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オノレ・ド・バルザック

著者情報
著者名:オノレ・ド・バルザック
おのれ・ど・ばるざっく
オノレ・ド・バルザック
生年~没年:1799~1850

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      ゴリオ爺さん
      カテゴリー:小説、物語
      4.3
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      • 【報われない愛情】
         バルザックの『人間喜劇』の中でも多数の『再登場人物』が描かれるのがこの作品で、あるいはまた、『次』への展開を孕んでいるのもこの作品だそうで、その意味からも、『人間喜劇』の要となる作品だと言うことです。

         パリの安下宿ヴォケー館には、何とも奇妙な人物が住んでいました。
         その一人は、タイトルにもなっているゴリオ爺さんです。
         ゴリオ爺さんは、ヴォケー館にやってきた当初は随分羽振りも良く、多数の銀食器なども持っていた資産家だったのです。

         ところが、年を経るに連れて徐々にみすぼらしくなっていき、当初使っていた大きな部屋から、賃料の安い狭い部屋に移り、家財道具もどんどん少なくなっていきました。
         そして今ではすっかり落ちぶれてしまい、他の下宿人たちからも良いようにからかわれる対象になっていました。

         下宿人達はゴリオ爺さんをからかうのですが、その種は、時折ゴリオ爺さんのもとに若くて美しい貴婦人の様な女性が何人も訪れることでした。
         実際には訪問してくるのは二人だけでしたが、貧しい下宿人たちの目からすれば、装いが変われば違った女性に見えるらしく、何人も訪ねてくると思い込んでいました。
         そのため、ゴリオ爺さんは女に溺れてしまい、豊かな資産もすっかり使い果たしてしまったに違いない、良い年をして女にだらしない老人だとからかうのですね。
         でも、ゴリオ爺さんは、「あれは私の娘たちです」と静かに言うだけなのですが。

         さて、ヴォーケ館には、ラスティニヤックという美貌の若い法学生も住んでいました。
         彼の実家は男爵家なのですが、今ではすっかり零落しており、わずかな収入で一家が何とか生活しているという有様でした。
         母親や妹たちは、自分たちの生活を切りつめて何とか学資を捻出し、ラスティニヤックには法律家になってもらって自分たちの面倒を見てもらいたいと考え、仕送りを続けていたのです。

         ラスティニヤックももちろんそのつもりで勉学に励んでいたのですが、華やかなパリの毒気に当てられてしまったのか、コツコツ勉強するよりも、何とかツテを作って華やかな社交界に出入りし、金持ちの女性をつかまえた方がてっとり早いなどと考えるようになっていきました。

         さて、ヴォーケ館にはもう一人謎の人物が住んでいました。
         それは、ヴォートランという押し出しの強い中年男で、何をやっているのかよく分からないのですが、金回りは良いようなのです。
         ヴォートランは、ラスティニヤックの野心を焚きつけ、頼みを聞いてくれるなら金銭的援助をしてやるなどと持ちかけたりもします。

         この作品、タイトルは『ゴリオ爺さん』なのですが、物語は、しばらくはラスティニヤックを中心に展開していきます。
         ゴリオ爺さんは、しばらくはしょぼーんとした老人としか描かれないのですね。

         ですが、ラスティニヤックが首尾良く社交界に出入りしはじめ、侯爵夫人、子爵夫人などと知り合いになると物語の様相が変わってきます。
         この二人の貴婦人は、実はゴリオ爺さんの実の娘であることが分かります。
         そして、ゴリオ爺さんも、元々は大変な資産家で、その金の力で二人の娘を貴族に嫁がせたのだということも明らかになります。
         ええ、時折ゴリオ爺さんを訪ねてくる二人の貴婦人とは、確かに爺さんが言うとおり、実の娘だったのですね。

         でも、だとしたら何故ゴリオ爺さんはこんな安下宿で細々と生活しているのでしょう?
         娘が貴族に嫁いだのなら、もっと良い暮らしができそうなものなのに?
         というのが、本作の主題をなしています。
         ゴリオ爺さんは、二人の娘を溺愛していました。
         それなのに、その深い愛情はこうも報われないものなのかという点が描かれていくのですね。

         ラスティニヤックは、当初はまるで『赤と黒』に出てくるジュリアン・ソレルのような鼻持ちならない野心家として描かれますが、徐々に良心に従って生きていきたいという思いを強く抱くようになります。
         パリの社交界のいやらしさ、金持ちの薄情さを心底呪うようにもなるのです。
         そして、ラスト・シーンでは、再登場を予感させるような、彼の『誓い』で終わるのですね。

         ところで、この作品、タイトルで随分損をしているように感じます。
         『人間喜劇』のことをご存知の読者はそうでもないのかもしれませんが、バルザックを初めて読みます、『人間喜劇』のことは知りませんという読者にとっては、かなり地味なタイトルで、あまり食指が動かないのではないでしょうか。
         でも、しっかり読ませる作品ですので、未読の方は毛嫌いなさらずに手に取ってみるとよろしいのではないでしょうか。
        >> 続きを読む

        2019/06/29 by ef177

      • コメント 2件
    • 他1人がレビュー登録、 9人が本棚登録しています
      谷間のゆり
      カテゴリー:小説、物語
      4.0
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      • いろんなところで名前を聞いていましたが、未読でした。誰訳で読むか迷いましたが、とりあえず信頼の岩波文庫で。面白かったです!

        サッカレーの『虚栄の市』と並行して読んでいたら、時代が被って途中少し混乱したりしましたが…語り口がやっぱりフランス文学ですね。
        年上の美女と若い男の組み合わせというのも、いかにもフランス的です。あちらでは、男は女が育てるもの、という考えなのかなぁと思ったり。そして苦い思いをして、男の人はより魅力的になっていくのでしょう。日本の小説にも年上女性と若い男の組み合わせはありますが、そういうのを書くのはたいていが女性作家のイメージです。私が思いつくところでは、芝木好子とかですかね。そもそも貴族社会というのがヨーロッパの特殊なところでしょう。社交界において、女性が華として君臨する文化。そこで若くてきれいなお嬢さんではなくて、堂々としたご婦人に惹かれるのも、やっぱりお国柄なんでしょうかねー。

        しかし『谷間のゆり』の舞台はフランスの田舎です。貴族ではありますが、控えめな女性が貞節を貫く話です。以下、内容に触れますので未読の方はご注意を。






        青年フェリックスの憧れであったモルソーフ夫人は貞節を貫いて死ぬわけですが、結局彼女は満足だったのでしょうか?
        ifの話をしても仕方ありませんが、夫も子供も振り捨てて若い男に走ったとして、フェリックスが心変わりしないとも限りません。そう考えると最後まで少なくとも肉体的な関係にはならなかったことは夫人にとっての勝利であったかもしれません。精神的な連帯感を存分に味わい、私のことを愛してね、ただし親愛の情で、などという無理難題を若い男に強いて、貞節な妻という役目をやりきって死んだ彼女にとっては、ある意味勝利だったかもしれません。
        しかしそれもダッドレイ夫人という浮気相手がフェリックスにいたからでしょう。身体の関係を持つ相手が存在しなければ、フェリックスにこんな生殺し状態が耐えられたでしょうか?そのくせモルソーフ夫人はダッドレイ夫人と関係をもったフェリックスを冷たくあしらうのですから、ひどいものだと読みながらしみじみ思いました。いずれ娘を嫁にやるつもりだったというのも、本当にそんなことができたかどうかはなはだ疑問です。恋は盲目ですからフェリックスはモルソーフ夫人を崇め奉っていますが、いろいろ割り切っているダッドレイ夫人のほうが私は好きです。モルソーフ夫人は自覚のない悪人だと思います。というかフェリックスに、君はそれでいいのかと問い詰めたい。
        しかし好きになってしまったら仕方ないんでしょうね。盲目ですからね。それでも、フェリックスとモルソーフ夫人の愛を純愛とは呼びません。エゴイズムや本能的な情動を、信仰心とか世間体とか貞淑さとか騎士道とかで過剰包装した歪なものです。ダッドレイ夫人も愛想が尽きるってものです。ふたりとも、悲嘆にくれるふりをして充分心で遊んでいるんですから。

        最終的に女性が病に倒れて死ぬというのはフランス文学でよくあるパターンのひとつですが、やっぱりこのままいくとどちらかが裏切らずにはいられないからですかね。完璧な愛は壊れる前に封印すべし。ロミオとジュリエットも、あそこで心中しなければいずれ破局を迎えたのかもしれません。フェリックスとモルソーフ夫人は、崇高な愛というものに酔っぱらっていたようですが、愛ってそんなに気高いだけのものではないでしょう、とダッドレイ夫人は語りそうですし、バルザックもそう思っているのでは?
        ああ、美しい夫人であった、とフェリックスが悲嘆にくれるところで話を終えることもできたのに、最後にナタリーからきっぱり振られているところが、さすがバルザック。このくだりがあるのとないのとでは大違いです。
        昔の恋人の話を子細に語るなんてのは、恋愛的作法でNGなのはどの時代も同じですね。フェリックス、そんなことも知らないなんて、30にもなって…
        ある意味モルソーフ夫人の呪いなのかも。ナタリーは賢明でした。死んだ人にはどうあがいても勝てないし、フェリックスは、もはや一番いい時期は過ぎているようなので。

        しかし脚注を読むと、この後フェリックス君は結婚するそうで、かなり驚きました。その辺は『イヴの娘』に書かれているそうなので、読まなくては…
        >> 続きを読む

        2016/01/30 by ワルツ

    • 1人が本棚登録しています
      谷間の百合
      カテゴリー:小説、物語
      4.0
      いいね!
      • バルザックを読むと、いつもそうですが、いい男を目指すぞー!
        って気持ちにさせてくれるのです。
        なんとなくそんな気持ちだったので読みました。
        まあすでにそういう年齢ではないのですけど。
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        2013/02/05 by cocodemer

      • コメント 4件
    • 4人が本棚登録しています
      グランド・ブルテーシュ奇譚
      カテゴリー:小説、物語
      3.0
      いいね!
      • ゴリオ爺さんに出てくる医者の卵のビアンションが超いいやつだったの読んでみた。

        こっちのビアンションは俗物っぽくてそんなに魅力的ではない。別にビアンションじゃなくてもいい話だった。
        ポーの怪奇小説のような表題作、教訓っぽい短編、文化評論も入ってバラエティに富んだ一冊。
        >> 続きを読む

        2011/05/30 by ack

    • 1人が本棚登録しています

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