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【何と巧妙な作品なのでしょうか】 ミステリ短編集なのですが、ちょっと変わった構成を取っています。 ビュッフェというよりは、コース・ディナーのようにメニューを組み立て、それぞれの『料理』に合う作品を何編かずつ揃えて提供しているんですね。 そのメニューはというと……① コックリル・カクテル(4編)② アントレ(3編)③ 口直しの一品(1編)④ プチ・フール(4編)⑤ ブラック・コーヒー(4編)です。 ①のコックリル・カクテルというのは、探偵役を務めるのがコックリル警部であることからそういうネーミングになっています。 どの作品を読んでも感じるのですが、極めて巧妙な筋立てになっています。 しかも、その巧妙さが分かるのが最後の最後です。 そう、料理を食べ終えた後の余韻、後味的なところでガツンとやられます。 それは思いもかけない決着だったり、非常にシニカルな味わいだったり。 通常の謎解きミステリとは異なる、独特の風味が感じられます。 中には、ちょっとそれはあまりにもご無体なと言いたくなるようなトリックのものもあるのですが、問題はそのトリックの荒唐無稽さではなくて、そういうトリックを持ってきたことによって醸し出される得も言われぬ味わいこそが、クリスチアナ・ブランドの料理の魅力なのですよね。 一作だけ、内容を簡単にご紹介しましょう。 『ジェミニー・クリケット事件』です(アントレの一作です)。 ドアが一つしかない事務室内で殺人事件が起きました。 その部屋にいた男性から、通りを挟んで向かいにある警察署に助けを求める電話があり、男性は電話の中で、「長い腕」、「どこへともなく消えていく」などと訳の分からないことを言うのです。 異変を察知した警察官達がその事務所に駆けつけてみると、男性の養子がドアを開けようとしているのですが、どうしても開きません。 どうやらドアには鍵がかかっている上、中から閂をかけているようなのです。 閂はドアの上下にあるということなので、上下の板を外してそこから手を突っ込んで閂を外し、体当たりをしてドアを破りました。 部屋の中には煙がもうもうと立ちこめ、男性が座っている椅子の前のテーブルが燃えていました。 その時、ガチャンというガラスの割れる音がし、部屋に唯一あるガラス窓が割れていて、割れ残ったガラスが揺れていました。 しかし、窓の外には何の異変もありません。 男性は、首を絞められた上、ナイフが背中に刺さって絶命しており、ナイフは刺されて間もない様子で、傷口からはまだ血が出ていました。 完全な密室なのでしょうか? それから1時間ほどした頃、パトロールに出ていた警察官から署に助けを求める電話が入り、その電話で、警察官は「長い腕」、「どこへともなく消えていく」などと言うのです。 電話をかけていると思われる場所に急行したところ、警察官が首を絞められた上、背中にナイフを突き立てられ、さらに水の中に突っ込まれて死んでいました。 背中に突き立てられていたナイフは、事務所で死んだ男性の事務所から持ち出されたナイフだと判明します。 さて、これは一体? かなり奇妙な状況が描かれますが、その謎解きを読むと、「おいおい」と言いたくなる部分もないではありません。 しかし、やはり奇妙な味わいを残す作品なのですよ。 >> 続きを読む
2020/01/03 by ef177
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