次をはじめ、魅力たっぷりな登場人物たちの活躍に、物語を追いかけるスピードはエピローグまで加速度をつけて上昇してゆきます。


        新宿歌舞伎町・ゴールデン街。
        小田健が細々と営む居酒屋、その名も「オダケン」。
        夜な夜な集まる常連客たちは、一癖も二癖もある御仁揃い。
        今日も、まだお日様が隠れるか隠れないかの際どいあたりから、グラスを傾ける九鬼歳三・職業フリージャーナリスト、週刊誌屋である。 
        「いつからなんだ、歳さん…呑み過ぎだぜ」
        狭い厨房から、心配げに声を掛けるオダケン。
        「…放っておいてくれ。呑んでいるうちは、震えはとまる」
        いつの間にか酷いアル中に堕ちていた気骨の記者に、昔日の面影はなく。
        次から次と現われる常連客の応対に忙殺されているうちに、ますます酔いをふかめてゆく九鬼。
        酔客たちのざわめきのなか、とんでもない情報が飛び込んできます。
        「たいへんだっ!すぐそこの小泉八雲公園でデカが殺された!」

        九鬼は、酷い宿酔いの頭を抱えて、ソファで七転八倒していました。
        コイツをやり過ごすにはウィスキィがいちばんのクスリだ…
        買い置いていたボトルに直に口をつけ、喉に放り込むように酒を呑みます。
        ゴクリ、ゴクリ…5分としないうちに胃がアルコールを吸収し始め、指先から踵まで痺れるように活力が甦ります。
        霞んでいた視界も明瞭になってくると、九鬼は昨晩の事件を少し冷静に考え始めます。
        殺されたのはパチンコ業界と黒いウワサの絶えなかった警察官僚、そういえば千鳥足でこのねぐらに帰る途中で、北朝鮮系の在日グループのチンピラどもがやかましく動き回っていなかったか…。
        九鬼は、ムクムクと持ち前の好奇心が首をもたげてくるのを抑えられずにいました。
        聞こえてきたのは、殺害現場のこと。
        死体が見つかった公園には争った形跡などないことから、どこかで殺された警察官僚は、誰かの手で件の公園まで運ばれてきたらしい。
        しばらくぶりに酒を控えようと、一大決心をする九鬼でした。

        「殺ったのは自分です。指、つめてお詫びします」
        ホルマリン漬けになった左手小指を前にして、新宿を仕切るヤクザ組織のトップ三上組組長・三上は、少し微笑っているようでした。
        どうやら昨夜の警察官僚殺しは、自分のところの若い衆・志波銀次の仕業だったらしいことが、おくりつけられてきた指で分かったのでした。
        志波といえば、長いお勤め(刑務所暮らし)を終えて娑婆に出てきたばかり。
        どうしてまたお上の人間を殺めるハメになった?
        志波がいないのを幸い、殺された警官は、横流しされたシャブを使って、志波の女をおもちゃにしていたらしい。
        次第を知った志波はチャカ担いで、朝鮮系が経営するクラブへ乱入。
        そこでだらしなく酔い呆けていた間男を、見事ぶち殺したとのことでした。
        なるほど、喧嘩っ早い銀次のことだ、話はわかった。
        じゃあ、なぜ、死体が動いたんだ?

        内閣官房室に送りつけられた一通の脅迫状。
        そこには、絶対に外部に漏れてはならない密会の記録が克明に記載されていました。
        なぜ、会合の一部始終が洩れるんだ…。
        それに加えて、今朝のニュース。
        昨夜、在日朝鮮業界との癒着が取りざたされていた警察官僚の殺害事件。
        根が心配性にできている弟子屈・官房副長官の心臓は既に飛び出さんばかり。
        裏に大掛かりな政府転覆の陰謀がある、そうに決まってる。
        はやまった予断の上に、自衛隊投入の決断を乗せて、政府が暴走を開始します。

        ワラワラと殺気が近づいてきやがる…、どいつもこいつも俺の命を狙ってやがる。
        志波銀次は、おもちゃにされ、ぼろきれのように亡くなった、惚れた女の仇討を終え、些かご機嫌でした。
        指もつめてオヤジへの義理も果たした、今日は亡くなったアイツを偲んで一杯呑るかっ!と、ホームレスで溢れる公園へ。
        買ってきた高級牛肉と焼酎を惜しげもなく振る舞い、即席炊き出し場と化した公園で、ホームレス相手にしたたかに酔う銀次でしたが、その背中にはすでに追手が。
        警察が、ヤクザが、自衛隊が。
        早くも見つかってしまった(新宿のどまんなかでバーベキューやってりゃ見つかるのも自然)銀次の逃亡劇はここから始まります。
        新宿御苑から、下町・根岸、そして冬の立山連邦へ。
        そんな銀次を追い続ける九鬼、銀次の身を案じ続けるオダケンとその常連客たち。
        義理と人情に厚く、ケンカをさせたらめちゃくちゃ強い、チンピラヤクザの大活躍です。


        主人公の生い立ちや追跡に投入される外人部隊など、劇的な展開を狙いすぎるあまり、現実感に乏しい設定もチラホラでしたが、そのあたりは目をつむりましょう、という気にさせてくれる面白さです。

        内藤陳さんが経営していたバー「深夜プラスワン」を根城に、日本冒険小説協会員として活動していた頃からハードボイルドを書き続けている著者。
        当時、足繁く通い、ののしられて、出入り禁止を3度くらったら一人前と認められたという伝説のバー「深夜プラスワン」。
        大沢在昌さんや、北方謙三さんをはじめ大御所連もかよっていたという有名な呑み屋です。
        馳星周さんは、北海道から出てきて、ここでアルバイトをしていたらしいですね。
        本作は、数多くのハードボイルド作家、ミステリ作家を輩出した、“虎の穴”の香りを色濃く残す名作です。
        長すぎるのが玉に瑕でしたが…。



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        2015/10/01 by 課長代理

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      ヤマの疾風(かぜ)
      カテゴリー:小説、物語
      3.0
      いいね!
      • 昭和44年、筑豊。
        主要産業の炭鉱が衰退するなか、荒々しい気質だけは健在だった。
        ずれはこの地を支配すると目されるヤクザ組織「海衆商会」主催の賭場で現金強奪事件が発生。
        主犯のチンピラ・菱谷松次に対し、同会若頭・中場杜夫の厳しい追及の手が伸びる。
        運命の邂逅はやがて、筑豊ヤクザ抗争の根底を揺さぶる巨大な奔流へ。
        激動の土地と時代を駆け抜けた男たちの苛烈な人生讃歌。

        第16回大藪春彦賞受賞作。

        典型的な任侠小説で、九州版、『仁義なき戦い』の様相。
        昭和40年代という、炭鉱産業の衰退と極道の本格的な胎動が聞こえてくる、北九州・筑豊を舞台にした若者たちの青春の日々を描きます。

        流れ鉱夫で北九州にその人ありとその名を轟かせた猛牛こと菱谷勇五郎の子、菱谷松次・通称「飛車松」は幼いころから曲がったことの大嫌いな任侠味あふれた性格で、向こう見ず。
        己が正しいと信じたことは貫き通し、相手が強ければ強いほど向かっていくという、ひたすら不器用で、それでいて人を惹きつける何かをもった男でした。
        小学生の時分、担任の男性教師がクラスの生徒のうち給食費を納めないことを責めたて「在日朝鮮人はいつまで日本人に迷惑をかけるんじゃ」という発言に立腹。
        「給食費払う払わんの問題に在日どうこう、関係なかろう!」と食ってかかります。
        当時、学校教師に刃向うなど言語道断な時勢だったのですが、「間違っちゅうのはヤツの方じゃ」と謝罪せず、意地を貫き通し、しこたまぶんなぐられます。
        その時、かばった在日コリアン、「マッコリ」こと金永浩(キムヨンホ)日本名・金田永浩とは、この件をきっかけに無二の親友に。
        土地柄か、教師に自説を曲げず意地を貫き通した天晴なガキじゃと、逆に褒め称えられることになる松次。
        そんな松次を父親・勇五郎も「よくやった、弱きもんをよう助けた」と誇らしく感じてくれます。
        このあたりで松次の生き方はほぼ固まるのでした。
        さらに叔父が経営する食堂での女性同士の痴話喧嘩をうまく捌いてみせた色男、「ゼゲン」こと俊堂忠虎、そしてその愛人、被差別部落出身の「キョーコ」こと江原京子。
        この4人は学校を卒業したのちも、さびれた炭鉱の町をつるんで歩くようになり、いつしか愚連隊の萌芽のような、そんな4人になってゆくのでした。
        そして今夜、地元のヤクザが内密に開帳する帳場を襲う計画を立てていました。
        松次の目の上には満点の星空。
        4人の若者の青春は始まったばかりでした。


        物語の登場人物たちはすべてひどい訛り。
        最初のうちは()で標準語訳が入るほど。
        それが、物語の臨場感を引き立てます。
        ヤクザ同士の抗争、つまらない意地の張り合いなどは、冒頭に記したように『仁義なき戦い』を思い浮かべればいいと思います。

        4人の少年・少女たちの不遇な生い立ちや、廃れてゆく一方の北九州の埃っぽい炭鉱町の情景が、目の前のスクリーンに映し出されるように過ぎていきます。
        魅力あふれる脇役陣もしっかり脇を固めて、気風のいい北九州の土地柄も魅力的に、躍動感たっぷりに描かれています。
        大藪賞受賞作、まったく受賞作らしい、素晴らしい青春群像劇です。
        >> 続きを読む

        2015/03/18 by 課長代理

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【西村健】(ニシムラケン) | 読書ログ - 読書ファンが集まる読書レビューサイト(著者,作家,作者)

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